雄志社大学柔道部

副主将の受難

その3

 

鍛錬開始

 

「よし、飯の片付けも終わったな。これから内柴の皮膚・刺激鍛錬の時間とする」

 

 翌日、寮の食堂に夕食を済ませた部員達が勢揃いしていた。

 

 普段1人部屋を利用していた内柴の荷物は、食堂の一隅にあらかた運び入れられている。

 今日から寮の食堂の一隅という否応も無く部員達の視線に晒される中で、内柴の全裸生活が始まるのだ。

 食堂入口から離れた離れた場所に、机と椅子、ベッドが持ち込まれ、一応の生活拠点としての機能は果たしはするだろう。しかしそこには本来の『部屋』という概念に内在するはずの『他者との生活空間の分離』『プライバシーの確保』というものは一切排除されている。

 

「俺、ここで過ごすのかよ……」

 

 不安げな内柴の言葉に、主将の古賀がしっかりと頷く。

 それを見た内柴もまた、覚悟を決めたようだ。

 

「もう引き返せないんだよな……。俺も男だ。うじうじ隠すなんてことはしない。皆で俺を鍛えてくれ!」

 

 大声で宣言した内柴が、一気に服を脱ぎ捨てる。

 

 もともと男だけの寮生活。さすがに授業には普通の服で向かう部員達も、ここでは上半身裸、あるいは下着一丁で過ごすものも多かった。雄志社大学の体育会のほとんどは独自の寮を持っているが、どこも同じようなものだろう。

 柔道部寮にあっても2回生の鈴木のように、普段から何も隠すことも無く素っ裸で闊歩するものすらいる生活の中、内柴に取っても脱衣そのものにそれほど抵抗があるわけでは無い。

 本人の不安は『そこ』には無かった。

 皆の手による『鍛錬』こそが、内柴の不安の根本であった。

 

 全裸になった内柴。

 鍛えられた筋肉の上に乗った脂肪は、みっしりとした質感が男としての強烈な色気を醸し出している。盛り上がった肩、身長に見合わぬほどの腕と脚、腹筋の上に乗った脂肪。

 オフの時期、試合前よりも重量を上回った体重は70キロをわずかに越えているぐらいか。

 厚い柔道着に擦れて薄くなるものもいるが、もともと体毛の薄い内柴の肌は内側の筋肉と脂肪をはじけそうになるほどの質感で包み込み、その皮膚に触れる指先はしっかりとした弾力で弾かれることだろう。

 半裸のものも多い男達の中、何一つ隠すことなく仁王立ちとなった内柴に集まる部員の視線は、羨望と嫉妬の混じったものだった。

 

 その股間の逸物は、皆の視線にさらされてもその容積を太ましいままに保ち、平均的な同年齢男性の勃起時ほどの大きさを誇っている。

 

「シバ先輩の、やっぱりデカいっすよね……」

「ガタイとチンポの比率的には、部内で一番だろうな。鈴木や斉藤、飯田みたいに重たい奴にはもっとデカい奴もいるが、見た目のインパクトがもう、スゲえし」

「その、これ、俺達みたいな下のもんが、先輩をいじっていいんスか」

 

 下の学年にしてみれば副主将である内柴を『どうにでもしていい』などという状況にとまどうことは当たり前だった。

 これまで、性欲滾る上級生に『使われる』ことは多々あっても、自分達が『使う』側に回るなどということは皆無だったのだ。

 

「シバも覚悟決めたようだな。あれから色々意見聞いて、初日の今日はソフトな責めで行こうかと思ってる。といっても、こいつが本気で抵抗したら周りも大変だろうから、これからは食後の数時間は軽い手足の拘束をしばらく続けていくつもりだが、シバもそれでいいな?」

 

 古賀が皆を見回しながら話をする。

 

「ああ、こうなったらもう、何でもアリなんだろう。縛ろうが押さえ込もうが、なんでもしやがれ」

 

 あらかじめ打ち合わせていたのか、内柴の返事に古賀が頷くと、3回生の部員達が内柴を取り囲む。

 

「済まんな、シバ……」

「やってくれ、ノム」

 

 主務である野村忠義は、主将である古賀の決定にどこか不服はありつつも、指導学年としての意思を分裂させようとまでは思わなかったのだろう。

 もともとストイックな面もある野村は、部内で当たり前となっている下級生を使った性処理にも積極的に参加するタイプでは無かったのだ。

 

 部員達の手で、内柴の手足にロープが掛けられていく。

 天井と壁下に一端が結ばれたその縄は、両足を広げ床を踏みしめた内柴をまさに『大の字』になるかのように、大きく万歳の姿勢に固定した。

 それはすでに全裸となった内柴の全身が、なに一つ隠されることなく衆目に晒されてしまうことに他ならない。

 

「初日の今日は、さっきも言ったようにソフト路線で行こうかと思ってる。

 お前ら、これから少なくとも3時間は、シバの全身を指先や手のひら、用意した筆や羽根で優しく嬲ってやれ。もちろん、チンポもすぐにおっ勃つだろうから、そのあたりは射精させないように注意しろよ。

 シバはシバで、全身の肌への耐性を付けるのが目的だ。刺激に身をよじって逃れようとするのを、なんとか意思の力で抑えろ。もちろん、簡単にイっちまわないよう、我慢しろよ」

「お、おう……。た、頼む、みんな……」

 

 その答えには、己が副主将であるという、あるいは階級代表、団体代表という意地もあるのだろう。

 正面を見つめる瞳の奥底にはどこかおびえが見えるものの、下級生の手前か、精一杯の威厳を保とうとする内柴であった。

 

「みんな、筆や羽根、指先や手のひらで、内柴の全身をくまなくいじれ。羽根は汗や先走りで濡れると効果が薄れるから、どんどん取り替えながら使え」

 

 古賀による短くも的確な指示。

 内柴の視線はにじり寄る部員達には目もくれず、にらみつけるようにして正面にひたと固定されている。

 古賀の号令で、筆や羽根を持った部員達が内柴の裸体へと群がっていく。

 

 用意されていたのはまずは習字の筆。

 買ってきたものを1度お湯で筆先を洗うことで、大小何本ものそれは実にソフトな肌触りを与える刺激具となっている。

 その筆の何倍にもなる本数が用意されていたのは、水鳥の羽根だろうか。

 指でその側面に触れれば実に柔らかい感触が肌を撫でる。何十本ものそれは汗や体液でその感触が変わることを嫌ってか、何度も取り替えが利くようにというほどの本数が用意されていた。

 

 まずは2回生の部員5名ほどが裸体を取り囲み、その指先を、筆を、羽根を、肉感溢れる内柴の全身に這わせ始めた。

 

「あっ、ああっ、そこっ、ダメだっ、ダメっ……」

 

 生来の敏感肌の克服、擽られることへの耐性を得るためとはいえ、その弱点を幾人もの男達から責められるのである。

 悲鳴のような声が上がるのは仕方のないことだ。

 

「ひあっ、あっ、ああっ、ち、乳首はっ、ダメだっ、ダ、ダメだっ……」

「先輩……。悶えてる先輩、すげえエロいッスよ……」

 

 耳元に囁く下級生は、内柴の後ろから抱きかかえるようにして両の乳首を優しく摘まんでいた。

 決して激しい刺激ではない。

 先端を優しく転がし、指の腹を使ってそっと揉まれる乳首にとつとつと血流が集まってくる。

 

「や、止めろっ! わ、脇はっ……!!」

 

 両脇は左右からもっさりと茂った黒毛の流れにそって、大筆が撫で上げている。

 そのゆっくりと、しかし確実に皮膚と体毛を掻き分けていく動きは、身を捩って刺激から逃げようとする内柴でもまったく防ぐことは出来ない。

 撫で上げる筆先が柔らかく肌を刺激し、その何百本もの動きが1ミリ動く度に内柴の肉体が打ち震えていく。

 

「センパイのここ、もうビンビンじゃ無いッスか。こんなに責められてんのにおっ勃っちまうなんて、センパイ、きっとMッスよね?」

「ば、馬鹿っ! そ、そんなワケっ、あるかっ!!」

「カラダは正直ッスよ。ほら、センパイ、自分がいじめられて興奮するって認めた方が、これからずっと続くんだから、楽になるっスよ」

「ち、違うっ! こ、これは、刺激されてるから勃ってるだけで……」

 

 内柴の下半身には何本もの羽根や筆がその部分を撫で回している。

 勃ち上がった肉棒の幹は両側から、水鳥の羽根が下から上へとその凶悪な上反りの形にそって蠢かされていた。

 子どもの握りこぶしの大きさにすら匹敵するほどの先端は、細い筆さきが鈴口とてらてらと光る周囲を撫で回す。

 とりわけ内柴を悶えさせていたのは、たっぷりとした量感を湛えた双玉を這い回る筆先だったろう。ふぐりの皺、1本1本をなぞるようなその動きは、自らの手で扱き、揉み上げる普段の行為では決して味わえないものだった。

 

 とろとろと全身を炙られるような刺激ではあるのだが、決してそれはなにか皮膚が感じとる快感に止めを刺すものでは無い。

 いつまでも続く、無限とも思えるその刺激が、内柴の脳髄をじりじりと灼いていくのだ。

 

 この鍛錬を提案した古賀にとって、いや、内柴を知る者にとってはある意味当たり前の光景が展開されているのだ。

 練習中、あるいは試合中。柔道着の上からまさぐられるだけで、はだけた胸に相手の腕が触れるだけで、悶絶し興奮する内柴が、意図的にその肌を責められれば、それはもう快楽の雄叫びを上げることは、まさに自明のことであった。

 そしてそれを見つめる部員達にも、その興奮が伝播し、半裸・全裸となった股間を大きく膨らませていることも事実である。

 

 それは主将である古賀もまた、同じであった。

 他の者のように下着のみ、あるいは全裸というわけではなかったが、洗濯を繰り返し柔らかくなったジャージの股間は、たっぷりとした重量感を持ってその膨らみを誇示している。

 

「俊彦。お前もシバの見て、おっ勃ってるんだろう?」

 

 重量級の斉藤が古賀の耳元に口を寄せ、まるで舌舐めずりをしているかのように唇を歪ませながら囁いた。

 

「斉藤、お前だって、勃ってるじゃないか……」

 

 138キロの斉藤の下半身は、二抱えもある太股と腹の膨らみに負けないほどに盛り上がり、その頂点は滲み出た先走りで灰色のスエットの色を濃く変えていた。

 

「あんなの見せられて、勃たねえ方がおかしいぜ。誰か適当な下の奴呼んで、しゃぶらせるか?」

「お前は何度か抜いとけよ。夜中に部屋で大声出してセンズリされても、周りがたまらんしな……。俺は、その、ちょっとシバに悪い気がするし……」

「なに親友ぶってんだ。イきたけりゃサクッと出しとかねえと、明日の練習にも支障が出るぜ」

 

 斉藤の言うことももっともである。

 若く、健康で、精の付く食事を喰らい、毎日毎時をその肉体を鍛えることに費やす若者達。その腰にどっぷりと溜まる雄汁は、肉体的な接触の多い競技にあっては容易に勃起を引き起こす。

 内柴ほどの敏感さを持たない部員達にとっても、練習中、試合中の勃起は危険さを増すことは自明のことであり、養生訓の『接して漏らさず』などという訓育が役に立つわけでもない。

 そのためか、この雄志社大学柔道部においても過去からの伝統として、部員同士での抜き合い、扱き合い、しゃぶり合いは、体育会的な上下関係のある中、連綿と続いてきている。

 古賀に囁く巨漢の斉藤などは、テーブルの下に潜らせた下級生にしゃぶらせながら、食事中に射精出来るほどの性豪ですらあった。

 

「ああっ、ああああーーーーーーっ」

 

 食堂に、内柴の野太い声が響く。

 身をよじろうにも、手足を大きく広げられた形で固定されたロープが、それを許さない。

 唯一自由になる体幹部を大きく前後に揺らすことになるのだが、それはまた股間の滾りきった逸物を大きく振り立てることとなってしまう。

 

「シバ先輩ったら、そんなに腰振っても、こんなんじゃイケやしないっしょ?」

 

 からかいながらの嗜虐的な言葉とは裏腹に、下級生の手による筆と羽根の動きはあくまでも繊細だ。

 先走りの滴る肉棒を撫ぜる羽根は、その水分を含む毎に取り替えられ、いつまでも触れるか触れないかという絶妙な刺激を与え続ける。

 亀頭で、睾丸で、乳首で、脇腹で。

 何本も蠢く筆先の動きも絶えることがない。

 

 贄となっている内柴は、他の者達に比べれば体毛は薄い方だろう。

 その滑らかな肌は汗にまみれ、股間から下は絶え間なく溢れ出る先走りで濡れそぼってきている。

 筆先が、羽根が、這い回るその軌跡は、蛞蝓の這った後のような紋様を、鍛えられ、興奮に紅潮した全身にうっすらと刻んでいく。

 

「あっ、あっ、イかせてくれっ、頼むっ、頼むっ……。こんなの、生殺しだ……」

「堪えるための訓練なんだ。すぐに感じてもらっては、簡単にイってもらっては困るから、これ、やってるんだろう? シバ?」

 

 内柴の懇願に、にべもなく答える古賀。

 先走りに濡れ光る内柴の肉棒を見つめながら、今握ってやれば、一発で噴き上げるだろうなとの思いもあるのだろう。同じ男として、親友でもあり切磋琢磨してきた同輩が置かれている状況に自分がいれば、同じく切ない声を上げてしまうということも分かっている。

 古賀の真っ直ぐな視線のその奥には、幼い頃からの友への同情心とともに、どこか欲情に濁った光が籠もっていた。