『金精の湯』秘境温泉物語

その5 洗体

 

 脱衣所に宿守りと俺たち宿泊客の全員が集まる。

 紫雲さんが一人いないのは、夕食の準備のためだろう。俺が人を探す視線に気がついたのが、紫雲は後から合流しますよと、茶野さんがそっと教えてくれた。

 

 担当の赤瀬君が後ろに回り、印半纏を脱ぐ俺を手伝ってくれる。

 そんなことまで、とは思うのだが、彼のさりげない手の出し方とタイミングが絶妙すぎて、流れるような動作の中で行われるその行為を遠慮する間が無いのだ。

 その赤瀬君が、今度はスッと俺の前に膝を突く。

 

「越中の紐をほどかせていただきます」

 

 これこそ、本当にそんなことまで、という話だった。

 

「いいよ、いいよ、自分でやるから!」

「皆様のここがどのように変化していくのか、その詳細な観察もまた、私どもの仕事なのですよ」

「あ、でも、その、ずっと勃ったままだし、悪いよ……」

「お客様が温泉で元気になっている姿を拝見できるのは、宿守りとして嬉しいことなのです。我らの股間もまた同じです。恥ずかしがられる必要はございません」

 

 4人の湯治客の前に、それぞれの担当が膝を突いていた。

 腰に回されていた手が越中の前垂れの裏側に差し入れられ、結ばれた横紐に指がかかる。

 指にまで黒毛に覆われた毛深く分厚い手によって一枚布が取り去られると、宿守りたちの目の前に、俺たち4人の逸物が曝け出される。

 

「皆様、いさましいですな。風呂の前に少し揉んでおきましょうか」

 

 当たり前のように言う四方さんの言葉とともに、俺の金玉が赤瀬さんのゴツい手のひらで柔らかく揉みほぐされる。新しい刺激にたまらぬ愉悦を感じながら、ここまでされても拒否しない自分への不思議さもまた、俺は感じていた。

 昨日までの俺だったら、突然のことに「何をするんだ!」と手を払いのけていたのではなかろうか。

 

「ああ、黄田さん。それ、気持ちいいです……」

「玉を揉まれるのが、こんなに感じるとは思ってもみなかったですな」

「あ、あ、白山さん、なんか、ごめんなさい」

 

 皆、それぞれに口を突いて出る言葉の甘いニュアンスに、嫌がる素振りは感じない。この状況に皆が快感を得ている証拠だろう。

 豊後さんにいたっては、どこか余裕すら感じるような口ぶりでさえあったのだ。

 

「さて、私どもも脱がせていただきます」

 

 宿長の四方さんの一言で宿守りたちが立ち上がり、印半纏を脱ぐ。

 露わになった上半身の毛深さを改めて感じるのと同時に、どこか温泉の香に似た甘い体臭がむわりと脱衣所に漂っていく。

 その匂いを官能的なものと感じてしまうのは、この温泉の成分のせいなのか。

 

 赤瀬さんの、いや、宿守りである男たち皆のだろう。宿守りたちの褌の横褌に手がかかる様を、俺はつい見つめてしまう。

 朝の対面時から気になっていた、すさまじいまでの前袋の昂ぶり。

 その中身を、ついにこの目にすることが出来るのだ。

 

 一斉に解かれた六尺褌が、前袋の膨らみの形と熱を残したまま、足下に落ちた。

 胸から連なる密集した腹毛と陰毛の茂みから、それこそ臍を突く勢いでぶるんと飛び出したのは、いずれも劣らぬ6本の巨大な逸物だ。

 褌の膨らみから想像していた以上の大きさに、俺たちは皆、ごくりと唾を飲み込んでしまう。

 太さはもちろんのこと、宿長の四方さん、茶野さんに至ってはその長さもまた素晴らしく、25センチを軽く超えているように見えるのだ。

 四方さん、黄田さんの鈴口には、直径10ミリはあろうかというリング型の太いピアスが裏筋を通って貫かれている。その太さゆえの重量感と、鈴口をその限界までの大きさに広げきっている迫力に、俺は息が止まるほどの衝撃を覚えていた。

 

「すごい、デカい……」

「そのピアス、尿道をその、貫いているのですか?」

「みんな、ずる剥けなんだ……」

 

 湯治客それぞれの口から漏れる言葉にも、この状況を嫌がっているような雰囲気は感じない。

 俺自身もすでに『そう』なってしまっていたのだが、そこにある思いは宿守りたちが俺たちの股間へ持った興味と同じく、その巨大なる造形への賛美と、幾分かの憧れの混じった感情だったのだと思う。

 

 夕食の準備が終わったのだろう。

 四方さんを覗く宿守りの中では一番の年長の紫雲さんも脱衣所に現れ、褌を解く。その股間に窓から差す午後の日がきらりと反射するのは、四方さん、黄田さんと同じ指ほどの太さのあるシルバーのリングだ。

 7人の宿守りが全裸で並ぶその姿は、まさに壮観と言えるものだった。

 

 おそらくは一番軽い人でも120キロは下らぬだろうむくつけき肉体は、皆が皆、前から見ても横から見ても、その幅に変わりが無いほどの厚みを伴っていた。

 盛り上がった筋肉に支えられた首の太さは顔の輪郭と同じ幅ほどに鍛えられ、朝から剃ったであろう髭は、すでにうっすらとした陰影を描き始めている。

 野苺ほどの膨らみに見える乳首にはいずれの胸にもピアスが貫通し、バーベル型、リング型の違いはあるが、その金属光沢がぷっくりとした肉質を強調している。

 

 とりわけ目を奪うのは、男たちの全身を覆う剛毛だったろう。

 首回りから上が無毛に見えるのは、その部分に剃刀を当てているに違いない。

 背中から肩、鬱蒼と茂る胸毛は正中の窪みを黒々と覆い、腹から下腹部へと続くそれは指を添えれば絡みつきそうなほどだ。

 もっさりとした黒い茂みから屹立する男の男たる『それ』は、みな一様にずるりとその先端を露わにし、体液を排出するための深い切れ込みを際立たせている。

 両手両足もまた体毛がまといつき、首から下だけを見れば野の獣と思われても仕方がないでのはあるまいか。

 

 同じ男として当然目が行く股間のものは、それぞれの太さ長さ、角度は違えども、みな隆々と勃ち上がり、臍に付かんとするもの、鋭角に天を付くもの、みなその雄々しい姿を恥じることなく晒していた。

 

 宿長の四方さんと紫雲さん、黄田さんの3人の肉棒の先端には、先ほどから目を引くその重量もかなりのものかとも思える、指ほどの太さのあるリングが貫通している。

 少なくとも俺の目の前では、午前中、こちらに到着してのち、一度も萎えたことの無いように見えていたそれぞれの逸物は、今もまたその先端から先汁さえこぼれそうな勢いで生えかえっていたのだった。

 

「私どもの肉体が珍しく思えておいででしょうが、この湯の下でしばらく過ごせば、皆様のお身体もまた、私どもと同じように変容していくことでございましょう」

 

 常識的にはあり得ないと頭では理解しているのだが、温泉の香の漂う中、宿長の言葉がじんわりと俺の脳髄へと沈み込んでいく。

 

 俺もまた、あのような逞しい肉体を得ることが出来るのか。

 俺もまた、あのように豊かな体毛を得ることが出来るのか。

 俺もまた、あのような巨大な逸物を得ることが出来るのか。

 

 その疑問のすべてに、頭の中の宿守りたちが「その通りだ」と答えていく。

 俺たち4人は湯に入る前にすでに火照りはじめた肉体を持て余しながら、宿守りたちの案内のまま、広い浴室へと誘われていったのだった。

 

 滾々と湧き出る温泉を何度も浴び、ゆっくりと湯船にその身体を沈めると、頭の中の疑問や不思議も、なにもかもが溶けていくような心持ちになるものだ。

 裸の付き合い、とはよく言ったもので、宿守りたちに囲まれて俺たち4人はまたもや舞い上がったように饒舌になっていた。

 

「こんなすごい身体、なにかトレーニングされてるんですか?」

「薪割りや猪の罠の見回りで山を歩いたりはしますが、特別に何かを、というわけでは無いですね」

「この温泉、色々効能がありそうですが、これまで聞いてること以外にも効き目でこれっていうはあるんですかね?」

「身体に筋肉が付きやすくなる、毛深くなるなどは見ての通りですし、皆様も私どもを見ていて分かったでしょうが、なんといっても性欲精力が増してくるのがすごいですな。

 かといっていわゆる発情するのとはちょっと違っていて、頭の方はしっかりしたまま、ほぼ一日中勃起が継続出来るような感じになります。

 もう皆様もここに来てからは萎えている時間はそれこそ昼寝をしておられたときぐらいかと思いますが、どうですかな?」

「仰る通りでして、みな一緒だからとなるべく普通にしていたんですが、ここに来る前だったら、かえって病気なんじゃないかと思ってしまうぐらい、元気になってしまってます」

 

 矢継ぎ早に繰り出される俺たちの質問に、宿守りが一つ一つ答えてくれる。

 こういうことはあまり表に出さず、暗黙の了解の中で進んでいくのかと考えていたのだが、四方さんを含め、どの宿守りたちも一切の禁忌なく話してくれているようだ。

 

「さっきもお尋ねしたんですが、その、俺のも、宿守りの皆さんのように、これ、でっかくなるんですか?」

 

 一応の解答は得ているのだが、朝熊君としてみるとかっちりとした答えがほしかったのだろう。自分のそれに手を添えて、水面に浮かす勢いでの質問だった。

 

「先ほどは変化します、とお答えしましたが、おそらくは西山様が思ってた以上の変化変容を感じることになられると思いますよ。もともと体格もよくあられるので、その分、かなりの大きさにまでなられるのではないかと。

 また、先ほどは逸物の長さと太さだけの計測でしたが、以前は湯治をされる方々の睾丸の大きさも測らせていただいていたのです。

 ただこればかりはふぐりの皮の厚さなどで正確さが阻害されたり、人によってはノギスを当てることで痛みを感じる方がおられたこともあり、今では陰茎のみを対象とする形へと変えました。

 それでも今回の期間中に、皆様ご自身でも『睾丸が大きくなった』ことを自覚出来るかと思いますので、そちらも楽しみにされておいてください」

 

 俺たち4人が互いに顔を見合わせてはにやにやと笑ってしまうのは、もうこの温泉にかなりの割合で『染まって』しまっていたんだろう。

 その時点でもう、ゆっくりと湯に浸かる宿守りたちの前に立ちはだかり、己の股間を見せつけたいような衝動にすら、俺は駆られていたのだ。

 

「身体も温まったようですし、あまり浸かってばかりものぼせてしまいますから、いったん上がって腰を下ろしてください。これから私たちがお身体を洗わせていただきます」

 

 文字通りの三助をやってくれるのかと、みなが湯船の縁に腰を下ろす。

 手ぬぐいで前を隠すものなど誰もおらず、いきり勃った逸物の先端からはお湯だけではない汁がすでに滴り落ちているかのようだ。

 

「東尾様と北郷様、洗い場の中央に向かい合って立っていただけますか」

 

 最初に指名を受け、豊後さんと間を取って向き合うことになる。

 

「お一人につき、2人で洗体のお手伝いをさせていただきます。肌と肌の触れあう心地よさをご堪能ください」

 

 俺には赤瀬さんと紫雲さん、豊後さんには緑川さんと茶野さんが付いた。

 2人が石鹸を丸太のような自分の肉体に擦りつけ、全身を覆う体毛で泡立てていく。

 黒々とした体毛に石鹸の泡の白さが際立ち、なんとも色っぽい眺めなのだ。

 

「タオルを使わず、互いの体毛で肌を洗います」

 

 宿長である四方さんの解説が淡々としてるがゆえに、その語られる内容にものすごい興奮を感じてしまう。

 俺も豊後さんも、そしてもちろん宿守りたちも、その股間のものはみな一様に固く勃起したままなのだ。ここに石鹸と温泉のぬめりを伴った刺激を受ければ、いったいどのような快感に襲われてしまうのか。

 俺の前には赤瀬さん、背中側には紫雲さんが、俺の肉体を挟み込むように近づいてくる。

 その2人の圧倒的な肉圧に、俺の身体は耐えられるのだろうか。

 

「いきますよ」

 

 赤瀬さんの言葉とともに、俺の全身が2人の分厚く毛深い肉体に包みこまれた。

 

「ああっ、あっ、あっ……」

「気持ちいいでしょう? 感じてもらうのは構いませんが、射精はしないよう、もしイきそうになったら言ってください」

 

 風呂場の熱気と温泉の蒸気にむせかえりそうになっている俺の脳髄に、四方さんの言葉が染み渡っていくのが分かる。

 

 どれだけの快感を感じようとも、イッてはいけない。

 

 その残酷とも言える命題を、俺の頭が何の違和感も無く受け入れていく。

 

 前後から抱きかかえられ、石鹸とアルカリの強い温泉の相乗効果でぬるぬると滑る肉塊が俺の肌に密着する。

 2人の肌と体毛が、ざらつきとぬめりの絶妙な重唱を奏でていく。

 

 首筋を、胸を、乳首を。

 背中を、腹を、股間を。

 

 全身が2人に覆われた俺の身体は、周囲からは頭だけしか見ることが出来なくなっていたはずだ。

 俺は酸欠になりそうなあえぎの中、2人の体毛と分厚い肌に、その全身をぬるぬると擦り上げられていく。

 

 なによりも興奮を誘うのは、正面で同じような刺激を受けている豊後さんの姿だった。

 茶野さんの大きな背中越しに見える豊後さんの顔が、普段のそれとはまるで違い、まさに快楽に蕩けているのだ。

 そしてその姿は、この俺もまた目の前の豊後さんと同じ表情をしているのだろうということを思い起こさせる。

 

「ああ、豊後さんの顔がいやらしい……。俺も、俺も、そんな顔、してるんですか……?」

「大和君、君の今にもイきそうな顔、見てるだけでたまらんよ。私も、このままやられたら、イッてしまいそうになる……」

 

 逞しく毛深い男たちにその肌で全身を洗われながら、目の前には快感に歪む男の顔がある。

 自分もおそらく同じような顔をしているだろうという予測は、腰掛けたまま我々の痴態を見つめ自分の股間に手を伸ばしている日高君、朝熊君の姿を見ても明らかだった。

 

「あ、あ、赤瀬さん、俺、俺っ、もう、イきそうですっ」

 

 ずるずる、ぬるぬると全身を刺激されながら、俺はもう発射寸前となっていた。

 射精はしないように、という四方さんの言葉が頭の中で繰り返されるが、絶え間ない刺激がその箍を外そうとしている。

 

「ここまでにしときましょうか。もう存分に身体は洗えたでしょうし」

 

 紫雲さんの言葉で、俺の裸の前の部分を担当していた赤瀬さんもついと身体を離す。

 全身への刺激を一度に失った俺の股間が、ぶるんぶるんと上下に揺れる。

 

「イくのは我慢してください。

 男としての精を、身体中に循環させるのも、またここでの湯治の目的の一つと思っていただくといいかと思います」

 

 宿長の四方さんの言葉が上気した頭に響く。

 促されるままに冷水を浴び、身体を覆った石鹸を流し落とした。

 

「次は若者お二人にいきましょうか」

 

 今度は茶野さんの指示で、日高君と朝熊君が向き合うことになる。

 2人とも、俺と豊後さんの痴態を見たためか、いきり勃った先端からは明らかに風呂の湯とは違う液体が糸を引いている。

 

 日高君の前後には宿守りの黄田さんと四方さんが、朝熊君には白山さんと茶野さんがスタンバイする。目と目で互いに合図をした宿守りが互いに丸太のような両腕を回し、その肉厚な肉体でぐいと2人を圧迫する。

 浴室の熱気とともに密着する肉体から発せられる体温に、若い2人の顔がすでに蕩けるように朱く染まっているのが分かった。

 

「ああっ、気持ちいい……」

 

 感極まったように日高君がつぶやく。

 

「これ、身体動かされたら、すぐに俺、イっちゃいますよ」

 

 朝熊君の台詞は偽らざる本心だったろう。

 体毛に覆われた巨躯に全身を覆われ、ぬるぬると密着した肌がなぶられる。その快感は、これまで日常生活で味わってきたそれとは天と地ほどの違いがあるのだ。

 

「あっ、それっ、そんなっ……」

 

 その朝熊君の声に目をやれば、後ろに回った茶野さんがその太く毛深い右腕を尻の間から足の間に突き入れ、前後にずりずりと動かしている。肘下の太さですら両手を回しても届かぬほどのそれが、石鹸と温泉のぬめりを借りて、尻の割れ目から肛門のあたり、蟻の門渡りを経て睾丸までを嬲っているのだ。

 

「ほら、まだまだイッちゃ駄目ですよ。もっと身体全身に陽の気を巡らせてください……」

「イ、イッちゃ駄目なんですよね……。あ、ああっ、でもっ、でもっ……」

 

 朝熊君を前から抱きかかえるようにしている白山さんが耳元で囁く言葉は、湯口からの水音が響く浴室の中なのに俺の耳にもしっかりと届いてくる。

 宿守りたちの言葉が頭に染み入るこの感じは、いったいなんなんだろう。

 白山さんの言葉に従おうとする朝熊君なのだが、肉体の反応は正直なようだ。

 

「ぼ、僕も、そんなされたらっ……」

 

 日高君も肉圧な2人に挟まれて、限界を迎えそうだった。

 彼らの若さでは、あんな全身に与えられる刺激に長く耐えることなど出来そうに無い。

 2人の痴態を目にしている俺も豊後さんも、知らぬ間にその手は肉棒を握りしめ、温泉のぬめりを幸いにとずりずりと扱きあげていた。

 

「ふふ、大丈夫ですよ、皆様。イくときには私がきちんとイッてくださいと言いますから、それまではほら、我慢出来るでしょう?」

 

 日高君を責めあげていた四方さんの声が響く。

 ああ、そうだ。宿守りが、四方さんが、射精していいと言わない限り、俺たちは我慢出来るはずだ。

 

「はい、私は四方さんが言うまで、射精を我慢します。どうにか我慢出来そうです。ああ、でも、イかずに扱くのも、とても気持ちいい……」

「お、俺も、四方さんが許可してくれるまで、我慢します」

「僕も、なんとか、なんとか、四方さんが我慢出来るって言ってくれて、踏ん張れそうです……」

「俺、俺、すごい、こんなやられてるのに、耐えてる。俺のチンポ、こんなやられても、なんとかセーブしてるっ!」

 

 豊後さんが先ほど見せたあの蕩けそうな顔を晒しながら返事をすると、俺も含めた湯治客全員から声が上がった。

 

「さて、洗体はここまでにしましょうか。石鹸をしっかり流して、もう一度湯に浸かりましょう。ああ、もちろん、汗をかいた分、柄杓2杯ほどの飲泉もお願いします」

 

 宿守りたちが手桶に汲んだお湯で何度も石鹸を洗い流す。

 あの甘い匂いに包まれながら、俺たちはひたすらに温泉を飲み、その湯に浸かり、全身から滝のような汗を流していた。