男性専科クリニック Part 5

その6

 

その6 再びの受診日

 

「あれからどうですか、村岡さん。心理的なこと、肉体的なこと、どんな小さなことでもいいので教えてください。また宮内さんから見て、村岡さんのどこか変化を感じることなどあったら、それも教えてください」

 

 村岡と宮内が初めて野村医師のクリニックを訪れた二週間後、再び受診をしたその日の医師の言葉であった。

 診療室の椅子に腰かけた野村医師が、そのでっぷりとした腹のラインを白衣に表しながら質問をする。

 マウスに添えた手の甲から腕へと続くその体毛の濃さが、旺盛な精力を感じさせていた。

 

「あ、はい、先生……。あんまし固くならんのはそのまんまなんですが、幾分か太さは増しとるんじゃなかろうかと、自分で思っておりますわ。なあ、寛もそう思わないか?」

「誘導尋問みたいなのは止めろよ……。そうですね、私が見てても、なんだか村岡が性行為のときも前よりリラックス出来てるのでは、という感じがしてきてます。もちろん、何が、と尋ねられると困るんですが……」

 

「いいことじゃないですか。お2人の時間が楽しいものへと、より深いものへと変化していくこと、そのことそのものが治療の目的でもありますしね。

 肉体的なものでは逸物の興奮時の太さが増してるような気がするとのことですが、では、心情の変化については具体的にどのようなものがありましたか、村岡さん?」

 

 医師の質問は、村岡と宮内の関係性を尋ねる意味もあるのだなと、横に立つ田畑看護師は見抜いている。

 

「その、寛とのアレでは何か具体的な変化があるわけでは無いんですが、なんかこの前の先生たちとのアレ以降、気持ちいいってのをもっと大っぴらに出していいんだなあと、その分、気が楽になった気がしとります。

 もちろんこれまでも2人でやるのは気持ちいいからこの年まで続けておるわけですが、なんだか『快感を声に出す』っちゅうのが、改めて『ええ』ことなんだなあと分った感じで……。

 ああ、それから昔から通ってる性感マッサージの店の人にも、『太くなってる感じがする』って言ってもらいましたわ。前とそう気持ちよさが変わるわけでは無いんですが、それでも言われると気持ちいい感じが強くなって、不思議なもんだと思っとります」

 

「おいおい、そこまで先生たちに言うんかい」

 

 宮内が横から突っ込むが、そこは腹を立ててる様子でも無い。

 実に赤裸々な話ではあるのだが、付き合っている宮内、最近知り合ったばかりのはずの医師と看護師の前でもこのような話がストレートに出来るのもまた、宮内が感じる村岡の魅力の一つでもあるのだろう。

 

「いやあ、そういうふうに言っていただくと、こちらも村岡さんの変化が分ってありがたいですよ。お2人の間でこのような、言わばあけすけな話が出来る間柄というのも、尊敬しています。

 宮内さんの方は、そのような村岡さんの変化をどうとらえておられますか?」

 

 医師の言葉に、宮内もまたまんざらでは無さそうだ。

 付き合い始めた当初から、オープンな付き合いを実践してきた2人であればこそのものでもあるのだろう。

 

「前回もお話させてもらったように、昭一と色々話しをしていく中で、完全に勃起していなくても快感は十分に味わえている、楽しんでくれているということは理解していたつもりでした。

 それでもなんだか、昭一が私とのセックスでより声を上げてくれるようになった感じ、イくときもこれまでもなんとなく太さを増してるような感じが、やはり嬉しいですね。

 固さの問題じゃ無いと分ってはいますし、お互いが楽しめればいい、それでもなんとなく、って感じではあるんですが……」

 

 宮内も言葉を選びながら話してはいるのだが、いつの間にか村岡を語る際の人称が変化していることには自分では気づいていないようだ。

 これもまた、医師と看護師に対しての信頼の表れなのか、宮内の中にあった垣根が少しずつ無くなっていっているのであろう。

 ゴルフ旅行の際の2回と、クリニックでの2回。顔を合わせた回数はそれほどでも無いのだが、医師の持つ大らかな雰囲気、田畑青年の人懐こさ、そのあたりがどちらかと言えば警戒心の高い宮内の心をほぐしてきていた。

 

「話しにくいことだったかもしれませんが、お2人の率直な気持ちを聞かせていただき、ありがとうございます。

 前回の診療後、温泉でのお2人の話や印象も参考に、今日の治療セッションを組み立ててみました。

 今日はお2人に、性行為におけるロールプレイを行っていただきたいと思ってます」

 

「ロールプレイ、ですか?」

 

 思わず宮内が返した言葉は、ある意味当前のものだったろう。

 ゲームなどでも使われるその言葉が、一定の役割を演じる行為ということは頭にあるのだが、セックスの場面でのそれが想像出来なかったのだ。

 

「なんか役割分担をすることですよね、確か?」

 

「ええ、そうです。

 前回のEVD(External Vacuum Device 陰圧式陰茎勃起補助具)を使ってのセッションでは村岡さんの勃起力や器質的な問題が無いかを診るものでしたが、あのときの村岡さんと宮内さんの会話、また温泉でご一緒させていただいたときに垣間見えたお2人の関係性について、少し思うところがありました。

 お2人の性生活において、前回の話にも出ましたが、宮内さんがいわゆる『タチ』、村岡さんが『ウケ』として、行為を楽しんでおられるという認識でいいでしょうか?」

 

 医師の質問はそこになんの含意も無い、まさに診療上の純粋な疑問から発せられていることが2人に伝わる。

 一瞬にして視線での会話を終えた2人。

 村岡が医師の質問に答え始める。

 

「そうですな。この前お話した通りで、その、寛がワシのケツに抽れるのがほとんどですわ」

「その場合、なんというか性行為の主導権そのものも宮内さんの方が握っておられるのかな、と考えているのですが、そのあたりはどうでしょうか?」

 

「ああ、はい、そうです。私の方が全体をリードするというか、なんというか……」

 

 宮内の答えは、当たり前すぎて困惑している様子を伝えてきていた。

 

「私と田畑君もおそらくそうだろうと判断していて、今日のセッションではそのお2人の間での『役割』を逆転させてみたいと考えています。

 これはこれからやる形がお2人に勧められる、というものでは無く、あくまで普段と違うシチュエーションで村岡さんの性行為に対する思いに変化が表れるかどうかの検証と思ってください。

 お2人の現在の関係性に問題があるとか、そういうものではまったくありませんので、とりあえず、新しい『やり方』にチャレンジしてみる、そのぐらいに考えてもらっていいですので」

 

 あくまで和やかに話しを進めていく野村医師ではあったが、要するに医師と看護師の目の前でセックスをするのだと2人が理解するのに、そう時間はかからなかった。

 

「先生、その、それってワシら2人が先生たちの目の前で、その、なんちゅうか、ヤる、ってことですかいの?」

「あ、そこを了解していただくのが先でしたね、すみません。

 はい、施術室でこちらの用意していただいた役割を実際にやっていただくことが、本日のテーマとなります。

 もちろん、お2人が恥ずかしく無いよう、前回同様、私たち2人も脱がせてもらいますので」

 

 にこにこと話す野村医師に、苦笑しながらも異は唱えない2人である。

 

「それでは、施術室に行きましょうか」

 

 田畑看護師の案内で施術室に向かう4人は、それぞれがこれからの行為に期待と興奮を隠せないでいたのだ。

 

「前回、治療セッションにあたっての注意事項を幾つか言いましたが、覚えておられますか?」

 

 確認をしているには違いないのだが、今日もまたクリニック内のルールとも言える幾つかの条項を印刷した紙が、田畑看護師の手から渡される。

 

 一、指示がないかぎり自分で自分の身体を動かさないこと

 一、意思疎通は、明確な言葉を持って行うこと

 一、その際に、相互に相手の名前を必ず呼ぶこと

 一、羞恥心を無くし、快感の表意や射精を我慢しないこと

 

 この『ルール』に従うことで自らの快感が倍増することを経験した2人にとって、あれからの自分たちだけでの行為においても、それらしき雰囲気を作りだしていた。

 クリニックの医師たちへの信頼感もまた、その実践によってもたらされた部分も大きいものなのだろう。

 

「風呂場以外のところで服を脱ぐというのも、なんとも恥ずかしいものですな。この前の『治療』を思い出して、もう興奮してしまいますわ」

「それはそれで、興奮されてるんじゃないですか、村岡さんも宮内さんも」

 

 村岡のつぶやきに軽く返す田畑であったが、その股間はこれからの時間への期待のためか、すでに天を突くほどの昂りを見せている。

 

「田畑君のそんな元気なのを見せられちゃ、興奮しない方がおかしいでしょうに」

 

 用意された籠にさっさと服を投げ入れた村岡が、うらやましいと言わんばかりの視線を田畑看護師に向けていた。

 己の逸物もじんわりとした熱は感じるのだが、まだそこまでの太さにいたっているわけでは無い。

 施術室のマットの上には真っ白なシーツが敷かれ、そこに横たわる者を準備万端で待ち構えていた。

 

「今日はこのルール、1点だけ変更があります」

 

 田畑看護師の言葉に首をかしげる2人。

 

「最初の項目、『指示がない限り、自分の身体を動かさない』という部分を、村岡さんについては外すことにします。宮内さんの方は、前回と同じルールに則って、行為を行ってください」

「それって、どういう……?」

 

 不思議そうに田畑看護師に尋ねる宮内。

 そこへ野村医師が割って入る。

 

「それについては私からお答えしましょう。

 今日は先ほどお伝えしたように、お2人に普段とは違う『役割』を持って性行為を行っていただくことで、非日常としての性体験をお2人に味わっていただきたいのです。

 よく言う『マンネリの打破』とでも思っていただいてかまいませんが、おそらくはお2人にとっても新鮮な快感を楽しめるのではないかと思っています」

 

「それってタチウケを交代するってことですかいの? ご存じの通りで、ワシの柔らかいままのチンポじゃ、寛に入れることも叶わんと思うんですが……?」

 

 村岡の質問も、もっともなものだろう。

 

「いえ、今日のセッションでは、狭い意味でのアナルに挿入する側、挿入される側、という『くくり』では無く、お2人の間での性行為について、瞬間瞬間の主導権をどちらが握っていくか、というところに着目しています。

 お2人のこれまでのお話を伺っている限りにおいては、いわゆる入れる入れられるという行為以外、たとえば相手の身体に触れる、愛撫する、ペニスをしごく、しゃぶる、などの行為において、村岡さんが受動的、宮内さんが能動的に動いているかのような印象を受けています。

 これを今日だけは完全に逆転させ、村岡さんが能動的、いわば責める側、宮内さんが身体を横たえたままでの受動的な立場で行為を行っていただきたいのです」

 

「ああ、ケツを使うっちゅうことでなくて、責め役と受ける役って感じのことなんですな! 確かに言われてみれば、寝っ転がったワシを寛が責めるのがほとんどになっとりますな……。付き合いだした最初は互いにやりあっとったんですが」

 

「はい、そのあたりの意識の変化をこちらも狙っているところです。もちろん私たち2人も黙ってみているだけでは切なすぎるので、途中からお手伝いさせていただきますよ」

 

 そういう野村医師の股間もまた、田畑看護師に劣らぬ勢いで勃ち上がっていた。

 

「では、宮内さん、そちらのマットの上に横になってください。宮内さんは村岡さんの愛撫に全身を任せて、あまり身体を動かさないように。あ、もちろん、他のルールは適用されたままですので、気持ちよさや快感は大きく声を出して、村岡さんや私たちの名前を呼ぶことは忘れないでください。

 村岡さんは宮内さんを感じさせるよう、色々と頑張ってみてください。言葉遣いや愛撫の仕方や順番も、普段の性行為にとらわれず、自由な発想でお願いします。

 その際にはルールにある相手の名前、今日の場合は宮内さんですね、をちゃんと声に出しながら、お願いします」

 

 田畑看護師に促され、宮内が仰向けにマットに横になる。

 野村医師と田畑君が宮内を挟むよう左右にどっしりと腰を下すと、村岡が宮内に半分のしかかるようにして、その子狸のような身体を沈めていく。

 

 この構図が前回の自分と逆のパターンだなと、村岡が気が付いたようだ。

 

「この前のワシと逆だな、寛……。キスから始めるぞ」

「ああ、昭一……。なんだか、ドキドキするな……」

「ワシもじゃ、いつもよりなんだか興奮しとる……」

 

 元々オープンな付き合いの中、複数でのプレイも経験のある2人にとって、医師たちの視線を浴びながらでの行いは興奮を増すものではあっても、羞恥心により快感を減ずるようなものでは無いようだ。

 最初のうちは、2人だけで楽しむつもりか、観察者である野村医師と田畑看護師が、まるでその場にはいないかのような、村岡と宮内の2人だけでの濃厚な時間が始まった。

 

「んぐっ、はあっ、あっ……。昭一のキス、気持ちいいよ……」

「寛、お前、乳首すごい立ってるぞ。いつもこんなだったけ?」

「こういうの久しぶりだし、野村先生や田畑君に見られてるかと思うと、なんか興奮する……」

「そこも同じだな。まずはじっくり責めさせてもらうぞ」

 

 お互いの唾液が唇の端から流れ落ちるほどの激しいキス。

 村岡の舌が、宮内の唇、前歯、軟口蓋を舐めまわし、ぬるぬるとした唾液の跡の面積を広げていく。

 ときにはその唇が宮内の顔を離れ、がっしりとした肉付きの胸の突起をちろちろと苛う。

 唾液を乗せた指先でそっと突起の先端をさすれば、宮内の全身が跳ね上がるような反応を示す。

 

「昭一っ、すごいっ! いつもより、感じるっ、感じるよっ!」

「寛、ワシもだっ! ワシのチンポ、握ってみてくれっ!」

「おお、いつもよりデカく、固くなってるぞ。俺を責めて、興奮してくれてるのか、昭一?」

「ああ、なんだかすごくいやらしく感じる……。寛がすごく、かわいく感じるんじゃ……」

「この年でかわいいとか言うな。そっちの方が恥ずかしいぞ」

 

 隠微な空気を醸し出しながら笑いさえそこに含まれる2人の会話は、付き合いの長さ、ともに過ごした時間の長さを表しているのか。

 笑っている宮内の脇腹に、村岡が舌を這わす。

 その軌跡が、さらなる快感を宮内に与えていく。

 

「村岡さん、宮内さん……。お2人とも、すごくいやらしいです……」

 

 見つめる田畑青年は、その右手はすでに己の剛直を扱き始めていた。

 手のひらを濡らす液体は、自身の先端から溢れ出る先汁だろう。

 

「村岡さん、久しぶりに宮内さんを責める側に回って、どんな感じですか?」

 

 野村医師が自らの全身を覆う黒々とした体毛をあちこちとさすりながら、上気した顔で尋ねた。

 

「正直、いつもより興奮しとります。ムスコもなんか固くなってるようで、こういうの、ホンマに久しぶりですわ」

 

「宮内さんの方は、いかがですか?」

 

「なんかもう、たまらないと言うか……。いつもは自分が『する側』だったのが、立場が変わるだけでこんなに違うとは思ってもみませんでした。その、『あんまり動くな』っていうのも、感じてしまってます……」

 

「村岡さん、宮内さんも楽しんでおられるようです。もっといやらしく、もっと淫乱に、宮内さんを責めてあげてください」

 

「ああ……。寛、もっと感じてくれ……」

 

 村岡の手が、それまで触れることの無かった宮内の股間へと伸びる。

 宮内の金玉が、ふっくりとした村岡の指先で撫で上げられた。

 決して性急で無い、焦らすようなその刺激は、村岡と宮内、ともに50代中庸の2人における人生経験そのものでもあるかのようだ。

 

「ああっ、そこっ、気持ちいいっ! 寛っ、玉がっ、金玉をそんなにされると、いいっ、いいぞっ!」

 

 そっと撫で上げるように爪先をすべらす村岡。そのテクニックはもしかすると、通っているあの性感マッサージのオーナーから学んだものであったのかもしれない。

 

「握るぞ、寛」

 

 それまで意図的に愛撫を避けていた宮内の肉棒を、村岡が握りしめる。

 溢れていた先汁がしとどに肉厚の手を濡らし、下腹部の茂みをしっとりと湿らせていく。

 

「あっ、昭一っ! それっ、ダメだっ、ダメっ!!」

 

 見れば扱き始めたかと思われた村岡の手のひらが、宮内の先端を包み込むような形で覆っていた。

 ローションのぬめりを湛えた手のひらを、亀頭の表面に添わせるようにぐちゅぐちゅと先端を捏ね回す。射精を促す動きとはまったく違う、いわゆる亀頭責めだ。

 

「あーっ、ダメだって、昭一、それ、ダメだってっ! おかしくなるっ、そんなことされたら、おかしくなるっ!!」

「おかしくなったらいいがな、寛。声上げてる寛、かわいいぞ」

「あっ、ああっ、イかせてくれ、昭一っ! 俺をイかせてくれっ!!」

 

 身をよじるしかない宮内が、背中を浮き上がるほどにそらせては、全身をびくびくと痙攣させている。

 連続した亀頭責めというこのおそろしいほどの快感地獄から抜け出すのは射精以外の何ものでもないのだが、クリニック内でのルールにより自分からは動けない宮内に取って、それはまた村岡の意思によってのみなされるということも確かな事実なのであった。

 村岡との、あるいは他の男たちとの行為において『責める側』であり続けてきた宮内からすると、純粋な亀頭責めを味わうことそのものが、非常に珍しいことだったのだろう。

 自らは幾度も相手を責め上げ、嗚咽と快感を引き出してきたそのテクニックを、宮内と、責める側に回った村岡双方ともに、この新しい関係がもたらす快感を存分に味わっていた。

 

「村岡さん、宮内さんをすぐにはイかせないでください。私たちも、混ざっていいですか? 出来れば4人一緒に射精出来ると、すごく感じるし、いやらしいんじゃないかと」

 

 野村医師の言葉は、責め続けられる宮内に取って、一体どのように聞こえたのだろうか。

 医師の頭には、先日自分が田畑青年を責め上げた、あの数時間にもわたる亀頭責めの記憶が残っている。

 それは田畑青年も同じであり、自分が受けた快楽責めを目の前で再び繰り返されるような感覚に陥っていた。

 

「もちろんですわ、先生。先生も田畑君も、寛を責めてやってください。ついでにワシのチンポもしゃぶってもらえるとありがたいですな」

「田畑君、村岡さんの許可が出たぞ。君ももう、待ちきれなかったろう」

「お2人のセックス見させてもらって、もうイきそうになってますよ。先生、僕、村岡さんのチンポしゃぶらせてもらいますね」

「じゃあ私は宮内さんの乳首と上半身を責めさせてもらおうかな。で、宮内さんは両手で私と田畑君のを扱いてください」

 

 横たわった宮内の周りが男たちの肉壁で囲まれてしまう。

 村岡は宮内の両足の間に陣取り、股間を集中的に責める算段のようだ。

 野村医師は自分の逸物を宮内の左手で握らせ、逞しい胸筋に浮かぶ乳首に舌を伸ばす。

 宮内の右手は看護師の股間をまさぐり、その持ち主である青年は村岡の下腹部へと顔を埋める。

 村岡として見れば、人数の違いはあれど、それはまた自らが命令しつつ行われた甚兵衛とのあの時間を思い出すものだった。

 

 一斉に聞こえ始めた4人の喘ぎ声は、誰が誰の責めに感じているか、瞬間の判断はもうなしえないほどの官能を秘めている。

 

「全身、全部気持ちいいっ!! 田畑君も、先生も、チンポギンギンで、すごいよっ!!あっ、先生、もっと、もっと乳首噛んでくださいっ! もっと強く、強く噛んでくださいっ! ああ、昭一にしゃぶられるのも気持ちいい! もっと、もっとしてくれえっ!!! もっと俺をいじめてくれっ!!!!」

「すげえ、寛、すげえぞ。いじられて興奮してるんか? 寛、いやらしいぞ! 先生も田畑君も、寛を責めて興奮してる。寛のチンポ汁も、すごく旨えぞっ!!」

「先生っ、宮内さんっ! 村岡さんのチンポ、すごい固くなってますよっ! 太いし、金玉デカいし、すごいですっ!!」

「田畑君、ワシ、興奮しとる! いつもより、すごく興奮しとるっ!!」

「村岡さん、いい兆候ですよっ! 村岡さんも、宮内さんも、もっと感じていいんですっ! 恥ずかしいとか思わないで、もっともっと貪欲に、快楽を貪りあうんですっ!!」

 

 互いに名前を呼び、快感を伝え合う。視界に入るすべての肉塊が自らの快感とリンクするこの感覚に、男たちが酔っている。

 それほどまでにすさまじい快楽の奔流が、施術室を怒涛のように埋め尽くしていく。

 

「昭一っ、俺っ、もうイきたいっ! もう、我慢出来んっ、イかせてくれっ!!」

「宮内さん、待ってくださいっ、村岡さんも、みんなも一緒にイきましょうっ!」

「寛っ、ちょっと、ちょっとだけ待てっ! 田畑君、もっと、もっとワシのを扱いてくれっ! このまま扱いてくれたら、イけそうなんだっ!!」

「すごいですっ! 村岡さんのっ、がちがちになってるっ! こうですか? こんな感じでイけそうですかっ?」

「いいぞっ、田畑君! それ、いいっ! もっと、もっと強く握ってくれっ!!!」

 

 男たちの最期が近づいてきた。

 野村医師と田畑看護師、宮村にいたってはもういつでも射精が出来る状態へと高まっていたのだが、村岡のペースに合わせようとそれぞれが必死にこらえている。

 

「ああっ、イけそうだっ! 田畑君、もっと、もっとっ!!」

 

 村岡の肉体も射精へのカウントダウンが始まったようだ。

 4人の男たちが、それぞれ扱く相手、しゃぶる相手をイかそうと、さらにその手と唇に力を込める。

 最初は田畑看護師の力強いストロークを味わい続けた村岡だった。

 

「おおおおっ、イくぞっ、田畑君っ! イくぞ、イくぞ、イくっ、イくっーーーー!!!」

「僕もイきますっ、ああっ、宮内さん、すごいっ! 気持ちいいっ! あっ、出るっ、出るっ、出ちゃいますーーーーー!!!!」

「俺もイくっ、あっ、あっ、昭一の口の中にっ、イくぞっ、イくっ!!!!!」

「私もっ、私もっ、出しますよっ! ああっ、宮内さんのっ、宮内さんの顔にかかってしまうっ! ダメだっ、出るっ、出るっ!!!」

「野村先生っ、かけてくださいっ! 俺にっ、俺の顔にかけてくれっ! 先生の精子っ、かけてくれっ!」

 

 互いが互いの名を呼び合いながら、その色、粘度、量に違いはあるものの、あの独特の匂いだけは共通となる粘液が、それぞれの先端から噴き上がった。

 村岡は宮内の雄汁を舌の上で味わい、野村医師は宮内の顔面に大量に汁を飛ばす。

 田畑青年は宮内の手からだらだらと白濁した汁を垂れ流し、同時に村岡の勃ち上がった肉棒からの汁を舐めとる。

 

 施術室中に、またあの匂いが充満する。

 その馥郁たる香りの中、男たちがそれぞれの肉体を抱き締めるように手を回していた。

 

 初診の際とは違い、村岡と宮内はもちろんのこと、クリニック側の野村医師と田畑看護師もまた、大量に雄汁を噴き上げた後、飛び散った誰のものとも分らぬ雄汁を舐め合い、口に移してはその味を楽しんだ4人。

 十分に余韻を楽しみながらも、異様な興奮に包まれた時間が過ぎ去ると、それまでは感じなかった照れのようなものが芽生えてくる。

 

「さすがに4人分だと、すごい匂いですよね、先生」

「ああ、ここまでのはうちの治療の中でも久しぶりだったな、田畑君……」

 

 看護師である田畑と医師の会話に、宮内が割り込んでくる。

 

「久しぶりって、たまにはあるんでしょう、こういうの。温泉のときの山崎さんと西田さんともやっておられるのは間違いないでしょうし、確かあのときは他の先生の名前も出ていたような……」

 

「はは、よく覚えておられますな。村岡さんの治療が進んでいけば、西田さんや山崎さんとの合同セッション、さらに私の先輩でもあり同じ研究に携わっている別の医師の取り組みに、村岡さん宮内さんもぜひ加わってほしいと考えてます」

 

 医師の言葉は言外に今日の治療はここまでという意味も含んでいたようだ。

 田畑看護師がみなに温めたタオルを配り、互いの肉体にまといついていた体液を拭き上げていく。

 シャワーを浴びた方が早いのだろうが、特別診療日だった今日はもう他の患者はおらず、休みを取っている村岡たちも後は宮内のマンションに帰るだけである。

 野村医師としても、それぞれの身体から漂う互いの雄汁の残り香を楽しもうとの魂胆もあるようだった。

 

「なんかそんな感じがしていたんですよね、温泉のときから。なあ、昭一も、かなりそそられてるだろ、あの2人?」

 

 着替えを済ませた宮内が、医師たちの前で村岡に声をかけた。

 

「ああ、そんな気はこの前のときからしとったな。ただ、先生。温泉のときのお2人さん、ありゃあワシらみたいに元々の男好きってわけじゃ無い人たちなんじゃないんですかね?」