男性専科クリニック Part 2.5

その5

 

05 リングに挟まれて

 

「さて、この後のセッションの説明をしておきますね。山崎さん、リングで大丈夫とは思いますが、もし萎えてしまいそうなら、少ししごいたりして刺激してあげてください」

 

 へそに付きそうな、という言葉がそのまま具現化したような勃起をさらしたまま、田畑君が冷たい水を用意してくれ、ベッドから下りた私を含め、三人がまたマットの上で車座になる。

 よがり声を上げ続けた喉に、冷水が心地よい。

 

 野村医師も田畑君も、そう自分でしごいているようには見えないのだが、先ほどからずっとおっ勃ったままなのが、実にうらやましい。

 私のものはといえば、リングのおかげか一向に萎える様子もなく、より強い刺激を求めてゆっくりと頭を上下に揺らしていた。

 最近の射精では最大限に固くなったと思った瞬間にイってしまうことばかりで、臍下からの下腹部に隆々と勃ち上がった充実感を、こんなに感じるのは実に久しぶりのことだった。

 

「山崎さん、EVDで最大限に大きくした後のリング、どんな感じですか?」

「コックリングって初めてなんですが、こんなに気持ちのいいものとは思いませんでした。ちょっとした刺激で、もう、ああってなってしまって」

「初めてなら余計にそうですよね。僕達もたまにつけて楽しむんですが、あの独特の皮膚感覚が敏感になる感じ、くせになりますよね」

「ただ、付けたままだとちょっと心配で……。血が通わないってことだと思うんですが、大丈夫でしょうか?」

 

 野村医師や田畑君の様子から問題は無さそうだと思うのだが、心配を抱えたままでは楽しめないかもと質問してみる。

 

「ああ、施術前にちょっとお話ししたことの追加になりますが、そのことも説明しておきますね」

 

 野村医師が、語り出す。

 

「通常、セックスのためだけのリングだと、吸引後の大きくなった竿の根元に、山崎さんに装着しているものよりずっと締め付けの強いものを付けて、勃起を維持するんですよ。

 ただ、そのリングの締め付けだと山崎さんが不安に思われたように、血流への障害が大きくて、30分を限度にして外さないといけません。

 うちのクリニック、特に今日のような特別診療の場合にはより長時間の勃起維持の必要性を感じていて、私や田畑君、外部の先生にも手伝ってもらって考案したのが、山崎さんにやってもらってる、この2重リング装着法です。

 これはペニスの根元には幾分緩めのリング、それでもちゃんと山崎さんの計測データを元にして計算されたものです、をれを填めた上で、局部全体を締め付ける2つ目のリングを装着することで陰茎茎部の血流を一定確保しながら、長時間の勃起を継続出来るよう開発した方式なんです」

 

「確かに痛みとかなくて、気持ちいい、の方が先に立ちます」

「そこのバランスを取るのが難しかったんですが、元々の山崎さんのペニスが勃起したときの竿の直径や弾性係数、皮膚の状態などのデータを確認した上で、シリコンリングのサイズ、強度、リング径などを決定しています」

 

 滔々と語る野村医師の言葉はどこか誇らしそうだ。

 

「あ、これってシリコン製なんですね、てっきりゴムかと思ってました」

「ゴムはラテックスアレルギーある方もあって、最近のリングはシリコンや皮膚反応の少ない金属を利用したものになってますね。リングもミリ単位で直径指定出来る業者さんがなかなかなくて、探すのに苦労したものですよ」

 

 的外れな質問をしてしまったかな、とも思ったのだが、そこにも誇るべきポイントがあったようで、それなりにいい質問だったのかなと思い直す。

 

「性的刺激を感じたとき、身体の中ではまず精管や精巣上体、前立腺が収縮します。

 このときに睾丸とペニスをまとめて締める2つ目のリングによって、それらの動きがよりダイナミックに感じ取れるようになります。

 これらは通常、射精によってその緊張が緩和されますが、リングによって勃起が継続し、さらにその射精前の分泌腺等の収縮を快感としてより長い時間、楽しむことが出来るようになってるんです」

 

 専門的な話ではあるのだが、私が感じているこの快感は必ずしも精神的なものだけではないということは分かる。

 自分の身体の中で起こっていることが気持ちのよさに繋がるということは、どこか新鮮な知識だった。

 

「その、今日は長い時間楽しむためってのリングとのことですが、この後はどんなことをやるんですか? いつもならお二人にイかせてもらう感じかなと思いますが……」

 

 医師の話も一段落したようでもあり、一番気になったことを尋ねてみる。

「ああ、そっちがメインの話の予定だったんですが、脱線してしまいました」

「あ、いえ、勉強になりました」

 

「今日のこれからのセッションは、これまでに無い、新しい取り組みをやってもらおうと思ってます」

「新しい、ことですか?」

「ええ、今日の診察の最初に山崎さんから聞いたここ最近の様子から、山崎さんの性に関する自信を感じていただくこともより必要だと、プログラムを予定していたものから変更させてもらいました。

 これから田畑君の身体を使って、これまでの私達に「イかせてもらう」という受動的な体験と違う、山崎さんに主体的に取り組んでもらうセッションにしたいと思ってます。

 

「ええっと、どういうことを……?」

「ははは、田畑君、どうしようか、君の口から説明するかい?」

「えっ、先生ったら、それはちょっと恥ずかしいですよ」

「それだけ元気に勃起して先走りまで垂らしてるのに、恥ずかしいもなにもあったものでは無いと思うんだがね」

「それは先生だって同じじゃないですかー」

 

「まあまあ、田畑君からは難しそうなので、私の方から説明しておきます」

「はい、お願いします」

 

 私と田畑君二人がメインとなるプログラムなのか。

 どんな内容なのかと、肉感的な看護師のむっちりとした身体付きを視野に納めながら、ドキドキしている私だ。

 

「ここでは、山崎さんが主体的に性的な快感をコントロール出来るという自信を持っていただくことを主眼に進めていきます。

 そのために、山崎さんには田畑君の肉体を自由に愛撫してもらって、彼の性感をコントロールし、最終的に山崎さんがイかせたいというタイミングで彼の射精を導いてもらう、そういうセッションとなります」

「ええっ、それって私が田畑君をしごいてイかせるってことですか? いや、嬉しいですけど……」

「性感をコントロールする、っていうのがここでは大事なポイントなんですよ。そのため早くイかせることを目的とするのでなく、田畑君の状態を観察しながら射精直前での寸止めを何度も繰り返してください。

 最終的には山崎さんが『イかせたい』『イってほしい』タイミングで田畑君に射精をさせてもらい、それが田畑君の満足になればとてもいい結果になるかと思います」

 

 野村医師の話を聞いているだけで、勃起したままの私の逸物がビクビクと痙攣するように頭を振る。

 

 この私が田畑君をよがらせ、寸止めをし、快感に喘ぐ彼を翻弄する。

 最後には若い雄汁を噴き上げさせるまでの昂ぶりを堪能させる。

 いやらしかった。

 想像するだけで果ててしまいそうなほどに、いやらしいことだった。

 

「山崎さん、興奮してくれてますよね」

 私と一緒に野村医師の話を聞いていた田畑君が話しかけてくる。

 軽く手を当て、自らの肉棒をゆるくしごいている青年の姿は、日焼けしたその肌をさらに赤く染め、若者らしい純朴さと健康的な色気がまぶしいほどだ。

 

「先生から聞いたときには僕も驚いたんですが、山崎さんに責めてもらってイけるなんて、もうそれだけで僕、最初から興奮しちゃってるんですよね」

「打合せでプログラム変更伝えたときの彼、喜んでるはずなのに最初は断ろうとかしようとして、素直じゃ無かったんですよ」

「先生、あれはその、やっぱり恥ずかしいじゃ無いですか-」

 

 私のようにしがない中年男にこれだけ行為を持ってくれている、そのことだけでも嬉しいことなのに、ともに射精を伴う快感を分かち合えるというのは、なんというか、感動に近いものがある。

 

「これまでの治療でも、私や田畑君のものをしゃぶってもらったりしごいてもらったりで、私達も山崎さんと一緒に射精してたわけですが、今回は特に、何度も寸止めし、快感に対して山崎さんが主導権を持ってコントロール出来るようになることが目的です。

 田畑君の射精のタイミングをうまくコントロールして、二人の気持ちが1つになった瞬間にイけるよう、頑張ってみてください。

 さらに途中では山崎さんと田畑さんの役割を交代し、『責められる快感』『快感をコントロールされる快感』を山崎さんにもじっくりと味わっていただきます。

 このときは私も参加させてもらって楽しませてもらいます。これは山崎さんに対し、今までの治療でもやってきた『受動的な快感獲得』を強化するものでもあります。

 十分に相手に与える快感、与えられる快感を堪能された後に、田畑君をイかせてあげてください。

 もちろん、田畑君が気持ちよくイった後に、山崎さん御自身にもいつも通り気持ちよくイってもらおうと思ってますので、ご心配なく」

 

「あ、は、いや、心配はしてなかったんですが、なんというか、大役を任された気分で緊張しますね」

「その割りには、山崎さんの股間はギンギンのままですけど?」

 

 野村医師の言葉に、笑いとともに、私の逸物の先端、ぷくりと膨らんだ鈴口から大量の我慢汁がまたもや噴き出てしまった。

 

「では、始めましょうか」

 

 いよいよ、私と田畑君による、新しいセッションが始まるのだ。