男性専科クリニックPart2

その2

 

第二のセッション

 

「よく出来ましたね。ここをクリアすれば、後は自然な流れで進むことが出来ると思います。山崎さん自身は、今のセッションを終えてどんな感じでしたか」

 野村医師がメガネの奥の柔和な目を細めながら聞いてくる。

 

「最初は緊張していたんですが、先生の裸を抱き締めたときにどっか吹っ切れたみたいでした。田畑君のでかくなったのが腰にあたったときは、うらやましいとさえ思っちゃいましたよ」

「さすがに若いだけあって田畑君は元気ですからね。山崎さんのも少し大きくなってきてるみたいだし、次のセッションに進みましょうか。田畑君、山崎さんに説明を」

 

 田畑君が説明する第二のセッションのスタートは、西田が横たわった私の全身をマッサージすることから始まるらしい。

 

「ここからは予定していた通り、西田さんが直接の治療者として動いてもらうことになります。山崎さんは最初に伝えたルールを思い出してください。自分で動いたら駄目、言いたいことは声に出して伝える、快感を我慢しない、この三つを必ず守ってください。

 では山崎さんはマットにうつぶせに。その際に股間のものは下向き、そう、足側に向けておなかで圧迫しないようにしといてください。

 西田さんも前回の個人治療のときに説明したことを思い出してもらってあの順序でお願いします。だいたいの手順を覚えてもらってれば大丈夫ですし、分からないときには僕が補助しますので」

 

 西田の方はマッサージのやり方をすでに教わっているのだろう。こちらは言われた通りに逸物を足側に向け、丸く出た腹がつぶされながらもマットの上に横たわった。

 私の左側に西田、少し離れて野村医師と田畑君が陣取った。

 

「始めてもらっていいですよ。西田さんは山崎さんの名前を呼びながらやっていきましょう。山崎さんはその都度西田さんに答えながらマッサージを受けてください」

 

 西田がその分厚い手のひらで、うつぶせになった私の背中を柔らかくさすりはじめた。

「山崎、おまえの背中からマッサージしていくぞ」

「西田、頼む」

 

 手のひらから感じる体温は、ここしばらくは味わうことの無かった人の温もりを思い出させる。

 山崎、西田と名前を呼び合いながらの筋肉をやさしくほぐすようなその動きが、背中から尻、太股の裏側へと身体を一回りすると全身とろけるように暖まってきた。

 西田の両手が再び肩へと戻る。私の緊張が解けたのを感じとったのか、その手がこれまでのマッサージとは違う動きを見せ始めた。

 

 それまではゆっくりとさするような動きをしていた手のひらは、背骨に沿って爪立てた指先をすべらせ、私の少しばかり垂れた尻肉を円を描きながら揉みほぐしてくる。

 それは明らかに私の快感を煽り立てるような、まさに愛撫と呼ぶにふさわしいものだった。

 

 傍らでマットにあぐらをかいた野村医師が声をかける。

「山崎さん気持ちがいいですか。気持ちがいいんならそのことを西田さんの名前を呼んできちんと伝えてください」

 

 男同士だからこそのツボを押えた西田のテクニックは、確かに感じるものだった。さすがに十年来の友人に快感を伝えるのも恥ずかしいものだったが、それでも医師の言うことだと思い小さな声でささやいてみる。

 

「西田、ああ、気持ちがいいよ」

 するとどうだ。

 西田への気持ちを口にした途端に、全身で味わうその快感が何倍にも跳ね上がったのだ。

 言葉として表現することで自分自身の中での快感のイメージが幾層にも重なり合い、普段の生活ではまるで感じたことの無い大波となってやってくる。

 

「そう、その調子もっと大きな声で」

 野村医師が更に声をかける。

 

「ああ、西田、いい、気持ちいい、感じるよ」

 うつぶせのために顔を見られていないという安心感からか、いつのまにか私は喘ぎ声を上げてしまっていた。

 それはまるで女とのセックスのときのような、いや今ではそちらの快感が記憶の大部分を占める野村医師と田畑君との禁断の行為のときのような、自分でもいやらしいと思えてしまうような声だ。

 あの機械を使って、屹立した自分の肉棒から精液を吸い出される。その瞬間を待ちわびるような声を、私は西田に向かって上げ始めたのだ。

 

 総毛立つような感覚を味わうのと同時に、今まで腰の下で足側に押えつけられていた私の肉棒が急速に形を変え、その角度故に痛みまで感じ始めてしまっている。

 思わず手を伸ばし肉棒を上向きにしようとしたが、身体を動かさないというルールがその行為を押し止めた。もはや勃起しきった肉棒は、こちらが西田の手の動きに身体を反応させる度に糊の効いたシーツに押し付けられてしまう。

 喘ぎながらも腰を浮かし、少しでも痛みを和らげようとする私に気付いたのか、今度は田畑君が声をかけてきた。

 

「山崎さん、ほら自分で身体を動かしては駄目って言ってあるでしょう。腰を浮かしてどうしたんですか。何か西田さんに言いたいことがあるんでしょう。声に出して頼んでみてください」

「勃起したチンポが痛いんでしょう? 西田さんにどうしてほしいかちゃんとお願いしないと、これ以上セッションが続けられなくなりますよ」

 田畑君と野村医師が、私の心中を見透かしているかのように次々と声をかける。

 

「西田、おまえのマッサージで俺のチンポが勃っちまって痛いんだ。その、チ、チンポの向きをお前の手で変えてくれ、頼む、頼むよ」

 なんとスケベなことを、いやらしいことを私は口に出しているのだろう。

 その思いが更に快感を倍増させる。

 

 西田が分かった、よく言ってくれたと答える。

 私の腰の下に右手を差入れ、おそらくは真っ赤に腫れ上がったチンポを握り締め何とか上向きにしてくれる。肉棒の先端がシーツに擦れる感触にこれまで以上の快感をと期待したそのときだった。

 

「はい、そこまで。西田さんはいったん離れてください。山崎さんも起きてもらっていいですよ」

 

 今の私にとっては残酷な野村医師の声が、施療室に響いた。全員が素っ裸とはいえ、勃起しきった肉棒を皆の前に晒すことになる恥ずかしさに真っ赤になりながら、私は横たえていた身体をゆっくりと起こしたのだった。

 

 しかし、顔を上げた私の前には、そんな恥ずかしさも吹き飛ぶかのような、さらに興奮を誘うような光景が展開していたのだ。

 

 西田も野村医師も田畑君も、その場にいる全員の肉棒が剥け切った亀頭を膨らませ、あぐら座の各々の茂みからむっくりと勃ちあがっているのだ。

 

 よく見れば、野村医師と西田はまだまだ余裕があるようだが、さすがに若い田畑君だけは見ているだけで興奮したのか、亀頭の先端に露まで浮かべている。

 普通に考えれば4人の男達が素っ裸で肉棒を勃起させているという姿は、実に異様なものなのであろう。それでも、そのときの私にとっては、何もかも信頼しきった男達同士の愛情が感じられ実に心地のよいものであったのだ。

 

「少し喉がかわいたな。田畑君お茶でも入れてくれないか。一服して下半身を少し落ち着けましょう」

 野村医師の言葉に臍まで反り返るようにおっ勃った肉棒を隠しもせずに揺らしながら、田畑君がお茶の準備をしにいった。

 

「今のセッションでは山崎さんが自分に触れている西田さんをきちんと認め、それを声に出す。そのことで自分の快感が誰に由来するものかを山崎さんご自身の中で確認する作業として行なったものです。山崎さんの方も声に出すことで、より快感が深まったはずですが、どうでしたか」

 田畑君が煎れてくれたコーヒーを飲みながら、野村医師が話し始めた。

 

「その通りでした。もちろん治療だと思って遠慮は捨ててたんですが、声に出して西田を呼んだ瞬間に気持ちよさがぐっと違ったんです。でもチンポの向きを変えてくれと頼めって、先生達もすごい指示を出しますね」

 

 私が照れながら言うと、田畑君が分かりやすく言葉を選びながら説明してくれる。

 

「あれは山崎さんに、自分の勃起したぺニスをしっかり意識してもらうために言ったんですよ。

 もちろんマッサージしてる西田さんのテクニックで大きくなるだろうということは、予想してましたから、わざとチンポを下向きにうつぶせになってもらってたんです。

 ああすることで、山崎さんが自分のチンポが勃ったことを明確に意識するし、しかもその痛みを西田さんが解決してくれたことがより鮮明になるでしょう。元々あれも先生のプログラムの一つですし、僕が意地悪したんじゃないですからね」

 

 田畑君の話に野村医師がうんうんとうなずきながら話しを続ける。

「山崎さんも照れなくていいですよ。最初に恥ずかしがらないことって言ったでしょう。それに西田さんがこのセッションを受けられたときなんか、山崎さんよりすこし状態がよくなってたときだったせいか、別の患者さんがさっきみたいに向きを変えようとチンポを握った瞬間に、ああって声出して射精しちゃったんですから。

 確かあのときは治療が終わるまでに西田さん、三回ぐらいイッちゃったんじゃなかったですかね」

 

「先生、山崎にばらすのは止めてくださいよ。ただでさえ友達のこいつとこの治療やってるのが恥ずかしいんですから」

「ほらほら、西田さんの方も治療目的があるって最初に言ったでしょう。自信をつけさせるためにやるんだから、最後まで堂々とやってください」

「はいはい、せいぜい山崎のためにがんばりましょう。それにしても人使いの荒い病院ですな」

 西田のひょうきんな受け答えに、みなが一斉に笑った。