冬の夜話

 

 俺は田山浩平、37才。この村に越して来て2度目の正月を迎えることになる。入村当初はめんくらった、男同士の肉の交わりで団結をはかるというこの村の風習も、今ではそれ無しには過ごせないほど167センチ88キロの身体に染みついてしまった。

 

 俺が主役を務めることが出来なかった去年の金精様の秋祭りについて、青年団の世話役でもある良さんにはこれまでも色々聞き出そうとしたのだが、なかなか理由を言ってくれなかった。良さんは青年団の一番の年長者で、不慣れなこの俺にも畑仕事や村のしきたりなども親切に教えてくれる。年の近い信治さんと並んで、俺がこの村で世話になってる人の一人だ。
 去年の秋祭りでは「男揺らし」と呼ばれる儀式に、当然新参者の俺が選ばれると思っていたのだが、良さんはじめみなの「浩平にはまだ危なかけん」という言葉で、結局は信治さんが勤めあげたのだった。
 男揺らしの儀式とは、台座に固定された「金精様」と呼ばれる張り型を尻穴に納め、前後に揺さぶられる刺激だけで雄汁を噴き上げなければならないというすさまじいものだった。
 確かに鍛えられた尻穴と揺すられただけでイッてしまうほどの感度の良さが前提となるのだろう。だが、この村で過ごした一年半近い年月の中で青年団の連中にさんざん鍛えられた俺の尻穴でも、何とかなりそうなものだ。それなのに村の連中は、俺が意気盛んに童男役をやらせてほしいと頼んでも先述の「危なかけん」を繰り返すばかりだったのだ。

 

「浩平さん、おるかな」
 玄関の方で声がしたかと思うと、すでに良さんが勝手知ったるかのように上がり込んできている。一人での正月も寂しかろうとおせち料理を持ってきてくれたのだが、嫁取りの話題でうるさい我が家から逃げ出し、俺と正月から一発やろうと思ってきていたのは、スケベそうに目を細めたその顔からも一目瞭然のことだった。

 

 良さんと二人きりで飲むのも久しぶりだった俺は、今日こそ俺がやれなかった男揺らしの儀式のことについて聞き出そうと、良さんのコップに焼酎をつぎ足した。この後の楽しみのことも考えて、ストーブを最強にし部屋を暖める。焼酎を二人で6合ほど空けたところだったろうか。ようやく良さんはその顔を赤く火照らせながら、さも秘め事を話すようにしゃべり始めたのだった。

 

「理由てわけでもなかばってん、半年ぐらいじゃまーだ金精様は受け入れられんとたい。おったいのこまか頃ん昔はな、あん頃はもう若っかもんからみんな、若衆宿に泊まりよったけんなあ・・・」
 独特の方言で語られる良さんの話はこの村独特の風習を伝えるべく、今からもう30年以上の昔へと遡っていった・・・。

 

 

 当時のこの村の子ども達は、男は精通、女子は初潮を迎えるまでは子ども組という男女一緒の集団で過ごしていた。いずれその時期を迎えると男組、女組という若年組織、いわゆる青年組での身分の預かりとなる。
 男女とも結婚までを各々の組で共同生活をしながら過ごすことになるのだが、良さんの時代でもすでに女組は名ばかりのもので婦人会に吸収されていたと言う。男組の方はと言えば、俺自身も加わっている今の青年団が、行政的な集団に名を借りて昔の風習を残す集団として機能しているのだ。
 良さん達が小さかった頃には、男組の中で一人前になるための様々な通過儀礼があったのだという。金精様の祭も昔はその一つであり、白沢さんの権立と同じく、成人を迎える少年のための儀式だったらしい。

 

 男組へ入った少年は、若衆宿と呼ばれる集会所で村の男達と寝起きを共にするこになる。
 この宿に来る大部分の連中は、下着を汚した我が子の精通を知った父親に、「ウチのをよろしく」と連れてこられるのが普通だ。夢精を経験したばかりの多くの少年は、自分の欲望の矛先も決まらぬうちに、精力溢れる男達の集団の中へと放りだされてしまうのだ。

 

 良さんが初めて若衆宿へと顔を出したのは13のときだった。前の晩、下着を濡らしてしまったのを親に見つかり、訳も分からないまま、今日からはここで寝ろと連れてこられたのだった。
 宿で迎える始めての夜は、少年に取って大人の世界に踏み入れる第一歩だ。そしてその夜から少年は、年長の者から挨拶の仕方や礼儀作法などを教わり、村の貴重な労動力として体力と精神力に溢れた男へと育てられていくのだ。

 

 男組の連中は自宅で夕飯と風呂を済ませ、八時ごろには宿に集まってくる。当時は中学高校を卒業すると、ほとんどのものが村を出てしまい、宿に残っている連中は良さん以外には10代はおらず、20代後半から30代の連中ばかりだった。
 良さんは久しぶりの新入りということで、一人一人の先輩達に大声で挨拶をさせられた。たった一人の中学生は回りの男達から、やれ声が小さい、はきはきせいと口をきく度にどやされ、生きた心地がしなかったと言う。
 一通りの自己紹介が終ると、一番年嵩の男が良さんにこう言ったというのだ。

 

「良もここで一人前の男にしてやっけんな。昨日初めて汁ば出したっだろばってん、寝とっときのことだけんよう分からんかったろたい。おったちが男同士の本物のせんずりば教えてやっけんな。おったちも脱ぐけん、良も全部脱いで素っ裸にならんな」

 

 良さんも歩きでは40分ほどもかかる中学での上級生などから、せんずりをすると自分のものから子種が出てくるらしい、ということぐらいは聞きかじっていた。しかし、それはあくまでこっそりと話題にするようなもので、大勢に囲まれた中で皆と一緒にやるようなものではないと、話題の雰囲気から察していたのだった。
 そんな思いもあって恥ずかしさから服を脱ぐのをためらっていると、周りの男達が「何ば恥ずかしがっととか」と、よってたかって良さんの服をはぎ取り、一糸まとわぬ姿にしてしまったのだ。

 

 男達は良さんの着物をすっかり脱がすと、自分達も服を脱ぎ捨て素っ裸になる。農林業で鍛えられた男達の肉体は年端もゆかぬ少年にとって、憧れの的であり、自分も男らしさの匂いたつような肉体になりたいという目標でもあったのだ。
 風呂は済ませてきているとはいえ、十五人ほどの男達の裸体からは、紛うことのない雄の匂いが撒き散らされる。性感を揺さぶるその匂いの中で、少年はこれから自分の肉体に加えられるだろう行ないを、どこか期待さえ込めて待っていた。それは羞恥とともにどこか淫靡な感情をも感じさせてしまう光景であったのだ。

 

 洋一さんと皆に呼ばれている男が良さんを手招きした。洋一さんは当時としては大柄な太った男だった。恥ずかしさにうつむいていた良さんにも、男の黒々とした茂みからでろりとぶらさがった肉棒の太さが分かるほどだったという。
 洋一さんは壁にもたれて腰を下ろすと、良さんを抱き抱えるように自分の股ぐらへ座らせたのだった。自然、良さんは洋一さんに後向きに抱かれるような姿勢になり、両足は投げ出すように伸びている。その姿は回りを囲む男達にとって良さんの下半身から快楽に喘ぐ表情まで、すべてを見せつけるような格好だった。
 良さんの背中が洋一さんのたっぷりとした腹に押し付けられる。その体温が心地よく、自分の尻肉の間に感じる肉棒の感触も、どこか懐かしいものにさえ思えた。年の離れた兄貴ほどの男に抱かれた良さんにとって、その大きな肉体から得られる安らぎにも似た心地よさが全身を緩ませてしまう。良さんの緊張が解けた頃合を見計らってか、洋一さんが声をかけた。

 

「今から良三の筆下ろしば始むっけんな。みなも良三ばようと楽しますっごて、がま出さんばいかんばい」
 この言葉が合図になったのか、三人の男が前に進み、良さんの目の前で立ったままのせんずりを掻き始めたのだ。
 成熟した男達が己の肉棒を一斉に扱き上げる。これだけでも少年にとってはショックであるのだが、男達に取っては雄汁を潤滑油として利用するための下準備に過ぎないのだ。

 

 男同士の行為を少年に覚えさせるには、より深い快感を与えねばならない。良さんの話しによれば、この最初の日にこれから味わう男同士の交わりのほとんどを体験させられたのだと言う。せんずりの経験すらなかった少年の肉体に、男の生理を熟知した手練の男達が、潤滑油のぬめりや尻の穴の快感をも教え込んでしまうのだという。その最初に味わう強烈な快感こそが、この村の男達を男同士の肉の交わりに引き込む麻薬のようなものになるのだということだった。

 

 しばらくして射精した男達の汁は朱塗りの杯に溜められ、洋一さんの手に運ばれる。洋一さんはどろりとした液体を良さんの肉棒へと垂らし、ざらついた厚い手でぬるりと握ってきたのだ。
 他人に初めて扱かれたときの快感というものは男なら誰でも経験があるだろう。その総毛立つような快感が、初めてのせんずりの心地よさと渾然となって少年を襲うのだ。
 あっという間に勃ちあがった肉棒は、たちまち若い精を噴き上げそうになる。まだ剥けて間もない先端に男達の汁がねっとりとまぶされ、ぬるぬると擦り上げられる。身もよじるほどの快感に堪忍してくれと叫ぶ少年を後目に、男は小刻みに手を止め、少年の悶えを楽しむのだった。
 周囲の男達も少年の快感を我が楽しみと感じるらしく、そこここでせんずりの掻き合いや、しゃぶりあいなどが始まった。目の前で行なわれる日に焼けた逞しい肉体同士の絡み合いは、すさまじいまでの淫猥さで少年の瞳に壮絶な快感とともに焼き付くのだ。

 

 絶頂の寸前まで何度も煽られ、その度に射精を先伸ばしにされる少年は、部屋中で繰り広げられている男同士の爛れたような肉欲の交わりを見ているだけでも、ひくひくと全身を引きつらせる。頃がよしと見た洋一さんはあれから何人もの分の汁を溜めている杯に手を伸ばすと、今度は良さんの後ろへと塗り込み始めるのだ。
 洋一さんの指先が15分もの間蠢いていたのだろうか。ただゆるゆると穴の回りを撫で回す刺激に少年はもっと深い、もっと強烈な刺激さえ求めるようになっていた。少年は生まれて初めて味わう刺激に違和感は覚えたものの、あまりの快感にどこか頭の中が痺れたままで、男のなすがままになっているのだ。
 男は神棚にあった金精様を模した木型を取ってくると、少年の眼の前で杯に残った雄汁を塗りたくる。少年にとってそれが何を示すのかはもはや了解済みのことだったのか、自分から畳に顔を埋め、しみ一つない尻肉を高く掲げたのだった。

 

 洋一さんの指先でさんざんにじらされた穴は、ひくひくとそれ以上の刺激を待っている。その穴の周辺を本物よりは少し小さめの金精様で2度ほどじらし、ぐっと付き入れたのだ。
 三寸ほどの小振りの張型とはいえ、始めての異物の侵入に少年の穴もくくっと抵抗を示してしまう。快感に翻弄されていた少年もその一瞬の痛みを感じてか、ぐいと腰を引いてしまった。すかさず男はそばにいた男に合図し、少年の下に潜らせ萎えてしまった少年の肉棒をやさしくしゃぶらせるのだった。

 

 後ろからの攻撃を避けようと腰を突き出すと前から男の口がしゃぶりつく。あわてて腰を引くと金精様がさらに深く前立腺をえぐり上げる。前後から受ける切ない刺激に少年のものは再び容積を増していく。
 後ろではすでに金精様が根元まで差入れられ、その何ともいえない刺激は快感をなんら妨げるどころか、もはや男の手の動きがそのまま少年の肉棒の膨らみを増しているのだ。

 

 少年の忍耐もここまで、と見てとった洋一さんは部屋中の男達に少年の最後が近いことを教える。男達は互いにしゃぶりあっていた肉棒を自らの手で扱きあげながら、少年の回りに集まってきた。少年の最後に合わせ皆も少年の肉体を雄汁で染め上げるつもりなのだ。
 少年は頭を上げると自分の回りに突き出された何本もの肉棒を物欲しそうに見上げる。少年の気持ちを察した一人の男が口元に下半身を持っていくと、なんとその小さな唇に赤ん坊が母の乳房に吸い付くように舌を絡めてきたではないか。
 少年は始めての自覚した射精を、男達の中で迎えようとしている。尻の穴を金精様に犯され、肉棒は男の舌と唇で嬲られ、みずからも成熟した男の昂ぶりを口にしたまま、最後の瞬間を迎えるのだった。

 

 少年の肉体が射精寸前の筋肉の緊張を見せたとき、男達の昂ぶりも最高潮に達した。金精様の埋められた腰をがくがくと震わせ、男の口の中に青い雄汁を打ち付けたとき、回りを囲む男達も一斉に熱いたぎりを少年の肉体に浴びせたのだった。
 男達の荒い息が聞こえる中、少年の肉体はぐったりと仰向けに返された。思わず飲み込んでしまった雄汁の生臭さは、少年の肉体に途方もない快感と一緒になって記憶されていく。

 

 尻穴を擦り上げる金精様の刺激や男の生理を知り抜いた全身への気の遠くなるような愛撫。全身に浴びせられた雄汁のたぎるような熱さとむせかえるような栗の花の匂い。そのすべてが筆舌に尽くしがたい快感とともに肉体の奥底に刻み込まれる。
 少年の肉体はもはやただのせんずりでは満足できないものとなってしまっていた。そしてそれこそが男達とともにこれからの若衆宿での毎日を、爛れたような肉欲の嵐の中で過ごしていくための、方策だったのだ。

 

 

 ・・・、良さんの長い話が終わった。真冬とは思えない部屋の熱気の中で、二人ともいつのまにか越中一丁の格好で寄り添っていた。良さんの話に俺の肉棒はいななき、溢れる先ばしりが越中の前垂れにまでしみ通り膨れ上がった先端の姿を現していた。
 良さんも淫猥さに溢れた初体験を思い返してか、ゆるんだ越中の脇からすりこぎのような己の逸物を取り出し、くちゅくちゅと卑猥な音を響かせながら扱き上げている。

 

 確かに話しのとおり、おそらくこれまで権立を勤めた村の男達はそれこそ10年以上もその尻穴に金精様を受け入れ、馴染ませてきたことで初めて、男揺らしの儀式に耐えうる肉体と精神力を身につけたのだろう。

 

 刺激的な良さんの話にどうにもたまらなくなった俺は、薄い座布団の上に良さんを押し倒し、焼酎とストーブの熱気で火照る身体を抱きしめた。越中の晒し越しにごりごりと擦れあう肉棒がたまらないほど気持ちいい。
 俺が耳元で「俺のも鍛えちはいよな」とそっと囁くと、良さんが農作業で鍛えた太い腕を俺の背中に回し、ぐっと力を入れてきた。

 

 二人の夜は、これからが本番だ。

 


付記

この地方の方言について

「・・・けん」→「・・・だから」

「ごて」→「~のように」「~するように」

「がまだす」→「頑張る」

「そぎゃん」→「そうだ」

「ばってん」→「けど」「だけど」

「・・・はいよ」→「・・・してくれ」

 

以上