抜き屋稼業 2021

その1

 

 よお、久しぶり。

 前のときはあの楕円球追っかける奴の大会のときだったから、けっこう間が空いちまってるよな。

 ん、俺?

 俺の方は相変わらずリフレ付きマッサージの方、ぼちぼちやってるよ。

 この間に五十路迎えちまったのは、まあ、時の流れってことで見てくれ。

 このご時世、もちろんかなり厳しくってさ、キャストも含めて色々兼業しなきゃ大変な感じにはなってきてる。

 それでもみんなして感染対策頑張って、施術中もとにかくマスクと面と向かっての会話をしない、強制換気とかやりながら、なんとかしのいでは来てるかな。

 

 そんなとき俺たちに、日本では何十年ぶりってなる「あの」大会へのお誘いがきちまったって訳だ。

 ま、お相手先は言わなくても分かるよなあ。

 

 俺たち?

 ああ、もう一回説明しとくと、俺を始めとした「ゲイ向き抜きアリマッサージのキャスト集団」って思ってもらうと一番伝わりやすいかと思う。

 俺自身もその手のタイプで売ってるけど、キャストそのものが「太めガチムチ以上、体格のいいのを揃えててバルクでも楽しんでもらう」を打ち出してけっこう好評だと思う。

 だいたい平均体重が3桁行くかどうかって感じなので、競合サービスに比べるとかなりの差別化は出来てきてるかな。

 

 で、たまたまだったけど、俺が店をはじめて2年目に出逢った某国のサッカー関連のスタッフを相手したときから始まって、今ではある意味国内でのスポーツ系大会があるときに、「その手の処理」をする集団ってことで結構有名になってるかな。このへんは前のラグビー(もう隠すのも面倒)のときの話でもやったから、覚えてくれてる人も多いと思う。

 大きな大会とかあるたびに運営側から(こっそりだけど)呼ばれたり、どっかの国の選手団そのものに雇われたり。

 同じような大会関係で他の国での状況もよく聞いてたけど、今回の4年に一度の奴についての噂は聞かなかったから、これまでは選手間の「自給自足」の面が大きかったんだろうってのは予想出来てた。

 

 前のときにも言ったって思うけど、今度の奴はもともと選手村に男女が何万人って集まるし、スキンもものすごい数配られるってこともあって、これまでの大会では俺たちみたいなのの需要はあんまり無かったんだと思う。

 まあ、他の国の内部事情は分かんないけど、これまで俺たちが関わってきた連中からもそんなこと聞いたこと無かったんだよな。もし、同じようなことがこれまであってたら、参加が重複してる選手もいたし当然話に出てたと思う。

 そんな中、俺たちにお呼びがかかったってことだけ見ても、やっぱりここ2年のウイルス禍ってのはスポーツの世界にもすごい影響及ぼしてるよな。

 

 今回の依頼は前のときみたいに「周りが男ばっかりで」って前提あるのとは違って「選手の行動の自由が奪われた中で、極力感染を避けながら溜まった性欲の処理を安価で手早くやってくれる」ってのが目的なんだよな。

 これが選手間の「自由意思」の下だと、どうしてもキスとかやっちゃうだろうし、万が一のときの追跡も出来ないだろうし、まあ、そういうことで俺たちにお鉢が回ってきたってのは分からんことでも無いし。

 

 とりあえず向こうからの条件聞いて、なんとかやれるって思ったので、受けたよ。

 

●キスは厳禁

●口もケツも使わない、すべて手かオナホ等の使用で

●向こうは寝たままでこちらのテクニックでイかせる

●施術はマスク必須

●施術前には施術者の手はアルコール消毒必須

●禁止行為が無いか、行為はすべて録画

●録画は代表の俺と主催者側の担当者が毎日確認

●同じくその録画は問題なければすぐ消去

●フルワクチンは互いに前提

●選手村入村前に2週間自己隔離

●入村後5日は接触出来ないため、早めに入村

●入村後は外部との接触は禁止

●集団では行わず、個別の部屋で施術

●今回はスタッフは対象外で選手のみ

●控え選手も対象とする

●個人名、時間、場所を含めてすべて記録し提出

●毎日検査検温に体調報告と記録

●一国もしくは一団体・集団が終わった後、丸2日はキャストは隔離休養

 

 条件はこんな感じ。

 なんかここまでくると俺たちみたいな「人」相手でなくて自分でやるせんずりでもいいんじゃ、って気もするけど、やっぱり自分でヤるのと人にヤってもらうのって気持ちよさにすごい違いあるから、そこに俺たちみたいのの需要があるってことなんだろう。

 録画ってのもすごい対策とは思うけど、海外ではカード払いや該当カメラでの個人行動の掌握が普通のところもあるので、仕方無いってあきらめの合意みたいなのがあるんだろうか。

 それでも、これまでの信用実績で話が来たんだと思うし、口が固い、守秘義務を守るって、時間をかけて培ってきたことが実を結んでくれてると感謝してる。

 

 それにこれは担当の人もはっきりとは言わなかったけど、もしかしたら女性や華奢な男性だとキャスト側に万が一被害が出ないかって不安もあったのかなとか、勝手に推測。

 もちろん、俺がこれまで接してきた選手達って紳士的な連中がほとんど&契約概念が確立した「プロフェッショナル」だなって感想持ってて、たとえキャストが女性であってもそんなとこまで行くかな、っても考えた。

 それでも、主催側としてはやっぱり万一ってのを考えてしまうなとも思ったとこかな。

 参加者構成がいわゆるプロとは違って色んな人達が選手になってるってとこも影響してるのかも。

 ただ、どうも全体のキャパのでかさもあって、色んなところに声はかけてるんじゃ、とも感じてる。

 実際、俺たちの対象がレスリングや柔道、投擲種目とかの重量級選手がいるとこに偏ってたから、そういう体格上の傾斜配分っていうか、配置の配慮ってのはやってのかもね。

 

 今回は俺含めて14名で施術参加。

 俺がやってる店のキャスト含め、以前に一緒にやってて独立した奴とかにも声かけて、けっこう頑張って集めたよ。一昨年のときに比べて段違いに参加人数多いので、こっちも体勢厚くしとかないとね。

 ワクチンの関係で全体の年齢層上がりはしてるけど、この部分は仕方ないかな。

 

 俺の方からはいくつか対応・用意してほしいことを主催者側に提案。

 

●男の顔や身体が視野に入るとダメな選手用にアイマスクを配布

●希望するプレイやNG項目が分かるような各言語でのボード

●ローションかなり使うので術後の処理の簡便化のため全裸での待機希望

●二人部屋の人もいると思うので、その点の合理的な配慮

●感染症については選手側でなにかあった場合の情報提供

●選手本人の体液や精液が付いたティッシュやタオルは選手側の部屋にて処分

●選手間や宗教上の争いにキャストが巻き込まれないよう、事前承諾の保障

 

 施術中のこちらの服装は以下の理由で勃起全裸を希望しておいた。

 

●ローションでの汚れ対応でこちらも全裸でやりたい

●全裸施術はこれまでの経験から被施術者の羞恥心を無くすのにも有効

●被施術者の興奮を誘発するため、こちらはコックリングし勃起を強調

●勃起晒しはノンケにも勃起誘導出来てることは日常施術から有効と判断

 

 俺たち自身も何時間も勃起させとかいけないし、けっこうツラいんだけど、これってホントにノンケにも有効なんだよな。

 どうやら男って、密着してる奴が興奮してると相手の性別関わらず引っ張られるってのはあるような気がしてる。

 

 色々依頼はしたりされたりだったけど、だいたいこのくらいだったかな。

 英語はこれまでの経験もあって、キャストみな簡単なやり取りは出来てきてるとも思うけど、極力会話は避けるってのもあって、意思確認のボードも内容一緒に作りながら用意してもらったよ。

 

 事前に選手にはこちらからのアンケートとして

 

●ちゃちゃっとイきたいのか、時間かけてじっくり楽しみたいのか

●一発だけでいいのか、何回もイきたいのか

●ガーゼやオナホなど、手以外のグッズを使用していいか、手のみがいいか

 

 ここらへんを確認しといてほしいって要望しといた。

 

 基本、万が一のときの追跡範囲を広げなくていいように、国毎の競技人数が10人ぐらいまでの少ないときは、俺たちキャスト一人につき一種目の団体をローテーションしていく形にして、最初は競技が前半になる柔道を受け持つことになった。

 日程的には早い競技から順に回っていくことになるけど、今日の話はそこらへんから。

 

 俺たちに最初に話が来たのは7月中に金メダルまで決まる柔道の参加選手へのサービス提供ってことになった。

 全部の階級に選手を送り込めてない国や地域もあるし、サービス希望しないところや他の集団に振ったところもあるんだろうし、結果的に100人越すぐらいの対象選手数になってるかな。

 これを国や地域単位で14人のキャストで割り振って、サービススタート。

 

 競技終了後2日以内に帰国しないといけないって今回はルール化されてるので、後半はだんだん減ってくけど、その分新しく別競技も入ってくるので、総時間は変わらない感じになるはず。

 

 で、俺自身のお相手は南コーカサス地方の一国、こっちでの国名表示が数年前から変わってみんな「どこ?」ってなった、あの国からだ。

 この国は7つの階級すべてに選手出してるので、最大1日に7人を相手にすることになる。

 

 

 コンコンコン。

 ドアをノックすると向こうから声がかかる。

 あらかじめ時間も指定してあるから鍵も開けてあったんだろう。

 ガチャリとノブを回し、俺は部屋の中に入った。

 

「ガマルジョバ!」

 一応、最初の挨拶だけはお国の言葉で。

 発音合ってるかは分かんないけど、気は心ってことで伝わってくれるだろう。

 

 部屋のベッドに小柄だけど、かなり毛深い&全身の筋肉ものすごい選手が横たわってた。

 腕、足、盛り上がりがすごい。

 胸毛、腹毛、エロい。はだけた柔道着から汗に濡れたこの辺りが見えちまうと、もうたまんないだろうな。

 顔の下半分を多う短い髭が男臭さを増してて、うん、いい感じ。

 

 一番軽い60㎏以下の階級の選手だけど、テレビで見かけるときより近くで見ると、はるかにボリュームがある感じだ。

 俺の2/3以下の体重にもかかわらず、ずっしりとした重さを感じる体格、って言えばいいかな。

 腹や胸を筋肉の上に、ほんとにうっすらと脂肪が覆ってる。その「うっすら感」がものすごい色気を醸し出してるんだけど、このへんはノンケさんには分かんないかも。

 

 話を通してたとおりに素っ裸に股間だけタオルかけて両足を広げ、もう見てくださいって感じなのは、こっちがホモだけにけっこうすごいモンがあるな。

 男にヤられるってのを意識したくないのか恥ずかしいのか、それともその両方か、顔にもタオルがかけてあって表情は分からない。

 

 ベッドサイドに目視しやすい針式の時計を置き、施術用のセットを取りやすい場所に置く。

 一応は一人当たり施術に45分、記録に5分、休憩10分で計算。1日あたり6~7人が俺たちの平均施術人数。向こうの人数の割り切れ方とかでもちろん前後はするよ。

 全裸での施術についても特に要望無かったで、タンクトップとハーパン脱いでこっちも素っ裸になる。コックリング填めると、もう俺のもギンギンだ。

 

 事前アンケートでは「時間をかけて楽しみたい」「何発でも楽しみたい」「グッズ利用は不可」ってなってる選手なので、持ち込んだお楽しみセットには大量のローションと拭き上げ用のティッシュ、それにタオルを充填してきてた。

 失礼しますよ、と小声で言いながら狭いベッドに上がった。

 

 ちょんちょんってお腹をつついて、顔のタオルをちょっとずらしてもらう。

 目の前に「時間をかけて楽しみたい」選手用のボードをかざした。

 

『If you are about to ejaculate, but don't want to, please turn your palm toward me.

 When you want to ejaculate, hold your palm gingerly.』

(射精しそうだけどイきたくないときは、手のひらを私の方に向けてください。射精したいときは、手のひらをぐっと握ってください。)

 

 一応の注意喚起だけど、軽くうなずいてくれたから意味は伝わったかと思う。

 

 この「手のひらを向けて」「手を握って」ってのも宗教的な意味でタブーなところもあるから、国ごとに担当の人に確認してね、っては言ってはあるんだけど、まあ大丈夫だろう。

 

 さっそく施術に取りかかる。

 

 すでにテントを張っていた腰のタオルを外すと、身長の割にはかなり大きめの逸物が勃ち上がっている。

 男と分かっていても「イかせてもらえる」ことに興奮してくれてるのはありがたい。

 白い肌にけっこうな黒い体毛がある選手で、胸から腹、そして股間へと、もっさりと茂った中から半分包皮に覆われた太いものが屹立していた。

 

 俺は少し狭いベッドの上で、裸の選手の両足を広げその間にあぐらをかいて座り込んだ。

 膝上に選手の両足を乗せると、大股を開いた裸の男の下半身が俺の眼前に広がることになる。

 相手が快感に腰を引こうとするとその尻には俺のおっ勃ったチンポが当たる形になるし、当然向こうもそれは感触で分かるわけだし、互いの興奮もダイレクトに伝わるってことだ。

 この腰の浮いた姿勢は射精時の快感を普通に横になってるときのそれより、かなり増幅してくれると自分なりに見つけたもの。

 お客さんや他のキャストからも「ただ寝たままより感じた」って言ってもらってるので、たぶん大半の人には当てはまるんじゃないかと思ってる。

 

 まずはローションをつけずに右手で握れば、ずるりと先端が剥け上がる。

 いつもなら真っ先にしゃぶりたくなるような張りのある亀頭が、その全容を現した。

 さすがに先走りは出てはいなかったが、これからずるずるになるまで啼かしてやりたくなるチンポだ。

 玉周りもかなりの毛濃いさで、さする手触りがざわざわと、こちらにも気持ちよく感じるほど。

 持ち主の方はと見ると、タオルで表情は分からないものの、男に握られても身体の硬直が見られないのは受け入れてもらえてると思って構わないだろう。

 

 口で唾液をまぶして、という作業が出来ないので、最初からローションをたっぷりと手に取る。

 毛むくじゃらの金玉をずるずると撫で回すと、それだけで息を大きく吸い始めたのが分かった。

 ずるり、ずるり。

 片手で金玉を揉み上げながら、亀頭を手のひらでぬるぬると撫で回す。

 

「uum……,uhaa……」

 いや、別にカタカナでもいいんだけど、ちょっと雰囲気だけでも。

 タオルの下から漏れるかすかな喘ぎ声を確かめながら、イかさぬよう、萎えさせぬよう、慎重にコントロールしていく。

 じっくり楽しみたい選手には最初の射精までせめて15分は楽しんでもらいたいからね。

 

 ぬるつく金玉を引き下ろしながら、臍に向かいそうになる肉棒を足下の方に押さえつけ、その反発力を亀頭責めに生かしていく。

 手のひらの窪みと亀頭の曲線を一致させ、ぐりぐりと円を描くように高速で刺激する。密着した粘膜と皮膚の間の摩擦が、ものすごい快感へと変わっていくはず。

 玉の根元と太棹の根元を一緒に握り込み、亀頭と八の字あたりを牛の乳搾りのようにグチュグチュと絞り込む。

 

 途中で数回だけ肉棒を扱くと、その度に筋肉質の身体がびくびくと震える。

 たぶん、イきそうでイケない、「寸止め」のあの快感が全身を襲っているだろう。

 

 幾度か扱いては亀頭を責める、さんざんに亀頭を責めまくりながら、2つの睾丸をごりごりと転がすように刺激する。

 静脈が浮かんだ肉棒の根元を強く握り、ゆっくりと扱き上げる。

 亀頭の先端に握り締めた手を当て、小指の方からオナホに侵入するチンポのようにゆっくりと人差し指の方へと差し入れていく。

 指と指の段差、俺の握力、多量のローションが合わさって、とてつもない快感を生んでくれてると思いたい。

 

 とにかく射精に繋がらない快感を与えようと、玉と亀頭を責めまくった。

 

「はあっ、はっ、はっ……」

 さっきまでは唸り声のようだった声が、口が開いてきたのかア行音が混ざり、明かなよがり声にと変わってきた。

 あぐらをかいた俺の膝上にまたがるようなぶっとい下半身が、いやらしくくねりだす。

 

「んんっ、んっ!」

 顔を覆っていた片腕がこちらの方に伸び、手のひらが開けばストップの合図だ。

 その瞬間、俺は両手をさっと離し、どんな小さな動きさえ射精に繋がらせてなるものかと一切の身体の動きを止めた。

 俺の股間に乗った選手の腰がびくびくと動いたが、なんとか暴発することは避けれたようだ。

 しばらくして手が下がれば、再びの責めを開始していいとのサインだろう。

 

 くちゅっ、くちゅっと、再び責めを開始する。

 一度空打ちを経験したチンポは感度がよりいっそう敏感になっているのだろう。亀頭をずるりと俺の手がなぜるたびに、全身の筋肉が緊張するのが手に取るように分かった。

 試合前に余計な筋肉の緊張させるのはよくないと分かってても、こればっかりは仕方ないか。

 

「あっ、んんっ、んっ……、あはっ、あああああっ!」

 クチョクチョ、グチャグチャ。

 ローションを継ぎ足しながらコリコリと固くなってきてる金玉を撫で回す。

 亀頭だけを手のひらの中でシュッシュッっと握りつぶすように抜き上げる。

 浮かび上がった静脈がその太い幹を締め上げる蔦のようにすら見えてきた肉棒は、ガチガチに直径を膨らませたまま、いっこうに萎えようとはしない。

 人差し指の側面を鈴口に割り入れ、何度もすっと前後に動かせば、背中が反り返るほどの反応を見せてくれる。

 逃げそうになる腰をぐっと引き寄せると、俺の勃起チンポがぐりっと固い尻肉に当たる。

 

 気付いたらもう20分ぐらい、ひたすらイかず勃起のまま責め続けた。

 顔のタオルも取れてしまってて、片手で目を隠しながらだけど顔の太さのままの大きな首が、左右に揺れる。最初のうちは抑えていた喘ぎ声も、もう部屋中に響きわたるような大声だ。

 こういうの施術者冥利に尽きるけど、自分のテクニックでお客さんがよがってくれると、こっちもやっぱり興奮するんだよな。

 向こうからの「射精したい」の意思表示はまだ無いけど、興奮で忘れてる可能性もある。複数回の射精希望だったし、そろそろイかせないと時間配分が厳しくなるなと判断した。

 

『You may ejaculate.』

(イっていいですよ)

 

 通じてくれ! と思いながら、へたくそな英語で言ってみた。

 カードは用意してるけど、この状況でがさごそ出すのもタイミングを逃しそうだったからさ。

 こちらの言葉が通じたのかどうか、それでも亀頭や玉責めばっかりだった俺の手の動きが直線的な上下運動に切り替わったのは分かったらしい。

 顔を隠していた腕も下りて、切なさそうな黒い瞳がこちらを見つめてきていた。

 ああ、なんかもうそんな目で見られちゃ、こっちもたまんないな。

 

「イけっ、イけっ」

 つい日本語で言っちゃうのは仕方無いよな。

 俺は左手で玉を揉みながら、右手はそれこそもうすごいスピードで扱き上げる。

 根元から雁首までを上下させながら、何回かに一回はわざと亀頭まで手のひらを滑らせる。

 これ、射精のタイミングと重なるとヤられてる側は悶絶するテクニックなんだけど、相手が声抑えてたりすると、ちょっとずれたりするんだよな。そこらへんはプロとしての勘と維持でなんとかコントロールする。

 

 ぬちゃっ、ちゃっ、ちゃっ、ちゃっ!

 先走りとローション、肉棒と手のひらが奏でる水音がしばらく続いた後、ついに最後の瞬間がやってきた。

 

『uuh……,cum,I'm cumming!』

(うう……、イくっ、イっちゃうよ!)

 

 こっちに合わせてくれるのか、どっか冷静なのか、普段のAV見てるのがそっち製なのか、聞こえてきたのは英語だった。

 ぼこぼこの腹筋をへこませながら、すごい量の精液が飛び散る。

 もともとそういう体質なのか、見た目だけならコップ1/4にもなるんじゃないかな、ってぐらいに思える雄汁が、毛深い腹に、胸に、顎にと飛んでいた。

 臍に溜まった汁が溢れ、どろりと脇腹を垂れ落ちていくのが、ものすごくエロかったんだ。

 

『I just jizzed……』

(イっちゃった……)

 

 恥ずかしそうに呟く目の前の選手に、惚れちゃいそうになる俺。

 思わず身体折り曲げてキスしたくなるけど、必死に意思の力で押さえつける。

 まあ、こっちはマスクもしてるので、物理的にも不可能なんだけど。

 

 仕事忘れちゃいかんよな、と思い直し、目の前に別のカードを差し出した。

 

『Would you like your next ejaculation to be immediate?』

(すぐにまたイきたいですか?)

 

 声は出さずに、こくりと小さくうなずく顔が、もうまたたまらない。

 肉棒もあれほどの大射精にもかかわらず、まったく萎える様子が見られないのは超一級アスリートの性欲はみなそうなのか、英雄色を好むが真実なのか、不思議な景色だ。

 

 部屋中に漂う栗の花の匂いは、人種が違ってもそう変わるわけでも無い。

 ローション代わりに腹に垂れた雄汁を手ですくい取り、俺はまた太棹を握りしめる。

 この後は焦らしはいっさい無し。

 ひたすら扱き上げて、連続射精の快感を味わってもらおうと頑張った。

 

 

 ……結局、それからの10分ちょっとで連続2回、イってくれたよ。

 40分ぐらいの間に萎えずに3回って、もうこいつらの体力どうなってるんだ、っても思ったけど、これが何人も何日も続くってなると、こっちの体力もメンテしなきゃなってなってる。

 まだ1人目なのに、玉いじりに小指まで駆使してるからか、ちょっと攣りそうになってるもんな、左腕。

 

 ティッシュとタオルで後始末し、万が一のこともあってこれらは部屋内のダストボックスに袋に入れて始末する。

 見送ってくれるとき、まだお客さんのチンポ、勃ったままだったのが、ホントにすごいと思ったことさ。

 

 

 俺の初仕事はこうして終わった。

 他のキャストはどうだったのかな。報告も上がってくるし、ビデオも確認しないといけないし、このあともけっこう忙しくはあるんだ。

 それでも連続での施術ってわけでも無かったので、自分の報告書作ったあとはもちろんせんずりしちまったよ。

 あの髭ヅラとせつなそうな目を思い出しながら扱いたら、あっと言う間だった。

 先走りでずるずるでローションいらないほどだったし、リングのせいもあってイったときの快感もすごかったな。

 

 なるべく相手の集団をまとめた形で引き受けるのが原則なので、俺はここしばらくはこの国の7人をお相手することになる。

 重量級の連中とかどんなよがり方するのか考えただけで興奮モンだけど、次の競技も途中で入ってきはじめるから、今後はキャストシフト考えるのも大変になってきそうだ。

 まあ、信用と実績と的確な技術に安心価格、そんな評判を裏切らないように頑張るだけだけどな。

 

 ん? あの選手、結果はどうだったって?

 こういうのでひいきしちゃいけないってのも分かってはいるけども、やっぱり自分が直接関わった選手は贔屓目で見ちゃうよな。

 けっこういいとこまで行ったけど、敗者復活戦で負けたのは本人も悔しかったろう。

 

 競技期間は17日間なんだけど、俺たちの拘束は隔離含めて3週間以上ある。

 祭典の裏で頑張る俺たち。

 こんなのもいるって、ちょっとだけ頭の隅においてテレビ見てくれると嬉しいので、よろしくな。