岐跨村の男達

その4 用語集

 

●岐跨村(きこむら)

男だけの集落。山間に位置し美袴村からは四里ほどの距離にある。人口91名。

 

●美袴村(みこむら)

女だけの集落。浜から平地に位置する。人口112名。

 

●神代(かみしろ)

任期六年の岐跨村の神職。三年に一度、年齢18から48までの者の中から、一人が籤で選ばれる。

 

●サキのモノ(さきのもの)

籤にて神代に選ばれた者で、四年目以降六年の任期を終えるまでの者を指す。先様(さきさま)とも称される。

 

●アトのモノ(あとのもの)

籤にて神代に選ばれた者で、初年より三年目までの者を指す。三年経過後、次の神代が選ばれた時点でサキのモノへと呼称が変わる。後様(あとさま)とも称される。

 

●棒達(ぼうだち)

岐跨村で15から55までの男を指す。相棒組を形成する権利と義務がある。

 

●相棒(あいぼう)

毎年6月1日に神代によって決められる棒達内のペアを指す。一年毎に相手が変わり、居住所も神代によって決められる。

 

●新達(しんだち)

その年初めて棒達の資格を得、相棒を組む宣示に参加する者を指す。数え15の者。たいてい宣示後の直会にて他の棒達全員から性的な歓待を受ける。

 

●神子(かんのこ)

美袴村での養育を終え、岐跨村へと連れて来られた12から14の男を指す。選ばれた相棒組とともに生活することになるが、村内の教育係りから継続した教育を受ける。

 

●神翁(かんのおきな)

岐跨村で56以上の男を指す。相棒選定から外れるが、選ばれた相棒組と生活を共にする。

 

●相穿(あいがち)

相棒組が神代のいる社殿を訪れ、性的接触を行う行為。主に相棒側から使われる。神代側よりは「御客を迎える」等の婉曲表現で表されることが多い。

 

●御客(おんきゃく)

相棒組が神代のいる社殿を訪れ、性的接触を行う際の神代側からの相棒組の呼び名。

 

●寒の禊ぎ(かんのみそぎ)

社殿外の井戸にて棒達と神代全員が裸にて水垢離を行う。その後、社殿にて祝詞を唱和し新年を祝う。大小二つの御神体を神代がそれぞれ後口で受け入れ、入れたままの状態で射精する。棒達全員も射精し神代の汁も合わせ、集められた汁を一升の酒(屠蘇)に溶かし入れる。全員で一口ずつ口にする。儀式後の直会にて全員の乱交が行われる。

 

●夏越の祓(なごしのはらい)

毎年6月1日に行われる。神代と棒達による社殿外の井戸での水垢離と社殿内での祝詞唱和。

その後、神代の籤引き、相棒組の宣示、同じく居住所宣示が神代より行われる。直会後、参加者全員での肉体での交わりとなる。

 

●秋渡御(あきのとぎょ)

毎年10月1日より3日間に渡って行われる。男性器を模した御神体が寸法9寸のものと7寸の物が毎年交互に一本ずつ奉納される。

通常は社殿に納められている御神体を初日早朝に井戸水にて清め、晒しで包み輿に乗せ、村の反対方向にある御旅所(おたびしょ)まで運び入れる。夕方には再び社殿へと運び、これを3日間繰り返す。

この期間、棒達全員が社殿に寝泊まりし、初日と二日目は肉体接触は可能だが、射精は禁じられる。三日目は射精禁止が解かれる。

初日と二日目には神代により特別な香が焚かれ、どれほど刺激を受けても射精出来ないようコントロールされる。

 

●種渡し(たねわたし)

師走中頃の戌の日を選び行われる。

美袴村の入口近くにある男小屋にて神代により選ばれた8名ほどの男が自らの逸物を扱き上げ、それぞれにあてがわれた容器に汁を満たす。

岐跨村の神翁の中で年輩の者がそれを美袴村の入口で待つ使者(こちらも女達の中での年長の者が受け持つ)に渡し、あらかじめ定められている同数の女の下へと届ける。女達はそれぞれ特別に細工された張り型に受け取った精汁を流し入れ、自らの膣奥へと届けることとなる。

男女の組み合わせと妊娠・出産・養育記録は岐跨村・美袴村双方の神職にて記録されていくが、個々人に対し、精汁の提供者・受領者が誰であるかは開かされないこととなっている。

 

 

●作中に出てくる薬草など

 

●碇草(いかりそう)

イカリソウの全草を乾燥させたもの。別名淫羊霍(いんようかく)。陰萎、強精、強壮、利尿、腰痛、鎮静、不眠など。

 

●萎ずい(いずい)

アマドコロの根を乾燥させたもの。強壮、健胃、消炎、咳など。打撲には生の根茎をすりおろして酢、小麦粉と混ぜ湿布する。

 

●黄耆(おうぎ)

キバナオウギの根を用いる。強精、心臓強化、利尿、強壮、降圧、抗アレルギー作用、末梢血管拡張作用など。

 

●黄柏(おうばく)

キハダの内樹皮を乾燥・粉末化したもの。抗菌、降圧、中枢神経抑制作用、解熱、健胃、整腸、打撲消炎など。

 

●玄参(げんじん)

ゴマノハグサの根を乾燥させたもの。強精、利尿、強壮、健忘、鎮静、降圧、抗アレルギー作用、末梢血管拡張作用など。

 

●五加皮(ごかひ)

ウコギの根皮を乾燥させたもの。強精、強壮、回春、陰萎、腹痛など。

 

●牛膝(ごしつ)

ヒナタイノコズチの根を乾燥させたもの。強精回春、降圧、利尿、止血、鎮痛など。

 

●蟾酥(せんそ)

ヒキガエルの耳腺、皮膚腺から採取した分泌物を乾燥させたもの。強精、強心、降圧、冠血管拡張、胃液分泌抑制、局所麻痺、抗炎症など。

 

●大薊(たいけい)

アザミの全草、根を乾燥させたもの。止血、清熱、利尿など。

 

●菟絲子(ととし)

ネナシカズラの種子を乾燥させたもの。糖尿病、視力低下、排尿障害、滋養強壮、強精、腎陰虚、腎陽虚。

 

●南天燭(なんてんしょく)

ナンテンの葉を乾燥させたもの。強精、強壮、回春、陰萎、解熱、嘔吐、知覚神経麻痺、心臓運動抑制など。実は鎮咳に用いる。

 

●浜防風(はまぼうふう)

ハマボウフウの根茎を乾燥させたもの。発汗、解熱、鎮痛、去痰、鎮咳など。

 

●蒲黄(ほおう)

ガマの花粉を乾燥させたもの。止血、火傷、利尿、痔疾など。