『金精の湯』秘境温泉物語

その9 変容

 

 俺たち4人の湯治は、2週目を迎えた。

 最初の週、『慣らしの湯』の最終日に『手捏ね』の儀式で射精の許可を得た俺たちは、あの日以来、巨大化する己の肉体から湧き上がる精力性欲を互いにぶつけ合う毎日を過ごしていた。

 それまでの、日に四回の入湯と多量の飲泉、三度の食事、午前中の『御行』と呼ばれる宿守りと同じ作業を繰り返すという日々の行いに、『他人の吐精を促し、幾度もの射精に至らしめる』という項目が付け加わったのだ。

 

 あの日、宿守り達の巨大なチンポを口にした俺たちの中に、その行為が異常なもの、それまでの自分たちであれば絶対に選択しなかった行為であるという認識は、もはや存在しなかった。

 宿長の四方さんはじめ、宿守りの男たちの声は心地よく、俺たちの気持ちに寄り添いながら、それまで俺たちが持っていたはずの『常識』を、軽々と飛び越えさせてくれる。

 過去を振り返れば、逆になぜ同性異性などというものに己の性欲の発露が規定されていたのかが、不思議なことにすら思えてきていた。俺たちは自分の肉体と精神はあくまでも自分のものであり、他者との兼ね合いで規定されるものではない、という『事実』に気が付いたのだ。

 このことに気付かせてくれた宿守りたちには感謝してもしきれない、そんな気持ちがふつふつと湧き上がってくる。

 

「さて、今日はどんなにふうにして、みんなイきたいのかな」

 

 その日、昼前の入浴を前に、一番の年長者である豊後さんが皆に声をかける。

 

 射精が解禁となったあの日以来、俺たちも宿守りも全員が入湯の度ごとに最低でも一度は射精をしているのだ。

 風呂の場面だけでも四回の射精。さらに夕食後の『揉み療』と、就寝のために布団に入った後の担当宿守りとの互いの手によるそれで、俺たちは一日に七回ほどの射精すら普通のこととなっていた。

 ついこの間までであれば信じられないようなその回数と、毎回の射精液の多さは、俺たちの肉体が持つポテンシャルといってもいいものだったろう。

 

 この宿に来て十日目が過ぎる頃には、湯治客全員の肉体は宿守りの男たちと遜色無きまでに成長し、皆が皆、互いに120キロは優に越えるバルクを撫で回し、その肉々しい感触、手のひらを撫でる体毛の手触りに、悦に入ってしまう。

 温泉の熱気とその香り、さらには自分たちの巨大な肉体から立ち上る甘い温泉香と体臭の入り交じった匂いに、俺たちの獣欲が刺激される。

 

 日に四回の入浴のうち、この昼食前だけは俺たち湯治客だけでの入泉となる。

 他の三回の入浴では宿守りたちと競い合うようにして互いの肉棒を扱き合い、しゃぶり合う俺たちだったが、この昼前の入浴のときだけは湯治客同士でイカせ合うのだ。

 もちろん義務となっているわけではないのだが、この数日のうちに4人全員がイカせ合うのが当たり前になってきていた。

 

「豊後さん、この三日ほどは2人一組でイカせ合う感じでしたけど、今日はちょっと趣向を変えてみませんか?」

「ほう、どんなふうにやるのかね?」

 

 提案しようとする俺に、皆の耳目が集まる。

 

「宿守りさんに揉み療でやられるときみたいに、一人が寝っ転がって、3人が乳首とチンポを担当してイかせる、って、気持ちいいんじゃ無いかと思ってて」

「おお、気持ちよさそうだな。朝熊君、日高君は今日は大和君が言ったやり方でいいかな?」

 

「大賛成です! 僕、豊後さんのペニス、扱いてイかせたいです」

「俺も、俺も、それでいいです! その、俺は、大和さんにしゃぶってほしい……」

 

 若者2人の答えに豊後さんの顔がほころぶ。

 

「大和君、彼らにとってもいい提案だったみたいだな。そして彼らの分には、配置も決まってるようだ」

「はい、朝熊君のご指名も光栄だな。気を入れてしゃぶらせてもらうよ」

 

 配置、とは言い得て妙な表現だった。

 大の字になったターゲットに対し、股間に一人、両の乳首にそれぞれ一人ずつの担当を決めようと言うのだ。

 日高君、朝熊君の既望を入れ、それぞれの担当を確認する。

 年功序列とのことで、豊後さんが最初に洗い場に横たわることになった。

 日高君が豊後さんの大きく開いた両足の間に座り、朝熊君が右の乳首、俺が左の乳首をいじる係になる。

 

「ああ、これから皆にヤられると思うだけで、イきそうになるよ……」

 

 3人に見下ろされる豊後さんの呟きは、正直な感想だろう。

 俺たち3人は視線を合わせると、豊後さんのここに来てビルダーのように膨れ上がった肉体へ、一斉にその責めを開始した。

 

 一日中、勃起していることが当たり前になっている俺たちの逸物。横たわった豊後さんのそれも、ここしばらくの逗留ででっぷりと張り出しつつある腹にそってカーブを描き、ぶりっと張ったえらが赤黒く変色した使い込まれた魔羅を一層目立たせている。

 あっと言う間に100キロを超えた豊後さんの肉々しい身体を覆う白髪の交じる体毛は、肩から胸、腹へと続き、股間の茂みはそれこそ横から見ればこんもりと盛り上がっているだろう。二抱えにもなりそうなほどに太さを増した両足もまた、こちらはまだ黒さが勝る体毛に覆われていた。

 

「豊後さん、僕の手で、気持ちよくイってください」

 

 日高君が厚さを増した手のひらに『魔剋水』をたっぷりと取り、ビクビクと頭を振る豊後さんの股間に手を伸ばす。

 

「おおっ、いいぞっ、日高君……。もっと強く、やってくれ……」

 

 軽くのけぞるような動きを見せた豊後さんの上半身を押さえつけ、朝熊君と俺が舌を出して見せつけるように蠢かしてみせる。

 

「俺たちのテクニックも味わってくださいよ」

 

 ボールを伏せたかのように発達しだした豊後さんの胸筋に、渦巻く体毛。白いものが混じるその中に大豆ほどにも膨れ上がった乳首が勃起していた。

 その先端に2人の舌が、同時に襲いかかる。

 

「おっ、おっ、たまらんよっ! 魔羅と胸とっ、すごいっ、すごいぞっ!!」

「セーブしませんので、気持ちよくイッてください」

 

 いつの間にか、どこか遠慮がちだった朝熊君もすごい台詞を言うようになったようだ。

 唾液と温泉のぬるつきに潤った乳首を片手でこりこりと摘まみながら、筋肉と脂肪の乗った文吾さんの腕を上げ、脇の茂みに鼻を埋める。その舌先がもっさりと生えた脇毛の根元を、べろべろと舐めあげる。

 

「あああああっ、そこっ、いいっ! もっと、もっと、乳首をつねってくれっ! もっと亀頭をいじめてくれっ!」

「豊後さんっ、すごいっ! 豊後さんがっ、すごいいやらしいですっ!!」

 

 温厚な豊後さんから卑猥極まる言葉が繰り出される。

 それを聞いている日高君の方も、興奮しているようだ。逸物を扱き、玉を揉み上げる日高君の手の甲も、すでにびっしりとした黒毛に覆われ始めていた。

 

「たまらんっ、たまらんよっ!! ああっ、もうっ、出すぞっ、出すぞっ、日高君っ、出るっ、出るよっ!!!!」

 

 責め始めて5分も経たないうちだったろう。

 そろそろかなと、俺と朝熊君の乳首責めにも力が入る。優しく舐めあげた次の瞬間にはぎりりと歯でつぶすその痛みは、快感に転ずるはずだ。

 ずっしりと重たげな豊後さんの尻肉に力が入り、日高君がいじっていたふぐりがぎゅっとせり上がる。

 そのままであれば中に噴き上がるはずの奔流を、日高君の口が捉えた。

 

「出るっ、汁が出るっ! 出すぞっ、出すっ、出すぞーーーーーーっ!!!」

 

 3人がかりで押さえている豊後さんの腰が、ぐんと浮き上がりそうな勢いだった。

 喉を突き上げる巨大な先端をなんとか口から離さず、どくどくと打ち付けられる白濁した精汁を日高君が懸命に飲み干していく。

 その間も大きさを増してきた金玉を揉み上げる手が止まらないのは、豊後さんにとってもたまらない刺激だったろう。

 

「あっ、あっ、あああっ……」

 

 脂身の乗った下腹部と尻肉の律動がおさまったのは、およそ5分近くも経ってからのことではなかったか。

 入浴と飲泉により俺たちの肉体が増量増大を続けるうちに、日に何度もの吐精が当たり前になってしまっていた。四回の入浴、夕食後の揉み療、さらには布団に入っての担当者との扱き合いなど、一日のうちに6回や7回の吐精はざらなのだ。

 さらには一度のそれで噴き上がる精液の量もこの宿に来る前の何十倍にもなっているようで、その大量の汁が肉棒を貫いていく快感もまた、量と時間に比して大しているようだった。

 

「その、僕がやったの、気持ちよかったですか……?」

 

 おそるおそる尋ねる日高君の言葉には、まだ彼の自らへの自信の無さが反映しているようにも聞こえる。

 

「日高君の手と口がすごく気持ちよかったら、あんなよがり声を上げて出しちゃったんだよ。息子みたいな君にやられて恥ずかしさもあったけど、気持ちいいことを楽しまなくてどうするっても思ってね」

 

 身の内に籠もる熱が少しは発散出来たんだろう。豊後さんの言葉は若い日高君に何かを教え諭すようにさえ聞こえる。

 

「よかったです……。一番年の離れてる豊後さんに喜んでもらえるなら、僕もそう捨てたもんじゃないかなって思ってて。ずっと豊後さんをイかせたかったんですよね……」

「はは、そこまで思ってくれるなら年だなんて言っとられんな。この後の湯治期間も、せいぜい頑張ることにするよ。……、さて、次は大和君か。朝熊君がしゃぶりたいってことだったな」

 

 豊後さんに促され、湯温で温まっている洗い場に横になる俺。

 両足を思い切り開くと、その間に朝熊君の熊のような身体がどっしりと腰を下ろす。

 仰向けになった左右には日高君と豊後さんが俺の乳首をどう責めようかと、その豊かな体格の身を寄せてきた。まな板の上の鯉状態の俺は、わざと両手を頭の下で組み、入山前の数倍に生い茂った脇毛を晒す。

 

「大和さんの身体もでっかくなって、すごいっすよ……」

「朝熊君には負けるよ。それにしても、しゃぶられるって分かってると、ますますおっ勃っちまうな」

「俺もです。その、俺、大和さんのしゃぶってるだけで、イっちまうかも」

「それだけ気が入ってるってことじゃないのかな。四方さんがいたら、褒めてくれそうだ……。あっ、乳首っ、いいっ……」

 

 朝熊君の会話の切れ目に、豊後さんと日高君がちろりと俺の乳首を舐めあげてきた。

 駆け上った快感に顎を上げたその一瞬に、朝熊君がずいと俺の逸物を握りしめてくる。

 

「おおっ、朝熊君のぶっとい手で握られて、俺のチンポ、すげえ固くなってるっ!」

 

 わざと卑猥な言葉を選び、自分と周りの男たちを興奮させることもこの宿で学んだことの一つ。

 朝熊君が俺のあからさまな挑発に乗ってきてくれる。

 

「いいっスか? 俺の扱き、いいっスか?」

「ああ、いいぞっ! もっと、もっと扱いてくれ! 俺のチンポ、しゃぶってくれっ!!」

「しゃぶるっスよっ! 俺、大和先輩のっ、しゃぶってるっス!!」

「しゃぶれっ、朝熊っ! 俺のチンポ、ありがたくしゃぶりつくせっ!!」

「ああっ、大和先輩っ! 俺、嬉しいっスっ! 先輩のチンポしゃぶれて、嬉しいッス!!」

 

 学生のときの部活でも思い出しているのか、朝熊君の口調も変わってきていた。

 俺もそのロープレに合わせていく。

 俺のをしゃぶる朝熊君が片手で自分のものも扱き上げていた。

 

「朝熊っ、自分で扱くなって言われたろうっ! 手を止めやがれっ!」

「すんませんっ、大和先輩っ! 俺、俺、あんまり興奮して、申し訳ないッス!」

 

 二週間も前の俺なら、全身毛むくじゃらの100キロは優に超す男たちが、乳首を舐め上げ、肉棒にしゃぶりつく姿をどう見ていたんだろうか。

 体育会口調に合わせ年下の青年にチンポをしゃぶらせる俺を、俺自身はどう感じていたのか。

 そんな疑問に答えるはずの記憶すら曖昧になるほど、この湯治宿の日々は濃密に過ぎてきていた。

 

 甘い温泉の香と、それに混じり合った宿守りたちの体臭。

 耳に響く宿守りたちの声。

 大皿に盛られた地の野菜と獣肉。

 温泉の湯を使って調理された様々な食物。

 

 おそらくはそれらすべてが一体となって、俺たちの脳髄を甘く痺れさせ、この肉体と精神の変容を無理のないものとして、当たり前のものとして受け入れさせているのだろう。

 そんな想像や思いすら、湯気の向こうにと溶けていきそうな、肉と欲、生と精にまみれた宿の毎日なのだ。

 

 乳首を脇腹を、胸毛を腹毛を。

 膨れ上がった金玉を、雄々しく勃ち上がった逸物を。

 

 乳首を舌先で嬲られ、爪先で腰回りから脇腹への体毛をかき分けられる。

 鶏卵ほどにも巨大化しつつある睾丸を揉まれ、先走りで濡れそぼる肉棒が朝熊君の手と口で責め立てられる。

 3人の男にのし掛かられながら愛撫される俺は、5分も保たなかったと思う。

 

「イくぞっ、朝熊っ! 俺のチンポからっ、雄汁出すぞっ! 飲めっ、飲んでくれっ、朝熊っ、俺の汁、飲んでくれっ!!」

「大和先輩のチンポ、うまいっスっ! 俺に、俺に先輩のチンポ汁っ、飲ませてくださいっ!!!!」

「おおおおおっ、イくっ! イくっ! イくぅーーーーーーー!!!!」

 

 足先に力が入ったままの射精の快感が、俺の全身を貫いていく。

 射精の瞬間も朝熊君の舌の力強い動きがさらなる刺激を誘発する。

 

「あっ、あっ、あああっ……。出てるっ、汁がっ、雄汁がっ、ずっと出てるっ……!」

 

 豊後さんと同じく、数分にもおよぶ射精の中で俺は声を上げ続けていた。

 

 

 年嵩の俺や豊後さんですら5分も保たなかった3人からの責めに、若い2人があっと言う間にイッてしまうのも無理は無い。

 朝熊君、日高君と、2分も経たずに盛大に噴き上げたのは、決して彼らが「早い」せいではなかったろう。それまでに(といっても朝食前の風呂からは数時間しか経っていないのだが)溜め込まれた精汁が、すでにそのずっしりとしたふぐりに充満していたのだ。

 越中褌の一枚布に触れるだけでもダラダラと先走りを垂れ流すほどの興奮が続いていれば、握られた瞬間、しゃぶられた瞬間の吐精すらありうるほどだった。

 

 

 朝熊君の汁を俺が、日高君の若汁を豊後さんが、それぞれたっぷりと飲み終え、俺たちはまたゆっくりと湯船に浸かっていた。

 

「今日の大和君のやり方はよかったな。これからもこの時間の風呂では、色々試していこうか」

 

 顔を洗いながら言う豊後さんの台詞に、みんなから一斉に肯定の返事が返る。

 宿守りがおらず湯治客だけのこのタイミングは、貴重な客同士の交流の時間でもあった。

 

「……、その、僕、みなさんにちょっと聞いてほしいことがあるんですけど……」

「ん、日高君、どうした?」

「実は僕、……。今週にでも四方さんたちに、僕の乳首にピアス入れてもらおうかなって考えてます」

「ええっ! ピアス、開けたいんだ、日高君も……」

 

 俺が驚いたのも、仕方の無いことだろう。

 普段の朝熊君もそうだが、4人の中では一番内気というか『おとなしく』見えていた日高君の言葉は、実はこの俺もここ数日考えていたことだった。

 

「……、はい、そうです。なんか僕、ここにきて自分のことを変えたい、変わりたいって思いがすごく強くなって。実際に身体もこんなに変わってきて、今度は自分の心の方かなって思いもあって……。僕も宿守りさんたちみたいなぶっとい乳首になって、いじられただけでイきそうになってみたい、そんな思いが強くなりました」

 

 思っていた以上に大胆な、日高君の言葉。

 彼の勇気に応えたくて、俺もみなに話すことにする。

 

「こりゃ、先を越されたな。実は俺も最初に茶野さんや四方さんたちのピアスに気が付いたときから、『自分もやってみたい』って思ってたんだ。日高君、よかったら2人で宿守りさんたちにお願いしてみないかい。話聞いてると、麻酔は出来ないけども、ここでも開けるだけなら十分な措置は取ってもらえるようだったし」

「大和さんも一緒だと心強いです。痛いとは思うんですが、それを乗り越えられたら、なんだか自分が変われる気がして」

「うん、俺も日高君と同じで、ここに来てから色々と考えていたんだ。最初は取材というか、ここで何が行われているか知りたいという興味からだった。それでもここに来て自分の身体の方も温泉のおかげかこんなに変わってきて、なんだか『自分が変わる、変われる』って思いが強くなってきたんだ」

 

 2人の話に、朝熊君と豊後さんが目を見合わせている。

 正直、宿守りたちの親指の先ほどにも肥大した乳首とそこに通った太いバーベルピアスにかなりの魅力といやらしさを感じてはいたのだが、自分がそこに至るという考えは、日高君の告白でより鮮明になっていた。

 朝熊君は俺たち2人の話を聞いて、呆然としているようで少し心配だ。

 

「お、俺は、大和さんや日高さんみたいに思い切れない……。やっぱり俺って、勇気の無い奴なんです……」

 

「おいおい、朝熊君。それは違うぞ。大和君も日高君も、自分が弱いからもっと強く変わりたいと思ってるだけなんだと思う。そのきっかけが、ここでの湯治であり、ピアスであるってだけだろう。朝熊君、君には私たちになかった立派な体格があって、それは私たちの身体がどれだけでかくなっても、君はさらにその上を行くはずだ。でかくて強いものに憧れるのは、男としてのどこか根幹に通じてる部分があると私は思ってるんだが、その観点からすると君はもうすでに『強い』男なんだと思うぞ。それにピアスも別にいますぐ開けなきゃってわけでもないんだ。私もそうだが、朝熊君は朝熊君なりに、じっくり考えてから結論を出せばいい」

 

「はい、そうですね……。俺、しばらく考えてみます……」

 

 豊後さんの言葉も、せめて半分は彼に届いただろうか。

 俺はとろりとぬめる湯の中で朝熊君の巨体をかき抱き、その顔を首に埋めることぐらいしか出来なかった。