南方第二騎士団の壊滅と

獣人盗賊団への従属

その7

 

捕縛

 

「いや、ホント、タウロさんの『魔法』すごいですよね。精液の匂い直接嗅がせるまで、全然バレなかったッスよ。隣にいても『見えなくなる』って意味、実感しましたよ、ホント」

「本当に、こちらが意図的に声をかけるまで、まったく気付かれませんでした」

 

 若い獅子獣人2人が勢い込んで報告する様を、狼獣人のレイと牛獣人のタウロが笑顔で聞いている。

 その2人の声に、もう1つの別の声が割って入る。

 

「いっつも俺って警戒要員で、今日も全員捕まえるまで外での監視って、なんかみんな、ズルくないですか?」

 

 不服そうな、それでも自らの役割には自信ありげな台詞は、サーマスという犬獣人のものだ。

 昼間のアレク襲撃の際、レイの言った『感覚鋭く』『鼻が利く奴』とはまさに彼のことだろう。その頭抜けた索敵能力は直接的な戦闘能力とは違う意味で、集団の生存戦略に大いに貢献している。

 

「それにしても、こうして皆さんに集まってもらっても、人族にしては本当に鍛えられた肉体をしておられる。私も久しぶりに昂ぶってしまいますよ、レイ殿」

「今日は本当にタウロの『魔法』様々だったな」

「私の技はかけられた者に大きな動揺などが走ると感嘆に切れてしまうことがございます。皆さんが射精寸前で介入していただいたことで、上手くいったのだと思いますよ」

 

 あくまで謙虚な返事をするタウロではあるが、内心では己の技量に絶対の自信を持っている口ぶりであった。

 

「俺達を、どうする気だ? 晩飯に細工したのは、お前達なのか?」

 

 素っ裸のまま、後ろ手に拘束されたボルグが静かな怒りを込めた声でレイ達に問い糾す。

 

 ここはボルグが行を行おうとしていた、ケイブから少し離れた開けた場所であった。

 団員達それぞれが行為の最中、射精寸前でその意識を直接的な体液の匂いにて再び奪われ、朦朧とした意識のままに連れて来られたのだ。

 食事で薄められていた最初の混合精液と違い、その鼻で、あるいは口に直接垂らされた濃厚な獣人達の雄汁は、ほぼ瞬間的に上位自我を発生させ、自らの行動選択をその場の獣人存在に委ねることとなる。

 裸のまま両手を後ろに拘束された6人の騎士団員達は、それぞれの肉棒を硬く屹立させたまま、こうして捕虜として1箇所に集められたのであった。

 

「まあ、そんなに怒るなって。なあ、ボルグ団長さんよ」

「俺達のことを知っていての狼藉か?」

「事前調査は当たり前だろう。それに、料理番のアレクに、色々教えてもらったしな」

 

 レイの言葉にセオリオが反応する。

 

「アレクっ! お前が料理に何か仕込んだのか?!」

「よせっ、セオリオっ!! 俺達の誰でも、上位獣人に直接対峙したらもうどうにもならんことは分かってるだろう。アレクのせいじゃない。強いて言えば、警戒を怠った俺のせいだ」

 

 ボルグの分析は正確であった。

 今回はレイという希有な存在の種族ではあったが、獅子族、熊族、猪族と会敵した場合、人族としてはいかに物理的な距離を保てるかが勝敗の分かれ目に直結するのだ。

 

「その通りだな。だからこそ、俺が直接出張ったワケだ。タウロの『魔法』でも、行動選択までは命じることは出来ないしな。まあ、そんなこんなでアレクとやらは責めないでおいてやってくれ。あんた達の誰であっても、この結果が変わったなんてことは無いんでね」

 

「もう一度聞く。それで俺達をどうしようと言うんだ。殺したいんならわざわざこんな手の込んだことをやる必要は無いだろう」

「その通りだな。これもアレク君には言ったんだが、まあ、あんたらにちょっくら俺達の『遊び相手』になってほしかっただけさ。ことが終わったら無事に解放するし、せいぜい2、3日、俺達の『お楽しみ』に付き合ってくれってことだな」

 

「そいつぁ、その、俺達があんたらにひたすら犯される、ってことを言いたいのか?」

 

 むっとした様子のまま無言を貫いていたバーンが口を開く。

 

「まーた人聞きの悪いことを言うねえ、バーンさんとやらよお。俺は『無理やり』ってのもあんまり好きじゃねえ。この意味、あんたぐらいの年なら、もう存分に、分かるだろう?」

「無駄だ、バーン。どうせ俺達は、こいつらの精液を一度飲まされたら、もう逆らえない」

「だいたいこいつは何なんだ? 見たところ、普通の犬族とは違うし、アレクだって熊や猪ならまだ理解できるが……。獅子族もいるが、どうやらその2人にやられたわけでは無いようだし……」

 

 バーンの疑問ももっともなものだった。

 騎士団でも種族間の上位序列やその生体機構についての座学、さらには実際に団員への熊族、猪族の体液摂取時の反応体験までも行ってきているのだ。

 ボルグやバーン、バルガスなどの古参団員はもとより、騎士団員を名乗るすべてのものたちは、たとえ10代のベルですらその効力については身に染みて理解していることだった。

 

「あー、そうだよな。俺はレイっていうんだが、どうやら犬族の先祖返りでの発現で、もともとは狼がベースらしい。獅子族ほどじゃねえが、フェロモン操作も少しだけ出来るようだ。後はアレクが体感したように、体液でのお前さんたちへの侵襲率は、熊族の連中よりも高いみたいだな」

 

「いいのか、狼獣人のレイとやら。そういうのは隠しとくもんじゃ無いのか?」

 

 部屋で1人、せんずり中に捕らえられたバルガスが、諦めたような声で呟く。

 

「ま、特に隠してるワケでも無いんだがな……」

 

 レイは言われて初めて気が付いたような素振りだ。

 

「あの……」

「どうした、アレク? さっきも言ったが、お前も逆らいようが無かったはずだ。気にするな」

「はい団長……、ありがとうございます。ただ、ちょっと気にかかることがあって……」

「なんだ?」

「その、あんなことをした私が言えることでも無いんですが、その、レイ、レイさんと話してみて、私は、レイさんが、レイさん達が、単なる物盗りの盗賊団、夜盗集団とは思えませんでした」

 

 どういうことだ? と、騎士団員達が一切に怪訝な顔をアレクに向けた。

 

「あー、そこらへん、面倒くさくなるので、盗賊団ってことにしといてくれて構わねえぜえ」

 

 レイがまさに『面倒くさく』呟いた。

 

「どうせコトが済めば、はいサヨナラ、ここまでよ、って奴だ。うだうだ話になるのも面倒くせえし、それに今日はうちの獅子族2人の童貞切ってやりてぇって思って、お前さん達に目を付けたんでな」

「そういえば、軍に所属してない獅子族か……。もしかして生育親から奪ったのか?」

「かー、また人を悪者みたいによぉ。たまたま立ち寄った村で珍しく獅子族の双子が生まれたって聞いて、そのままだと国や軍の連中があっと言う間にかっさらって行くのは目に見えてたからな。せめて成人するまで、こいつらに外の世界を見せてやりてえって思っただけのことだ」

「自然分娩の獅子族か……。確かに珍しい存在ではあるが……。話を聞いてると、アレクの言うことにもどこか一理あると思ってしまうな」

 

 地方都市を警護する騎士団員として、国家レベルでの軍組織の在り様については色々と思うところもあったのだろう。

 ボルグの言葉からは、先ほどまでの怒りに満ちた気配は影を潜めていた。

 

「面倒くせえ話になる前に、おっぱじめようぜ。まずはその手の紐、ほどいてやりてえから、俺達の汁、もういっぺん腹一杯に嗅いでくれ」

「ああ、分かった。逃げようも避けようも無いことだ。俺も、楽しませてもらうことにしよう」

 

 レイや他の獣人達が取り出した瓶を見て、すべてを諦めたのだろう。ボルグの承諾の言葉を聞き、他の団員達も覚悟を決める。

 それぞれが鼻に近づけられた小瓶から、むわりと立ち上る強烈な匂いを精一杯に吸い込んだ。

 

「よし、手縄を解いてやれ」

 

 レイの言葉に獣人達がナイフを燦めかせる。

 手首をさする騎士団員達の股間はよりいっそう滾り勃ち、目の前の獣人達に情欲の炎を上げ始める。

 

「ああ、あんたらとヤりてえ……」

「あんたのチンポ、しゃぶらせてくれるんだろうな」

「俺の尻に、尻に、それ、挿れてくれ……」

 

 団員達から次々に発せられる卑猥な言葉は、獣人達のそれをもまた昂ぶらせていく。

 

「ふふ、正直だよな、あんたらも。

 まあ、そっちの名前は分かっちゃいるが、始める前に一応こっちも自己紹介しとくか。

 改めて俺は、一応リーダーってことになるのか、狼族のレイだ。終わったらあんた達も、名前だけは頼む」

 

 レイの言葉に獣人達が続く。

 

「私は見ての通り、これもまた珍しいとの評判の、牛族のタウロと申します。皆様方の寝室での様子は観察させていただきましたが、いや、すべての方々が素晴らしい肉体をなさっておられますな」

「俺は犬族のサーマス。やっとこさあんたらとヤれると思うと、ワクワクするぜ。よろしくな」

「俺は獅子族のレオンだ。その、レイさんからヒト童貞卒業だって言われてて、すげえ緊張してたんだけど、その、俺、あんた達みたいな、人族でも鍛えた人達が『初めて』で、良かったと思ってる」

「同じく俺はライド。レオンとは双子だ」

 

 どうやら双子でも少しばかり性格は違うようだ。

 口調からしても、レオンの方はより気さくな質なのか。

 

「俺はボルグだ。この分団の団長をしている」

「副団長のバーンだ。まあ、聞かれていたんだろうが、ベルは俺の息子だ。俺はどんな扱いを受けてもいい。ベルにだけは、あまり非道いことは、その、しないでやってくれないか……」

 

「おいおい、さっきから俺達一緒になって『楽しもう』って言ってるんだぜ。穴扱いしてヤり捨てるつもりなら、とっくにそうしてるだろう?」

 

 バーンの言葉にレイが返す。

 

「俺はセオリオだ。その、もうあんたらの匂いだけで、正直イきそうになっちまってるよ……」

「料理番で衛生兵のアレクだ。その、昼間にレイさんと話してみて、さっきも言ったみたいに俺はあんたらを、何というか『敵』には思えなくなってる。それもあって、まあ、その、あんたらの汁のせいもあるとは思うが、俺はまあ、その、メチャクチャにされたい」

 

「ほっほっほ、アレク殿は正直ですな。レイ殿、最初はアレク殿とセオリオ殿、お2人を、私に相手させていただいても構いませぬかな?」

 

 おそらくはレイの集団の中でも一番の年長なのだろう。タウロは20代の2人に興味を持ったようだ。

 

「その、俺はベルだ。どうせ何もかも見られてて、聞かれてたんだろう? 俺は俺で、今日は親父の、父親のバーン副団長との『初めての日』になるはずだったんだ。それを邪魔されたことには正直腹が立ってるが、元はといえばあんたらの精液を飲まされなきゃそれも始まらなかったってのも分かってる。なんだか複雑な気分だな……」

 

 皆が己の心情までを吐き出したことはもちろん嗅がされた精液成分によるものでのあるのだろうが、どこかレイ達の『殺気の無さ』に感化されたものであることもまた、事実であった。

 

「ふんふん、実の親子の『始めての日』だったって訳かい。そりゃ悪いことをした。それならそれで、せっかくの親子での楽しみも味わってもらわないといかんなあ。

 となると、最初はバーンとベルの親子に、レオンとライド、お前ら2人で構ってやれ。獅子族の雄汁入れりゃあ、この2人なら何十発でもイケるだろう。

 タウロには希望通り、アレクとセオリオを頼もうか。で、俺とサーマスで団長さんとバルガスの2人ってことになるな。

 騎士団員のあんたらも、それでいいかい?」

 

「構わんさ。俺も正直、ホントにもう、あんたらの誰でもいいんで、チンポしゃぶらせてくれ、ケツを掘ってくれって気持ちになってる。この俺でもそうなんだ。皆もそうだろう」

 

 ボルグの言葉に、照れながらもうなずく団員達。

 その股間は先ほどから萎えることなく、すでに先走りの汁を多量に流し始めている。

 

「さて、宴の始まりだ。みんなでヤり狂おうぜ」

 

 レイがニヤリと笑い、人獣入り乱れての狂宴が始まったのだ。