捕手の泣き所

その1

 

[入部に当たっての身体測定]

 

真中 大   18歳

 身長   168cm

 体重    98kg

 胸囲   120cm

 胴回り  130cm

 太股周囲  75cm

 

「お前、キャッチャーになるために生まれてきたような身体しとる!」

 

 S大学の野球部に入るため、学内の医務室で身体検査を受けていたときのキャプテンの言葉だ。

「全く惚れ惚れするほどのキャッチャー体型だなあ」

 褒めてくれたのは嬉しいが、あまりにも大きな声で俺の体をしげしげと見ながらいうものだから、先輩方や監督、医務室の先生まで、俺の体を見に来はじめた。

 よりによって、ぴちぴちの白いボクサーパンツ一丁。他には何も身につけず、体重計から降りた俺は、ぐるりと大勢に取り囲まれてしまった。

 

「ほほう! これだけ貫禄のある身体の一年生も珍しい」

「相撲部から誘われてもいくなよ!」

 そう言いながら先輩方はピシャピシャと俺の肩やら腹やら、背中やら、ケツまで叩いてふざけ合う。

「ちょうどいい。キャッチャーが卒業したばかりでな、君みたいな安定した体躯の持ち主が中々見つからなかったんだ」

 監督は嬉しそうに俺の頭を撫で回す。

 さらに俺の手を握りしめて、

「肉厚の手のひらだ。こういう手は確実にボールを掴んで落とさない」

 もう、俺を抱きしめんばかりの勢いでぎゅっと両手を掴む。

 

 さらに

「おし、真中君、ちょっとここで腰を落としてキャッチングの構えをしてみてくれないか?」

「え! このかっこでですか?」

「いやあ、もう君の体にほれちまったからな、一刻も早く素質を確かめたい」

 なんといっても監督からの依頼だ。俺は言われるがまま、両足を大きく広げて腰を落として、捕球の姿勢をした。

 と同時に

 

 ビリッ

 

 という音を立てて股座が裂けるのがわかった。

 周りがドッと湧いた。

 

 しかし監督はその姿勢のままでいるように要求してきた。

 後ろからは明らかに裂けた生地の中からケツの毛までもっさりと生えてるのがわかるに違いない。

 前からは破れた場所はわからないが、俺の股間の膨らみが嫌でも目に入るだろう。

 しかし、監督は

「思った通りだ、どうだこの太もものでかさは、どっしりしたケツは、すごい安心感があるだろう?」

 エースのピッチャーに同意を促す。

 

「監督、彼は逸材ですよ。どんな球を投げても微動だにせずに安定して受けてくれそうだし、なんというか、めちゃくちゃ投げやすそうだ」

 股間の盛り上がりを指しているのがあからさまなピッチャーの答えに、恥ずかしいのと照れくさいのに耐えられず、俺は破れたケツの位置に両手を組んでズボンを履いてよいか訊いた。

 

「あとはスローイングだな、これで肩が良かったら即レギュラーだがな」

 俺の質問に答えることなく、監督は力を込めて俺のケツをパンと叩く。

 

「しかし、一つ問題があることにみんな気づいたか?」

 そこに白衣を着た別な先生が口を挟んできた。俺の横に立ち、ニヤニヤしながらみんなに問いかけるのは、大学の医務室の先生だ。

 歳の頃なら40代中頃。柔道をやっていたらしく、でっぷりした体躯に髭を蓄えていた。なかなか愛嬌のある笑い顔で、俺の股を指差している。

 先生は俺に直立不動で気をつけをさせた。

 

「みんな、彼の真横に来て見てみたまえ」

 

 みんなぞろぞろと俺の左右両側にそれぞれ集まった。

 医務室はすでに若者の性への過剰な興味に満ち溢れている。

 

「わかるかな、真中君は直立不動なのに股間が前に異常に大きく膨らんでいるだろう?

 彼はその、何というか、男の睾丸、まあ、金玉がかなり大きいんじゃないかね。

 キャッチャーはよく、急所にボールが直撃するからね。

 これでは彼の玉に合うようなでかいファウルカップを用意せんといかんだろう」

 

 ずばり、俺の最大のウィークポイントを指摘されてしまった。

 

 中学時代にどんどん睾丸が発達していき、片方の玉だけでも握りこぶしくらいあるのだ。

 チンポはごく普通の大きさだと思うのだが、金玉は異常に巨大になってしまい、体育の時間など短パンや水着を履くと股間の膨らみがかなり目立ってしまう。

 高校の時は散々そのことでからかわれ、中には面白半分に鷲掴みにしたり写真を撮ったりして「デカ玉大ちゃん」などというあだ名をつけられたこともある。

 たしかにそのせいで出っ張ったところに股間が当たりやすいし、練習でもワンバウンドのボールを取り損ね、俺の金玉直撃、なんてことも数え切れない。

 

 それでもいつの間にかそんな周りの目やアクシデントにも慣れてしまい、どんな好奇な目や笑いの対象となることにも、全く気にすることがなくなった。

 親父が言うにはむしろ男としての機能が優秀であること、男らしさの象徴だと誇りに思うべき、だそうだ。

 

 そんなわけで、時には邪魔になる我が金玉は、俺にとってはなくてはならない自慢の相方のような存在だといえる。

 周りの話を聞けば巨大な睾丸で大量に作られた精子なので、センズリのときなど俺に取っては当たり前なのだが、人よりかなりの量が出てるらしい。しかもどうも人より金玉が感じるらしく、自分でチンポをしごきながら、もう片方の手で金玉を揉みしだくともうたまらない快感を得ることができる。

 これは俺に与えられた特権だろう。

 学校のトイレでセンズリをしていた時に、たまたま入ってきた友人に冗談で金玉を触らせてみると、強烈な快感ですぐに射精してしまったことすらある。金玉を触られて感じるのも当たり前と思っていたんだが、他の人にはない俺だけが感じることが出来る特別の快感らしい。

 

「まあ、気をつけて練習したまえ」

 白衣の先生は冗談まじりに俺の金玉をゆっくりさすり上げた。

 あのとき、もしかしたら俺の勘違いだと思うが、先生のズボンの前がさっきよりむっくりと膨らんでいたような気がするのは気のせいだったんだろうか。

 

 そんなわけで入部した次の日から早速キャッチャーとしての、キャッチングとスローイングの練習が始まった。

 しかし、先生が心配していた、急所を守るためのファウルカップが俺に合うサイズが間に合わず、かといって普通サイズだとカップが玉を挟んでしまい、どうにも具合が悪い。

 仕方なく新しいカップが来るまで、カップなしの生の金玉で練習をすることになったのだ。

 

 

[捕手としての評価]

 

「それにしても、その身体もまん丸だが、お前の金玉、すげえな。でかいとは聞いていたが、ここまでとはなあ」

 練習が終わり、シャワーを浴びていると必ずこの話題になる。

 

 もう、中学高校と何年間もさんざん言われ続けてきたので慣れてもいるし、隠しても確実に隠しきれないほど目立つ大きさなので、もう好きなようにすればいいさ、とばかり、むしろ見せつけるように腰を突き出しては好きなだけ見せてやっている。面倒くさいこともあって、触りたければ気がすむまで弄らせることにしていた。

 みんな、感心しながら俺の股間の前に群がる。

 監督やコーチも何度も目にしているにも関わらず、見せる度に目を輝かせ、ため息をつく。

 

 皆、これまで見た金玉の中でも俺のは別格なくらい巨大だ、立派だ、という意見で、一致するらしい。

 しかも、風呂場や更衣室で何度も見ているにもかかわらず、何回見ても見飽きることがなく、拝みたくなるくらいの逸物だという。

 俺は布袋さまか大黒さまか、はたまた狸の焼き物か。

 ついにはなんと、親戚の姉が中々妊娠しないので、彼女の旦那にご利益があるようにこの金玉を触らせていただきたい、などというとんでもない相談まで来る始末だ。

 

 いよいよ捕手としての練習が始まった。

 エースの二年生のピッチャーは、それまで正捕手だったキャッチャーが卒業してからは今一つ調子が悪く、コントロールも定まらないという。一度崩したバランスや悪い癖から、なかなか立ち直れなかったらしい。

 

 監督はすぐに俺をホームベースの後ろで構えさせると、迷わずにピッチャーに声をかけた。

 

「思い切りなげろ、こいつのきんたま目がけて!」

 

「え、ええっ!」

 思う間もなく、

「ズバンッ!」

 と、強烈な音と一緒に見事な豪速球が知らぬ間にミットに収まっていた。

 

 唖然とするみんなをよそに

「やはり思ったとおりだったな」

 監督はニヤニヤしながら俺を見ていた。

 

「お前がキャッチャーになってから本当に調子よく練習ができるんだ。

 何しろそのでかくて盛り上がった股間めがけて投げれば低めがバンバン決まるしな、投げやすいぜ!」

 まあ、先輩にそこまで言って貰えば俺も金玉冥利に尽きるというものだ。

 そんなわけで、俺が捕手として受けると、エースに限らず、ピッチャーはどんどん調子が良くなった。

 結果が一番とはこういうことだろう。俺は1年生とはいえ、直ぐに正捕手に抜擢されてしまったんだ。

 

 しかし、やはりついにそのときがやってきた。

 そうやっちまったんだ。

 

 

[よくある事故]

 

 その日はライバルのT大学との練習試合だった。

 新入部員として入るなりいきなり正捕手の座を手にしたことで、俺は近隣の大学野球関係者の中では少しは有名になっていたらしい。

 S大にいいキャッチャーが入ってきた、という話なら嬉しかったんだが、どうにもそういう話では無いようだ。

 むしろ俺はめちゃくちゃ股間の膨らみが目立つキャッチャーとして、話題になっていた。キャッチングや配球や盗塁阻止の強肩より、玉のデカさが評価される始末だったんだ。

 

 練習試合でも案の定、バッターボックスに入った野郎は必ずと言っていいほど、まず俺の股ぐらを覗きこむようにして構えた。

 ニヤニヤする奴、驚いた表情の奴、みんな俺の股ぐらの膨らみを確かめていた。

 

 なぜかその日はうちのチームのピッチャーが最初から荒れ球が続いていた。

 俺のリードは普段と変えてないはずだったが、いつもの速球が低めに決まらず、とんでもないところにすっぽ抜けたりバウンドしたりで、体を張って受け止めるのが精一杯だった。

 

 俺はたまらず、マウンドに駆け寄り、肩を上下させてリラックスするように促した。

「何か今日は違うな」

 嫌な予感は的中するものだ。

 ピッチャーの次に投げた低めにコントロールされたはずの150km/hは有ろう豪速球は、俺の構えたミットの前で球道を沈ませ、ワンバウンドするとそのまま俺の股間を直撃したのだ。

 

 あのときの痛さは思い出したくも無い!

 白球はまるでスローモーションのように俺の股の真ん中をえぐり、ボールが食い込み、そして跳ね返った。

 同時に強烈な痛みが、金玉の裏から駆け上がり、下腹をぎゅーっと締め上げた。

 俺はもんどりうって、股間を押さえていた。

 そこまでは覚えている。

 

 

[男の連帯感]

 

 そのあと、身体を丸めて痙攣しながら、気絶したようだ。

 顔はひたすら苦悶の表情だったらしい。

 

 何せあの激痛である。あまりの痛みに神経が耐えきれず、俺は気を失ってしまったのだ。

 

 目が覚めると、病院のベッドの上だった。

 手足の動きは自由に取れることを確認したが、腰を動かそうとするとまたあの激痛が襲ってきた。

 玉の付け根から忘れた頃にやってくる痛み。それは定期的に訪れた。

 あまりの痛さと俺の金玉がどういう状態になっているのかを見るのが怖いのとで、自らの股間を覗いたり、触れたりすることが躊躇された。

 

 そこに大学の医務室のあの髭の先生と、監督が入ってきた。

 

「いやあ、気がついたか! 一時はどうなることかと心配したぞ!」

 監督が覗き込む。

「何しろ、うーんと言ったっきり、金玉を押さえたままピクリとも動かなくなっちまってな・・・。医務室の先生の知り合いの病院にとりあえず運んできたんだぞ」

 

「監督、先生。俺の金玉にボールが当たったのは覚えているんですよ。

 でも、まだすげえ痛いし、見るのも怖くって・・・。

 その、俺の金玉、大丈夫なんですか?」

 

 俺は泣きそうになりながら聞いてみたわけだ。

 

 すると髭の先生

「私の知り合いの男性生殖器専門の先生に見てもらったよ。

 大丈夫だ。腫れはまだかなりひどいが、金玉は二つとも潰れずにちゃんとあるぞ」

 

「ああっ、良かった!」

 とりあえずホッとはしたものの、先生が話を続ける。

 

「しかしな、外見からは、睾丸自体に傷があるか、出血してるか、異常がわからないんだ。

 そこで、しばらく入院してもらうことにしたよ。

 レントゲンを撮ったり、腫れが引くのを待っての経過を見ながら、睾丸本来の機能が正常に作動しているか調べる必要がある」

 

 えっ? どういうことなんだ。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 先生の説明だと、

「睾丸がちゃんと精子を作ることができるのか?

 男性ホルモンを分泌できるのか?

 前立腺と連携してちゃんと精液を貯めて、射精まで至るのか?」

 など一連の男性の機能をこれから詳しく調べるらしい。

 

 そりゃ大切な問題だ。

 一生種無しなんて冗談じゃないもんな。

 

「お前が長期入院てなことになったらうちの部は非常に痛いが、お前の金玉の方が大事だ。早く治して来いよ」

 監督は宜しく頼みますと頭を下げて帰り支度をしている。

 

 この痛みは男にしか分からないないもんだ。

 監督、髭の先生、そして俺。3人の体格のいい男しかいなかったこの病室に、すでに変な連帯感が芽生えつつあることを、俺は感じていた。

 

 

[射精の検査へ]

 

 そんなわけで、とりあえず金玉の腫れが引くまで、大事をとって入院することになった。

 

 大学の医務室の髭の先生は、知り合いだという男性生殖器の専門の先生を紹介した。俺の主治医になってもらったらしい。

「いやあ、君が噂の真中君か、まなかだい、と読むのかな?」

「みんなよく間違って読むのですが、大と書いて、ひろしと言うんです」

 

 これで何回目だ? と思うが、どこか新しい環境になるときや、知り合いが増えるときは必ず間違えられる。

 最近はめんどくさいので、

「はい、はい、まなかだい、で結構ですよ」

 みたいにどうでもいいやと思っていちいち訂正することもなくなったが、流石に病院で名前を間違えられると困ったことになるかもしれないと、きちんと覚えてもらうことにした。

 

「まなかひろしかあ、残念だなあ、まなかだい、なら真ん中が大きいということで、まさに名は体を表すということになるのにな。

 まんなか大! 金玉がでかい!」

 

 人の名前で楽しむな!

 その冗談も散々言われて来たんだからな。

 

「そうでしょ?

 茂田先生、彼を診察したときに言ったように、眼を見張るほど、彼は玉がでかいんです」

 主治医になってもらう生殖器専門の先生は、茂田先生と言うのか。紹介した髭の先生は怪我人の俺を嬉しそうに見て、

「真ん中が大きい真中大、覚えてもらうには最高の名前だなあ。君は将来は営業関係の仕事に就くべきだよ」

 などとはしゃいでいる。

 

「なるほどねえ。最初この病院に運び込まれたときに裸にして患部を見せてもらったが、確かに陰嚢と睾丸が平均的な男性のものに比べて非常に大きいから、真中君の通常の大きさがこんなんなのか、それとも腫れたからこんなになってしまったのかが分からなくなってなあ」

 茂田先生が笑いながら近づく。

「もう直接本人に聞かなくちゃ、と思っていたからな。

 改めて聞くが、この巨大な金玉と袋は腫れたからこんなになったものか、それとも前からそうなのか?」

 

 茂田先生、ふざけているのか?

 

「気がついたら、こんなに大きかったんですっ!」

 俺は少し仏頂面で答えた。

 

「中学生になってからパンツの前が膨らんで窮屈な感じになって来て、それで、銭湯とかで人の金玉を何気なく目にしたら、そこら辺の親父たちよりもずっとでかいらしいことが分かりました」

 

 二人の先生は

「ほほう」

 と、身を乗り出して質問してくる。

 

「他人からは君のは大きいな、と、言われたことは?」

「もうしょっ中でしたよ。ちんこは全く言われないのに、玉だけは褒められました」

 

「何て言われた?」

 なんだか嬉しそうな様子で聞いてくる。

 

「『兄ちゃん、いいきんたましとるなあ』なんて当たり前で、『いやあ、兄ちゃんの玉、げんこつ二つぶらさげてるみたいだ』とか、『こりゃ狸も真っ青になって逃げ出すわい』とか、言いたい放題ですよ」

 

 先生方は互いに顔を見合わせて、にやにやしながら、

「そうか、それでも以前の大きさの記録が無いわけだと、腫れが引いたかどうかが見た目ではわからんなあ」

「やはり、触診と、尿検査と、精液検査ですかね」

 などと言いながら、後は小さな声でボソボソと耳元で話し合っていた。

 内容は分からなかったが、2人の先生の様子は楽しそうな感じだったので、どうやら深刻な状態ではないのは確かなようだった。

 

 

 2人のお医者さんの間で治療方針が固まったんだろう。

 

 髭の先生は、

「君の上から見る目線だとら自分の玉の様子がよく分からないだろう?

 茂田先生の指示で、玉の大きさと重さを記録したいから、これから毎日触診で腫れの状態を調べるし、写真を撮ったり、玉を量りに乗せて計測したりするよ」

 

 病院の茂田先生は

「それだけ大きいと、拝まれたりされちまうんじゃないかな? 是非見せてください、とか、触らせてくださいとかな。ははは」

 

 全く好い気なもんだ。

 

「確かにみんな興味本位で覗きにきたり、中にはパンツ下ろしてくれとか、無理矢理脱がそうとしたりとか、もうセクハラですよ」

 

 俺が口をとがらせて言うと茂田先生が答えた。

「何を言ってる。それだけ、有難がっている人がいるということじゃないか。わしらも人より金玉が大きいからな、君がどんなこと言われてきたかは、簡単に想像できる」

 

「えっ、先生方も大きいんですか?」

 思わず声がうわずってしまった。

 

 自分みたいに大きい人もいるのだ。

 

「自分のことのように気になるもんだろう?

 我々も君の玉が他人のものとは思えなくなって、それで引き受けることにしたのだよ。

 君のばかり見せてもらうのも不公平かな。わしらの玉も見たいかね」

 

 俺はしっかりと、そしてゆっくり首を縦に振って、気持ちを伝えた。

 人から見られることは数多くあったが、人のものを目の前で、手に取るように観察することなどなかったのだ。

 

 大人のしかも中年親父の金玉って、どんな形で、どんな風に存在しているのか?

 性的な興味はもちろん、生物学的な興味さえ湧いてくるのだった。

 

 

[三人合わせて6つの玉比べ]

 

 不思議なもので、病室の中だと治療の一環だという意識があるのか、先生たちは風呂場で下着を脱ぐが如く、さっさと下半身素っ裸になると二人並んで俺の目の前に腰を突き出すようにして近づいてきた。

 

「君の金玉と見比べてみなさい」

 

 まずは、学校の医務室の髭の先生。

 

 確かに大きい。

 鶏の卵大のものがずっしりとした重量でちんこの土台として存在している。髭の濃い顔とは違い、全体的につるんとツヤがあり、果実のようなたわわな実りだ。

 手のひらで撫で回すときっと手のひらの方が気持ちがいいような代物である。

 

 目を見開き、食い入るように見ていた俺に見させるように、病院の茂田先生が、

「たまらんだろ、この形と大きさ、実に旨そうだ」

 とんでもないこと、だが本当は俺が言いたかったことを言いながら、茂田先生は何と、横から手のひらを医務室の先生の玉の下に差し入れてさわさわと撫でまわしはじめたのだ。

 

 「ああっ」

 

 二人分の声

 

 一人は撫でまわされた俺の大学の髭の先生。

 

 もう一人は俺自身。

 

「遠慮せずに君も触ってみなさい」

 茂田先生は続けて触るように俺に促した。

 

「自分の金玉の感触、大きさ、熱を持っているか、などこれからは自分で毎日自己診断もしなきゃいけなくなる。

 他人のものと比べておいて治り具合を判断しなければな。その方が君も安心するだろう?

 どうだね、触った感触や温かさは?」

 

 まさか触りながら興奮しました。とも言えないので、かあっとした気持ちを抑えて

「大きいです」

 と答えた。

 

「ははは、大きいだけなら、君の方が格段に大きいよ。これから毎日自分の玉と先生方の玉を触り比べて、報告するんだから、もう少し詳しく触ってみたまえ」

 

 俺はもう一度大学の先生のものを念入りにチェックした。すると、むくむくと、髭の先生のちんこが膨らみ始め体積を増していった。

 

「そんな風にいやらしく触られたら、健康な男なら誰でも勃ってしまうじゃないか」

 

 笑いながら大学の先生が自分の下半身を見ている。

 

 俺は慌てて手を引っ込めて、

「すみません。触っていたらつるりとしてきて手が気持ちよくなっちゃいました。

 それに温かさを感じました」

 

「よし、その感触を忘れないようにな。後で触診の参考になる」

 

 

 続いて、病院の茂田先生の玉だ。

 

「わしの金玉は、ちょっと違うんだな」

 

 本当だ。

 

 普通みる金玉にはあまり無いが、茂田先生の陰嚢には夥しい毛がびっしりと生えていて、玉の後ろ側まで続き、けつの周りの毛とつながっていた。

 しかも、玉にびっしりと生えた毛が金玉の裏側から発散されるあの雄の臭いをしっかり蓄えていて、俺と大学の先生の鼻腔を刺激し始めた。

 さっきまで半勃ちになっていた、大学の先生の男根は完全に太い幹のように硬くなってしまった。

 

 俺?

 俺のモノは、いうまでも無い。

 どのくらいの大きさなのかに対しては期待するような内容は答えられないが、少なくとも、俺の人生に於いて最も硬く最も巨大なちんこになってしまったのは言っておく。

 

 男なら当然、茂田先生のその阿寒湖のまりものような金玉の感触を確かめずにはいられない。みんなそうだよな。

 

 もう、こうなると、俺も、大学の先生も我先にと争うように毛だらけの金玉目指して手を伸ばしていた。

 

 金玉の下で触り合いが始まったが、気がつけば、左右の玉をゆっくりといやらしく分け合い、仲良く撫で回している二人の手のひらがあった。

 

 ときには、位置を交代し、ときには重なり合いながら執拗に巨大な2つの玉を転がし合う。

 

 4本の手で撫で回し感触を確かめているうちに、俺と先生の指先に透明な粘液が毛まみれの陰嚢を伝い流れ、達してきたのだ。

 

 上を見ると明らかに、俺たちに弄られて髭の先生の鈴口からこぼれ溢れ出てきたあの液体が休むことなく淫蕩な道筋を作っていたのだった。

 眉間にシワをよせて、恍惚の表情の男の顔を伴って・・・。

 

 

[健康な男性の精液の見本]

 

「どうだい。一口にきんたまといっても人それぞれ違うもんだろう?」

 

 病院の先生はいまだにびくびくと脈打つ男根を隠そうともせずに笑った。

「君も激しく我々の玉を触って勃起したようだが、金玉は痛くないか?

 よく、若い子は勃起すると、金玉の付け根から、けつのあたりが痛くなる場合があるだろう?」

 

 俺は不安げに

「先生方の金玉みていたら、自分でもびっくりするくらいちんぽが硬くなったんですが、金玉の裏が確かに痛い感じです」

 

「それがボールをぶつけられて腫れ上がった痛さなのか、勃起による痛さなのか、わかりますか先生」

 大学の髭の先生が茂田先生に尋ねた。

 

「うーむ。成長期に見られる勃起痛なのか打撲による痛みなのかは今のところ分からないな。ただやはり、勃起時に玉に痛みがあるということは、まだ射精するのは止めておいた方がいいだろう」

 茂田先生が専門家らしく髭の先生に答える。

 

 それを聞きながら、俺は平然とした表情を努めて装うようにしていたかま、内心は

「ええっ、それって誰もいなくなった頃合いを見計らって、せんずりするのもだめってこと?」

 と、不安で一杯になっていた。

 

 そんな俺のざわざわした気持ちを知ってか、あるいは知らないふりをしているのか、先生方はどんどん話をすすめている。

 

「まあ、そういう訳だ。若い肉体には酷かもしれんが、一週間は射精を我慢してもらうことになるな」

 

 茂田先生と大学の先生はさっきから勃起したままのちんこをズボンの中に収めようともしないまま、俺に次々と指示と質問を繰り出してくる。