俺と親父の柔道場

その10

 

 汁まみれ、汗まみれになってた身体を、お互いタオルでざっと拭う。

 親父のパンと張った筋肉と脂肪が汗に光る。

 俺の方もこの冬にちっとばかし体重増えてしまった分はあるにしても、それなりだとは思ってるけど。

 

「いい身体になったな、お前も」

「親父ほどじゃねえよ」

 

 なんか、照れる。

 上背の違いはあるけど、肌の張りっていうか脂のノリっていうか、そういうのは親父の方がかっこいいと思ってるんだよな、俺。

 そんなこと言い合ってる間も、2人ともチンポはおっ勃ったままだった。互いの身体を動かす度に、ぶんぶんと上下に肉竿が揺れる。

 神棚の前に素っ裸の俺と親父が、横に並んだ。

 

「では、これから『お務め』に入る。名前と口上を言え、ロク」

「藤堂禄朗。謹んで、本日の『務め』を果たさせていただきます」

 

 爺ちゃんにこう言えって教えてもらった台詞を返す。

 最初に親父と一緒に神棚に、拝礼する。

 棚の上のかわらけを俺が取り、3歩下がって正座するために腰を下ろす。

 本来は1人でやる奴を、今日だけは、親父が同じようにやってくれてる。

 かわらけを前に置き頭を下げると、親父が俺の正面に座り直した。

 

「どうする? やるときの姿勢は自由だ。立ってやってもいいし、この前の俺のように、座ったまま膝立ちででも、なんでもいい。お前がイくのに一番感じる体勢でやってみろ。神様の前に、お前の精力を全部ぶつけるつもりでやるんだ」

「……考えてたんだけど、俺、立ったまま、やりたい。あのイッたときの膝が崩れそうになる感覚を、神様に奉納したい」

「いいと、思うぞ。今回は『お役士渡し』の流れの中だ。俺も一緒にやるからな」

「でも、親父と俺との2人分だと、溢れちまわないか? 親父のだけでも、もう一杯だったろう」

「こぼれても仕方がないことじゃああるが、畳に吸わせるのももったいないしな。最初の2回は、かわらけに出す毎に、2人で飲んじまうか。3回目の分だけでも、俺とお前なら溢れるぐらいに出せるだろう?」

「そりゃ、そうだけど、そんなんでいいのかよ?」

「エネルギーの再生を司る神様だ。出して飲んでりゃ、褒めてくれるさ」

 

 普段の親父からは想像もつかないような言葉だった。

 いつもむすっとして、ぎろっと睨まれたら俺でもビビっちまう、そんな親父だったんだぜ。

 なんか俺、親父の別の面を見れたみたいで、内心、すっごく嬉しくなっちまってた。

 

「特になんか儀式っていらないんだったよな? じゃあ、始めるぜ」

「おお、俺もついていくからな。神さんに見られて恥ずかしい射精にならんよう、堂々とイけよ」

 

 親父が自分と俺の手のひらに、ローションたっぷり垂らしてくる。

 こんなん使ったら、あっと言う間にイッちまう。

 

「へっ、50手前のおっさんには追いつけねえ勢いでイってやっからよお。親父、せいぜい、後ろから付いてこいよ」

「お前と一緒に『務めの香』を嗅いでるんだ。俺だって元気百倍だぞ。まだまだお前なんかには負けんさ」

「言ってろ。始めるぜっ!」

「おうっ、ヤれっ! ロクっ!」

 

 俺と親父、2人の右手がおっ勃ったままの自分のチンポに伸びる。

 ぶっとい腰回りから、ずんと突き出た親父の太魔羅。俺のは緩いカーブしてて長さは勝ってるけど、太さでいったら親父が一等賞だ。

 そんな2人のチンポを、俺達2人、それぞれのペースでシゴキはじめた。

 

「おっ、おっ、おっ、親父の目の前でっ、俺っ、センズリしてるっ!」

 

 言葉にするだけで、興奮しちまう。

 ローションのぬめりが、とてつもない快感を呼ぶ。

 

「俺じゃねえっ! 神さんに見せつけろって、言ってるだろう!」

 

 やべっ、そうだった!

 

「五十猛尊の神様、俺のセンズリ見てくれっ! 俺がセーシ出すとこっ、見てくれっ!」

「五十猛尊様っ、我ら2人、父と息子の精液をこれより供えんっ! 2人の射精を、とくとご覧あれっ!」

 

 親父も俺も、神さんの前でチンポをズリズリと高速でシゴキ上げる。

 センズリがこんなに気持ちいいなんて、親父と一緒に扱くセンズリが、こんなに感じるなんて、俺、知らなかった。

 いつも快感には溺れてたけど、今日のこの快感がこれまでの1人遊びの比じゃ無いのは、あくまで『神様に捧げる』って大義名分があるからだって、俺にも分かってた。

 

「すげっ、すげっ、チンポ感じるっ! こんなん、すぐにイッちまうっ!」

「1発目の『お務め』だっ! 派手にぶっ放せっ!!」

 

 チャッチャッチャッチャ。

 

 先走りと潤滑液に濡れたチンポと手のひらが、卑猥なリズムを刻む。

 今日だけで10発以上イってるのに、『お務め』の初回はあっと言う間に限界を迎えそうだった。

 

「ヤベ、ヤベっ! 親父っ、俺っ、もう我慢効かねえっ! いいか? イッていいか?」

「俺に聞くなっ! お前のペースでイけって言ってんだろうっ! 俺もイくから、一緒にイくぞっ!」

 

 親父も限界のようだった。

 たぶん、シゴキ始めて2分も経ってなかったはずだ。

 

 目の前の親父から漂う汗の匂い。

 2人で何十発イったのか分からない、道場中に籠もった雄汁の匂い。

 吐息に混じって聞こえる親父の喘ぎ声。

 チンポがぬめる、かすかな音。

 

 もう、目に映るもの、耳で聞こえるもの、鼻の奥に届く匂い。

 その全部に、俺、興奮してた。

 

 俺、かわらけに向けて、無理やりチンポを押し下げながら、先っぽをぐじゅぐじゅとシゴく。親父も俺の正面から、ぶっとい魔羅を押し下げながらシゴいてる。

 

 チャッチャッチャッチャ。

 チャッチャッチャッチャ。

 

 親父と目が合う。

 もう、限界だった。

 

「ああああっ、イくぞっ! 親父っ、俺っ、イくっ! 神さんの前でっ、俺っ、親父と一緒にっ、イくっ、イくーーーーーーー!!!」

「俺もだっ! 俺もっ、五十猛尊様の前でっ、息子とっ、息子のロクとっ、一緒にイくぞっ、イくっ、イくぞーーーーー!!」

 

 あまりの快感に、がくがくと揺れる膝。その度に腰が引けそうになるのをなんとか堪える。

 左手で持ってるかわらけが持ってかれそうな勢いで打ち付けられる、俺と親父、2人の雄汁。

 俺も親父も、10発以上イってるのに、すげえ勢いだった。

 かわらけにおさまらなかった汁が、お互いの腹を、胸をべっとりと白濁した汁で汚していった。

 

「へへ、イッたな、親父……」

「ああ、お前も俺も、いい射精だったな……。1発目だが、神さんも満足してるだろう」

 

 まずはかわらけにおさまりきれず、畳に垂れた汁をすくい取る。

 べろっと舐めると、俺と親父の混じった味がする。

 

「身体についたのはお互い舐めちまおう」

 

 親父の提案、俺も大賛成だった。

 まずは俺から、親父の胸や腹に飛んだ俺の汁を、ねろねろと舐め取っていく。

 

「まだ飲み込むなよ。俺がお前の舐めて、混ぜちまおう」

 

 親父、俺の考えてることが分かるみたいだ。

 俺の乳首に垂れた汁を親父がねぶったとき、俺、のけぞるぐらいに気持ちよかった。

 

「ああ、お前の汁の味だな……」

「親父のも、すげえ、美味え……」

 

 互いに口に含んだ自分の汁と、唾液をぐちょぐちょ混ぜ合わせる。

 そのまま、俺が少しかがんで、親父の唇を迎えにいく。

 

「混ぜるぞ」

 

 俺と親父の汁を、互いに半分ずつ相手の口の中に流しこむ。

 それを自分の口の中の汁と混ぜて、またその半分を返す。

 何度も繰り返すうちに、俺と親父の汁と唾液が、完全に混ざり合う。

 

「もういいだろう、飲もうぜ」

 

 目の前の親父の喉仏がごくりと上下した。

 なんか、それ見てるだけで、俺、また先走りが垂れちまう。

 

「2回戦も、同じ感じで飲んじまって、奉納するのは3回目分でいいみたいだな。汁もどんどん上がってきてるだろう?」

「うん、たぶん、後10回ぐらいは平気な感じがしてる」

「30発近くかよ。我が息子とはいえ、さすがに凄まじいな」

「親父だって、どうせまだまだイけるんだろ?」

「まあ、5、6回は軽いってとこか」

「そう変わんねえじゃんかよ」

 

 親父とこんなふうにやり合えてる自分が、俺、楽しかった。

 こんな会話、この6年、ぜんぜんやってなかった。

 

「じゃ、2発目イくぜ、親父」

「おうよ。さっきより飛びそうな感じするな。お前が目の前でシゴいてるせいかもな」

 

 親父、俺、そんなこと言われるとさ。

 また頑張っちまうぜ。

 

「おーし、2回目、スタートだっ!」

「今度も飛ばすぞっ!」

「おうっ、親父には負けねえからなっ!」

「望むところよっ。来いっ、ロクっ!」

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 こうして俺達、2回目もなんなく射精してやっぱりぐちゅぐちゅ混ぜて飲んじまった。

 今日、一等最初に親父とチンポしゃぶりあって飲んだときと比べても、2人ともぜんぜん勢いも量も変わんない感じだった。

 出しても出しても、金玉の底から汁が上がってくるこの感じは、なんと言えばいいんだろう?

 親父も同じらしく、3回目を前にしても、ふっ、ふっって息の上がり方が『疲れ』から来てるんじゃなく、なんていうか、試合前の『ゾーン』に入ってるときみたいなんだよな。

 

 たぶん、今、この道場に事情知らない人が突然入ってきたら、匂いとか、畳のべたつきは別にしてさ、柔道の真剣勝負前の気合い入れの最中かと思うんじゃないかって思ったんだ。

 もっともなんで敵味方が素っ裸なのかってのは、分かんないだろうけど。

 

「へへ、親父、『お務め』って3回で終わりって、ちょっと回数少なくねえのか? やろうと思ったら、5発とか、俺も親父も軽いもんだろ?」

「その分は、終わってからまた楽しめばいい。『お役士』はお前だけじゃないってのも、ちっとは考えろ」

「あ、そっか! 爺ちゃんもやることあるわけだし、俺や親父のことだけで考えちゃいけないんだな!」

「まあ、親父さんも時間かければ5発ぐらいなら余裕だろうがな。それでも連日連続で、とかになるときつくなるかもしれんし、その分を考えた上での回数だろう」

「ご先祖さんも色々考えたんだなあ……」

「まあ、逆に当時は3回が精一杯だった、ってのもあるかもだが」

「ああ、そっか。そういうのも、アリか……」

 

 すごいよな。

 俺と親父、ホントに、ホントに『普通に』話せてる。

 爺ちゃんとくだらない話しするときみたいに、話せてる。

 

「よし、『お務め』としては今日最後の3回目、イくぜ、親父」

「ああ、なんかちょっと感動だな。お前と一緒に『お務め』出来るなんて」

 

 なんで今、それ言うかなあ?

 俺、ちょっと、ぐっときちまうじゃねえかよ。

 

「ああ、もう、ヤるぞっ、親父っ!」

「おうっ、いつでも来いっ!」

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

「お、親父っ、いいかっ、イけそうかっ? 俺っ、もうっ、もうっ、我慢きかねえっ!」

「いいぞっ、ロクっ、俺もっ、俺もイくぞっ! お前と一緒に、神さんの前でっ、『お務め』っ、ヤリ上げるぞっ!」

 

 親父の檄に、俺、当てられてた。

 もうチンポと親父と、射精のことしか頭に無かった。

 神様の前で、親父と一緒にセンズリしてる。

 がに股みたいに足開いて、チンポ突き出して、ぐちょぐちょ音立ててセンズリしてる。

 

 とてつもなく気持ちいい。

 なんも考えられないぐらい、気持ちいい。

 俺も親父も、頭も身体も、全部チンポになったみたいだった。

 

「あっ、あっ、ああっ、チンポ気持ちいいっ! センズリ気持ちいいっ! 親父と一緒にっ、チンポ扱くのっ、気持ちいいっ! ああ、神様っ! イソタケルの神様っ! 俺っ、イくからっ、俺っ、親父と一緒にイくからっ、見ててくれっ! ああああっ、ああ、あっ、あっ、イくっ、チンポからっ、汁っ、汁出るっ! 親父と一緒にっ、イくっ、イくっ、親父っ、イくーーーーー!!!!」

 

「俺もっ、ロクっ、お前の親父がっ、神さんとお前の前で、チンポ扱いてセンズリしてるっ! ああっ、すげえっ、すげえっ! 息子のお前と、親父の俺とっ、一緒になってチンポ扱いてセンズリしてるっ! ああっ、ダメだっ! もうっ、イくぞっ、ロクっ! お前と一緒にっ、俺はっ、センズリで一緒にイくぞっ! イくっ、あああああっ、禄朗っ、イくぞーーーーーーーーー!!!!!」

 

 たぶんもう、日付が変わるぎりぎりだったんだと思う。

 俺と親父、『お務め』の最後の射精は、この日一番の、とんでもない量の雄汁を噴き上げた。

 

「うあっ、あっ、出るっ、まだ出るっ……」

「俺もだっ、止まらんっ、汁が止まらんぞっ、禄朗っ!」

 

 なんどもしゃくりあげる親父のチンポが、俺の目に入る。

 俺のチンポも、親父がまじまじと見つめてる。

 その視線を感じるだけで、どくどく脈打つチンポが、全然おさまんなかった。

 

 結局、2人とも3分近く、精液噴き上げてた気がする。

 さすがに親父も俺も、道場の畳にべたんと尻を落としちまった。

 体力は柔道の稽古でとうに切れてて、ここまで精力気力で何発も射精してきたんだ。

 藤堂家の『お務め』を果たし終え、ちょっとばかし緊張の糸が切れちまったのは、仕方なかったと思う。

 

「さすがに、最後と思うと、すごかったな」

 

 親父、右手にべっとりかかった汁の匂いを嗅ぎながら、ぼそっと言うんだ。

 その仕草と声と、もちろん汁の匂いと、もうたまんねえ。

 俺もまた、畳にこぼれた汁をすくい取り、自分の口に運ぶ。

 かわらけに乗った2人の汁は、盛り上がったみたいになってて、もう満杯だった。

 

「こぼれたのと、身体にかかっちまった分は最初に舐めちまおう。きれいにしてから、奉納するぞ」

 

 いったん、かわらけを畳において、俺達は互いの肉体に顔を寄せた。

 親父と俺の汗と雄汁が、身体のあちこちにぐちゃぐちゃになってまとわりついてる。

 舌を這わせば、直接感じる親父の汗。

 顔にもべったりへばりついたそれを互いに舐め取る舌の動きさえ、感じちまう。

 

「親父の汗、美味えよ」

「なんだ、精液だけでなくって、汗でも感じてんのか」

「その、親父……?」

「ん、なんだ?」

「これって、その、『務めの香』が効いてる間だけのことなんか?」

「あ? これって、なんだ?」

 

 親父の奴、分かってんのか分かってないのか、こっちには全然分かんない感じで返してきやがる。

 俺、開き直って聞いちまう。

 

「いや、親父の雄汁や汗、俺が美味えって思っちまうこと……。だって、昨日までの俺じゃ、絶対ノーサンキューだったぜ、こんなの……」

「ああ、そうか、そのことか……。答えを最初に言っちまうと、『ノー』だな」

「えっ?! 『ノー』って、その、これから『普通』んときも、俺、親父の、その、汗とか、チンポとか、『美味え』って感じるんかよ?」

 

 俺、驚いたような声を上げたんだけど、ホントはちょっと期待してたんだ。

 なんつーか、こんなこと、これからも親父と、その、ヤりたいって言うか、続けたいって言うかさ。

 さすがになんか恥ずい気がして、こんときは言わなかったけど。

 

「まあ、そうだ。この前の話しでも、俺と親父さんが、今でもたまにやってるってことは言っただろう?」

「それは、そうだがよ……」

「どうやら、この『務めの香』は、こいつに酔っている間に感じたことを、身体と心の深くに、強烈に刻みこんじまうらしい。親父さんが言うには、それこそ一生モンの経験になっちまうってことだ」

 

 俺、親父の話聞いてて、また出したくなっちまってた。

 そんな俺の欲情が伝わったんだろう。

 親父がちょっと慌てた様子で言ったんだ。

 

「おい、とりあえず、いや、とりあえずとか言っちゃいかんな。お前と俺の汁、奉納するぞ」

「ああっ、そうだった! ごめん、親父っ!」

「だから俺に謝るなっ! 神さんに、謝れっ!」

「ああああっ、えっと五十猛尊の神様っ、ごめんなさいっ!!」

 

 2人とも慌てて立ち上がって、どっぷりと汁を湛えたかわらけを棚の上に供える。

 満杯になってた汁が、少しこぼれたけど、多い分には神様も喜んでくれるはずだ。

 

 親父と2人、神棚に向かって正対する。

 ぐっと頭を下げる深いお辞儀を2回、ほんの少しずらした右手と左手で柏手を2回打つ。ゆっくりと心の中で神様に『お役士』を引き継いだことと、今日の『お務め』を終えたことを報告し、五穀豊穣、大漁、林業の繁栄を祈る。

 ついでに、俺、親父と爺ちゃんがずっと元気でいるようにって祈ったけど、別にいいよな、これ?

 最後にもういっぺん、深く頭を下げて、拝礼の儀を終えた俺達。

 

 これで今日の『お務め』は無事に終えたことになるんだろうけど、『お役士渡し』の方は一晩中やるって言ってたよな。

 どうすんだろ、この後?