新入団員歓迎会

~俺達男性合唱団~

その1

 

 最初はこんなところにいるはずじゃなかったはずだ。高校まで地域のラグビーサークルでフロントをやってたこの俺は、大学に受かったら念願の体育会で走り回るとばかり思ってたんだ。

 

 俺、西口雄三、身長174センチ、体重89キロ。リーグ戦に出るわけでもなく体力づくりを中心にしたこの大学の体育会の様子は、商店街のおっさん達と週末プレーでちんたら楽しんでいた俺にとっては、打ってつけのところだったはずだ。
 そんな俺がなんでこんなところに、そう、「男声合唱団」なんてところに、首をつっこんじまったのか・・・。結局、俺にもそのケがあったってことなんだろう。あいつらの、いや今では尊敬してやまない先輩達の、その雄くせえ雰囲気にふらふらついてったってことは・・・。

 


入団

 

 俺の大学では、三月のうちに合格者への学部説明会が行なわれる。朝から始まったオリエンテーションもちょうど昼を迎えるころに修了となった。会場だった教養部の講堂を出た俺は、体育会文化部入り乱れての各サークル勧誘の、すさまじいまでの熱気にあてられてしまったのだ。
 午後からは目当ての部やサークルを覗いてみようと思っていた新入生も、あまりの勧誘の凄まじさに俺と同様面食らったんだと思う。とにかく昼飯をと学食に向かおうにも、勧誘する現役学生と新入生の波の中で前にも進めないほどの混雑だった。
 周りから聞こえる大声の中、どうやらどのサークルも昼飯を自分たちがおごるので仮入部を、との作戦らしかった。

 

 そのときだった。俺はどこの国の言葉なのだろう、うなるような男達の声が響いているのに気づいたんだ。

 

 実際にはもっと前から聴こえてたんだろうが、俺の耳がそれが人間の声の集まり、そう男の集団が歌ってるんだと分かるまでに少し時間がかかったんだろう。今から思えばそれは俺が生まれて初めて聞く、男だけの合唱だった。それはそれまで合唱やコーラスというコトバから連想していたものとはまったく違う、まさに男の中の男にしか出せない、逞しい雄叫びだったように思う。
 俺自身の興味が自分達に向いたのが伝わったんだろう。俺はあっと言う間に応援団かと見まがうような黒い詰め襟の学生服を着た集団に取り囲まれていた。
 取り囲んだ男達は、どこかの体育会の猛者連中かと思うような奴らだった。歌ばっかり歌ってる連中が、なんでこんないいガタイをしてるんかな、とそのとき浮かんだ?マークは入団してみてなるほどなと思うことになる。

 

 気がついてみると学内通路の片側のテーブルに招き寄せられ、俺を含めて10人とはいわない新入生が入団を申し込んでいたようだ。もちろん仮入団って形ではあるが、先輩達に色々聞いてみると団員用の寮はあるし練習日も毎日というわけでもなし、男だけの部活の割には色々と融通が利きそうな感じだ。
 見回してみると不思議なことに入団したらしい新入生もやはりみなガタイのいい奴ばかりが目立つ。飯を食わせてもらいながらの話しでは、入学式前の入寮のことや寮費団費、バイト先の紹介、果ては授業選択の指導までしてくれて俺のように右も左も分からない県外からの新入生にとってはありがたいことだった。そんなこんなで俺も他の奴らも、なぜか魅せられたように入団しちまったってワケだった。

 

 四月の第一週、入学式の3日前。結局入寮日までに門をくぐった新入生は俺も数えて12名。荷物の搬入や手続きは先輩達が手伝ってくれ、男手が何十人もあれば引っ越し荷物もあっという間にとりあえずの部屋に収まっちまう。新入生や先輩達ともに出身も学部も結構バラバラで、かえっておもしろくなりそうだった。

 

 昼飯はいったん寮を離れて歩いて10分ほどの学内の学食だった。新二回生の先輩方の何人かが案内してくれ、気を遣ってくれたのか新入生だけで食えよとみんなの飯代を預かった。飯の間に団に高校のときの先輩がいるという新入生から色々と話しを聞き出してみると、寮の運営は団員学生の自主管理でやってるとのことで財政的にはOBからの協力も大きいらしい。
 もともとは応援団から派生した部活のようで、上下関係含め体育会的な風土が根強いらしかった。

 

 昼からは寮の食堂兼ホールで全学年の先輩達も集まっての入寮入団歓迎会になるというので頃合いを見計らって寮に戻ることにする。さすがに先輩達を待たせるわけにもいかんだろうとみんなで話し、15分前には着くように学食を後にした。

 

 歓迎会が行われるという、寮の食堂兼ステージ付きの広間に戻った俺達新入生がそのとき目にしたものは、みなの度肝を抜くのに十分なものだったのだ。

 


全裸の歓迎会

 

 俺達を出迎えてくれたのは、三十人ほどの男達の素っ裸の姿だったんだ。ステージの手前に整列し、俺達に頭を下げてくれた先輩達は、いずれも鍛えられた筋肉の上にうっすらと脂肪ののった、いかにも雄の臭いを撒き散らしているような男ばかりだった。

 

 寮の門から案内してきてくれた二回生の先輩達も、さっと服を脱ぎ捨てる。俺達一回生の方も訳が分からないうちに他の先輩達に取り囲まれ、身を隠すもの一つない状態にされちまった。
 抵抗した奴もいたようだが、そこは多勢に無勢、新入生一人につき、二、三人の先輩に取り囲まれ、パイプ椅子に座らされていた。

 

 一人ステージ前に残った先輩が話し始めた。

 

「新入生の諸君、ただ今より我が合唱団伝統の入団歓迎会を執り行う」
 背は一七〇センチ、体重は九十キロぐらいか、丸太のような腕を組んだ一人の先輩が話し始めた。前を隠そうともせず、鍛えられた腹筋と下腹部からぶらさがったふてぶてしい程の肉棒が俺達新入生に見せつけるように突き出されている。体毛はそう茂っているわけではなさそうだが、それでも股間や脇にうっそうとけぶるような茂みが雄としての匂いを醸し出しているようだ。
「まずは、新入生諸君、我が伝統ある合唱団への入団に、上級生一同を代表して心からありがとうと言おう。俺はこの合唱団の団長を務める三回生の太田という。突然服を脱がされて驚いたことだと思う。しかしこの寮の中では開寮以来、団員はこの格好が普通なのだ。まずは自分達のこの姿に慣れることから始めてもらいたいと思っている」

 

 いつも裸でいろなんて、いったいこの団はどうなってるんだ?!

 俺達新入団員のそんな戸惑いや疑問に答えるよう、先輩の話は続いていく。

 

「腹を締め付けると発声に必要な腹筋の緊張を得られない」
「合唱指導についての先輩の命令は絶体だが、その他のことは皆でしっかり討議する。そのためにもお互い、ケツの穴まで見せ合った裸のつき合いをしていきたい」
 団長の言葉が進み先輩達の平然とした態度に触れていくにつれて、雄だけの集団の中では、もしかして生まれたままのこの姿が一番なじむのではないか、ということに俺達新入生もなぜか思わされてきている。
 最初は両手で前を隠して座っていた新入生も、団長の話しが終わる頃にはそんな不調法をしている奴は一人もいなくなっていた。

 

 俺達新入生の覚悟が見えたのだろう、それまで一緒に座っていた先輩達が立ち上がり、団長ともども整列しなおす。
 ずらりとならんだ先輩達の裸体は、背の高い低い、体毛の濃い薄いはあるが、皆一様に鍛えられていた。合唱に一番必要な腹筋、背筋はもとより、上半身を支えるどっしりとした太股や、体腔内で声を響かせるために、体をでかく、太くするための鍛錬の成果が見事に表れていたのだろう。
 目の前の男としての見事な肉体に見とれている間もなく、本来の合唱団活動そのものの紹介へ歓迎会は続いていく。

 

 団長の祝辞の後、先輩達がドイツ語だと言う団歌の演奏を聞かせてくれることになった。先輩達は歌う前に軽く発声や準備体操をしていたのだが、そのとき俺達の目の前で、またもや目を見張るようなことが起こり始めた。
 何と、一列に並んだ先輩達の肉棒がゆっくりと、だが確実にそそり勃っていくのだ。

 

 三十人もの男達が、各々のず太い剥けきったチンポをおっ勃てているさまは、まさに「圧倒的」という言葉がぴったりだった。全員の肉棒が最大限に勃起したのを確認したのか、太田先輩の指揮でゆったりとした勇壮な歌が始まった。その行進曲のような力強いメロディーは、聞いている俺の下半身をも熱くさせた。演奏が終わる頃には、俺はおっ勃った自分の肉棒を、まるでせんずりをするときのように強く握りしめてしまっていた。

「今年の一年には元気な奴がいるな。おい、お前、先走りまで垂れてるじゃないか。毎年歓迎演奏でおっ勃つ奴はいるが、せんずりまでかく奴は始めてだぜ。なかなか見どころのある奴だなあ。皆にお前のおっ勃ったチンポを見せてやれ」
 なめらかな肌をした太田団長とは対照的な、ごつい筋肉に全身の体毛がもっさりと茂った副団長の倉田先輩が、俺をみんなの前に引き立てた。他の新入生もほとんどが勃起した肉棒を先輩達の前にさらしている。あいつらもこの団に興味を持ったというそのこと自体が、俺の同類ってことなんだろう。俺の両手は頭の後ろで組まされ、椅子に腰掛けているみんなの目の前で、勃起した肉棒が鎌首をふりたてていた。