月待ちの講 睦月

その3

 

「ぜんぜん小さいなんて思いませんよ。昭則さんのも俺はじっくりしゃぶりたいですが……」

「はは、そぎゃん言うてくるっとなら、おっも良さんのしてもろたごて、こぶってもろてよかかな。浩平のはイくときの顔ば見たかけん、最初は口でするばってん、イくときはおっの手でよかな?」

「昭則さんの太か手でイかせてもらえるのも、嬉しかですよ。それよか、俺の尺八でイってもらってよかっですか」

 

 なによりこの村で若いときから同性同士の交わりで鍛えられている良さんや信治さんの尺八と比べれば、自分の口接の技術など赤子と大人を比べるようなものだろう。

 良さんや信治さんとは祭りのときの経験から快感や射精のタイミングも分かって来たこともあるが、他の団員とはまだそこまでの数がこなせていない。

 うまく感じてもらえるかが、俺自身が不安なのだ。

 よかよか、と言いながら昭則さんがその小山のような肉体を布団に横たえる。

 良さんとの交合で一度イった俺の回復時間を見込んでか、イくのは昭則さんを最初にしようとしてくれてるようだった。

 

「手と口でよかかな。さっきの信治としよっときに何回かイきかけたけん、すぐイくて思うばってん」

 どこか恥ずかしそうに言う昭則さんに俺も笑いながら返す。

「イきそうになったら言ってくださいよ。焦らしてイかせないようにして、ちょっとは俺も楽しませてもらうんで」

「あんまり焦らさんではいよな。浩平と出来(でく)って思て、今日は溜めて来とっとだけん」

 昭則さんと俺のやり取りが聞こえたのか、周りの男達から笑い声も聞こえてきた。

 

 丸太のような昭則さんの足の間に腰を下ろす。

 膝を少し持ち上げてもらい、自分の両足を子どもの胴体ほどもある太ももの下に差し入れる。ちょうど昭則さんの股間が目の前の手の届く場所に来ることになるわけで、俺自身が籠もりの最中に何回も汁を噴き上げさせられた姿勢だ。

 この格好で寸止めを繰り返され、最後のイく瞬間に相手の膝をずらして尻をぐっと持ち上げられると、射精の快感がそれこそ何倍にもなったのだ。

 あの快感を昭則さんに味わってもらいたくて、動かさないままでは太ももの重みに痺れてしまいそうになる両足をぐっと踏ん張り力を入れる。

 

「手、口、手で、みたいな感じでやりますね」

 本人のイキたいときにイってほしいので、わざと順番を口にする。

 

「手でイかせてもろてよかな?」

 年下の俺から言われるのが恥ずかしいのか照れるのか、三桁を数える体格には見合わないような小声で昭則さんが答えた。

 俺はうんうんと肯くと、部屋に何本も用意してあるローションを手に取った。

 

「あっ、ああっ……!」

 手のひらに溜めたローションを擦り付けるようにして先端を握り込む。

 思わず上がった昭則さんの声は短いが、その快感の深さを物語っている。

 この村の男達の肉の交わりの中で幾度と無くこういった刺激は受け慣れているだろう昭則さんですら、肉棒を直接に潤滑油で扱かれる刺激には声を上げてしまう。

 亀頭粘膜へのぬるりとしたそれは、農作業で荒れた手のひらとローションの滑らかさが相乗効果となることを、この俺にも存分に堪能させてくれたものだ。

 

 へそに向けて反り上がる逸物を窪ませた手のひらで亀頭先端を押し付けながら、足側へと押し下げる。

 これは俺もやられて大声を上げてしまったのだが、肉棹が根元から跳ね上がろうとする反発力と押し付けられる手のひらに挟まれた亀頭の感じる圧力は、異様な快感を伴っている。

 この村の男達が得意とする亀頭への責め技は、もはやその凄まじいまでの快感によって、拷問と言っても差し支えの無いものだと思えるほどの苦痛と快楽をもたらした。

 籠もりの間に幾度も繰り返されたその行為に慣れは生じることはなく、回を重ねる毎に一層の強烈な快感刺激に思わず身体を丸めたくなるような衝動を覚えてしまっていたのだ。

 ぐりぐりとこねくり回されるその刺激に、皆に両手両足を身動きとれぬように押さえつけられながら、全身を痙攣させるようにして何度もイかされたものだった。

 

「ああ、よか、よかよ、よかけんっ……」

 昭則さんのチンポに比較すると大きすぎるほどの金玉は、一つ一つが大玉の鶏卵ほどもあるのではなかろうか。

 室内の熱気に余裕を持ったふぐりの表面をぬるぬるとローションで揉み上げる。

 手のひらの中で双玉が逃げまどうように転がる。

 同時に堅く張り詰めた亀頭をぐちゅぐちゅと搾るように刺激する。

 

「気持ちん、よか、よかばいた」

 小山のような腹の向こうからは、快楽を貪ろうとする昭則さんのよがり声が上がる。

 ひとしきり昭則さんの玉と肉棹を堪能した後、まだまだ余裕がありそうな昭則さんの顔をちらっと見ると、少し尻を引き前屈みになる。

 次は舌と唇でじっくり味わおうと、俺は頭を股間へと近づけた。

 

「ああ、こん前んときより、こぶっとの上手(うも)うなったなあ。信治とだいぶ楽しんだっだろたい」

 口での舐り上げはローションでの亀頭責めよりは刺激としては弱いせいか、昭則さんの言葉も笑いを含んだものに変わる。

 俺は次々と溢れ出る先走りを吸い上げるのに忙しく、いや、口の中でこちらの体温にも負けじと熱を放つチンポから口を離したく無かったというのが本音で、昭則さんの問い掛けに舌先を蠢かすことでしか答えられない。

 俺にとってはまだ半月にしかならない男同士の交情の経験は、精通を迎えたばかりの若者のような肉欲の昂ぶりをもたらしていた。

 

 扱いてもらってイキたいとの希望はやはり口より手の強烈な刺激を感じたい表れなんだと思う。

 俺は手と口とでの嬲りを何度も繰り返した後、そろそろ一度イってもらおうかと、昭則さんの大きな肉体の右横に身を寄せた。

 俺がイかせる気になった、ということが伝わったのだろう。それまでは腰を軽く浮かせながら亀頭責めの快感を楽しんでいた昭則さんが、横になった俺にキスをせがんでくる。

 大柄な昭則さんに半分覆いかぶさるように、唇と唇を合わせる。舌先を互いに動かしながら口中の快感を探る。

 右の乳首を爪先で強めに摘まむとビクビクと巨大な肉体が反応する。

 

「そろそろイかせてもろてよかな? たいがな気持ちのよかばい……」

 かすれたように聞こえる昭則さんの低い声が、それだけで媚薬を嗅いだような気にさせてしまう。

 

「ローションたっぷり使います。2回ぐらいは寸止めしますけど、こらえてくださいね。その後はもう扱きまくりますから、存分に感じながらイってください」

 籠もりの間にうっすらと感じていたのだが、目の前の昭則さんや篤史さんには、純粋な意味では違うのかもだが、もしかしていわゆるSMと言われる中でのM側の感覚があるのでは無かろうかと思っている。

 

 俺自身も神事の強烈な経験で植え付けられてしまったのかもだが、これまで生活の中ではなかなか経験出来なかった「される側」の快感に気がついてしまった。

 ましてや過疎化が進む中でみな幾度かは経験しているであろう祭りの権立としての振るまいは、それがもたらす「他人の手で己の射精をコントロールされる」ことへの期待値を嫌がおうにも昂ぶらせてしまう。

 白沢さんの祭りとは、この村の男達にとり、それほどの強烈な性体験の場でもあったのだ。

 

「おおっ、おうっ、イくっ、イくけんっ、イくっ!」

「よかですよっ、イけっ、イけっ!」

 イきそうになる直前に手を止める寸止めを三度ほど繰り返すと、昭則さんが「イかせてくれ」と呟いた。

 その声が聞こえて満足した俺が、ローションを補充しぬちゃぬちゃとした棹中心の扱き上げを始めると、焦らされた挙げ句の刺激に一気に射精感が襲ってきたのだろう。昭則さんが大声を上げて頭を越えるほどの白濁液を噴き上げた。

 放心したような昭則さんの右乳首をねろねろと舐め回すと、びくびくと反応する様がおもしろく、ついつい軽く歯も当ててしまう。

 

「ああ、イッてすぐは、きつかばい」

「白沢さんのときに俺も何度もそう言ったのに、昭則さんもみんなも、そのまんま扱き続けてくれたっじゃなかですか」

 思わずの声が漏れたであろう昭則さんに俺が返すと、周りの連中も一斉に笑い声を立てた。

 

 一息ついた昭則さんが俺を横にならせ、やはり利き手の関係か右側に巨体を寄せる。

 自分の胸と腹に垂れる雄汁をべったりと右手で拭うと、ローションをその上に垂らして俺の先走りまみれの肉棒をみっしりと握りしめた。

 顔にもいくらか飛んでいた昭則さんの匂いが雄汁まみれのチンポを扱き上げられると、一層強烈に立ち昇ってきた。

 その匂いと間近に見る昭則さんの男らしい顔立ちに、俺はもうすぐにイきそうになってしまう。

 

「あ、あっ、もう、イきそうですっ、イッて、イッて、よかですか」

「よかよか、今日も何度でんイッてよかっだけん、イけっ、イケっ!」

 祭りのときほどではないが、それでも複数回の射精をするだろう俺を慮ってか、焦らしや寸止めは一切行わずにイかせてくれるようだ。

 まさに本能のおもむくままか、射精したいという男としての欲望と欲求をそのまま受け止めてくれる昭則さんの男心に、俺はその瞬間、惚れてしまっていたのかと思う。

 いや、これはおそらくは青年団の連中全員に俺が思ってしまっていたのかもとも思うのだが。

 

「ああっ、イくっ、イくっ、イくっ!!」

 大きな身体と手の平から受ける握力そのままに扱かれた棹から噴き上げた汁は、二度目にもかかわらず、かなりの量だったようだ。

 俺自身の胸を飛び越え、身を乗り出して扱いていた昭則さんの顔も直撃してしまう。

 目には入らなかったようだが、頬と鼻からどろりとした汁を垂らす昭則さんの顔を、俺はこれ幸いと舐め回した。

 

 口の中で俺が自分の出した汁をぐちゅぐちゅと唾液と混ぜ合わせていると、昭則さんが唇を寄せてくる。

 ぴんと来た俺が、口移しに俺の雄汁を渡せば昭則さんもまた自分の唾液と混ぜては返してくる。

 信治さんとの交情でこの村の男達が互いの汁を飲み合うことは知ってはいたが、何度も繰り返すその様を見ている周りの連中もまた、周りに漂うその独特の匂いと行為のいやらしさに興奮の度合いを増していくようだった。

 

 良さん、昭則さんと続いて朋久さんの番となったが、それまでの流れのせいか、朋久さんと篤志さん、道則さんと俺との計4人での交情をしようとなった。

 どうやら篤志さんと道則さんの同学年コンビに朋久さんも乗っかったようだが、籠もりのときには一方的に責められるだけだった俺からしてみたら、複数で1人を責めるというのは初体験のことでもあり、かなりそそられるやり方だ。

 

 先ほどまでも3人で代わる代わる楽しんでいたようだったが、これが4人となるとまた勝手が変わるのだろう。

 最初に篤志さんが俺に団員みんなが喜ぶという責め方を教えてくれたのだが、これがまたいやらしいというか、男責めのテクニックの集大成というか、すさまじいものだった。

 

「浩平は右利きたいな。

 だったらまず左手の中指を伸ばしてかる、尻ん穴ん周りばゆるゆると撫で回すとたい。

 で、残った4本の指と手の平で金玉ばぬるぬると揉んで、中ん金玉ば転がすごてして刺激すっとたい。

 こっだけでんたいがな感じるけん、今度は右手にローションばぐっさん取っちからな、チンポの棹を扱き上ぐっとたい。

 先っぽは口でこぶりながら、たまにゃ右手ば滑らせてぐりぐり刺激してやっと声の出るごつよかけんな。

 朋久さんが最初に真ん中ばしてもろて、俺っとミチの2人で乳首ば口と指で弄ってやって、交代交代でキスもしていくけん。

 今日は最後にみんなで浩平にもしてやっけん、まずは汁ば搾り出すのば俺ったち3人に順番にしてはいよな」

 

 1人の横たわった男に対し、周りを囲む3人がそれこそ男の感じる部分すべてを嬲りたおす。

 キス、乳首、首筋、脇腹などの上半身は左右に横たわった2人が担当し、3人目の俺が肛門と玉、チンポと亀頭を延々と刺激する。

 これで悶絶しない男がいたら相当な強者であるのだろうが、この村の男に取っては一同の眼前で声を上げ、より強くふぐりに溜まった汁を噴き上げることこそが、互いの快楽と尊厳を高めることにほかならない。

 互いの快感を貪欲に求めていくことそのものが、より男らしい、人間らしい営みとして認知されているのだ。

 もちろん寸止めを繰り返し、イく寸前の快感を長く味わう楽しさも堪能してはいるのだが、あくまでも最終的な快感の爆発としての射精を前提としたものだろう。

 繰り返した射精のあとに、柔らかさを取り戻した肉棒をゆっくりとしゃぶり上げ、ゆるゆると揉みほぐす快感もまた、楽しみではあるのだったが。

 

「俺ったち3人が真ん中になるとば交代しながらすっけん、浩平はチンポば弄ったりこぶったりすっとば楽しんではいよな。

 3人ともイッたら、浩平ば真ん中にしてイかしてやるけん、楽しみにせなんばいた」

 聞いてるだけで俺の三度目の吐精を期待する股間から、先汁が染み出すほどの内容だった。

 

 最初はやはり朋久さんだ。

 団員の中で一番小柄な朋久さんではあるが、畑仕事で鍛えられたがっちりとした骨太の肉体は、豆タンク、とでも呼ばれそうな肉感に溢れている。

 俺や信治さんほどでは無いが全身に渦巻く体毛も、白い布団に上では情欲を滾らせる材料となってしまう。

 股間の逸物は昭則さんとさほど変わらぬ大きさのようではあったが、その体格との比較で太く見えてしまうのは仕方の無いことだろう。

 先ほどまでの篤志さん、道則さんとの交情で一度は噴き上げてしまったのか。黒毛茂る股間から立ち昇る性臭は、周りの男達の勃起を嫌でも誘ってしまうのだ。

 

 朋久さんの右側には道則さんの巨体が陣取り、反対側には篤志さんがそのむっちりとした肉付きの身体を横たえる。

 開いた足の下に先ほどと同じように俺が両足を差し込んで朋久さんの腰を浮かせると、周りからは宙に突き上げた股間の逸物がより一層強調されて見えることだろう。

 

「うあああっ、うがあっ、あ、あがあっ!」

 

 4人に責め続けられる朋久さんのよがり声は、もう獣が上げているのかと思うほどのものだった。

 後から俺もやられて思ってのだが、この3人に囲まれた体勢は、股間や胸、尻穴への責めを避けようにも、自分の身体の動かしような無いのだ。

 そのあまりの刺激の強さに身をよじって逃れようとしても、左右はがっちりと2人の肉体で支えられ、あまつさえ両足も2人の膝下を絡めて閉じることすらかなわない。

 これが立ち姿での責めであれば腰を引いて逃れようとも出来るかもしらないが、布団の上で俺の膝で尻を持ち上げられいれば、まったくの逃げ場すらない体勢だ。

 この状態で互いに違う強度と緩急の責めを受け続ければ、まさに「おかしくなる」ほどの快感が全身を襲っていく。

 自分自身もやられて初めて分かったことだが、責められている最中は、いざどこが感じているのかが自分でもまったく分からなくなり、戯れ言としての声かけの「どこが感じるんだ?」との問いに「全部……」と答えるしかなくなるものだと知ったのだ。