南方第二騎士団の壊滅と

獣人盗賊団への従属

その1

 

発端

 

 今は昔のこと。

 AS歴678年、イシアン王国南西部の丘陵地帯。

 都市部からは徒歩移動距離にして10日も離れた辺境の地にて、小さな集落に獣人を主たるメンバーとした盗賊団が現れたとの情報が南方騎士団へと届けられた。

 

「して、被害はどのようなものだったのか?」

「住民への暴力行為などは略奪時における拘束以外は見られなかったようであります。しかしながら、中央納入用収穫物及び備蓄用食料、さらには家畜10頭ほどに被害が及んだとの報告を受けております」

「人的被害が出ておらぬのは幸いだが、なんとも中途半端な物取りの犯行だな……」

「ただ……」

「ただ? どうした? 何か他に、被害があったのか?」

 

「村人の中にて、性的な行為を強要されたものが幾人かおり、そのうちの数名におそらくは性的接触及び体液注入による上位自我発生と思われる症状が顕現しております」

「獣人に対しての獅子フェロモンにての陥落があったのか?」

「いえ、遠距離における意識支配では無く、人族に対してのあくまでも肉体的な直接の接触の結果のようであります」

「熊獣人、猪獣人が野党どもの中におったということか?」

「それが……、若い獅子族の目撃情報もあるのですが、熊族、猪族は不在のようでした……」

「ふうむ……? 獅子族の存在、というのも不思議だが、それでいて獣人では無く人族の方に矛先が向いたのか……?」

「報告によりますと、どうやら犬族、いや、犬族に類似した獣人がリーダー、他に犬族、牛族、獅子族の混成集団との報告となっております」

「……、獅子族がいるとなると獣人のおる部隊では対応できんな。ちとやっかいな奴等のようだが、近くに派遣できる騎士団はおるのか?」

「人族のみですと巡回騎士団中の第二騎士団が移動2日程度のところにおりますので、そちらに追跡を命じております」

「おお、ボルグ団長のところか。あそこは手練れも多い。報告を待つこととしよう。他の巡回騎士団へも現況情報を共有し、なにかあればすぐに報告せよとの伝令をだせ」

「仰せの通りに」

 

 この時代でも、獅子族が発する生体フェロモンの働きにより、人族以外の獣人種族が対抗しえないことは、既に衆知の事実である。

 そのため獣人を中心とした野盗等への人族中心の編成対応は当然のことであり、獣人に比べ劣る人族の機動力・戦闘能力については、個々人の技量研鑽による練成を熱心に行うことより、その彼我の差を埋めることとなっていた。

 小集団行動を行うべく編成された巡回騎士団員達の力量はおしなべて高く、周囲周辺の村落、獣人類全体での治安維持部隊として、尊敬を集める存在ともなっていたのである。

 南方警護を担う騎士団には本部詰めの団員の他に、巡回部隊として、獣人のみでの構成による第一騎士団、人族のみでの構成による第二、第三騎士団、獣人類(人族を含む)混成による第四騎士団が存在する。

 

 騎士団司令部より事態の収拾と盗賊団と目される獣人集団との接触が命じられたのは、人族を中心とした南方第二騎士団であった。