南州日報子どもニュースより

 

SA暦650年1月1日付

南州日報子どもニュースより

 

新連載

新年を迎えて

-SA暦650年にあたって-

 

 古きを訪ね、新しきを知る、という言葉があります。

 今年はSA歴650年。新年にあたり、私たちが住む、この「今の世界」が、いったいどのように成立してきたものなのか、教育校で教わる内容とは少し違う視点で書いてみたいと思っています。

 連載1回目の今回は、大変容と呼ばれた未曾有の災害を起点として、旧暦後期の時代からSA歴の始まりまでの歴史を駆け足で振り返り、私たち自身と旧世代との違いが何によって生じてきたものなのか、しっかりと見ていきましょう。

 

 

その1.大変容よりSA元年

 

-「大変容」を経て-

 

 今からほぼ800年ほど前、旧暦(AD暦)2036年(2038年とする説あり(注1))、北半球では初夏を迎える時期に、ユーラシア大陸南東部より、当時新型の流行性感冒ではないかと疑われたミクソウイルス感染が広がった。発熱、全身倦怠感、関節の痛みなどを主症状とするこのウイルスは非常に強力な感染力を持ち、その後8ヶ月ほどの間に当時の人類生存域すべてを発病域とし、初発以来24ヵ月経過後の感染者は、世界人口比率99.9998%を数えるにいたった。

 実際にはウイルス蔓延後しばらくしてからのことではあったが、このウイルスはすべての感染した「女性」(注2)の持つ卵子(注3)内の染色体異常を引き起こすことが確認される。

 とりわけX染色体の重合による受精卵不成熟性の発現は、新しい生命の発生時における「女性」性を一気に失わせることとなった。

 

 現在のような人工胎盤技術の無かったこの時代、仮に感染禍前に保存されていた卵子を利用しての人工授精においても、成長母胎の感染により受精卵の致死性が発現する。

 さらに胞子休眠形態を取るウイルスの大気中からの根絶は不可能であり、たとえある個体に対して人工受精卵より成人に至るまでの完全な無菌隔離が出来たとしても、他の感染ストレス等に耐え得ないことはAI上でのシュミレーションでも明らかであった。

 北半球における翌年春を待たずして、新規「女性」児の懐妊(注4)は皆無となり、妊娠(注5)5ヶ月を過ぎた胎児の性別割合がすべて男児で占められることとなった。この時点において、医師をはじめとする専門科学者達は、近未来における人類の死滅宣言を行わなければならないことを悟っていた。

 

「大変容の年」と呼ばれるこの年以来、雌ホモ(XX)型女性は、この地球上では誕生していない。

 

 当時の人口の半数近くは「女性」だったとは言え、この年の終わりには、その時点で生存している女性以上に、この世界にダブルXの染色体保持者を生み出すことができないことを実質的に理解した各「国」(注6)は、存命女性とその体細胞、卵子の確保・保存にやっきになっていた。

 当時にしてみれば、人類の存続がおそらく200年近い将来(当時の平均寿命は80年程度)に途絶えてしまうという未来予想は、その後100年以上続く混乱の時代を招くこととなる。

 

 この「大変容」の年よりほぼ20年間は、国単位、集団単位においての「生殖能力のある女性」(注10)の確保が、その構成する社会の第一義の存在目標となりえていた。

 この時代、世界は200近い「国」に分かれ、各々の国内でさらに大都市、中規模都市、小規模都市、群落と分かれていた。当時の人類は個々の国家間の動きに違いはありつつも、総体としては人口の根本的増加手段を奪われたことにより、地域的にも、心理的にも属する集団を大きくすることにより、人口減少のスピードを遅くしようと動いていく。

 もちろんこの時期においても、存命女性よりの卵子の摘出・保存、人工的な母胎形成の模索といった当時の科学的な立場からのアプローチは進められていたが、一種の「時代的パニック」(注11)に陥った社会は、「女性」を「生む機能の保持者」としてしか認め得ることが出来なかった。そのため当時の社会は「女性」の隠蔽・監禁による強制的な妊娠・出産、あるいは略奪といった非常に暴力的な行為の頻発する状況へと突き進む。

 その流れは容易に各国間のこぜりあいから地域紛争、そして世界戦争へと時代を運んでいくこととなった。

 

 旧暦2060年前後、(発射原因は様々な推測がなされているが)中東の一国を飛び立ったと見られる一発の核ミサイルが、ユーロ圏西部、旧フランス地方へと到達。

 引き起こされた連鎖的な地域防衛システムの相互作動は、わずか2日間で当時の世界都市のほとんどを荒廃へと導いた。(いわゆる「四日間戦争」=「第3次世界大戦」=「大戦」)

 幸いにも「きれいな核」として進歩していたミサイル兵器の大半は、後世に響く放射能は残さないものであったが、当時の人口集中地への正確なミサイル到達、大気内への大量の粉塵巻き上げ、またその結果の生産・生活手段の欠乏による飢餓、社会体制の崩壊などにより、地球人口は72億を数えた「大変容」時に比べ、この時点で20分の1近くまで落ち込んだと推測される(注12)。

 

 当時の現存女性のほとんどが閉経年齢(注13)を迎えていたこの時期、大都市への人口集中によりかろうじて国としての体裁を保っていた各国々は、この戦争による都市崩壊により一気に中央集権的な「国」の束縛を離れ、ネグロイド、コーカソイド、モンゴロイド、オーストラロイド等の、現人類での分類基礎となる民族と言語集団毎の、原始共産制に近い集団活動へと変質していったものと思われる。

 

 「大変容」より「四日間戦争」にわたるこの時代に失われた様々な技術、文書記録、その由来する歴史証拠は膨大なものではあるが、大戦以前より当時世界政府を視野にも入れていた「国連」(注14)の活動下において、記録・研究者・施設の保護がなされていたことは、後の時代にとって大きな支えとなっていた。

 

 

-現体制を支える「3大発明」-

(人工胎盤・雄ホモ(YY)型人類・家族制度)

 

 大戦後の混乱も一段落した旧暦2071年、旧国の一部ではかつての技術力を取り戻しつつあった。

 それら地域集団の中で、私達の暮らす「日本」地域(モンゴロイド族)と、ユーラシア大陸の大部分を占めていたモンゴロイド・コーカソイド混成族「ロシア」地方との科学者の協力により、人工胎盤及び人工子宮による初めての受精卵着床と、その分裂成長が成功をみる。

 これは当時すでに完成していた人工授精、人工羊水、人工血液の技術を基礎とした、現在の人工単性生殖・社会システムの基盤となる3大発明の一つとなる技術革新であった。

 

「大変容」以前の科学においても万能性細胞よりの生殖細胞の作成は実現していたため、当時の男性形態である雄ヘテロ(XY)型染色体プールよりのX染色体の汲み上げと分離、また女性存命時の体細胞および卵子の大量保存により、「女性」性復活のためのX染色体そのものの数的確保については心配はされていなかった。

 しかし、遠未来を指向した遺伝子工学者の中には、この時期、また別の不安を感じるものもあった。

 

 旧世代における性決定遺伝子として働くX染色体およびY染色体には、視覚的にも見分けが着くほどの大きな特徴として、その相対的な大きさの差異が生じている。これは人類という種が、性染色体における両性決定を選択した瞬間より発生している、ある意味「性決定遺伝子上の定め」として機能してきたものである。

 

 一対の対遺伝子を元とした性決定システムにおいては、本来AA、Aa、aA、aaの4形態(表現型としては3形態=3性)が発生すべきであるが、人類が当時獲得していたAA、Aa、aAの3タイプでの性決定システム(表現型としては2形態=2性)では、対となる遺伝子を持ち得ないaタイプの遺伝子相続において、転座・欠損・過剰等の何らかの遺伝子異常は、そのまま、染色体本体の欠落として後世に引き継がれてしまう。

 そのため「雄」という表現型の生命の中で、補完すべき相同染色体を核内に持ち得なかったa=Y遺伝子は、なんらかの異常が生じた際の染色体部分欠落を補完することが出来ず、欠落欠損におけるその染色体そのもののサイズの矮小化を、種の発展とともに進めることとなった。

 

 旧暦時代においても、1000以上も遺伝子部位を持つX染色体に対し、わずか148の遺伝子部位しか持ち得ないY染色体の将来の欠損・消失論が叫ばれてはいたが、おそらく100万年単位で行われる染色体の矮小化は、近視眼的な未来への影響は小さいものと思われていた。

 しかし、女性性の喪失という人類の存続に関わる難問が突然降りかかったこの時代においては、学術として十分に考慮を促す命題として、この問題の存在がクローズアップされることとなった。

 一部の遺伝子工学者の中に、その時代、かつてのダブルX女性と同じシステムを用い、これ以上の遺伝子欠落=Y染色体の矮小化、を防ごうという考えに至ったものが出てきたとしても不可思議ではなかったと思われる。

 

 このような医療科学者・技術者の漠然とした不安を背景にし、現在の普遍的生殖形態である単性生殖システムの構築にあたり、必須条件となるもう一つの新技術がこの時期に発見された。

 ダブルX(雌ホモ(XX)型)染色体における致死遺伝子の発動を止めるすべは各種アプローチからもいまだ進展が見られないが、当時の研究の副産物として雄ホモ(YY)型男性を生み出すに至った遺伝子工学の進展が、その二つ目にあたる。

 

 元来、X染色体上にのみ存在するとされていた、免疫や神経系、血液関係など、生命維持に欠かせない各遺伝子群は、人類という種においてはY染色体のみの個体を発生させえないという、性決定における一種のブレーキとして働いてきた。

 このX染色体のみが持つ生命維持機能のため、雄ホモ(YY)型男性の出現は従来の遺伝子学では不可能とされたものであった。そのため、当時の科学者達に大きくのしかかった命題として、Y染色体上にこの生命維持機能を持つ遺伝子を乗せうる可能性の追求が行われることとなる。

 

 この技術の確立にあたっては、かつて人種的に皮膚がん等に悩まされてきたオーストラロイド族の技術貢献が非常に大きなものとなった。

 ロバートソン転座(注15)を任意に適用する遺伝子工学の技術進歩が、X染色体上の主に長腕部分に見られた生命維持遺伝子群をY染色体上に乗せ換えることに成功した。

 その成因としては、Y染色体のほとんどは性決定遺伝子としては機能していなかったことがあげられている。

 

 Y染色体への生命維持機能を持った遺伝子群の任意の転座技術により、それまで不可能とされた雄ホモ(YY)型男性の発生・成長技術が確立された。

 このこと自体は遺伝子工学上の大きな進歩であったが、男性単性社会の構築過程にあった当時の文化的側面から、人類の遺伝子プール上からのX染色体の不必要性が叫ばれてしまったことも見逃せない事実である。

 

 もちろん、当時の遺伝子工学者・社会科学者達の大部分は「人類遺伝子プール内にX染色体を保持する形での生殖形態を残し、将来のダブルX型人類の再生を」との声明を発表している。

 この時代のX染色体への遺伝子プールへの掬い上げの是非を問う争いは、後世において、「第一次遺伝子危機」(連載第2回を参照のこと)と呼ばれることとなる。

 かつてXX遺伝子を保持している女性との対性として存在していたXY型の男性遺伝子保持者が、現人類内に見られない要因も、大きくは第一次遺伝子危機に起因するものとされているが、それ以前よりの議論過程にも注意しておく必要があろう。

 

 現人類においては当時の研究技術到達および社会性負荷要因の動勢により、ほぼ人口を二分する形(注16)で、雄ヘテロトリソミー(XYY)型男性(注17)と雄ホモ(YY)型男性の、同性二種が存在する形となっている。

 現人類のすべてがその恩恵にあずかっている、胎児の人工子宮における育成課程においてその掬い元となる遺伝子集団は、「大変容」よりのかつての女性を元とするX染色体プールと、現存人類が持つXおよび生命維持機能を持つY染色体を双水源とする、一大沃地をなしている。

 

 最後の一つについては発明とは言い難く、自然発生的に発現したものではあるが、現在のほとんどの地域、集団で確立されている、「男性単性社会における『家族』集団の形成意義」が上げられる。

 現在の家族集団を理解する上では、表現型に現れる現存人類のいくつかのタイプへの理解が必要となる。

 

 かつては女性男性両性の優位な性差と見られていた体毛の発生の有無(主に体幹部・手足の発毛における)が、Y染色体によりもたらされるいわゆる「男性性」の強調により、同性個体間の差としてより鮮明になって発現することとなった。

 

 体毛発毛については、眉、睫、腋下、および性器周辺の発毛は旧男性と同じく現人類全体に見られる。特にYY型人類の場合においては、視覚的特徴がより顕著になる傾向が見られ、頭髪の発生ありの個体の場合は髭は薄く、頭部より後頭部にたてがみのように続き、背中上部から腰、尻肉が体毛で覆われる。この場合、胸部・腹部全面の発毛は比較的少なく、性器周辺の発毛が逆に目立つ形となる。

 もう一方のタイプは、頭髪発生が見られない禿頭形となり、その場合、反対に耳下腺以下の髭は濃くなり、体幹前部(胸部・腹部)も含め全身が鬱蒼と茂る体毛で覆われる。そのため性器周辺の体毛は腹部よりの発生毛と一続きとなり、前面から観測した場合は首から下の全身が毛深い印象を呈する。

 

 どちらのタイプにおいても脚腕における発毛は顕著なため、個体により大きな差も発声するが、大きく分類すれば禿頭傾向にて全身発毛が見られるタイプと、有髪にて身体背面の発毛が目立つタイプに分けられるといえよう。

 

 XYY型人類の場合はYY型ほどの顕著な違いは見られないとされてはいるが、それでも旧人類男性に比べると体毛発生の頻度濃度そのものが高く、現行人類そのものの体毛発生率は高い。

 人種と呼ばれる族の違い(モンゴロイド等)を別とすれば、視覚的に

 

XYY 有髪+体毛薄い

XYY 禿頭+体幹前部体毛

YY  有髪+体幹後部発毛

YY  禿頭+全身体毛

 

という4タイプへの分類が行えることとなる。

 

 遺伝子プール的にもX:Y比が1:4となり、このタイプ4人をセットとして考えた場合に染色体比率が全体形成割合と同一となる。

 そのため、この4人を1ユニットとして生活任務を果たす「家族」を基本形態として機能させることが普遍的になっていった。

 もちろん、家族構成員の個々の心理接合値の大小や地域性における発現型バランス割合などによって、この4タイプすべてを網羅しないと家族形成が認められないというわけでは決してない。

 しかしながら、「どのようなタイプとも有益な肉体関係を取り結ぶことが出来る」ことを最上とする現在の教育理念下において、教育機関としての役割をも果たす家族形成には、やはり4タイプユニットでの形成が望ましいとされている。

 

「家族」形成にあたっては、人口流動の大きな地域においては自然発生的に形成されてもかまわないし、また、適当な形成が難しい場合においては、統制局含む行政組織によって、ゆるやかな「お見合い」形成が行われることもある。

 形式的には個人間の契約と対行政組織への契約との二重契約として形成され、成立すれば、一定の社会保障上乗せ分が恩恵として与えられる。

 とりわけ若年層の受け入れ組織としての家族形成を望むものは、同居形態確定後、最低2年間の心理的・肉体的適性テストを経て、中等教育対象者以上の教育義務を負うこととなる。その際は受け入れ若年層の人数により、個人生活者・4人家族構成員のみの家族よりも付加価値の高い社会保障が保証される。

 

 

-現存人類の特徴-

 

 先に上げたロバートソン転座の任意適用における、X染色体よりY染色体への生命維持遺伝子の導入の際、それまでのXY型人類に比べ、現生人類に随伴して現れた特徴として、第一生体バリアとしての皮膚の強性変化、また感染性疾患および体内侵入物に対しての体内免疫力の強性変化が第一に挙げられるものである。

 

 免疫力および皮膚機能の強化に伴い、かつて地球上のほとんどの地域で必要とされた周辺温度と体表温度の是正、体表面の汚染、傷病防止のための「衣類」の着用が、極寒極暑地域を除き不要となった。職業的必要性や生活上の汚染、高低温、傷擦への防護に対する時間区分的な防護服・エプロン等の着用は見られるが、通常の屋内生活局面や就寝時においては、ほぼ全裸体で過ごすことが普遍となっている。

 

 体表皮膚より若干温度変化(特に高温下において)に弱い睾丸部位の保護のため、我が府では「下帯」と呼ばれる布衣を着用する傾向が見られる。

 着用時の刺激感を求めるものは「褌」「六尺」型等と呼ばれる長い布を2重保護の形で股間で取り結ぶ形式のものが使用される。布衣としての機能よりも生活面での機能性に着目した場合、また股間への刺激感を必要としない層は、「股掛け」「越中」型等とよばれる短い布での着用を行う。

 近年、社会通念上、初等教育年限のものが「股掛け=越中」を、中等教育年限に上がるさいに「褌=六尺」を着用するという形式が州内の多くの地域で見られるが、これについては機能性による選択とは異なり、成人への通過儀礼として、文化性の局面として捉えられている。

 

 またこれもかつてはほとんどの人類が必要としていた、下部脚部保護のための「靴」もしくは「足袋」「靴下」等の不必要化が進んだ。

 衣類と同様、生活局面での極寒地域での着用および、職能局面での危険防止のための着用以外では、現存人類での日常生活においての「靴」の着用事例はほぼ見うけられないまでに至っている。

 

 ダブルY遺伝子および、XYY遺伝子を保持した現人類は、かつてのXY染色体を保持していた「男性」に比べ、身体的な特徴は(かつての「女性」と対比した場合の)より「男性的」な特徴を帯びることとなった。

 特徴的な変化としては、体格および外性器の巨大化・性衝動の活発化・精液生産能の高まりによる射精回数の大幅な増加・筋肉群の強発達・身体運動能力の向上等を主とする。

 また、生命維持機能のY染色体への転座に伴い、免疫力の強変化を主たる要因とし、それまで平均寿命において別性の「女性」より短命であった「男性」が、現人類への移行に伴い、飛躍的に統計上の平均寿命を押し上げる結果となっている。(18才時点において平均寿命到達点 XYY型 141.5才 YY型 139.9才)(注18)

 

 体格については、発生系別の族により若干の差異は生じるものの、現在のXYY型保持者の平均的成人(30才平均)の身長が184㎝、体重が125㎏を越し、YY型保持者成人については、平均身長はXYY型保持者とそう変わらぬものの、平均体重については140㎏を越すにいたっている(注19・以下身体数字について同)。(体重差異については平均体重において、どの年代においても約5~7%の差が生じているとの研究報告も散見される)

 また、運動能力については体重150㎏を越す個体群においても体脂肪率がほぼ20%以下と筋肉重量の占める割合が高く、瞬発力、持続力ともにXY型男性より大幅な上昇が認められる。

 

 外性器についてはYY型、XYY型について有意な差は見られないが、第二次性徴期に一気に増大し、30代成人においては、勃起時の腹面計測23.8㎝、背面計測25.7㎝を平均とする。

 性的な数値については、かつてのXY型男性に比べ、勃起回数および持続時間の増加、射精欲の昂進、射精回数・射出精液量の顕著な増大等が見られる。

 精通後の成人平均において、性的な欲望での勃起回数は一日平均29.4回、射精回数一日平均6.9回、一回の射出精液量は統計資料によって大きな差はあるものの、おおむね12cc~35cc程度を平均とする。また、それに伴い、一回の射精時間も30秒から50秒程度持続し、大量の射出の際には2分近い性器の律動も観測される。

 

 旧暦時代においては文化的に隠されるべき(ときとして羞恥を伴う)行為として認識(注20)されていた、女性男性両性間の「性行為=性交」は、現在の単性社会においては字義的に存在しえない。

 それに置き換わるかのように「認識としての射精行為」は、自分で行うもの、他者に行ってもらうもの、そのすべてにおいて「社会的に遺伝子プールの蓄積に有用な精液を、快感を伴って作出する行為」として、現人類全体の共通認識になるにいたった。

 

 

 旧暦2168年、この地球に残された最後の雌ホモ(XX)型女性(注21)が延命処置の効無く、138才の生を終える(注22)。

 ここに人類は性の伴侶としての「女性」を永遠に失うこととなった。

 

 この年を旧暦の最終年とし、後に単性時代 Singlesexual Age 元年(SA暦元年)と呼ばれることとなる。

 

 

 

次回連載-SA暦650年にあたって- 

 

その2.

2回にわたった遺伝子危機とは

 ~政治と科学の間で~

 

その3.

知と血の共有と継承を目指した社会

 ~教育と社会システムの融合~

 

をお楽しみに!

 

 

 

 

校注

 

1 リビア・メイル 「混乱の時代」 608年 ロンドンドリー出版会

2 かつて存在した人類の別性形態 自然生殖における受精卵の体内生育を担う

3 「女性」性における減数分裂後の生殖細胞 現人類の精子と対をなす

4 「女性」体内における受精卵の着床・成長を指す

5 注4と同意

6 当時は地球上に地理的環境や社会体制、宗教(注7)的見地、人種(注8)等の違いにより土地上の境界をもとにした「国」と呼ばれる個別の集団が存在した 現在の「府」に近い(編集部)

7 「神(注9)」の概念を中心とした精神的な求心力を持った集団 楢木信二 「古代国家における精神旅団」 594年 東州第二大学校人文科学科出版物より

8 現人類の族分類に似た集団分類

9 「精神・概念上における絶対的な存在」 注7 同著

10 注4を行える身体的適性を持つ存在 当時の平均寿命80才台中15~60才程度のほぼ45年間程度とされる サーザニア・ド・アイル 「西暦時代における西欧羅巴の女性性の発生と成長」 オラトリア大学校生化学部研究紀要 第46期 第2節

11 注1 同著

12 ノホーチ・ガルデン 「大戦 その傷跡と復興」 62年 クラフツカ出版

13 「女性」が注4を遂行できる肉体的期間の終了を現す

14 当時の国家間の政策調整にあたった機関か 諸説あり(編集部)

15 染色体間の転座の一形態 通常は劣勢形質を生む(編集部)

16 ドナルド・モーガンスザ 「性決定」 622年 リーン書房

17 厳密には相同染色体×3では無いため「トリソミー」の名称はふさわしくないと思われる。接頭語「トリ」の主意「3」の適用か(編集部)

18 「南州地方中等教育校における身体保健記録」 南州地方教育委員会資料 648年版より

19 WHHO 「地域抽出における平均数量算出資料」最新版(646年版)より

20 注10 同著

21 固有名詞不詳 「マザー」(注22)と諸誌にあり

22 旧暦時代 家族内で注4を担った女性性の総称か(編集部)

23 サガラミ・モリ「女性性の消失」 24年 春日書籍