その10 合宿を終え
「ふあー、なんでホテルや旅館の朝食って、食べ過ぎちゃうんでしょうね」
「いや、お膳料理なのに、田畑君がご飯と団子汁を3杯お代わりしちゃったせいじゃないのかね?」
「確かにボリュームはありましたけど、お代わりしなきゃ、食べ過ぎとまではいかなかったような……」
「もう、山崎さんも先生の味方して。ねえ、西田さん?」
「あ、ああ……。いや、俺も団子汁美味かったので、2杯もらっちゃったし、人のことは言えないし……」
朝食を終えた山崎達が、チェックアウトまでの時間を部屋でくつろいでいた。
ゆっくりと起きた4人と違い、村岡達は朝食分をおにぎりなど握ってもらい、早朝に宿を出立したとのことだった。
「それにしても、昨日はあの場をセンズリ大会にしちゃうなんて、先生、やっぱりエロいですな」
「西田さん、昨日も言った通り、いきなりしごき合いとかしゃぶり合いだと、EDの村岡さんが萎えてしまうこともあるかと思ったんですよ」
「ああ、そうか。私も自分でしごくと勃つけど、ってときがありました!」
「そんなもんなんすかねえ……。俺とか、他人の手の方が段違いに気持ちがいいんだけど……」
「たいがいの男性はそうなんですが、EDを体験してる人は見た目以上に自信を失っていることが多いので、なるべく他の人と『比べる』瞬間を減らして、『快感の追求』に集中した方が上手くいくことが多くってですね。まあ、西田さんが言ってた通り、彼らも治療が進めば皆さんと一緒にグループでのセッションも考えていけるかなと思ってます」
「うわあ、山崎さん、西田さんに、村岡さん、宮内さんが加わって……。玉井先生にも参加してもらうと、もうすごいことになりそうですよね」
「もうたまらんな……。山崎、お前もそうだろう?」
「ああ、そうだな。男7人が射精しまくるなんて、すごいよな……。私も、西田に誘われて、先生とこでの最初の治療はびっくりしたけど、先生達や西田とも色々楽しめるようになっていったし、それが自分の中で拒否感もなんもなく変わっていったことにびっくりしてるかな……」
山崎がこれまでの治療のことを思い出したのだろう。
西田の問いかけに、しみじみと語った。
「そういう経験を積み重ねていって、性を自由に楽しむことが出来ていくと私は考えています。西田さん、山崎さん達は、私達治療をするものにとっても非常にありがたい症例でもあるんですよ。これからもまた、治療を通して、いい関係を作っていきましょう」
野村医師の言葉に、少しばかりの穏やかな沈黙が広がる。
「さーて、今日も運転がんばりますね。帰るだけだから、途中、ちょっと眺めのいいところとか寄り道しちゃいましょう」
屈託の無い、田畑看護師の言葉に、みながそろそろだなと腰を上げる。
宿のチェックアウトでは野村医師の顔のためか、支配人も出てきての見送りとなった。
「私が、8ヶ月前まではインポだと思っていた私が、昨夜だけで5回も射精したんだなあ……」
蒼穹を見上げ、山崎は感慨にふけっていた。
半年としばらく前まで足下に忍び寄っていた性への不安は、今ではもう感じなくなってきている。
「さ、乗ってください!」
田畑看護師の元気のいい朝の声に、どっしりとした腰を車内へと進めた。
村岡達は、もうプレイを始めた時間だろうか。
低いエンジン音とともに、男達が宿を後にする。
ゴルフ場と温泉宿と。
放たれた雄汁は互いの胃の腑へと下り、男達の明日のその身、その心を、また作りあげていくのだった。