金色の贄

第一部 第一章

若き猪獣人ゴウホウ・センジは王の寝所へと赴く

その2

 

金色の贄

第一部 月と太陽 贄の王たるは獅子王なり

 

第一章

若き猪獣人ゴウホウ・センジは王の寝所へと赴く

 

その2

 

「まずは我とお主と、互いの汁を飲むことで、初めての精神と肉体の賦活化を存分に味わうがよい。

 次に我が獅子族の精汁をお主の秘肛にて受け、さらなる肉体の昂ぶりを堪能せよ。

 最後にお主が我を思いのままに犯し、嬲り、凌辱することで、獅子をも凌駕するに至る自らの精神の高揚を堪能せよ」

 

 センジのずっしりとした肉棒をしゃぶり上げていた王は頭を上げると、若き猪族に横たわるように手を差し伸べる。

 一回りは世代が違い、ましてや王と入隊したばかりの若年兵との関係では、年嵩の獅子族がリードしないことには互いの目的は理解していても、ことが進むべくも無いのだろう。王の台詞は緊張と昂ぶりとの間を揺れ動くセンジの心を溶かし、ある意味「王からの命令である」ことで自らの行為の正当化を図らんとする若者の心理をうまく誘導するためのものだ。

 その言葉が今日だけでも既に数回はこの場所で王と兵士達の間で繰り返されてきたということを、おそらくはこれまでの王の「任務」の中で何千回も繰り返されてきたやり取りだということを、所属した部隊内での精神肉体賦活教育を受けてきたセンジもまた、知っているのだ。

 

「俺も王のチンポをしゃぶりたいです。

 俺、さっきまでの王の尺八で、すぐにでもイってしまいそうです……」

「我もお主のをしゃぶっているだけで、もう漏れそうになっておる。互いの一度目は、すぐにイケるだろうな」

 

 横たわったセンジと頭を逆向きに、ライド王の肢体が横たわる。

 王の眼前には栗色の股間の茂みから勃ち上がったセンジのものが、センジの眼前には王の雄の印が、ビクビクと脈動を繰り返している。

 

 行為前の洗体を済ませていたにもかかわらず、目の前にある互いの股間からはむっとするほどの性臭が立ち上る。

 それは若い肉体に持て余すほどの精力を備えた猪獣人に取っては、おそらくは王の発する生理活性物質(フェロモン)の力を借りずとも、一嗅ぎするだけで達してしまえるほどのものだった。

 たとえ何も知らぬものがこの空間に突如連れてこられたとしても、2人の成熟した肉体からもたらされる性臭と高い濃度で充満している獅子族の発情フェロモンに曝されれば、その肉棒はすぐさまに勃ち上がり、一指も触れることなく多量の先汁を漏らすことになるだろう。

 

「ああ、王のチンポを、この俺がしゃぶろうとしてる。俺みたいなのが、王の汁を飲ませてもらえる」

「俺みたいなもの、などここにはおらぬ。

 センジよ、ゴウホウ・センジよ。

 お主はサイジニア王国の誇る優秀な戦士であり、我とお主は互いに精汁をも飲み合う仲ぞ。

 そのことを心して、自らの精神と肉体を賦活化せよ」

 

 王の言葉は強く、同時に甘く柔らかく、センジの耳へと届く。

 その答えとばかりにセンジは王の逸物を手にし、だくだくと溢れ出る先汁を舐めとった。

 

「おお、たまらんぞ。我にもまた、主の汁をくれ」

 センジとの同衾では初となる己の中心への直接的な刺激に一瞬仰け反った王は、自らもまた先ほどまで膝立ちで舐め上げていたセンジの先端に舌を這わせる。

 互いのよがり声が、ぐちゅぐちゅぬちゃぬちゃとした湿った水音が、石造りの室内へと低く響く。

 その全長を口中に納めるには姿勢的にも難しく、その代わりにといわんばかりに厚みのある掌で相手の肉棹を激しく扱き上げる。

 ぱっくりと割れた鈴口に舌先をこじいれ、あるいは密着させた舌表面のざらつきでぬらぬらと光る亀頭を責め立てる。

 百戦錬磨にも等しい王の性技になんとか食らいついていこうとするセンジの若い動きもまた、王の肉欲を刺激する。

 

「ああ、イキます! もう、イくっ!」

 王と同衾し、肉棒をしゃぶりあうというその行為そのものに興奮したのであろう。

 初回の絶頂は、若き猪獣人にとり己が1人で行う行為に比して、かなりの短時間で訪れることとなった。

 そのあまりの快感に自分の肉棒から口を離した若者に対し、獅子族の王はより深く肉棒を咥え直し、噴き上がる直前の割れ目をじゅるじゅると吸い上げる。

 口中深くに強烈な味と粘りを持つ熱い汁が叩きつけられたそのとき、王の太棹もまた、多量の汁を放出する。

 

「んっ! んんっ! 出るっ!」

「むあっ、あっ、あっ!」

 

 2人の呻き声が響く。

 互いの口中へと濃厚な匂いを放つ粘性の高い液体が放たれたのは、ほぼ同時であった。

 

 

「あ、あああ、身体が、熱い……」

 王の精汁が喉を通り胃の腑に落ちる。

 センジが上半身をのけぞらせ、己の全身を撫で回す。

 身の内に起こるその変化が、荒い吐息とともに呟かれる。

 

 喉奥を通る獅子族の体液がその肉体を、自らが己が精汁を獅子族に飲ませたという経験がその精神を、短時間の間に組み換えていく。

 王にとっては見慣れた、されども自らでは経験しえない眩しさすらをも感じさせる光景が、眼前に広がる。

 

「身体が、心が、一気に滾ってくるだろう。それはお主の肉体を戦士へと変え、精神を獅子族にも負けぬ猛りゆくものへと変えていく。

 その感覚を存分に味わい、楽しみ、己がものとせよ。

 それこそが、我と交わるお主の務めであり、特権でもある」

 

 決して自らでは味わうことの出来ない感覚を王がセンジへと語りかけるのは、己の精神と肉体の急激なる変容に若き猪獣人が恐怖を感じぬように計算されたものであったろう。

 

「己の身体と心に起きつつある変化を、自分の言葉で言い表してみよ。

 言葉にすることで、お主は自らの変化をより深く理解し、さらなる進化の呼び水となるであろう」

 王の言葉は、まさに老いた教師が若い教え子に諭すような、威厳と慈愛に満ちたものであった。

 

「……ありがとうございます。

 これが、この肉体と心の滾りが、教官が言う『心と身体が音を立てて変容していく』ということなんだと、今では理解出来ます。

 俺の全身の筋肉が、骨が、血が、内からの圧力で膨張し、熱を持っていくのが分かる……。

 そしてその力を得た俺自身が、王をこの場で押し倒し、自分のチンポを王の口や尻肉に、ぶち込みたくなるほどの衝動を感じています」

 

「それでよい、よいのだ。

 己の身のうちの滾りをこの一時の最後には、すべて我の肉体へとぶつけるがよい。

 ただ、今しばらくだけは、我のこの滾った肉棒で、お主の尻穴深くに獅子王の汁を注ぎ込むことを許せ。

 それによりお主の肉体はさらなる活力を得、我が国の戦士として相応しき力を身に付けていくだろう」

 

「許せ、などと仰らないでください。

 王の精汁を私の後口に注ぎ込み、この肉体の火照りをさらなる炎へと燃やしたいと、俺も思ってます」

 

「よくぞ言うたぞ、センジよ!

 ライド王として、サイジニア国王として、改めて命ずる。

 ゴウホウ・センジよ、我が前にお主の逞しき尻を掲げよ!」

 

 センジは己の頭を低く膝を付き、筋肉と脂肪に覆われた自らの尻を、王の目の前に高く掲げた。両手で頭を抱え我が口を押さえたのは、すでに体内におさめた王の精汁がもたらす高揚感のあまり、王の兵士としてあるまじき情けない声が出てしまうのではないかという恐れからだ。

 

「ひっ、はあっ、あっ、そ、そこはっ、き、汚のうございますっ!」

 やはりと言うべきか。

 ぬるり、と王の舌が己の肛門の周りを舐めあげ、尖らせた舌先がこじ開けようとする窄まりの形さえ自覚出来そうになったとき、センジの口からは思わずことわりの言葉が出てしまう。

 

「汚くなぞ思いもせぬ。お主も教育官に言われ、事前によく洗ってきておろう。

 何も心配せず、安心して身を我に任せよ。

 熊族のものにはさすがに及ばぬが、我の逸物もまたそれなりに鍛えておる。

 しばしのときとはいえ、我が分身のもたらす快感と愉悦を堪能し、お主の奥底に打ち込まれる迸りの熱さを感じとられい。

 先ほどの口中での吐精とこれからのお主の尻穴へのもの、また最後にお主に凌辱されながら果てる際の汁、その三度の我の精汁が、お主に深く染みいり、その肉体と精神を遙かなる高みへと導くことを我は予言しよう。

 後のお主の心のままの行為の前に、我の肉棒のいななきをとくと味わえ!」

 

 ほどよく解されたセンジの尻穴の周りに、王の長大な肉棒の先端がぬるぬると円を描くように擦りつけられる。

 おそらくは精通時より何度も同族や異種との行為も済ませてきている猪獣人の後口も、初めての獅子族との交わりには幾分かの緊張も混じるのか、その周辺の粘膜と筋肉は激しい運動の後に荒い息をする口吻(マズル)と同じように、唾液と潤滑油によるぬめぬめとした光を放ちながら蠢いている。

 

 この世界での二次性徴の発現、精通や初潮の経験年齢は共通祖先であるヒトや動物に比べてもかなり遅い。おそらくは種創出の際に意図的な調整がされたのではとの論文も出てはいるのだが、数千年前の記録は散逸消失してしまっており、科学者の推測の域を出ていない。

 センジも周囲の同年齢の猪獣人の中でも少し遅れはしたが、精通後に許される肛門接交は、この年までにはすでに数多くこなしてきている。

 生息個体数の少ない獅子族との交渉こそ初めてのものではあるが、全種族中で最大の陰茎長と太さを誇る熊族のものさえも咥えこむ尻穴は、ひとえに訓練の賜でもあった。

 

「ああ、お主の尻穴もこのときを待ち焦がれてか、息をするように蠢いておるぞ。

 我もまた、お主と褥を共にすることに滾り、一度入れればすぐにでも果てよう。

 さすればその後は、お主の思うままに我を犯し、嬲りつくすがよい」

 

 入口周辺をぬるぬると赤黒く色素の沈着した王の先端が焦らすように這い回る。

 外部に露出しているとはいえ粘膜に直接響くその快感を、王の精汁で高揚したセンジの肉体では処理しきれるはずもない。

「あ、ああっ、たまりませんっ! 早くっ、早くっ、ぶちこんでくださいっ!」

 

「うぬ、参るぞ!」

 

 ぶちゅり、と濁った水音がするかのような勢いで丸みを帯びた先端が鳥羽口に触れる。

 張り出した雁首の通過に一瞬のとまどいが見られたが、それも束の間か、センジにとってはがつんとした衝撃とともに、先端が呑み込まれる。

 挿入の道が慣れこなしていることを見越してか、王はその腰の動きを止めず、奥深くへと自らの剛直を差し入れていく。

 

「ああ、あっ、広がるっ! 俺の、俺の尻が広がるっ!」

「おお、お主の中の温もりが、我の肉棒にも伝わるぞっ! たまらぬっ、たまらぬっ!」

「あっ、当たるっ、王のがっ、当たるっ!」

 

 ぬぷぬぷとした湿り気を帯びていた抽挿音が、いつの間にか、ぱんぱんという激しい打擲音へと変化する。

 30㎝を優に越える王の逸物は獅子族の平均を少し超えるほどのものではあったが、センジの体内に打ち込まれるその威力の大半は長さ太さに起因するものというよりは、王が長年こなしてきた「任務」における経験の蓄積によるものであろう。

 

 射精への道程で張り付いてきているとはいえ、それでもゆったりとした柔らかさを維持したままの王の巨大な睾丸が、センジの尻肉を叩く。

 王自身の昂ぶりとともに的確に急所を捉えるその突き入れと腰の動きが、センジの腰奥に着実にある瞬間を迎えることを余儀なくさせてしまう。

 

「あ、出るっ、触ってないのにっ、俺のがっ、出るっ、出るっ!」

「よし、イけっ、我もっ、我も、イくぞっ! お主の尻に、イくぞっ! イくっ!」

 

 時間にしてみれば、先の互いにしゃぶりあった際の射精からはものの10分も経っていないのではなかったか。

 これほどの短時間にして互いに同時に埒を上げることが出来るのは、王が放つフェロモンによるものであることも大きな要因であった。

 センジの奥深くに注がれた王のそれも、己の頭すら越え二度三度と打ち上がったセンジの精汁も、互いに二度目とは思えぬほどの量と濃度を誇っていた。

 

 天井を仰ぎ己の放出の余韻を味わっていた王が、どさりとセンジの上に倒れ込む。

 下半身はその長大さゆえに抜け出るまでには至ってはいなかったが、それもセンジ側の内圧に少しずつ押し出されていくのだろう。

 王のずっしりとした肉体を思わず抱きかかえたセンジであったが、二度の放出を迎えた己の股間が今しも王の腹肉を押し上げ、射精後の一瞬の弛緩すら見せずに再びの吐精を待ち構えていることを痛いほどに感じてしまう。

 先ほどの口中からの摂取に比べ、直腸粘膜へと注がれた王の肉汁の効能はその声に震えすらもたらしてしまう。

 

「お、王の、王の身体を、私に、私にいただいてっ、よいですか。

 もう、もう、この内から燃ゆる情欲を堪えることが、できませぬっ!」

 

 センジとの交渉においては二度目ではあるが、今日だけでも二桁近い射精をしてきているはずのライド王を、なによりも労りたかったのはセンジ自身であった。

 されど、その身に打ち込まれた王の二回分の精汁が、その思いをも焼き焦がすほどの情欲さを若さに溢れた猪獣人の肉体へと満たしていく。

 その滾りが、熱が、穏やかな時間を迎えることを許さない。

 

「センジよ、よいぞ、よい。

 思うがさまに、お主の好きなように我の肉体を、我の心を、嬲り、犯し、凌辱せよ!

 それこそがお主に与えられし使命であり、我との契約である!」

 

 王の言葉が引き金だった。

 ありあまる情欲と攻撃本能とも言える獣性が、一時とはいえ、センジの肉体を支配する。

 

「うおおおおおーっ!」

 呻き声とも思える吠え声をとなえたセンジが王の肉体をはね飛ばし、その両足をぐいと抱えると、いくらも解しもせずに自らの汁にまみれた肉棒で王の深い尻肉の間の窄まりに狙いを定める。

 奥歯を噛みしめつつも、わずかにまくれた上唇から覗く犬歯が、普段の落ち着きを失っている若者の肉体の様を如実に表している。

 

「んんっ、入ったぞっ、センジっ!」

 言葉を発することすら忘れてしまうほどの若者の昂ぶりを理解してか、ライド王が自ら受け入れた様を報告する。

 

「んっ、んがっ、がっ、むふっ・・・」

 同族の平均から見ればわずかに小ぶりなセンジの逸物も、その胴回りと興奮時の堅さにおいては周りのものも一目置くほどのものであり、本日数度目の肛門接交で馴染んでいるはずの王の粘膜を、ここぞとばかりに突き上げている。

 

 ヂャッ、ヂャッ、ヂャッ、ヂャッ!

 バンッ、バンッ、バンッ!

 

 粘膜と粘膜がぬちゃぬちゃと擦れ合い、尻肉とふぐりが一瞬の遅れの後に音を立てる。

 見る間に王の窄まりは白く濁った泡立ちに覆われ、突き上げられる下腹からは堪えようも無い快感が襲いかかる。

 センジの丸く、かつ、堅くしまった腹肉と自らの腹筋に挟まれた王のそれもまた、汗と先汁にまみれての強烈な刺激から、がちがちと音を立てるかのように勃ち上がっていた。

 

「イくっ、イくっ! まだ、イきたくないのにっ、イくっ、イッちまうっ!」

「イけっ、何度でもイけっ! 我を犯し尽くせっ!」

 

 センジの挿入者としての初めての射精はあっけないほどの時間でその瞬間を終えた。

 王の体温と身のうちからの昂ぶりに熱を持ち堅さ太さを維持したままの肉棒は抜き出されることなく、次の抽挿を繰り返しはじめる。

 

「すげえっ、イッてすぐでも、またイきたいっ!

 腰が勝手に動いちまうっ! なんだこれっ、なんだこれっ?!」

「それこそが我が精汁の果たす力よ。

 センジよ、堪能せいっ!」

 

「このままっ、このままで、イかせてもらいますっ!」

 最初から数えれば三度目の射精ではあったが、端から見ている限りにおいてはセンジのよがり声以外には放出の痕跡は分からぬのではないか。それほどまでに、瞬きするほどの間も無く次の射精へ駆け上ろうと、若者の腰の動きは止まらずに続いていく。

 

 獅子族の体液が他の種族へと与える影響の大きさは、普段は陽気な若者ですら鬼神の形相へと変えてしまう。

 

 その体液組成は、短期的に見れば、今現在のセンジに見られるような急激な獣本能と性欲、精力の昂ぶりとともに、皮膚感覚はもとより性的な快感や聴覚嗅覚の鋭敏化をもたらすこととなる。

 長期的な影響であれば人為的な雄性ホルモンの摂取よりも遙かに効率よく筋肉と性腺の成長をもたらす。その効果は、たとえ生涯に一度だけの摂取であってすら未接種の他の個体に比べれば著しい成長度合いの違いを示してしまうのだ。

 

「うおおっ、またっ、またっ、イくっ、イくっ!」

 ライド王の尻に咥えられたセンジの肉棹が、先端から放つ汁はもう何度目であろうか。

 

 己の身体が味わう王の唾液・精液・尿道球腺液、それらすべてが、赤々とした薪として燃えさかる炎へと絶え間なくくべられていく。

 

 それとともに、己が獅子の尻穴を犯し、自らの雄汁をごぼごぼと音がするほどに注ぎ入れるというその行為そのものが、戦闘圧にあっては圧倒的な優位を誇る獅子族を組み敷いている自らの征服欲を刺激し、抑圧された被征服者としての己の殻を打ち破っていく。

 同種や他種族の個体との接交においてもわずかながら上昇するその精神ポテンシャルの数値は、一度限りの交わりであっても、こと獅子族をその対象としたときには他族間のそれとは比較にならぬほどの数値を叩き出すのである。

 

 当初のうちは王の両膝を抱え、王とも勝るとも劣らぬ厚みのある腰を動かしていたセンジはいつの間にか王の身体を抱き、その顔をたてがみ豊かな王の肩に埋めている。

 

 金色(こんじき)に輝く体毛に覆われた王の耳を、首を、肩口を、かみ砕きたくなる衝動を必至に押さえていたのは、わずかに残ったセンジの王への思いか。

 背と頭背に回した手で爪を立て、引きちぎった肉と皮膚と血を味わう欲望を留めているのは、王と国を守るべき戦士としての矜持(プライド)か。

 

 幾度となく繰り返す射精の合間にも、教官から教えられた言葉がセンジの頭の中を駆け巡る。

 

「行為の途中、王はどのようにでも己を扱ってよいと仰るであろう。

 それはその通りの言葉であり、お前達はいくら横暴に、乱暴に王を扱っても許され、かつ、それがまた王の望みでもある。思う存分に、犯し、嬲り、蹂躙せよ。

 ただ、己の射精があと一度にて最後のものと思えたときには、このことだけは思い出すことが出来るよう、心に刻め。

 己の最後の射精は、王の尻肉からお前達の逸物を引き抜き、王の顔面に立ち、その雄汁を王の顔にと浴びせ掛けよ。その後、王の顔中をお前達の足で踏みしだき、その足裏の汁を潤滑油に王の肉棒を踏み、嬲り、射精へと導け。

 王がイッたならば、再び二人の汁にまみれたお前の足裏を王の顔になすりつけ、自らの征服欲を最大限に膨らませよ。

 行為の最後には王の顔面の汁を舐め取り、王の体液を三度おのが肉体へと取り入れる快感を味わえ。

 それこそが、王宮の兵士たるお前達の使命であり、任務である」

 

 横たわる王を見下ろし、足裏で王の雄たりうるその股間の逸物を嬲り、射精させた後にはその汚れた足で王の顔面を踏みしだくこと。

 王を尊敬し、守り、慈しめとの教えと、犯し、嬲り、辱めよとの教えと。

 それが自らの精神的な高揚=精神ポテンシャルの上昇をもたらす一番「効率的な」やり方であると「研究」され、導き出された「結論」であるということ。

 その教えが実際の接交に当たる若者の心を引き裂き、すり潰していくことすらもまた「計算された」結果であるということ。

 

 それらすべてを理解しているがゆえに、若い猪獣人が最後の瞬間に王の尻肉から逸物を引き抜けば、王もまた自らの股間を開き、立ち上がった若者へと、どこか諦念の入り混じった目を向ける。

 その姿を見下ろしたセンジは、猛々しくも勃起し続けている己が肉棒を激しく扱き、先端を王の股間へと向けた。

 

「ああっ、イくっ、イくっ!

 俺の精液がっ、王のチンポにっ、チンポにかかるっ!」

 

「おお、お主の雄汁が我の逸物を熱く汚していく!

 我もっ、すぐにっ、イくぞっ!

 お主の足で我を嬲り、イかせてっ、イかせてくれっ!!」

 

 本来であれば自らの顔面へと射出すべき汁を、若者がその手順を一つ飛ばしてしまっていることを王は存分に理解していた。たとえそのことにセンジがまた気付いたとしても、王にとり己の股間を汚した汁の熱さがそれで冷めることは無い。

 足裏にゴロゴロと当たる生々しい感触は、センジにとって自らが尊敬している王の雄としての存在を足蹴にしているという、征服欲を刺激し続けるのだ。

 

「おおっ、お主の足でっ、イくっ、イくっ、イかされてしまうっ!」

 

 足裏にぶしゅぶしゅと当たる液体の熱さとその度に脈動する肉棒の感触に己の中の獣性が刺激され、すぐ下にでっぷりと横たわる王の双玉ですら踏み潰したくなる衝動を、センジはなんとか抑え込む。

 

「ああ、王よ、王よ、私はなんということを、あなたに……」

 べっとりと2人の精液にまみれた足裏を王の顔面に押し付けたとき、濡れた王の鼻先が、じゅちゃりと湿った音を立てて己の体重に堪えきれずに変形したとき、センジはその憤怒の形相のまま、ボロボロと大粒の涙を流していた。

 

 

 新兵を迎える毎年のこの時期は、普段のおよそ3倍近く、月にして100名近くの相手をするのが、この国の王に取っては通例であった。

 無論、志願制を旨とした国軍入隊に当たっては肉体ポテンシャルの維持が可能な限り年齢制限があるわけでも無いのではあるが、やはり肉体と精神の強化には王との肉体接触の蓄積がものを言うことは、この時代どの国においても知られている事実であり、それ故に人生の早い段階で希望するものが多いのが現実である。

 入隊後二ヶ月目には新兵への賦活作業が始まり、ほぼ1ヶ月のうちにその大半が精神と肉体の賦活化を果たす。

 その後は二年目以降の在籍隊員に対し、年間300名ほどがスケジュールにそって賦活化を受けることとなる。

 軍全体から見れば初年度以降は最大限の賦活化が期待出来る1対1での王との肉体的接触は、平均すれば6年に一度ほどのものであろうか。

 たとえ二十年近く在籍したものであっても、親衛隊や側近といったものはまた別ではあるが、王との公的かつ直接的な交わりは片手で数えるほどのものでしかない。

 それでもその数回の行為にて跳ね上がる肉体と精神のポテンシャルは単なる訓練で得られるそれよりも遥かに高い数値の上昇をもたらすのだ。

 

 王に取ってのその「任務」は、自らの国の国力の現れである軍団兵の強化策の最たるものであり、いずこの国においても最優先されるべき「儀式」でもある。

 数千年も前、この地に獣人族という新しい種が誕生した瞬間から、その制度と方法は集団と個人の存在システムの中へと組み込まれ、他の方法が模索されたことすら無い。

 

 数多(あまた)の兵を統べる獅子王は、その遺伝子の中に集団を統率する力とその集団の肉体的・精神的ポテンシャルを高めるための双方向のシステムを内包している。

 この時代、地球面上を闊歩する6つの種族の中で獅子族のみが持つ「体内生成フェロモンの濃度や組み合わせを制御することで他種族大集団の行動をコントロール出来る」能力と、「唾液や精液などの腺成物質により、他族の肉体ポテンシャルの賦活化が出来る」能力。

 さらには「他種族が獅子族を性的・肉体的に『征服した』と感じたときの精神ポテンシャルの賦活幅が、他種族間のそれよりも突出して大きい」という事実。

 

 元々軍事目的として軍団長の役割を与えることを前提に作出され、それゆえに個体発生率は他種族に比べ非常に低く設定されている。

 今現在、若い猪獣人、ゴウホウ・センジの足元に横たわり踏みつけられた足裏に舌を伸ばしている王もまた、同世代の同族とはほとんど接したことが無い。

 人族を除く他の獣人族にとって、フェロモンで己の意志すらも奪われてしまう獅子族は、近くで目にすることすらほとんどない、ある意味雲の上の存在でもあった。

 

 センジに取りライド王という存在は、およそこれまで高い王城のバルコニーで煌めく錫杖を掲げるその姿を仰ぎ見た記憶しかなく、入隊日に訓練隊長の後ろで、その呼吸とともに微かに上下する豊かな胸に体毛と同じ金色(こんじき)のチョーカーを付けた、まさに威厳に満ちた姿形で表されるものであった。

 その輝きを放つ胸飾りと同じ色の体毛を纏う姿を我が身の近くで目にしたとき、ああ、この方は俺達とはまったく違う星の下に生まれておられるのだと、一人勝手に胸に落としたその王が、今、自分の足元で自らの顔になすりつけられた雄汁をすすり、己の汁にまみれた足裏を舐め、清めようとしているのだ。

 

 新兵教育で言われた「己の中の種族的本能とも思える考えを捨てて、ただ肉欲のままに王と交われ。それこそが王と国家への忠誠なり」という教官の訓辞が頭の中でぐるぐると回る。

 我が目前にいる1人の獣人は、自らの欲情を隠すことなく矮小とも思える自分にひたすら奉仕する僕(しもべ)である。それと同時に己の心の奥底にある強き者への憧憬と怖れ、あるいは歪んだ被征服欲の対象となりうべき存在であった。

 

 他種族の行動と精神に働きかける獅子族のと並び、物理的にも獅子族の体液は他の獣人に取っては甘露中の甘露として、その筋力・膂力・精力の増大を顕著にもたらす賦活剤として働くのだ。

 口腔あるいは直腸粘膜から体内に取り込まれた獅子族の唾液や精液は、対象獣人の雄性ホルモンの活性を大きく上げることにより、肉体ポテンシャルの急激な増大をもたらす。

 

 反して、いや、それゆえに、獅子族以外の種族に取っては普段の支配と被支配から逸脱した状態において獅子族の肉体にマウンティングを取り、更にその体内へと自らの精汁を叩き込むことが出来たとき、その被征服内圧は大きく減少し、代わりに精神ポテンシャルは一気に跳ね上がることになる。

 

「○○には敵わない」「○○の場合は、●●は強い」という種族毎の集合意識は、6種族の中で、ときには手遊び、ときには三竦みのような状態を長い年月の中で各々の個体へと染み込ませている。

 個別戦闘においては(獅子族側のフェロモン未使用時において)、戦闘圧の高い熊族の戦士にこそ対抗出来る能力はあるが、ほとんどの種族にとっては実際に1対1戦闘で獅子族の首級を取れる状態になることはまず有り得ないことだろう。

 戦術級戦闘術の学科においても、獅子族との戦闘地域での邂逅は、統制の取れた犬族集団、もしくは人族をも含む多種族混成部隊における波状攻撃の体制が取れるとき以外は、とにかく距離を取ることが第一選択となるように教授されている。

 

「おお、お主と我との雄汁が、再び我の口中で混じり、温められておる。

 我の唾液が混じり、さらにより強くお主の肉体を強化するはずのこの精汁を、お主の口へと運ぶことを許せ」

 王の言葉にセンジが答える。

「王よ、私は一時のあなたの支配者として、あなたのその行為を許そう。

 私の肉体と精神を鼓舞する、その体液を私に飲ませよ」

 

 ああ、この状態で王が言う台詞も、自分がそれに答える台詞も、訓練で習ったものであることは事実なのだ。

 それこそが昔から繰り返され「最も効率良く被征服欲の逆転と心理ポテンシャルの向上に寄与する」ために整えられてきた、形式的な、それゆえに、この種族社会においての本質的なやり取り。

 センジは己の足を擦り付けられながら言う王の台詞を、再び剛直していく己の逸物の重さを感じながら聴き入った。

 

「若き猪獣人たるお主は、この寝台の上では我を蹂躙する獣となった。

 こののち、寝台を降り立ち我と共に戦場(いくさば)にいたりては、敵の下へと馳せ駆ける一兵として、その力を地へと散らす我の駒となれ。

 それこそがお主の役割であり、我とのただ一つの契約である」

 

 答えるセンジの台詞も、何度も練習し頭に焼き付け、今はもう教わったものか己の本心か、その区別すらつかなくなっている。

 

「王よ、我は今あなたの顔を互いの雄汁で犯し、踏みつけ、蹂躙した。

 この寝台の上では、我があなたの主(あるじ)であり、すべてであった。

 その我こそが、ひとたび戦場(いくさば)にあれば、王のためにこの身を投げ出そう。

 その血を流し、倒れ伏せようとも、我が生命(いのち)は、王のものたらん。

 それこそが、我と王との唯一の契約なり」

 

 ここに王とセンジの、センジと王との、隷属と服従の契約が成立したのだ。

 それは互いを縛る鎖であり呪いであった。

 およそ国軍の二千を超える者達の呪いを一身に引き受ける王の心情はいかばかりのものだったのか、この後長きにわたり王との歩みを共にしていくことになったセンジの晩年においても、その答えは見つからなかった。

 

 センジに取って自らの精神と肉体に直接的に働きかける獅子族との、生まれて初めての交わりであり、相対する王に取っては、この日ですら数度目、生涯にわたっておそらくは数万回をも繰り返されてきた儀式である。

 そのことを十分に承知しているセンジに取っても、この瞬間に自らの肉体と精神が爆発しそうな感覚、肉欲と尊敬と希望と絶望が、すべて入り乱れたこの感覚が、「このこと」を味わうすべての者達に共通なものなのか、それとも自分だけに起きている極々特別な類(たぐい)のことなのかは、想像もつかない。

 それでもなお、自らが足元の王に覚えた愛情と肉欲、尊敬と慈しみは、そのどれもが愛しく、切なく、そのすべてを己が受け入れねばならないという事実の重さに驚嘆してしまうのだ。

 

 自らの精液とセンジのそれとを顔中に擦り込むように擦り付けられ、固く鍛えられたセンジの足裏を舐め上げた王が、ゆっくりと金色(こんじき)に縁取られた屈強な肉体を起こす。

 

 最後の肉体賦活化のため、獅子の顔にべったりとへばりついた互いの精汁を舐めとるセンジの瞳から溢れ出る涙は止まることが無い。

 それは互いに接する鼻梁から口吻(マズル)へと流れ落ちては王の口中へと届く。

 王の背に回されたセンジの手の動きからは、先ほどまでの荒々しさとはまったく違う年長のものへの尊敬といたわりが伝わってくる。

 背中に感じるその優しさと共に口中へと送り込まれる塩分に気がついた王は、むっとした匂いに包まれた互いの顔を少しだけ離し、潤んだセンジの顔を細めた目で見つめた。

 

「今、このようなことを王として伝うことがこの場に相応しきかどうかは分からぬが、センジよ、お主は本当に優しいのだな。

 この部屋を訪いそして去りゆくほとんどのもの達は、我との初夜とも言えるこの時間の終わりには、己の肉体と精神の昂ぶりから、我をひたすらに殴りつけ、踏み倒し、舐めとれと教わり諭されているはずの最後のこの行為ですら、我の首や肩に何度も己が牙を突き立てることをせずには済ますことが出来ぬのだ。

 もちろん我もまた、それらの行為が我がサイジニアに取って優秀な戦士を生み出す崇高な当然の行為であり、それを受け止めることが我の唯一の存在意義であるということに誇りも持っておる。

 だが、少数ではあるがお主のように最後まで気遣いを見せてくれるものがいることもまた、確かなことなのだ。

 医技官どもは耐性個人差などと無粋なことを言い出すに違いないが、それでもお主のように肩を抱き、舌を絡めてくれるものと接すると、逆に色々と考えてしまうものなのだな……。

 

 センジよ、許せ。

 

 肉体と精神の昂ぶりのまま部屋を出て行く戦士の背中を黙って見送ることが本来の責務であるはずの我が、このような呟きをお主に聞かせてしまったことを……」

 

 王の長き独白を聞いたセンジが、その潤む目を体毛深き右腕で拭いつつ言葉を発する

 

「他の兵士達がどのような思いでいるのかは分かりませぬが、俺にとって、王はその御前にてはひれ伏してしまうほどの崇高なお方であり、同時に我が命をかけてお守りする方なのだということを、今日の経験でさらに深く広く、理解したつもりでおります。

 この俺の身体と心の滾りは、王の矛となり楯となるために鍛えていただくものです。

 今日、この夜を王と共に過ごしたことで、俺はより一層、王への忠誠が強くなる自分を感じることが出来ました。

 我が身の一生を持って王にお仕えすることを誓います」

 

「一生、などという言葉は軽々しく口にするものでは無いぞ、センジよ」

 ふっと息を吐き、小さく緩んだ王の唇が、センジへの、一人の猪獣人への愛情と期待とともに、勇みゆく若き戦士の手綱を取るべき王としての言葉を紡ぐ。

 しかしそこには、戦士としての成長を見せ始めた青年を目の前にした喜びとともに、どこか自らの人生をも振り返らざるを得ない王としての悲しみもまた、存在していたのではあるまいか。

 

「だが、お主の言葉は凍てついた我の心をも、少しばかり暖かな日差しにて照らしてくれた。

 もう少しだけ、お主とこうして抱き合っていてもよいか?」

「もったいのうございます。

 それでも俺は、王の望むだけの、その望みをすべて叶えるよう、精進し、奮闘し、勉強します」

 

 センジには、他のもの達が王を足蹴にしたまま部屋を去ることなど、想像すらし得ない絵面である。

 この部屋へ入ったときから今の今まで、センジに取っての王たる存在は、互いの責務として犯し、犯されるもの同士であるという立場は重々承知の上であっても、王を王たらしめる風格への尊敬の念は揺らぐものではなかった。

 王の醸し出す威厳と慈愛、年若き自分に示してくれた愛情深き言葉と行動は、以前から王へと抱いていた感情と矛盾することは一つもなかったのだ。

 もちろん他の多くの兵士達においても、内面からの一時の激情がおさまれば、王の兵士としての忠誠を尽くしていくことは当たり前だろうとも感じている。

 

 一度互いの言葉を発するために離れた2人の顔が再び近づき、少し傾けた頭部と背中に回した腕が力強く相手を引き寄せる。

 嵐にも似た激情が吹き荒れた後の室内に、互いの舌と喉から聞こえる微かな唾液を交換する音が漏れ出ている。

 おおむね三時間もあれば、と言われた教官からの言葉には、2人の時間は少しばかり足りないようであった。

 

 

「一生かけて」と誓ったセンジの言葉が文字通りのものとなろうことは、今の2人には到底分からぬことであったのだが。