七日籠もり その3

 大小便の世話まで男達が面倒を見るとは聞いてはいたが、さすがに用便後の後始末にはまいってしまった。洗浄機が付いているだけましではあったが、男達は洗い流された俺の尻を毎回高く掲げさせ、実に丁寧に拭き上げるのだ。
 中にはきれいにしてやるからと、拭いた後の俺の尻の穴を己の舌でじっくりと舐め上げる男もいた。周囲を舐めまわされ、舌先でこじるように穴をつつかれる。初めて感じるその快感に、俺の肉棒が思わず勃ち上がると、たちまち布団に横たえられ、男達による新たな嬲りが始まるのである。

 

 男達は時には、自分達のしごき合いやしゃぶり合いをわざと俺に見せつけ、こちらの興奮を誘ってきた。良さん以外の男達は射精も自由らしく、俺ほどではないが毎日精を抜き合っていた。当家の良さんは勝手にイッてはいけないらしく、突き上げる肉棒を誰にも触れさせずに過ごしていた。
 俺の肉棒は毎日最低でも三回は嬲られ、その精を抜かれてしまう。俺の出す雄汁は御幣に吸わせるのが習わしらしい。毎回ぎりぎりまで昂ぶらされた俺の下半身は、その最後の瞬間に良さんが手にする御幣でざわざわと嬲られ、ねっとりとした汁を白い和紙へと吐き出してしまう。
 男達だけでの生活が何日か過ぎていくと、男達の裸体から立ち上る汗や雄汁、御幣からの自分の汁のすえたような匂いを嗅いだだけで、俺の肉棒は勃ち上がるまでになってしまっていたのだ。

 

 毎日精を抜かれ、いよいよ明日はウマレキヨマリを迎えるという最終日の夜、宿での最後の儀式が行なわれることになった。

 


 白差しの儀式

 

「いよいよ今夜が七日籠もりの最後の日だ。浩平もよう頑張ったなあ。一週間で三、四十回は出したっじゃなかかな。こんくらい抜くと神さんも満足しなさっけんなあ」
「明日は浩平のウマレキヨマリだけん。こら、赤子が生まるっとば、もう一回すっとたい。でなあ、子作るには種付けがいっど。だけん、浩平に俺達がみんなで種付けするけんな。浩平も始めてで大ごつばってん、みなは慣れとっけん。気ばゆたあっとして、俺達にまかせてはいよなあ」
 何やかやと理屈はついているが、要するに俺の尻に男達の肉棒を突っ込み、結局はその雄汁を注ぎこむと言うことだ。生まれるはずの赤ん坊役を犯すというのも、実に妙なものだったが、それが祭の儀式性というものなのだろう。

 

 これまで毎日のように男達に嬲られてきた布団の上にうつぶせになる。良さんに言われるままに両手で自分の頭を抱えると、俺は膝を立て尻を突き出した格好でみなの前に尻の穴をさらけ出した。

 

「浩平も最初は痛かて思うばってん、後からはたいぎゃ気持ちの良うなるけんな。こん村の連中はみんな、男同士ですっとが楽しみになっとっとだけん。こっが最後だけんな、我慢してはいよ。そっじゃあ、白差しば始めむっけんな」
 良さんが唾液で濡らした太い指先で、俺の尻をぬるぬるとまさぐり始める。この七日の間に、舐められる快感を覚えてしまった俺の尻穴が、良さんの荒れた指先を誘い込むように、ひくひくと蠢いている。尻の間から丸見えになっている肉棒は、この一週間の何十回にも渡る責めにも関わらず、今から行なわれる行為への期待からか、むっくりと頭を持たげ始めていた。

 

 俺の尻が十分に緩んだのを見届けたのか、良さんの指がぐっと穴に押し付けられた。思わず呻き声を上げてしまったものの、耐えられないほどの痛みではない。泣き声をもらすまい、そう心に決め、回りの連中の言うように穴の力をぬくようにする。
 良さんは痛みを感じさせまいとしてか、唾液を塗り付けながら、ゆっくりと出し入れを繰り返す。出すところに入れられているという精神的な不快感と、粘膜の摩擦から生まれる微妙な快感が、交互に襲ってくる。そしてそのバランスは、良さんの指が出し入れを繰り返していくうちに、どんどんと快感の方へと傾いていくのだ。

 

 俺の尻穴はいまやグチュグチュと音を立て、良さんの太い三本の指を呑み込んでいた。しばらくはうなだれていた俺の肉棒を、信治さんの右手がゆっくりとしごき始める。皆にやられる前に一度は出させてくれるつもりなのだろう。前後を責められる異様な感覚に、私が早くも漏らしそうなことを伝えると、いつもの御幣と違って正月の屠蘇にでも使われるような朱色の杯が、俺の腰の下に差し出された。
「うっ、イくっ、イくっ」
 一週間絞り続けられたにしては大量の精液が、杯に注がれる。良さんがその杯を受け取ると、出したばかりの白濁した汁を俺の尻穴へと塗りこみ始めたのだ。
「このまんまじゃキツかけんな、浩平の汁でぬめりつけてやっけん。最初は一番若っか信治からだけん。さ、やってやれなあ」

 

 一番若い信治さんは入れる側に回るのは初めてなのだろう。緊張した面持で俺の後ろへと回り込んだ。毛だらけの穴の周辺を信治さんのデカイ亀頭が、俺自身の雄汁を潤滑油として這い回る。そのぬるぬるとした刺激は淫欲の壺と化した後口を切なく悶えさせる。
「信治さん、もう、たまんないよ。じらさないで一気に犯ってくれ」
「浩平さん、みんなもしてきとっとだけん、浩平さんも絶対にでくっけんな。じゃ、入るっけん、良かな」

 

 その瞬間、脳天まで突き抜けるような痛みが走った。亀頭がとば口を通りぬける瞬間、どうしても声が出てしまう。それでも出来るだけ身体の力を抜き、尻の穴を緩めるようにしてみる。信治さんも一呼吸おいた後、ゆっくりと肉棒の出し入れを開始した。痛みと粘膜に感じる体温が奇妙な具合に織り混ざり、俺の口からはいつの間にか、小さな喘ぎ声が洩れ始めてしまっていた。

 

 痛みが薄らいだのを肉体の動きで感じたのか、信治さんの動きが早さを増す。信治さんと俺の喘ぎ声が男達の欲情をむらむらと昂ぶらせていくようで、部屋中に雄達の匂いがたちこめていく。信治さんの大きなふぐりが俺の尻にあたるぺたぺたという卑猥な音が、男同士の肉の交わりであることを一層確信させる。
 荒々しい動きに五分ほども耐えていただろうか、ついに信治さんが最後の瞬間を迎えようとしていた。

 

「浩平さん、よか、よかけん、浩平さんのが締まるけん、イく、イくけんね」
 信治さんがそのどっしりした腰を、俺の毛深い尻に何度も打ち付けてきた。尻の穴の奥深くに、火傷しそうに熱い汁がそそがれているのだろう。その何とも言えない感触に、触れられもしない俺の肉棒が先走りを垂らし、びくびくと頭を振り上げているのを感じていた。

 

 白差しの儀式は、良さんを除いた男達が順番に行ない、二巡りしたところで終わりを迎えた。俺自身も男達の入れ替わり立ち代わりのしごきに、三度の射精を御幣へと染み込ませたのだった。

 

 男達の汁が尻の間からぬらぬらと垂れおちてくる感触に、俺の肉棒は一向に萎えようとはしない。良さんがぐったりした俺を抱き抱えると、右手を前に回し最後の白落しとばかりに擦り上げてくる。肉厚の身体に身をまかせた俺の耳もとで良さんが独特の方言で話し始めた。

 

「明日はいよいよウマレキヨマリの日だけんな。白沢さんの前ではお供えと御神酒上げてから、皆で問答ばすっけん。その後にまた素裸になってな、白沢さんの脇にある岩ん裂け目ば、浩平にくぐってもらうとばい。こら『胎内くぐり』て言うとたい」
「そんときは俺っば除いた全員が、せんずりばして浩平に男の汁ばかくっけん。『白浴びせ』て言うばってん、こら子袋水の代わりたい。そぎゃんして岩ばくぐったら、また問答すっけんな。そんときは『生まれたのはどこの誰それか』て俺が二回聞くけん、三回目に『元気な八幡太郎でございます』て答ゆっと、ここはおしまいたい」
「祭ん最後は、俺のチンポば咥えちしゃぶってはいよなあ。『吸い初め』て言うとだけん。俺のチンポのおっ勃ったら、いよいよ俺が浩平の尻に入るっけんなあ。『喰い初め』て言うて俺も出すばってん浩平もイッてもらわんといかんばい。俺ん方は一週間もやもやするばっかで溜っとるけんなあ。明日は濃いかつばぐっさん出すけん、浩平も頑張ってはいよな。そっが全部済みゃ、ウマレキヨマリできましたって訳だけん」
「浩平もこの村に新しゅう生まれたてなるけん。みんなも浩平の身体ば気に入ったごたっし、浩平も俺達が気に入ったごたっし、色々よろしゅうなあ。町と違おて、他に何の楽しみもなか村だけんな。ホンなこつよろしゅう頼むけんなあ」

 

 壮年の男の熱いほどの体温を全身に感じながら、俺の気持ちは不思議な安堵感に包み込まれていた。七日籠もりという儀式は、新参者の俺と男達の間に、すべてを見せ合った者だけに結ばれる、確かな信頼を得させてくれる。

 

 良さんの荒れた左手で胸をこりこりと弄られ、右手では肉竿がくちゃくちゃといやらしい音を立てながら扱きあげられる。
 全身を駆け巡る快感に腰を思わず突き出してしまう。これもまた全裸の男達の目の前で、萎えることを知らない俺の雄としての証から白い雄汁が噴き出し、七日間にわたる最後の籠もりの夜が更けていった。

 

  

 

付記

 

この地方の方言について

 

「・・・けん」→「・・・だから」

「ぐっさ」→「たくさん」「多く」

「大ごつ」→「大変」

「そぎゃん」→「そうだ」

「ばってん」→「けど」「だけど」

「たいぎゃ」→「とても」

「・・はいよ」→「・・してくれ」

 

以上