里見雄吉氏 作

開拓地にて

ある農夫の性の記録

第一部

少年期

 

六 祖父を犯す日

 

 話が横道にそれてしまったようだ。なかなか全体を見通して話を進めていくというのは難しい。これからもしばしば話は脇道にそれることがあるだろうが、どうかご容赦いただきたい。

 ここで話を「第五章 祖父として 孫として」の冒頭に戻そう。

 昭和三十九年春、再び、桜の季節が近づいていた。東京オリンピックの年である。私は小学校六年生になり、ちょうど十一歳を迎えたばかりであった。

 その頃になると、私の身体つきはすっかり逞しくなり、脛毛も大人並みになっていた。たったの一年間で、蛹が蝶になるように、私の肉体は急速に少年から大人へと脱皮した。もはや高校生だといっても充分通用するほどで、性器とて例外ではなかった。

 睾丸や陰茎は二回りは大きくなっていた。しかし、一番の変化は、ズル剥けになった亀頭だった。十一歳の誕生日を迎える頃から、平常時でも亀頭が露出するようになっていたのだ。

 入浴するたびに、祖父は私の陰茎を手に取り、

「もう少しだ。」

 そう言って目を細めた。そして、

「完全に剥けたらな・・・。」

 そういって後の言葉を濁すのだった。

 

 桜の季節を迎えたその日、私はいつものように祖父と入浴していた。

 いつものように祖父が私の陰茎を握ってきた。その頃になると兜あわせ、相互センズリは当たり前の行為になっていた。みるみるうちに私の陰茎は勃起した。祖父が私の額を右手で引き寄せ、自分の額を私の額と突き合わせた。お互いの視線が絡み合った。

 もはや相互センズリでは満足できなくなっていた。視線が交錯した。その粘りつくような視線は、祖父が私に何かを伝えようとしているかのようである。

「今日は、その先に行こう。」

 言葉にはしなかったが、私は祖父の視線に、その言葉をはっきりと感じた。私の中でそれまで抑えてきた感情がはじけた。

 私はたまらなくなり、祖父の口を吸ってしまった。

 それは、祖父との初めてのディープキスだったが、そのキスは二人の中にあった、「一線を越えてはならない」という防波堤を、かくも無惨に突き崩し、一気に破壊してしまった。

 祖父は私を浴室の床に敷いた簀の子の上に横たえると、私のチンボをくわえた。いよいよ来るべき時が来たのだ。私は早急に事を進めようとした。

「あせるな。爺ちゃんが、ちゃんと男にしてやるから。」

 祖父が私を諭した。

 私は祖父の導きで、祖父のチンボをくわえた。そして、それを吸いながら、私はあることを思い出していた。それは、先に記した「男と男が何するか知ってるか」という言葉である。訳がわからず私が答えられないでいた、正にそのことであった。

 私のセンズリにはいつも祖父が登場していたが、その話を聞いて以来、自らの逸物をしごきながら、妄想の中で私はいつも祖父の肛門を犯していた。

「男が二人の時には・・・。」

 私は自分に問い続けた。そして、見つけた答えは、ただ一つであった。「いつか爺ちゃんの肛門に自分の陰茎を挿入し、子種を爺ちゃんの体内の深い所に吐き出したい。」

 私は、それをずっと心に描いてきた。その生殖を伴わない性行為は、世間で許されないものであることもいつの間にか知っていた。しかし、私には、そんなことは関係なかった。好きな男と一つになりたいという、人間の本能は男同士でも変わらないものだ。

 今がその時だ。私はいつも頭に描き続けてきたことを実行に移すことにした。祖父の両足を抱えあげ、赤ん坊がオシメを変える時の姿勢にした。祖父は拒まなかった。いつかこういう日が来ることを覚悟していたのだろう。

 

 私は勃り立った逸物を祖父の肛門にあてがい、押し入ろうと腰を付きだした。あまりにも乱暴なやり方に祖父が、顔をしかめた。

「そんな乱暴に突っ込む奴があるか。一つになる時はあわてちゃいかん。」

 私は一旦動きを止めた。

「ゆっくりやるんだ。爺ちゃんが息を吐くから、それに合わせて少しずつ入れていくんだ。」

 祖父が諭した。祖父は息を吐きながら、

「ゆっくり、ゆっくり」

 と事を急ぐ私を制し、私のチンボに手をあてがって、少しずつ少しずつ自らの中へと導いた。亀頭がゆっくりと祖父の肛門に埋没していく。間もなく、私の逸物はスッポリと祖父の肛門に収まった。雁首さえ通過すれば、後はどうと言うことはない。

 祖父が大きく息を吐き、ウットリとした表情を浮かべた。今、思えばかなり使いこまれた秘肛だった。

「もう大丈夫だ。ゆっくり腰を使ってみれや。最初はゆっくりだ。爺ちゃん、久しぶりだでな。」

 祖父の言葉に私はピストンを始めた。最初は抑えていたが、すぐに激しく腰を打ち付けていった。初めてのことなので、自制心などあろうはずがない。私はもう無我夢中だった。

 私に犯されながら、祖父のチンボはガチガチに勃起し、萎える気配など微塵もなかった。ダラダラとズル剥けの亀頭から先走りを溢れさせ、儂のピストンにあわせ、ピクピクとチンボが息づいていた。

「硬くて擂粉木みたいだ。ああ、たまらん。」

 私の腰に動きに合わせ、祖父から漏れる声の色合いが変わった。それまでの苦しさが混じったそれとは明らかに違っている。すすり泣いているかのような祖父。

 私は腰を使いながら、祖父の目をじっと見つめた。祖父がねっとりとした視線で見つめ返す。私は祖父の口に自らの唇を押し当て、舌を入れて激しく吸った。

「爺ちゃん、出そうだ。」

 風呂場で大声をたてるわけにはいかない。私は上ずった声で訴えた。祖父は、私の耳元で小さく呻き返した。

「中に出したらいい。爺ちゃん、お前のが欲しい。」

 祖父と私の視線がからまりあった。

「爺ちゃん、好きだよ。」

 私は祖父の耳元で囁き、一層激しく腰を打ち付けた。研ぎ澄まされた感覚が亀頭から睾丸に走り、今までに経験したことのないような強烈な収縮とともに、私は果てた。

「当たる、当たってる。熱いのが当たってる。」

 私の放精に合わせ、祖父が口走っていた。

 放出後の虚脱感の中で、私は祖父の身体に覆い被さり、祖父の耳たぶを軽く噛んだ。そして、そのまま、うなじに唇をはわせた。

 興奮が急速に冷めて行く。私は祖父の身体を離した。下半身に目をやる。未だ祖父と私が繋がっている。いや、正確には祖父の肛門と私の陰茎が繋がっている。

 私は二人の結合部をぼんやりと眺めた。赤黒い祖父の肛門と私の陰茎。粘膜と粘膜が触れ合い、擦れあった結果、それは爛れたような淫靡さを放っている。

 私の陰茎が埋没している直腸、その奥に、たった今、私が放った精液が存在しているという生々しい事実。射精後の呆けたような感情の中では、それは、にわかには信じがたかった。

 祖父の胸も腹も、そして、陰毛や脛毛さえ、いつもと同じように存在していた。私の陰茎を飲みこんだ肛門だけが、いつもとどこか違っている。

 今、この瞬間も、私の放った精虫の一匹一匹が祖父の肛門内で蠢き、受精する相手を探している。しかし、その受精すべき存在などあろうはずがなかった。そこには、男同士のセックスの虚しさがあった。

「しばらくそうしていれば、またできるようになる。」

 祖父の声に私は我に返った。

「爺ちゃんの口、吸ってくれ。」

 祖父が、私の口に舌をそっと差し込んできた。祖父と濃厚な口づけを交わすうちに、私の中に祖父の肉体を求める本能が再び目覚め始めた。

 私の逸物が再び勢いを取り戻してきた。さっきまでの空虚な気持ちが、嘘のようにどこかに消え失せている。肉欲だけが二人を包み込んだ。私と祖父は、そのまま正常位で二回戦に突入していった。

 私が出した精液で、祖父の肛門はグチャグチャになっていた。しかし、それが潤滑液になり、卑猥な音を立て始めている。

 二回目はさすがに時間がかかったが、それで終わるはずがなかった。元来、私も祖父も、人よりも数多く射精が可能なのだ。祖父も興奮していたのだろう。

「出せ。出せ。中にいっぱい出せ。」

「爺ちゃんに子種くれ。爺ちゃんのオマンコ、子種だらけにしてくれ。」

「ああ気持ちいい。気持ちいい。爺ちゃん、女になっちまう。」

 祖父が次々と口にする卑猥な言葉が、さらに私の興奮を誘った。

 私は抜かずの三発目に挑んで行った。

 

 ほんの三十分ほどの間に私は三回目の射精を迎えようとしていた。いつの間にか祖父のよがり声が艶っぽく変わった。アン、アンと、まるで女のような声で喘いだ。祖父も射精が近いのだ。

 胸毛こそないが、濃い毛で両足が覆われ、腕にも剛毛が渦巻いている。しかも、筋肉質で髪を短く刈り込んだ、男臭い顔立ちの外見からは、想像もできないような姿だった。そんな祖父が女のようにすすり泣いている。私は祖父に愛おしささえ感じた。

 程なく祖父はうわずった何とも切なげな呻き声をたてた。祖父は必死に声をおし殺していたが、それは無駄な抵抗だった。二人を異常な興奮が包んだ。

「行く、雄吉。爺ちゃんのチンボを見とれ。すぐに出すでな。」

 祖父は自らの逸物をしごきたてた。私は腰の動きを一気に速めた。ものすごいスピードで、私の陰茎が祖父の肛門をヌラヌラと出入りしている。

「出る、出るっ。白いのが出てしまうっ。」

 祖父のどす黒い亀頭が一瞬膨らみ、抱えあげられた両足を痙攣させた。そして、腹筋がグッと力んだかと思うと、亀頭の裂け目から勢いよく白い樹液が迸った。

 それは祖父の胸を軽々と飛び越え、祖父自らの顔面を直撃した。

 

 全てが終わった。私は萎えた逸物をゆっくりと祖父の肛門から引き抜いた。亀頭が抜け落ちる瞬間、それはズボッと音を立て、独特の臭気を放った。

 見ると私の亀頭から陰茎にかけて、粘液状になった便がベットリと付着していた。何の準備もせずに肛門性交に及び、若さにまかせて精を三回も放ったのだから無理もなかった。

 祖父の肛門から、黄色く染まった精液が大量に溢れ出した。しかし、好きな男のものだと思うと、少しも汚ないとは思わなかった。私はそのことを祖父には告げず、黙ってお湯で洗い流した。

 しかし、祖父は周辺に漂う臭気で事態に気づいたらしい。

「爺ちゃんのこと嫌いになったか」

 そう聞く祖父の口を、私は激しく吸った。それが返事だった。

「この世界のこと、爺ちゃんが全部教えてやるでな。」

 私を抱きしめながら、祖父が呟いた。

 

 後でわかったのだが、祖父は先天的な同性愛者で、既に肛門性交の味を覚えていた。当時、何人か相手がいて地元の仲間の間では顔が知れていたらしい。あの容姿なら、さぞやもてたことであろう。やがて、そのうちの何人かと私も肉体関係を持つことになる。しかも、祖父と三人で。

 こうして私と祖父の関係は、祖父が亡くなるまで十年も続くことになった。その間に、私は祖父の言葉通り、ありとあらゆる性の喜びを教え込まれることになる。

 生堀り、中出し、顔射、複数での乱交・・。数え上げたらきりがない。そんな中でも私にとって衝撃だったのは、射精は陰茎をしごくことによって起こるもの。そんな常識を根底から揺るがす事態に直面したことだった。

 それは私と祖父が初めて男同士の交尾をしたこの日から、半年も経たないうちのことであった。十一歳の秋、私は、祖父のトコロテン射精を目の当たりすることになる。