俺と親父の柔道場

その4

 

「な、なんだよ、急にっ?!」

 

 俺、そのときの親父の剣幕っていうか、雰囲気に、なんかびびっちまってたんだと思う。

 ガタイでは俺の方がデカいのに、情けねえよな、俺。

 まあ、そんくらい、親父の気迫っていうか、気合いっていうか、そんなのがすごかったんだ。

 で、親父、シャツのボタンに手をかけながら、とんでもないことを言い出した。

 

「今から俺は、今日の夜の『お務め』を始める。お前はそこで見ておけ」

 

 そ、それって、親父が俺の目の前でセンズリこくってことだよな?!

 俺、最初は頭がついていかなくって、は?! って顔で親父を見上げるだけだった。

 親父、シャツと肌着脱いだら、ズボンのベルトも緩め始める。

 

「えっ、いや、親父っ。それって、ここでセンズリするってことだよな?」

 

 もう分かりきったことなんだけど、俺の頭が再確認を求めてた。

 

「さっき言ったろう。そしてこれは『お役士渡し』が済めば、お前が毎日やることになる『お務め』だ」

「いや、それはもう、分かったけどさ……」

「だったらそれこそ四の五の言わず、黙って見てろ」

「親父……、俺の前で勃つんかよ……」

 

 俺、そっちの方が心配、っていうか、俺自身が親父の前で勃つんかよ、って想像しちまってたんだと思う。

 

「俺が奉納するのは『お前の前』、じゃなくて、『神様の前で、神様に対して』だ。そこは間違うな」

 

 俺、言われて「あっ!」って思っちまった。

 もともと「奉納」の話しだったんだよな、これ。

 そこは俺も神社の血筋に生まれちまった性(さが)か、もういっぺんきちんと正座して、背筋を伸ばした。

 

「分かった。俺、親父の奉納、見届けるよ。普段通りの奉納、見せてくれ」

「ああ……。これが俺の『お務め』だ。穴のあくほど見つめて、頭に入れてくれ。お前の『お務め』が立派に果たせるようにな」

「ああ、分かった……」

 

 端から聞いて、端から見てりゃ、変態親子の会話だよな。

 センズリする親父を息子が正座して真っ正面に見てるなんて、普通、というか、普通で無くてもありえない。

 その『ありえない』ことが今から俺の目の前で始まるんだと思うと、俺の心臓、ばくばく脈打っちまってたんだ。

 

 親父、ズボンもトランクスも脱ぎ捨て、素っ裸になった。

 仕事でも道場でも、ずっと鍛え続けてきた身体。

 俺より小さい、軽いっていっても、まだまだ県内のシニアなら存分に現役でいける厚みと筋肉がすげえ。

 

 その親父のチンポは、もうびんびんにおっ勃ってる。

 スパ銭行ったときとかちらちら見てたし、なんなら道場での着換えは素っ裸にもなるし、萎えてるときのもんは見慣れてるって言えば見慣れてた。

 でも、実の父親のおっ勃ったチンポ、明るいところで見るなんざ、普通『ありえない』よな。

 

「親父、すげえ……」

 

 無意識に言葉に出ちまってたんだと思う。

 俺の目の前で、とか関係無く、最大限に勃起してるってのが分かるんだよな。

 正直言うと、俺の方がデカくはあると思うんだけど、それはやっぱりタッパのせいもあるんだろうし。

 

 親父のチンポ、ズル剥けの亀頭が赤黒くてらてら光ってる。俺と一緒で、先走り多いんかな。

 俺のとの違いはなんといってもその幹にまとわりついてるような血管みたいな筋。これがもううねうねとうねってて、すげえんだ。

 しかも、なんて言うか、握っても無いのに「これ、固いよな」っていうのがありありと伝わってくるのは、なんでなんだろう。

 亀頭のエラもすんげえ張ってて、あの部分が「兜」って言われるのもすげえ分かる。

 二握りはありそうなぶってえ竿、直径だけだったら俺のより太いんじゃないかな。根元から真っ直ぐっていうか、大木が天を突いてるっていうか。突き出した丸太の先に、さらにデッカい亀頭がえぐいぐらいに張り出してる。

 あれって、挿れられた相手、きついんじゃないかとか、そのときの俺、変なことばっかり考えてた。

 

 親父、素っ裸になってちょっと自分のしごいて、もう一度神棚に向かって正座した。

 しっかり頭を下げて、身体を戻して手を合わせてる。

 いつのまにか、普段は神棚の上にあるはずの茶色い皿って言うか小さな入れ物、うちでは『かわらけ』って言ってる奴が、親父の手元にある。

 あれに精液出すんかなって思ったけど、3回分だと溢れるんじゃって思うのは俺だけなのか。まあ、けっこう広いっていうか、面積で稼いで大丈夫なのかなとも思うけど。

 

 親父、正座してる両膝をぐっと広げて、ぶりっと張ったケツをかかとで支えるようにして少しだけ腰の位置を上げている。

 ああ、座ったまんまセンズリするんだなって思ったんだけど、後で聞いたら姿勢はどうでもいいってことだった。

 

「始めるぞ」

「ああ、見てるぞ、親父」

 

 親父が低く呟く。

 言い方からして、俺に聞かせるためだったろう。

 神様と2人きりなら、言葉にする必要無いもんな。

 なんとなく答えたがいいのかと思って、俺もなるべくフラットに聞こえるような声で返事した。

 

 親父が、浮いた腰の前、ガチガチにおっ勃ったチンポに手を伸ばす。

 親父のセンズリ。

 俺は今からそれを見届けるんだ。

 

「んんっ……」

 

 かすかな、それでもはっきりとした親父の吐息。

 チンポを握り締めたゴツい手が、ゆっくりと前後に動き始める。

 

 萎えてるときにも露わになっていた先端からして、ここまで勃ち上がってしまったら、皮の余裕なんて無いも同然だ。

 俺も同じ感じだな、と思いつつ、もっさりと陰毛が茂った根元から指ほどの高さになる鰓のところまで、何度も何度も往復する手の動きに見入ってしまう。かかとで持ち上げられた親父の尻に、その度に力が入るのが、見てて分かる。

 

 最初は先端だけを濡らしていた先走りが、徐々に激しくなる手の動きに透明な汁をまき散らし始めた。糸をひき、畳を濡らしていた液体が、だんだんとその到達範囲を広げあたりの湿度を上げていく。

 

「んっ、はっ、はっ、はあっ……」

 

 俺、目を閉じてセンズリする親父見てて、勃起してた。

 なんでか分かんなかったけど、とにかく俺のチンポも、カンカンに勃っちまってた。

 

 スウェットっていうか、柔らかい生地の股間が盛り上がってるのは、ちらちらこっちに目をやってる親父にも当然見えてただろう。

 親父、俺の勃起見て、一気に昂ぶったように息が荒くなる。

 うっすらと漂う親父の汗と体臭が、俺の脳髄を灼いていく。

 

「んっ、イくぞっ、出すぞっ!」

 

 扱き始めて、5分も経ってなかったと思う。

 切羽詰まってはいたけども、囁きのような声だった。

 これも俺に聞かせるためだったんだろう。

 たぶん、普段は黙ったままイッてるんだなって思う。大声上げちまう俺とは対照的だ。

 

「イけっ、親父っ! イけっ!」

 

 俺は俺で、親父にぶっ飛ばしてほしくて、声、出してた。

 神さんの前で、俺も親父も、親父が精液飛ばすのを、ひたすらに祈ってた。

 

「んんっ、んっ、んっ、んん……」

 

 道場が一気に『あの匂い』で満ちた。

 左手に持ったかわらけに、ぼたぼたと音を立ててぶつかる親父の子種。

 2度3度、いや、10回近い迸りが、『かわらけ』に小山のように盛り上がっていく。少しばかり黄色みの混ざった粘性の高いその汁は、かわらけの底面には広がらず、噴き上げたときそのままの軌跡を残してた。

 

「すげえよ、親父……。すげえ……」

 

 俺、言葉を無くしてた。そんな感じだった。

 

 親父が右手の平に、かわらけにぶちまけた自分の汁を半分ほどすくいとる。

 なるほど、自分が出した汁を潤滑油にして、2度目の射精をスムーズにしようってことなんだろう。

 かわらけに3回分が入り切れるのかって俺の疑問が、変なところで答えをもらってしまう。

 

「連続かよ……」

 

 いや、俺も3回ぐらいは続けてやるのはざらだけど、親父の年で、って思ってたとこもあったんだよな。

 でも、これも後から聞いたことだけど、逆に昂ぶったまんまの方が早くイけるって親父の話、なんか納得する俺がいたんだ。

 

 親父の股間、さっきの雄汁と先走りがぐちょぐちょってやらしい音立ててる。

 摩擦で熱を持ったのか、青臭い栗の花みたいな匂いがさっきよりぐんと増し、俺の鼻を直撃する。

 

 俺のチンポ、おっ勃ったままだった。

 正直、俺も親父みたいに素っ裸になってシゴきてえ、そんなことまで思っちまってた。

 

「んんっ、出るっ、また出るっ!」

 

 2度目もあっと言う間だった。

 親父、もしかして俺に見られて興奮してるんじゃ。そんな思いすら湧き上がる。

 その想像に、なんか俺、嬉しがってる。

 

 再び打ち付けられた精液は、一発目と全然変わんないくらいの量だった。

 かえって粘りが少なくなった分、皿の表面にぶつかる勢いは強かったんじゃなかろうか。

 2度の射精を受け止めた『かわらけ』は、もうそのほとんどがぼってりとした汁で覆われてきている。

 

「最後だ。禄朗、もっと近くに来て、俺の『お務め』を見てくれ」

「ああ、分かった」

 

 親父の言葉、「見ておけ」じゃなくて「見てくれ」なのは、俺も分かる気がする。

 親父、俺に見られて、確かに興奮してる。俺が見ることで、『お務め』に熱が入ってるのが、見てるだけの俺にも伝わってきてた。

 

 俺、この際と思って、親父の真ん前に陣取った。

 目の前に汁にまみれ、湯気を立てそうなほどに勃起した、親父のチンポがある。

 親父が『かわらけ』で受けなきゃ、俺の顔を雄汁が直撃する。そんな距離。

 

「はっ、はっ、はっ、はっ……」

 

 親父、2度目までとは違い、声を全然殺してない。

 俺が親父のを見てるのと同時に、親父も俺を見てる。

 親父が、膝を割った俺の股座を見てる。中の昂ぶりが小山を作り、その山頂に出来た染みを見つめてる。

 親父の『お務め』を見届ける。その意識が無かったら、俺もまた親父のように、すんげえセンズリこいてたに違いなかった。

 

「イくぞっ、ロクっ、見てくれっ! 俺のセンズリっ、見ろっ! ああっ、イくっ、イくっ! 息子の目の前でっ、俺はっ、イくぞっ!!」

 

 俺みたいにデカい声張り上げてたわけじゃない。

 でも、目の前には親父の声がはっきり聞こえ、その視線が痛いほどに顔に刺さってた。

 

「イけっ、親父っ、イけっ! 俺の目の前で、イけよっ!」

 

 俺も喰い入るような視線を親父にぶつけてたに違いない。

 股を大きく割った親父の尻がぐいっと持ち上がり、膝立ちのような恰好で肉棒をシゴキ上げる。

 もう、限界だったんだよな、親父。

 

「イくっ! イくぞっ! 禄朗っ! イくっ!!!」

 

 親父の先端から、白濁した汁が飛び出した。

 手元じゃ無く、俺の顔を見ていたせいか、何発かの脈動は『かわらけ』におさまらず、俺の顔面を直撃する。

 避けようと思えば避けれたけど、俺、なんだか避けちゃいけない気がして、なんとか目をつぶらずに熱い汁の飛沫を浴びる。

 親父の匂いが鼻を付き、どろりと垂れた汁が頬を流れていく。

 

「ロク、済まん……。かかっちまったな……」

「いいよ、こんくらい」

 

 親父が汁まみれのチンポをぐいっと根元からしごくと、先っちょから残り汁がどろっと『かわらけ』に垂れる。

 

「こいつに溜まった汁を神棚に上げ、拝礼を済ませば今日の『お務め』完了ってわけだ。お前なら夜の3回も、10分もかからずやっちまえるだろう?」

「親父だって、15分もかかってねえじゃんかよ」

「最近は30分近くかかってるのはお前も知ってるだろう。今日はお前が見てるってので、どっか俺も興奮しちまってたのかもな」

「息子に見られて興奮って、ホントにホモの変態じゃんか」

「そう言われればそうかもしれんが、『男に見られてた』から興奮してたわけでも無いんだがな。あくまで『お役士を継いでくれるお前』に見られてたからだ。それにお前だって、俺のセンズリ見ながら興奮してたろう」

「そんな難しいこと、俺、分かんねえよ。いや、まあ、部の連中とのこととか思い出しちまってさ」

「ふん、そういうことにしておくか。まあ、まだ分からなくて当然だ。さ、顔、拭いとけ。親父さんも分かっちゃいるが、さすがにザーメンまみれの顔じゃいかんだろう」

 

 俺、ちょっと嘘ついてた。

 俺が興奮してチンポ勃たせてたのは、柔道部の連中とのセンズリ大会とか、そんなの思い出してじゃなかった。

 単純に、親父がセンズリぶっこいてる姿見て、俺、興奮してた。

 親父にホモや変態だって言ってたのは、自分がそうかもって思っちまってたからだ。

 俺、ホントに、ホモになっちまったのかな?

 

「神棚に上げて拝礼した後の精液は、もう『撤饌(てっせん)』って奴になってる」

 

 親父はそう言うと、神棚に手を伸ばし、さっき置いた『かわらけ』をまた手元に戻した。

 

「てっせん? なんか、花の名前かよ?」

「ああ、クレマチスのことか。そうじゃなくって、撤収作業の『撤』に、『供え物』を意味する『饌』って字を書いて、『神様にお供えした食べ物を取り下げたもの』ぐらいの意味だな。仏壇に上げたご飯やお菓子を、後からみんなで食べたりするだろう? あれと同じと思っていい」

 

「へええ、そうなんだ……」

 

 親父の意図が分からず、とりあえず返事する俺。

 その俺の目の前で、親父がとんでもない行動に出る。

 

「えっ、それっ、飲むのかよ?!」

 

 親父の奴、『かわらけ』をぐっと傾けて、溜まった汁を飲んじまった!

 自分の出した汁、俺も匂い嗅いだり、まだ最初の頃だとちょっと舐めたりして2回目3回目の興奮剤にしたことはあったけど、あんな3回分の量を飲み干すなんてのは、頭にまったく無かったんだ。

 

「ああ、もったいないだろ?」

 

 いやいや、もったいないとか、そういうのじゃ無くってさ。

 なんていうか、汚い、いや、神様に供えたもんだから、汚いとか言っちゃいけないけど、ああ、俺、考えがまとまらない。

 

「いや、さあ、普通、飲んだりしないだろ?」

「神様の前でセンズリこくのも、どうせ普通じゃないだろう?」

「え、いや、まあ、そうだけど」

「まだ冬休みだからあれだが、門下生が来る場所にずっと置いとくわけにもいかんしな。捨てるのも気が引けるから、飲んでるだけだ」

「まあ、そう言われりゃそうなんだろうけど……。その、それって、俺も飲まなきゃいけないんかよ?」

「ん、別に飲まんといかんというわけでもないので、好き勝手にしていいぞ。掃除だけちゃんとしとけば」

 

 なんか、あっけらかんと言うか、ごくごく普通のことのように言う親父に、俺、毒気を抜かれてる。

 

「さ、全部掃除して、一応親父さんにお前に話したってことは伝えておかんといかんし、戻るぞ」

 

 親父の促しに、ちょっと頭をひねりながらも雑巾がけとかやった俺達。

 汗とか精液、先走りとか、けっこう飛び散ってた。

 まあ、びっくりすることは多かったけど、結局は部屋でやってたセンズリを道場でやるってことになっただけで、生活が大きく変化するわけじゃないもんな。

 

 そう、そのときの俺は、この『お務め』って奴をそんなぐらいにしか感じて無かったんだ。

 まさかそのための『お役士渡し』の儀式であんなことやるなんて、あんまり想像出来てなかったしなあ……。