男性専科クリニック Part 4

その4

 

その4 男達に囲まれて

 

「そうだ、山崎さんとか、こういう話ししてると、もう勃ってきてるんじゃないですか?」

「あっ、先生、そんな……」

「図星かな? 山崎さん。立派な勃起をみなさんに見せてあげたらどうです? 男としての自然なことなんですし、宿の話だとここにいる私達以外に男性客がいるわけでもない。仲間内の貸切温泉みたいなものでしょう。ほら、立ってみてください。私も山崎さんの回復具合、見たいですし」

「そ、そんな、だって……」

 

 山崎からするととんでもない話しだったが、野村医師はさも当然のように立ち上がりを促してきた。西田はにやにやと笑い、村岡と宮内も目を光らせている。

 

「だってもこっても無いですよ。ほらほら、山崎さん。半年前には勃起がままならなかった逸物が、このように直接的な刺激を受けなくても雄々しく勃ち上がっている。そんな山崎さんの太いのを皆さんに見せつけて、男性機能の回復の素晴らしさをアピールしてください。うちのクリニックの宣伝にもなるんですから、よろしくお願いしますよ」

 

 いいように乗せられてる、ということは山崎にも分かるのだが、互いの逸物を握り、しごき合い、しゃぶりあった野村医師や西田の前ならいざ知らず、今日会ったばかりの男達の前に自分の勃起したチンポを晒すことは、かなり勇気のいることだろう。

 それでも野村医師の言う「クリニックの宣伝に」という言葉を言い訳に、意を決したようだ。

 

「おお、勇ましく勃っとりますな! 実にうらやましいですわ!」

 

 立ち上がった山崎が4人の男達の前に、勃起した逸物をさらけ出す。

 風呂を囲う大石の一つに背中を預け、両手を頭の後ろで組んだその姿は、いつかの治療時の体勢を、あるいはゴルフ場での田畑看護師のことを思い出しているのだろうか。

 

「太り気味の身体付きに、これまた太いチンポが、実によく似合っとりますな。いや、本当にうらやましい!」

 

 村岡が褒めたたえる。

 その目はすでに、欲情に潤んでいるようにさえ思える。

 

「すごい勃起ですね。カンカンに固そうだし、なにより太さがすごい。しかも先端の雫はどうやら温泉のものじゃなさそうだ」

 宮内の感心したような台詞は、膨らんだ亀頭の先端に見えるものが温泉の湯では無く、体内から押し出されたカウパー腺液ということを見通してのものだろう。

 

「山崎のチンポ、ぶっといでしょう? こいつが治療前、最初の頃はだらっと垂れてただけで、実にもったいなかったんですよね。握ったときの太さ感は、俺達の中でも一番じゃないのかなあ」

 西田ももう、自分達の関係を隠すものでも無いと感じているようだ。

 

「いやあ、実にうらやましい勃ち具合ですな。野村先生、山崎さんのもの、ちと握らせていただいてもいいですかね?」

「もちろんですよ。うちのクリニックの治療で、半年前まではかなり重いEDだった人がここまで回復してきた証拠でもあります。山崎さん、もちろんいいですよね?」

「え、あ、あ、でも、あ、はい……」

「山崎のぶっといのがおっ勃ってるところを、村岡さんも宮内さんも、じっくり確かめてやってくださいよ。もう男として、こんなの握ったら堪らんですよ」

 

 村岡が山崎本人では無く、野村医師に尋ねたのは意図的なものだろう。当然のように答える医師の言葉に、患者である山崎は反論出来ない。

 西田の薦めに、村岡と宮内が山崎の裸体に近づいていく。

 

「これは……。近くで見るとすごいですね……。先走りがとろとろ落ちていってる」

「握らせてもらおうかの。おお、これはすごい! 固いし、熱いし……」

「あっ、あっ、すごいっ! 気持ちいいっ! 村岡さんの手もっ、熱いっ……」

 

 出逢った当初、村岡の突っ込みにとぼけたようにしていた宮内だったが、山崎の隆々と勃起した逸物を前に、もはや興奮を隠せないようだ。

 村岡はもう好奇心満々で握った手をかすかに動かし、山崎の反応すら楽しみ始めている。

 当の山崎は「自ら感じた快感を正直に発言すべし」という野村クリニックでの指導のゆえか、男達の中で1人勃起を晒していることからの興奮からか、恥ずかしさよりも直接握られた快感の方が勝っているようだ。

 

「そうそう、うちのクリニックの方針で、快感を素直に、正直に口に出すことが、心理的な勃起不全には大変いい結果をもたらすと、快感を意図的に言葉に出す指導をしています。

 山崎さん、ここも治療の1つと思って、自分の感じているありのままを口にしてください。

 村岡さんと宮内さんは、山崎さんのものを色々いじってみて、男性の勃起機能の力強さ、素晴らしさを堪能してください」

 

「おお、先生のお墨付きが出たぞ。では山崎さん、遠慮なくいじらせてもらいますわ」

 

 村岡の手の動きが激しさを増す。

 西田が宮内の手を山崎のふぐりへと導き、軽く揉むようにと囁く。

 

「あっ、あっ、そんなされたらっ! ダメですっ、ダメですよっ!」

 

「ほら、山崎さん。名前を呼ぶのを忘れてますよ」

 

「ああっ、村岡さんがチンポしごくのが、すごく気持ちいいです! 宮内さんが金玉握ってくれると、すごく感じます!」

 

 もはや野村医師の言葉はクリニックで見せる医師としてのそれと、なんら遜色の無いものだった。的確な指示と特徴的な低い導きが、山崎にここが温泉であることを忘れさせる。

 

「山崎さん、おとなしそうな顔をしてるのに、すごく大胆に喘ぐんですね」

 

 宮内がどこか不思議そうにつぶやく。

 大の男が温泉で他の男に逸物をしごかれ、大声でその快感を叫ぶというのは、確かに常識ではありえないことだったろう。

 

「ああ、村岡さん、宮内さん。うちの治療では快感を言葉にするのと同時に、その快感を与えてくれるのがいったい『誰』なのかを強く認識出来るよう、名前を呼んで快感を伝えるようにしています」

「いやはや、言われてみると納得する話しばかりですな」

「本当に山崎さんが気持ちいいことを素直に言葉に出しておられて、その男らしさに尊敬してしまいますよ」

 

 医師の言葉に感心したような村岡と宮内ではあったが、山崎の局部をいじるその手は止まることなどない。

 いや、山崎がよがればよがるほど、その動きは激しくなっていく。

 

「西田さん、下半身はお二人に任せて、私達は山崎さんの乳首を責めてみませんか?」

「先生、相変わらずいやらしい。まあ、そうでなくっちゃインポの治療なんぞ、出来やしないですよね」

 西田の返しに村岡と宮内もくすくすと笑う。

 当然、立ち上がるはずの西田と野村医師の股間も見えるはずだ。

 

「野村先生のも、西田さんのもすごい……。ビンビンだ」

 

 村岡がまぶしそうに見やる医師と西田の股間も、山崎に劣らずすでに天を突くかのように勃ち上がっていた。

 

「すぐ側で誰かが元気よく勃起してると、男ならもらい勃ちするのは当然です。『気持ち悪い』や『男の見て立つかよ?』なんてのは、文化的に刷り込まれたものにすぎない。本来、生命力に溢れた行為が周囲を染めていくことは、当たり前のことなんです」

 

 医師が持論をとくとくと展開する。

 

「目の前に3本のすごい勃起チンポ。こりゃあ今回の旅行のいい思い出になりますね」

 

 野村医師の言葉にどこかトンチンカンな返事を返す宮内だが、その目線は山崎と他の2人の股間を行ったり来たりしている。

 

「せっかくだから、山崎さんの射精をみなで手伝って上げましょう。山崎さん、これが生理機能が回復した男の姿だと、みなに見せて上げて下さい」

「ダメです、こんなところで! ああっ、でも、このままされると、イって、イってしまいますよっ!」

 

 肉棒と睾丸を村岡と宮内に、両の乳首を西田と医師に責められながら、山崎の最後が急速に近付いてくる。

 まだ日も高い屋外、開放的な露天で行われる行為に、山崎はますます興奮し、たれ落ちる先走りが股間をしとどに濡らす。

 

「といっても、こんな素晴らしい温泉を汚すわけにはいかんですな。そうだ、村岡さん、宮内さん。どちらか、いや、お二人ででもいいが、山崎さんの精液を口で受け止めて上げてくれませんか? 感染症など無いことは検査済みです」

 

 野村医師がまるでそれが当然な行為であるかのように、山崎の足元で玉やペニスを責める2人に声をかける。

 

「確かに、これほど透明度が高い温泉ですし、下手に濁してもいかんですから、ワシが飲ませてもらいますかな」

「ずるいぞ、昭一。私にも半分もらえる権利はあるだろう?」

「まあまあお二人とも、喧嘩はされずに。男性の射精は何回かに分けて噴き出されますし、最近は山崎さんの精液量も以前に比べて目を見張る程に増えてきている。途中で交代したり、口の中のものを移し合ったりして、公平に分けられてください。健康な男性の精液は非常に良質なタンパク質や亜鉛を含みます。身体に取ってもいいはずですよ」

 

「ううっ、もうっ、イきたいですっ! ああっ、そんな焦らさないでっ!!」

 

 村岡がしごく山崎の肉棒であるが、山崎の身体のおののきを敏感に察知しながら、絶妙なコントロールでイかせないよう調節しているのだろう。

 それはまた、山崎の意志とは無関係に、周囲で進められる吐精計画の放埒のタイミングを調整するものでもあった。

 

「じゃあ、最初の一発目はワシが口で受けて、途中で寛と交代しよう。上手くやらんとこぼれてしまうぞ」

「それはもったいないので、昭一が受けたらすぐに私に主導権を渡せよ。山崎さん、私と昭一の口に、最高の射精をしてください」

 

 村岡と宮内の間の話もまとまったようだ。

 目配せをする野村医師の采配か、みなの責めのボルテージが一気に上がる。

 

「ああっ、そんなっ! これでしゃぶられでもしたらっ! ダメですっ、ダメっ!!」

 

「ほら、山崎さんっ! 最後にみんなの名前を呼んでっ、名前を言って、自分の感じてることをそのまま言って、射精してくださいっ!」

 

 野村医師の残酷な、いや、今の山崎にとっては、より興奮を増す材料でしかない指示が飛ぶ。

 

「ああああっ、! 村岡さんにチンポしごかれてっ! 宮内さんに金玉潰されてっ! 野村先生と西田に、乳首責められてっ! 感じるっ! 全身っ、感じるっ!!」

 

 もはや発射まで、ブレーキはかからぬようだ。

 

「すげえぞっ、みんなにやられて、今の山崎っ、すげえエロいぞっ!」

「もっとっ、もっとワシの手を感じて出してくれっ! ワシの口に出してくれっ!」

「ああ、山崎さんの金玉がグッと上がってくるっ! イっていいよっ! 山崎さんっ、イっていいよっ!!」

「山崎さんっ、4人の男に囲まれて、4人の男に責められて、イってくださいっ! 最高の快感を感じて、イってくださいっ!!」

 

 宮内の手がごりごりと金玉を揉み上げ、村岡の硬い手のひらが亀頭をずるりと撫で回す。

 乳首の先端が野村医師に優しく舐められ、西田は歯の先で噛み潰す。

 

「あっ、ダメっ!! イくっ! イくっ! イくっーーーーー!!」

 

 その瞬間、山崎の引けそうになる腰を医師と西田ががっちりと支え、村岡が先端をパクリと咥えた。

 

「イってるからっ、ダメっ! 村岡さんっ、イってるからっ!」

 

 村岡が喉奥に熱いしぶきを感じたとき、反射的に先端をじゅるりと舌と口蓋で撫で回したのだろう。射精の瞬間に亀頭と鈴口を舐り回されるその刺激は、山崎にとり、あまりに強烈だった。

 がくがくと震えそうになる腰は、2人の男達に固定され、刺激を逃すことさえ出来ない。

 

「村岡さんっ、宮内さんっ! 気をつけてっ!!」

 

 野村医師の激が飛び、村岡と宮内が素早くしゃぶる口を交代させる。

 

「あああああーーー、吸われるっ! イってるのにっ! イってるのにっ、チンポが吸われるっ!! チンポが滅茶苦茶にされるっ!」

 

 射精の律動の途中、受け取るべき唇と口内の感触、体温が変わり、肉棒をしごきあげるリズムやテクニックも変化する。

 その快感の変化を上手く説明する語彙を山崎は持たなかったが、周囲の者達にとっては、山崎がとてつもない悦楽を味わっていることは、十分に想像できていた。

 

「はあっ、はあっ、はあっ……。こ、こんな射精……。イってる途中で、刺激変わるなんて、初めてでした……」

 

 最後の一滴までと、しゃぶり上げていた宮内の唇が離れ、山崎は大きな石に身体を預けたまま、顔を腕で隠すように天を見上げている。

 

「素晴らしい射精でしたよ。これこそ、男のイき様、って感じだったかと思います。お三方は、山崎さんの射精を間近に見て、いかがでしたか?」

 

 冷静に感想を求める野村医師の態度は、アセスメントを行う専門家としてのそれでもあった。

 

「山崎さんの雄汁も、濃かったですな。いや、半年前までは元気なかったとか、信じられませんわ。ただ、こういう実例を目の当たりにすると、ワシのインポも治るのかなと期待してしまいますな」

 

 村岡の感想は率直なものだろう。

 笑い話にはしているが、男として下腹部の持ち物の元気が失われてきているというのは、村岡の内心にかなりの重さを持ってのしかかっているはずだ。

 

「よい例を山崎さんが示してくださいました。もし治療に前向きになられたら、ぜひクリニックを利用していただければと思いますよ」

「はは、がぜん興味が湧いてきましたな。これまでもここぞのときには輸入した薬とか使ってたんですが、しょせんあれも単発ですからなあ……」

 

「宮内さんは、どうでしたか? 山崎さんの金玉も握っておられたので、射精の瞬間の睾丸の動きとか、ダイナミックだったでしょう?」

「すごかったです……。私の手の中で、2つの玉がぐっと引き上がる感覚があって、とっさに手を絞って、上がらないようにしたりして。自分がイくときにこんなことやられたら感じるだろうなって思って、やってしまいましたよ」

「はは。自分が感じるようなことを相手にも、というのは、相手のいる性的な行為ではとても意味のあることですからね。より快感を追求しあうために、自分や相手の気持ちのいいこと、快感を感じたことを言葉に出すというのも大事なことです」

 

 学生に話す教授のような口調になってしまうのは、ある意味仕方のないことのようだ。

 

「いやあ、先生。俺、山崎がイくとき、自分も漏らしちまった……。せっかく村岡さん達が山崎の飲んでくれたのに、俺がお湯、汚しちまった……」

「不可抗力だったと思いますよ、西田さん。それも回復して元気になってきてる証拠じゃないですか」

 

 西田は山崎の痴態を目の前にして、堪えることが出来なかったのだろう。

 ほとんど触れてもいない肉棒の先端から、とろりとした白濁液が糸を引いていた。

 

「おお、もったいない。ワシがもらおう」

「あっ、村岡さん、すんませんっ!」

 

 村岡がしゃがみこみ、西田の亀頭を加えて後汁をすすり上げた。

 もはや5人の間に、互いの関係性を隠す必要性は無くなっていた。

 

「外で、しかもこんないい風景のところで4人に責められて、もう最高だったというか、自分でもわけが分からなくなるぐらいに興奮してしまいました。全身、もう気持ちよすぎて……。いや、お恥ずかしい……」

「山崎さん、セラピーでは何度も言っていますが、恥ずかしがる必要はまったくありません。ほら、ここにいるみなさん、山崎さんが風呂場でよがり声を上げて射精したことを馬鹿にしたり揶揄してる人は1人もいないでしょう? 男の本能とも言える性欲の正直な解放は、偏見無く見れば誰にとっても感動と官能を呼びます」

「そうでしたね……。これからも、イくときは堂々と声を出してイくようにします」

「はは、その意気ですよ」

 

 山崎と野村医師のやり取りを、他の3人は講義を聴く学生のようにして耳を傾けていた。

 

「あ、村岡さん、宮岡さんの方は、御自身の勃起などはいかがでしたか?」

 

 みなが再び肩まで湯に浸かり、顔など洗っていると野村医師が思い出したように尋ねた。

 

「私は……、私も勃起してました。興奮して、自分でもしごきたかったんですが、なんだか気後れしてしまって……。堂々と射精された山崎さんを目の前にして、自分の性根の細かさが恥ずかしくなりましたね」

「次があったら、宮内さんもぜひ堂々と声を出して射精してみてください。心地よいものですよ」

 

 野村医師の言葉の「次」は、明らかに今晩行われるはずの、村岡と宮内の2人の夜のことを指している。

 

「ワシの方はすごく興奮しとって、けっこう太くもなったんじゃが、がちがちの勃起まではいかなかったのがやっぱりくやしいですな。それでも先走りだけはダラダラと流れ取ったと思います」

 

 村岡の言葉は、つやつやとした肌を一段と上気させてはいるが、少々のくやしさに彩られている。

 

「どれ、少し診させていただいていいですか?」

 

 これも当たり前のように医師が尋ねた。

 

「え?! あ、はい、そこでいいですかな」

 

 村岡がこれも普通に露天の縁石に腰かけ、足を開く。もともと股間を晒すことにはそう抵抗が無いタイプなのだろう。

 

「物理的な刺激で、村岡さんの勃起、ここでは血液のペニスへの流入反応が起こるか見てみましょう。せっかくだから、みなさんも近くによって見てください」

 

 石に腰かけ股を開いた村岡の周りに、男達が集まる。

 正面で湯の中から胸まで出した野村医師が、でっぷりとした村岡の腹の下、ちょこんと突き出た逸物に手を伸ばす。

 左手にたっぷりとした内容量を思わせるふぐりを乗せ、若干前に突き出たペニスを右手で握る。

 弾力を確かめ、包皮の可動具合を念入りに確かめる。

 

「少し小ぶりではありますが、弛緩時でもしっかり包皮は剥けていますね。鰓の張りも勃起していないのにきちんと段差があって、硬度が増せばますますエッジの効いたものとなるでしょう。

 金玉はずっしりとした量感もあって、おそらくは同年代の平均と比べてもかなり大きいものではないかと思います。

 ちょっと刺激してみますので、村岡さんは『勃起しちゃいけない』『感じてはいけない』などの抑制をなるだけ取っ払うように思っていてください」

「あ、はい。山崎さんのように、なるべく堂々としておきます」

 

 医師の口調は、山崎や西田に医療者として接するときのそれそのものだった。

 村岡も宮内も、状況の変化に頭がついていけないのか、流れに身を任せているようだ。

 

 野村医師が親指の先に自分の唾液を取り、栗の実のように剥け上がった亀頭の裏筋、八字に皮膚の寄ったあたりをぬるぬると刺激する。

 

「ああ……。先生、そこ、気持ちいいです……」

「亀頭粘膜と、この裏筋のあたりは、ほとんどの男性に取り快感を強く感じる部位です。ほら、村岡さんのもだんだん太くなってきた」

 

 医師が言うように、さきほどまでは大きなふぐりの前にちょこんと突き出したように見えた村岡の逸物がその容積を増し、太めの松茸のようなボリュームを見せてきている。

 

「宮内さん、いつもの村岡さんの勃起具合と比較して、この状態はどういう感じでしょうか?」

「うーん、私とのときもこんなふうに太くはなるんですが、固くまではならないんですよね……」

「ワシのがこんなんなので、宮内が自分のせいだって思ってるんじゃないかと思って、逆に申しわけ無くなってしまってですな……」

「……、物理的な血液の流入に支障は無さそうですから、もしかしたら山崎さんと同じように、心因的なものがあるのかもですね……。ここでの診立てではこのくらいまでしか分かりませんが、もしよかったら、お2人でクリニックに来てもらえると、また色々検査していい方法が見つかるかもしれません」

「……、その節はよろしくお願いします、先生」

 

 村岡と宮内が「そういう関係」だということを前提とした医師の質問であり、2人もまたそれが当然かのように答えていた。

 

「そのさあ、お2人は夕食の後は時間取れませんかね? うちの部屋で、今夜は俺達患者2人ともう1人の看護師君の3人で、野村先生のこれまでの労をねぎらって楽しんでいただこうと計画してるんですけど……」

 

 西田がうずうずしていたように話しを切り出した。

 田畑君も入れ、6人で楽しめないか、という腹づもりだろう。

 西田の提案に、村岡と宮内が困ったように顔を見合わせる。

 

「いや、すごく嬉しいお誘いなんですが……。

 実は明日も早朝からゴルフの予約を入れてしまっとるんですわ。1年ぶりの2人での旅行で、色々詰め込んでしまっていて、この年になると、夜遊びもなかなかきつくて……。

 ホントに申しわけ無いが、先生のところの受診や、皆さんとまたの逢瀬を楽しみにさせてもらっていいですかな?」

 

 くやしそうな2人の顔は、本心だろう。

 話しを持ちかけた西田は明かな落胆顔だ。

 

 見知らぬ者達との乱れた夜もそそったのだろうが、2人きりの時間を大切にしたいのだろう。おそらくはそのための泣く泣くの選択だろうと、日程の調整に時間をかけた準備をしてきた村岡と宮内の気持ちを察した野村医師だ。

 受診に繋げてくれるだろうという確信もあってか、2人を慮った折衷案を医師が提案する。

 

「それは仕方が無いですな。

 私の連絡先をフロントに預けておきますので、帰られたら気軽にご連絡ください。

 最初は出来ればお2人で来ていただいて、治療の過程では山崎さんや西田さんと一緒のグループセラピーなども計画出来るかと思いますので。

 その際には私や看護師の田畑君、また別の研究者であられる私の師事するドクターの参加なども検討させていただきます」

 

「分かりました。先生はじめ、みなさんとの再開を楽しみにしておきますわ」

 

 夕食の時間も迫ってきている。

 みながざっと上がり湯を使い、それぞれの部屋へと戻ることとなった。