男性専科クリニック Part 6

その6

すべての刺激からの解放

 

「あっ、の、野村先生っ……! それっ、すごいっ、すごいですっ……」

「田畑君っ、そこっ、そこ、もっといじってくれっ! 感じるよっ、感じちまうっ!!」

 

 快感を伝える語彙はそれぞれに違うが『自らの快感を言葉にして相手に伝える』という、このクリニックでのルールはきちんと守っている二人である。

 尻穴のみを責め、目の前にそびえるいきり勃った肉棒に触れない医師と看護師には、患者二人の射精に向けて与える快感のビジョンがすでに出来上がっているようだ。

 

「ほら、こうやって、上から下へと押すようにして撫でてみます」

「ああっ、なんか漏れそうですっ、先生っ、駄目っ、駄目っ……」

「いわゆる前立腺液、我慢汁が、どんどん溢れてきますよ、山崎さん。もっともっと、感じてください」

 

「西田さん、ほら、この一番盛り上がってるところをお尻の内側から強く押さえると……」

「うあああっ、なんだこれっ、なんだっ、すげえっ、田畑君っ、すげえ感じるよっ!」

「西田さんの先走りもすごい量ですよ。もったいないので、ちょっとすすらせてもらいます」

「うあ、あっ、もっとっ、もっとしゃぶってくれっ……」

「本格的な尺八はまだまだですよ。ああ、でも、西田さんの我慢汁、美味しいです……」

 

「おいおい、田畑君。口を使うのはまだ早いぞ。しばらくは尻だけでもっと気持ちよくさせなきゃだ」

「先生、すみません。あまりにも西田さんのチンポがすごくて、でも、先走りの垂れてるのを舐めさせてもらっただけで、しゃぶってはいませんので」

「最後はタイミングを合わせたいので、そこは慎重にな」

 

 ラテックスの手袋をはめた左手、その3本の指だけを使って刺激されている西田と山崎の前立腺は、二人の医療者の指先のほんの少しの動きにも、敏感に反応し始めていた。

 外からでは指の根元のわずかな動きしか観察することは出来ないのだが、おそらくは撫で、押さえ、叩くなど、繊細かつ多様な蠢きが供されているのに違いない。

 ゲイである野村医師、田畑看護師の、村岡や宮内の大腰小腰を使ったダイナミックなアナルセックスの動きとはまったく違う、言わば『アナルへの静かな責め』が、患者である山崎と西田をどんどんと快楽の極みへと追い込んでいくのだ。

 

「ほら、こんなふうに前立腺の部分を2本の指で両側から挟んでぐりぐりってやるのも、感じるでしょう?」

「あっ、それっ、駄目ですっ、先生っ、駄目っ……」

「山崎さん、そのまま手を伸ばして西田さんの乳首を刺激してください。優しく、強く、いつものようにやってみてください」

「うああああっ、山崎っ、乳首っ、感じるぞっ! なんだこれっ、今までよりもっ、すげえっ、すげえ感じるっ!!」

 

 これまでのセラピーの中、十分に開発されていたと思っていた自らの乳首から来る快感が、さらなる深まりを見せているのか。

 

「ふふ、西田さん。乳首と前立腺の快感は繋がってると言われるほど、相性がいいものなんです。さあ、西田さんも山崎さんの乳首を責めてみてください」

「ああああああっ、西田っ、駄目だって、乳首っ、乳首っ、感じすぎるっ! ああっ、駄目っ、駄目だっ、西田っ!!」

「すげっ、すげえっ! 山崎がっ、ケツいじられてっ、俺に乳首触られて感じてるっ! 山崎っ、俺もすげえ気持ちいいよっ! いいのか? お前も感じてるんか?」

「感じてるよっ、西田っ! お前に乳首いじられてっ、俺っ、俺っ、感じちゃってるよっ!!!!!」

 

 施術室の天井に、二人の雄叫びが谺する。

 体格のいい全裸の中年男達がベッドに横たわり、同じく素っ裸の二人の医療者に尻だけをいじられながら、すさまじいまでのよがり声を上げているのだ。

 その状態をコントロールするはずの『いじる』側の二人の興奮も、急激に昂ぶっていくのは当たり前のことだった。

 

「先生っ、僕っ、もう我慢出来ないですっ! 西田さんの金玉を、チンポを、いじっていいですか? しゃぶっても、いいですか?」

 

 若さゆえか、田畑看護師の声にはどこか射精前のような切迫感すら籠もっていた。

 

「ああ、そろそろ私も限界だよ、田畑君……。

 山崎さん、この後、私も田畑君も、ペニスと睾丸への愛撫も加えていきます。お二人は互いに乳首やハグ、キスをしながら、興奮を高めてください。なるべく射精のタイミングを合わせたいので、イきそうなとき、イきたいときは、いつものようにしっかりとみなの名前を呼びながら言葉にしてください。

 このセッションでは私と田畑君は完全に奉仕者の側に回りますので、お二人は私達のことは気にせず、存分に自分の快感を追求してください。

 その分、私達はお二人のザーメンを堪能させてもらいますので」

 

 医師の説明を尻の切なさに耐えながら聞いていた山崎と西田であったが、その内容そのものがさらなる興奮を生んでいる。

 

「はああああっ、先生っ、先生の話っ、いやらしすぎますっ! もう、それだけでっ、イきそうになってますっ!」

「俺もだっ、山崎っ! 我慢して我慢して、先生の言うようにっ、一緒に、一緒にイくぞっ!!」

「ああっ、西田っ! 私の乳首、もっと強く摘まんでくれっ! おおっ、キスっ、キスしようっ、西田っ!!」

 

 存分な昂ぶりを二人の様子で察した医師と看護師が、いよいよフルサービスをと、右手と顔を、山崎と西田の股間へと近づけた。

 

「ああああっ、先生っ! 玉っ、金玉がっ、いいっ、気持ちいいですっ!!」

「すげえっ、田畑君の口っ、すげえ気持ちいいよっ! もっと、もっとしゃぶってくれっ!!」

「山崎さん、西田さん。もっと、もっと感じていいんですよ。声を出して、よがって、キスをして、乳首をいじって、もっともっと、感じてください」

「ああああっ、たまらんっ! ケツもいじられてっ、そんなされたらっ、もうっ、もうっ!」

「西田さん、少し刺激緩めます。山崎さんと、イくのをなんとか合わせて、一緒にイってくださいっ!」

「うあっ、西田がイきそうにって言うと、私もっ、私もイきたくなりますっ! すごいっ、すごく気持ちいいっ!!」

「どこが気持ちいいんですか、山崎さん。ちゃんと言葉に出してください。どこが、どんなふうにされて気持ちいいんですか?」

 

 医師の誘導が、二人の中年男に更なる快感を引き寄せていく。

 

「ああっ、はあっ、はっ、はっ! 先生にいじられてる尻がっ、すごく気持ちいいですっ! 中もいいし、指が当たるのが分かる入口もすごいっ! あっ、そのっ、そのっ、ふぐりを揉まれるのもっ、すごいっ、すごいっ。玉がぐりぐりなるのがっ、気持ちよすぎますっ! 西田がいじってくれてる乳首も、すごく感じます。痛みも全部、全部気持ちいいっ! あああっ、そして、西田とキスすると、気持ちいいのが全部っ、全部倍になるっ!!」

「山崎っ、俺もっ、俺もすげえ感じてるっ! お前とキスして、乳首いじってっ、田畑君に前立腺責められてっ! 全部いいっ! 玉も、チンポもっ、亀頭もっ! 全部、全部、全部いいんだっ!!!」

 

 言葉に出すことでより快感が深まることを、これまでの治療で理解している2人のそれは、施療をしているはずの医療者にもまたその悦楽が還元されていく。

 その視界に広がる男達の様が、耳に聞こえる声が、喉に、舌に、手に感じる男達の生の肉体が、医師と看護師の肉棒から多量の先汁を垂らす引き金となっていく。

 

「どうですか、西田さん、山崎さん。そろそろ、イけそうですか?」

「先生っ、田畑君っ! 俺はもうっ、いつでもイけますっ! 山崎っ、お前っ、イけるかっ! イけそうかっ!」

「ああああっ、イきそうですっ! 先生っ、尻をもっと、もっといじってくださいっ! 西田っ、もっとっ、もっと乳首をいじめてくれっ!! ああ、先生の口がすごいっ!! イきそうっ、もう少しでっ、イきそうですっ!」

「西田さんっ、山崎さんに合わせましょうっ! 山崎さんがイくとき、前立腺をぐっと押しますので、盛大にイってくださいっ!」

「ああああっ、田畑君っ! これ以上激しくやられたらっ! 俺っ、俺っ、変になっちまうっ! すげえ感じちまうっ!」

「感じていいんですよっ、西田さんっ! おかしくなっていいんですよっ、山崎さんっ! 私と田畑の口に、いっぱいっ、いっぱい精液を出してくださいっ! ほらっ、山崎さんっ、これがっ、これがいいでしょうっ! 気持ちいいんでしょうっ!」

 

 これが最後とばかりに、野村医師の指先がぷっくりと盛り上がってきている山崎の前立腺の膨らみを撫で回す。最初は幾分かの柔らかさを呈していたそこが、固く張り詰めてきているのはまさに射精の前兆だ。

 激しく上下に西田の肉棒をしゃぶり上げる田畑看護師の唇が、唾液と先走りでぬらぬらと艶光る。

 引き上がり始めた玉を揉むその手は存外に優しく、その小指は蟻の門渡りを押し込んでいく。

 

「あっ、先生っ、そこっ、そこやられるとっ、イきますよっ! イって、イっていいですかっ? あっ、ああああっ!!」

「山崎さんっ、イってくださいっ! 西田さんもっ、合わせてっ! 山崎さんがイくのに、合わせてイってくださいっ!!」

 

 医師と看護師、2人の檄がとどめであった。

 

「ああああっ、イきますっ! イくっ、イくっ、イきますっ!!」

「俺もっ、俺もイくっ! ケツいじられながらっ、チンポしゃぶられながらっ、あっ、ああっ、イくぞっ、イくぞっ!!」

「イけっ、イってくださいっ!! 西田さんもっ、山崎さんもっ、イって、イってくださいっ!!!」

 

「ああっ、駄目だっ、イくっ、イきますっ、イきますっ!! 西田とキスしながらっ、ああああああっ、イくっ、イくーーーーーーーっ!!!」

「山崎っ、田畑君っ! 俺もっ、イくっ、イくっ、イくぞっ、出すぞっ、ああああああああああっ、イくーーーーーーーーーっ!!!!!!!!」

 

 跳ね上がりそうになる肉体を押さえながらも、射精のその瞬間まで、医師と看護師の指先が腸壁を揉み上げていく。

 生まれて初めて味わうその本格的な刺激と射精の快感が、2人の中で強く強く結びついていく。

 

「あっ、先生っ、指っ、指がっ、すごい……、もっと、もっと出てしまうっ、漏れるっ、漏れるっ、そんなっ、そんな……」

「なんだこれっ、止まんねえっ! 出るのがっ、汁が出るのが止まんねえっ!!」

 

 クリニックの治療や玉井医師が開発した扇情薬で、それまでよりは射精液の量も増えてきた西田と山口であったが、今日この日のその量は、その増えた液体量よりもさらに倍するほどのものであるようだ。

 口中に溜め込み、まだ喉奥へとは流し入れない医師と看護師が、おもわずむせ返しそうになるその量を、なんとか堪えて保っている。

 

 野村医師と田畑看護師が自らが放った精液を口中に残していることに気付いた西田が、すぐさまその意図を察して声をかけた。

 

「先生、田畑君……。俺、山崎の精液、飲みたい。もちろん分けてくれますよね?」

「ああああっ、西田の精液、私にもください。みんなで、みんなで、キス、そう、みんなでキスして、汁まみれになりたいです……」

 

 普段の量であればなんとか会話もなりたったのかもしれないが、今日ばかりは溢れるほどのその量に、口を開くことすらできない医師と看護師であった。

 互いにポジションを入れ替えて、野村医師が西田へと、田畑看護師が山崎へと、その豊満な、あるいはむっちりとした裸体で覆い被さっていく。

 空調の効いた施術室の中、4人の汗が混じり合い、ぬるぬるとしたその肌への感触が、さらなる情欲を呼び起こす。

 

「山崎、こっちに来いよ。みんなで顔寄せ合って、先生達からの汁、飲み合おうぜ」

「ああ、すごい……。4人でキスしながら、ザーメン飲みあえるなんて、すごい、すごい……」

「この後は俺とお前で先生達のを絞り出してやらないとな。そのためにも、栄養補給だ」

 

 射精後の立ち直りは、西田の方が若干早いようだった。

 その視線と言葉には、更なる欲望の渦巻きが見て取れる。

 

 4人の顔が合わさり、わずかに唾液と混ざった精液が零れながらも幾度も互いの口中を移動する。

 濃厚なその匂いと味わいは、男達にとっては燃えさかる火に投じられる薪とも言える。

 

 幾度も幾度も、互いの汁と唾液が混じり合った液体を堪能した男達。

 4人が4人、互いにその腕を回し合いながら、汗に濡れた肌の感触を味わっている。

 医師と看護師、2人のものは当然のこと、盛大な射精をした後であるはずの山崎と西田の股間も、その勢いを失うこと無く、いや、より一層の猛々しさで、固く、強く、勃ち上がっていた。

 

「先生、田畑君……。この後は、その、私と西田が先生達を楽しませる番ですよね……」

「もちろん、このままお二人に帰られてしまっては、ちょっと困ってしまいますよ」

「へへ、先生、その、この後は尻を使ったがいいのかな? 確かに指ではすげえ、感じさせてもらったんだけど」

「ははは。お二人のアナルに指以上のものを挿れるのは、もう少しセッションを重ねてからにしましょうか。こちらとしては、村岡さんや宮村さんとの拡大合同セラピーのときにでも、とか考えてますよ」

「ああ、先生、あの方達との合同セラピーって、もう想像しただけで興奮してしまいますよ」

「山崎さん、西田さん。前の話でもありましたが、玉井先生やマッサージの甚兵衛さんのことも忘れないでくださいね」

「そうだったよな。山崎、俺達ももっと開発してもらって、みんなと色んなこと、楽しめるようにならなきゃな」

 

 各人が思い描くその内容は微妙に異なっているかもしれないが、互いの『肌を合わせる』行為に関して、一人として違和感を持たなくなっていることが、このクリニックに通う患者にとっては、一番の治療成果なのかもしれなかった。

 

「先生、このまま始めちゃっていいかい? 先生達、俺達にやるばっかりで、疲れてたりとかしないかな?」

「西田さん、山崎さん。疲れの前に、まずは一発抜いてほしいっていうのが、私も田畑君も本当のところですよ。なあ、田畑君、そうだろう?」

「その通りですよ、西田さん、山崎さん。その、今日は僕、いじって飲むのは西田さんを堪能させてもらったので、イかせてもらうのは山崎さんにお願いしたいです」

「山崎、ご指名だってよ」

「田畑君、喜んで。あ、でも、せっかくだから、その4人全員で楽しみたいですよね、ね、皆さん」

「うわ、山崎さんがそんなふうに言うなんて、すごくやらしいですよ!」

 

 先ほどまでの切羽詰まった快楽の発露とは違い、いつものクリニック内の雰囲気が戻ってきたようである。

 これからはたして、4人の男達がどれほどの射精回数を競い、その汁を浴び、互いに出した精液を飲み合うのか。

 この時点では、誰にも分からないことであったのだ。