明友大学ラグビー部

鐙田一心のとある一日

その5

 

10:30

 

「俺のは相撲部の1年の奴と一緒にやって、センパイに気持ちいい射精、楽しんでもらうっスね。今度はセンパイに立ったままイってもらって、あのイく瞬間の膝ががくがくってなるのを味わってもらいたいので、椅子に縛ってる紐、ほどきます」

 

 相撲部寮僕、蟹作兵伍(がんつくりひょうご)が鐙田の前で宣言した。

 これまで椅子に座って両足を開かされたまま幾度もの吐精を果たしてきた鐙田に、今度は立位での射精を試したいのだろう。

 確かに尻を座面に押しつけたままの射精と、立った状態で立位を維持しながらのそれとでは、快感の感じ方に違いを覚えている者もいるには違いない。その与えられる『快感の違い』を意図的に再現しようというのは、寮僕である蟹作ならではのものだった。

 

 相撲部の1回生に、両手両足の拘束を解かれた鐙田。

 日頃の練習の成果か、痙攣するかのような快楽を何度も味合わされてきた鐙田だが、なんとかしっかりと己の足で立ち上がることは出来たようだ。

 

「うちの部の責めもけっこうすごいっスよ。うちはほら、てっぽうでみんなの手のひらすげえことになってるし、ローションも普通のと違って『土俵用の砂入り』の特別の奴なんス。これ、最初はちょっと痛み感じるかと思うっスけど、俺等の手でこれで揉むと、もう癖になっちまうんスよ。あ、そんな何回かで『砂無しじゃイケなくなる』なんてもんじゃ無いスけど、それでも普通のだと『物足りねえ』ぐらいにはなるんじゃ無いッスかね」

 

 蟹作の言う『相撲部特性の砂入りローション』の容器か。

 よく見るローションのプラボトルの中に、若干濁った液体が用意されている。

 はたしてそのローションを使うためだけに鐙田を立たせたのか。なにか他の技を披露するつもりではないのか。

 快感の違いにまでは思いが至らぬ寮生達の感じた疑問は、すぐに解決されることになる。

 

「あっ、そうだっ! 銭塘部長っ! 砂ローションもそうなんスけど、うちのほら、『肉垣(にくがき)』もやっていいっスかね?」

 

 蟹作の言う『肉垣』とは。

 問われた相撲部部長の銭塘(ぜんども)が、まずは蟹作の質問に鷹揚な態度で答えた。

 

「ああ、構わんぞ。あれもなかなかすげえからな。もっとも他の部でやれっても、ちょっと脂肪と体重が足りんだろうから、あくまでうちのやり方ってとこだが」

「了解っス! 鐙田さんに、うちら相撲部の快感、味わってもらうっス!!」

「ああ、やるなら気合い入れてやれよ!!」

「押忍っ!!」

 

 銭塘から檄を入れられた1年生2人が、蟹作とともに椅子から解放された鐙田を取り囲む。

 

「この『肉垣(にくがき)』って、相撲の稽古の『人垣(ひとがき)』って奴から来てるんスけど、他の部の人には分かんないスよね。俺等相撲部員の肉体で鐙田センパイの全身を揉み上げながら、砂入りローションでチンポ責めるっス。かなり感じると思うんで、いっぱい汁、出してください!」

 

 ここで言う『人垣』とは、ぶつかり稽古をする2人を土俵際に他の部員達が並び立ち、いわゆる『押し出し負け』や『稽古の中断を許さない』という、なんともすさまじい練習方法のことだろう。

 果たしてそれを性欲処理にどのように転換するものか。

 

 ローションを垂らされた相撲部の3人が鐙田に密着した。

 

「ああっ、ぬあああっ……!!」

 

 ぬるり。

 ぐちゃり。

 ぶちゅっ、ぶちゅっ……。

 

 鐙田が、相撲部の男達が、その身をよじる度に、卑猥な水音が響く。

 少し年配のものであれば、一昔前に十分に保湿された頬と手のひらによる粘着度合いを示した基礎化粧品のCMの記憶があるのではなかろうか。

 肉質のものに濡れたタオルが打ち付けられるような、あるいは密着した肌が陰圧に負けて剥がれるときのような、音だけでも勃起しそうな淫猥さが食堂の一角から発している。

 

 いずれも120キロは軽く超す柔らかな肉塊が、鐙田の全身を隙間無く覆い尽くす。

 弛緩した筋肉がつきたての餅のような柔らかさを呈するのは、鍛えられたアスリートの証でもあろう。

 

「あがあっ、せ、全身がっ、す、すげえっ……。か、感じる……」

 

 潤滑液にまみれた柔軟な脂肪と、その奥底にある膨大な量の筋肉。

 鐙田の体表のすべてが、その肉々しい感触を受け止める。

 

「前の代表者会議んときに雄志社の柔道部の奴にちらっとこういうのやってるって聞いて、俺等んとこでもと思ってやらせてみたら、かなりよかったんでな。どこに体重掛けても柔らかい肉に支えられて、力抜いたとこにもやんわり圧力がかかる。

 素っ裸同志でこれやって、全身それで感じながらチンポ扱かれたら、上の奴等だって、あっと言う間に天国行ける。部外で味わうのはお前さんが初めてのはずだぜ。せいぜい楽しんでイかせてもらえよ」

 

 銭塘の解説に、そこで与えられる快楽を想像してか、周囲で聞いている寮生達も興奮を隠せない。

 もっとも、自らの勃起した逸物を隠そうなどという無調法なものも、ここには1人もいないのだが。

 

「一心センパイ。俺達、相撲部のカラダもすごいっしょ。俺達んとこ、寮僕も持ち回りなんで、上下関係無く色んなテクニックお互いにやり合うんスよ。これ、俺達も入部してすぐにやられて、もうこれ無しじゃ物足りなくなるぐらいに感じちまって。

 こっからはこの餅みてえな俺達の柔らかい刺激に、最初に言った砂入りローションで一心センパイのチンポ扱かせてもらいます。

 これもすげえっスから、気持ちよく感じてもらえると嬉しいっスよ」

 

 蟹作が、その大きく荒れた手のひらに特性のローションをどろりと垂らす。

 一見、薄い灰色に見えたその粘性の高い液体は、よくよく見ると、細かな粒を内包していることが分かる。

 彼らの言う『土俵の砂入りローション』の効果は、いったいどのようなものなのか。

 見守る寮生達も興味津々のようだった。

 

「がああああああーーーーーっ、や、やめろっ!!! ああああっ、それっ、それっ、ダメだっ、ダメだっ!!!!」

 

 周囲からは相撲部3人の肉壁に阻まれ、まったく見えなくなってしまっている鐙田の下腹部で、いったい何が行われているのか。

 それは実に単純なせんずり動作だった。

 

 てっぽう柱に打ち付ける日々の稽古のおかげか、分厚い蟹作の手のひらが思いもかけぬほどの繊細さで鐙田の剛直を扱いているだけである。

 だがそこに使われているのはローションのぬめりの中にじゃりじゃりと浮かぶ、砂混じりの液体だった。

 

 先走りが流れ出す鈴口に、ぶりんと張った兜の縁に、血管が浮き出た太竿の表面に、そして膨れに膨れ上がった亀頭に。

 その手のひらが触れるすべての皮膚と粘膜が、砂とローション、痛みと快楽の渾然となった刺激を受け続ける。その間、鐙田が囲まれた男達から受ける全身へのローションによるなんともいえない肉のマッサージも続いていく。

 脳に達する刺激が、自らの皮膚から伝わるその感覚が、果たして快感なのか痛みなのか、どんどんと混乱していくのだ。

 

「あっ、あがっ、あああああっ……」

 

 全身を震わせての、鐙田のよがり声が上がる。

 その声を彩るのは、密着した4人の肉体のそこかしこから上がる水音のみだ。

 

「へへ、チンポが痛いのか、気持ちいいのか、だんだん分かんなくなってくるっしょ? そのうち全部気持ちよくなってくるんで、ほら、センパイ、もっと感じていいっスよ」

「ああああっ、そんなっ! 痛いのにっ、チンポの先が痛いのにっ、俺っ、感じてるっ、感じちまってるっ!」

「それでいいんスよ。俺達ももう、砂無しじゃ物足りなくなってるんス。センパイもこれの『良さ』、分かってくれるっスよね」

「ダメだっ、ダメだっ!! 俺、俺っ、砂で、砂でやられて、イっちまう! 砂で、イっちまうぞっ!!」

 

 蟹作の右手がぐちょぐちょとした音を立てながら、鐙田の先端をこね回す。

 両手を使い、玉や根元の刺激もしたいところなのだろうが、密着した腹や太股の肉が離れてしまうことを警戒したのだろう。

 あくまでも右手1本の刺激で鐙田をイかせたいようだ。

 

「今度のはまた溜めたいんで、誰か別のコップかなんか、持ってきてくれないかな。イく瞬間に、センパイの先っぽにかぶせるんで、ちいさい奴がいい」

 

 蟹作の依頼にラグビー部の1回生らしい部員が小さめのコップを厨房から持ってくる。

 

「あっ、やばいっ!! 下向きにされると、ヤバいっ!」

 

 ローションまみれの中で、精液をこぼさぬようにするためか。蟹作が強引に鐙田の肉棒を下向きへと方向を変えた。

 扱き上げていた向きが、下向きの力へと変わる。

 ガーゼローションでの責めの力学と同じく、勃ち上がろうとする反発力が、亀頭と竿を攻める蟹作の手のひらとの間に強烈な摩擦を生み、そのすべてが鐙田の快楽へと転換されていくのだ。

 

 巨体の男達による、ぬるついた全身への肌と肉による愛撫、下腹部にだけ与えられる痛みすら伴った砂の刺激。

 それらが鐙田の限界を一気に引き寄せた。

 

「あっ、ああっ、イくっ、イっちまうっ、イくっ、イくっーーーー!!」

 

 その瞬間、3人の相撲部がぐいっと互いを引き寄せる。

 全身への圧が高まった鐙田は快感を仰け反ることで逃がすことすら出来ず、身動き一つ取れない中で、その雄汁を搾り取られたのだ。

 

 べちゃり、じゅちゃりと粘性の音を立てながら、鐙田の肉体が相撲部の男達から引き離される。

 どさりとも聞こえるように後ろの椅子に座り込んだ鐙田の前で、蟹作がコップを高く掲げた。

 

「5回目っつーのに、一心センパイ、すげえ出たっスよ。これ、前の分のコップに継ぎ足しておきますね」

 

 ガラスの底を汚した液体は、部員達の大きな手に出しても溢れるほどの量だろう。蟹作が傾けた小さなコップから、3回分の汁が入ったコップへとどろりとした汁が流れ出す。

 鐙田の金玉の奥には、まだまだたっぷりと雄汁を溜め込んでいる。まさにそれは、その場にいた寮生達の共通認識だった。

 この日のイベントは始まって1時間ほどだ。

 その間にすでに5回の吐精を終えた鐙田は、荒い息を吐きながらその肩を細かく震わせているばかりだった。

 

「1時間ぐらいで5回か。俺等が1年のときにはもっとイった奴もいたと思うが、まあ、今日のはかなりみんな『濃い』感じでやってるからな。

 各部の寮僕の見て、その気になった奴も多いと思う。まあ、鐙田が気絶せん程度に、しっかり搾り取ってやってくれ。

 ずっと全員で見てるってわけもいかんだろうし、まあとにかく間が空かんぐらいにはよろしく頼むな」

 

 ラグビー部部長の大畑が声をかける。

 寮僕経験者の舞尾(もうの)を含め、各部寮僕達による5回の射精でまずはオープニングのセレモニーを終えたとの判断なのか。

 相撲部も加わり、130名近い寮生がいた食堂から、ちらほらと自室へ戻る部員達。

 もちろんそのまま鐙田がイかされる様をずっと見ている者、自身の手で口で、2回生寮僕の吐精をなさんとする者、それぞれがそれぞれの思惑を持っていることだろう。

 一気に人数が減った食堂は、先ほどまでの熱気と汗臭、性臭は少しばかり緩和されてきている。

 それでも鐙田の周りには15名ほどの男達が、いずれも己の逸物をヌルヌルと扱きながら、集まってきていたのだ。