海鳴りの家

その3

 

「そろそろ、いいか?」
 普段から口の重い匠さんが、親父さんにも俺にとも取れるようにつぶやく。親父さんが頭の方に回り込み、俺の両足を持ち上げた。もはや隠す用はなさなくなっていた越中が引き抜かれ、俺の股間から尻穴までが匠さんの眼前にさらされた。その卑猥な姿勢に俺は一層の劣情を募らせてしまう。

 

「あっ、くっ、くくっ」
 匠さんの顔が沈みこみ、俺の肉棒を咥えこむ。まとわりついた舌が亀頭をねろねろとしゃぶり上げる刺激に、俺は思わず声を上げてしまう。匠さんの舌がつっと離れ、今度は金玉を包みこんだふぐりをべろりと舐めあげた。睾丸を片方ずつ口の中に含まれ、こりこりと歯を立てない程度に転がされると、痛みともつかない快感が下半身全体に広がった。
 親父さんはといえば、俺の両足を抱えこんだまま覆いかぶさり、俺の乳首を交互に舐め上げてくる。俺も親父さんの毛むくじゃらの腹肉に手を回し、親父さんの小豆ほどもある乳首を舌先で転がしねぶり上げる。
 あまりの快感に身をよじると、ぬるついた匠さんの唾液が蟻の戸渡りから尻穴へとだらだらと流れ落ち、それすらが切ない刺激となり俺を燃え立たせる。匠さんの図太い指が、俺の尻穴をほぐすかのようにくちゃくちゃといじりはじめる。俺はその刺激に耐え切れず、早く入れてくれと言わんばかりにより一層、腰を高く上げるのだった。

 

 広い居間に、男達の荒い息遣いだけが響く。
 匠さんは股間から身を起こすと、唾液と先走りでぬるぬるになった俺の勃起を扱き上げる。勃ちあがった自らの肉棒に手のひらをすえ、だらりと落した唾液を全体にまぶしつける。ゆっくりとした腰の動きとともに、俺の後ろに先端が押し付けられた。尻穴の周辺をぬるぬると這い回るその動きが、挿入への予感を更に高まらせる。
 俺が股間と乳首、尻穴の三処責めに思わず頭をのけぞらせたその瞬間に、火傷するような熱い肉棒が、入口の抵抗を跳ねのけ、ぐっと押し入ってきた。

 

「つっ、つつっ」
 一瞬の痛みと、ずるりと肉茎が入り込む感覚。使い慣れてるとはいえ、明らかにこれまでの男達とは違うその感触に、俺は異常なほどの興奮を覚える。
 匠さんは一息だけ待つと、まるで腰が壊れるようなストロークで前後運動を始めたのだった。
「んっ、んっ、んんっ」
「あっ、あっ、あっ」
「ええか、匠のチンポがええんか」
 匠さんと俺との言葉にならない喘ぎに、親父さんも興奮した様子で声をあげる。膝立ちになった親父さんは俺の太腿を抱えながら、激しく腰を打ち付ける匠さんの唇をむさぼるように奪う。べろべろと舌をからめ、顔中と言わず耳や首筋までも唾液を塗りつけるように舐め回している。
 俺は頭上の前屈みになった親父さんの股間に手を伸ばすと、もっさりとした茂みから勃ちあがった雁太の肉棒をまさぶり、先走りをずるずると塗り付け扱き上げた。俺自身が匠さんにやられたように、ぱっくりと割れた鈴口に親指の先端をめりこませ、こじるようにこねまわす。親父さんの腰がひくつき、毛に覆われたふぐりがゆさゆさと揺れる。俺も堪らず上半身を起こすと、親父さんの毛むくじゃらの股間にむしゃぶりついた。
 風呂上がりとは言え、親父さんの股ぐらからは濃厚な雄の匂いが発散されている。ざらざらとしたふぐりを口一杯に含み、金玉を舌で転がすたびにその匂いは一層強まり、三人の興奮を昂まらせていく。

 

 匠さんがいったん俺の尻穴から肉棒を引き抜く。今度は親父さんに入れるのかと、俺が匠さんに場所を譲ろうとすると、「あんちゃんが入れてやれよ」と匠さんが俺の腰を押しやった。
 今度は親父さんが仰向けになり、腰の下に枕をあてがうと自分で両膝を抱え上げた。膝立ちになった俺の肉棒を、匠さんがだらだらと唾液をまぶすようにしゃぶりあげる。
 親父さんへと目をやれば、毛に覆われた尻穴がいかにもすけべそうに息をしている。胸毛から腹、臍下へと続く毛の流れが真っ黒に肉体を彩り、もっさりとした茂みから勃ち上がった肉棒は、ひくひくと亀頭を揺らしながら、先端にはぷっくりと先走りの露を浮かべている。
 俺は手のひらに唾液を落とすと、親父さんの尻穴にぬるぬると塗りつけた。指に当たる毛の感触が心地よく、思わず指を立ててしまう。ずるり、と飲み込む親父さんの尻穴の中は思ったより柔らかく、抜き差しの度にくちゅくちゅと卑猥な音を響かせた。
 ちゅぽん、と音を立てるようにして指を抜くと、俺は匠さんの唾液でぬるぬると濡れそぼった肉棒を、親父さんの後ろへとあてがった。

 

「んっ、んんっ、いいぞっ、あんちゃん、もっと、もっと突っ込んでくれ」
 親父さんの尻穴は、奥壁の使い慣れた柔らかさと肉茎を締め付ける入り口とでぐちょぐちょと俺のチンポを責め立てる。俺の方が犯しているはずなのに、積極的に咥え込まれ、根本から絞り上げるように粘膜が蠢く。親父さんより俺の方が先に果ててしまいそうになるその刺激に、思わず俺は腰を引いてしまう。

 

「あっ、匠さんっ、そこはっ」
 親父さんのを抱きしめ、一心に犯す俺の尻に、突然匠さんの指が忍び込んできた。いきなりの刺激に俺はあわてて振り返る。

 

「あんちゃん、前と後ろ、いっぺんにやられたことあるかい?」
 匠さんが俺の尻穴をいじりながら、興奮にかすれた声で囁いた。
「あんちゃんがおいちゃんのケツ掘ってる姿見てたら、俺のも突っ込みたくなったんだ。ゆっくりやるから、な、いいだろ」
 親父さんの極上の締まりを味わっている俺に、更なる刺激を断れようはずもなかった。俺は親父さんのでかい尻に腰をぶつけながら、返事の代わりに匠さんの唇にむしゃぶりついた。

 

 毛深い尻に肉棒を差し込んだまま、俺は親父さんのどっしりした身体に倒れ込むようにしがみつく。俺の後ろに回った匠さんからは親父さんに乗った俺の尻も丸見えのはずだった。
 唾液で濡らされた匠さんの指が、ぬるぬると尻穴をまさぐる。一度は肉棒を受け入れている俺の尻穴が、匠さんの太い指をまるで吸盤のように吸い込んだ。ぬちゃぬちゃと穴を緩ませた指が抜かれ、匠さんの逸物がぐっと押しつけられてきた。

 

「うっ」
 入れられた瞬間には、やはり出すところに入れる異物感がある。それも一瞬にして消え去り、抽送の度にふぐりの付け根の裏側に雁の部分が当たるのか、思わず声を上げてしまうほどの刺激が続いた。
 前を親父さんに突っ込み、後ろは匠さんから責められると、まるで自分自身が一本の大きなチンポになったような気がしてくる。動かしても連結が外れないことに安心したのか、匠さんの腰の動きが激しくなった。

 

「あんちゃんのが、当たるっ、当たるぞ」
「あっ、あっ、もう、もうっ」
「いいっ、いいぞっ、親父さんのケツが、しまるっ」
「んんっ、たまらんっ、このままじゃ、すぐ、すぐイクぞっ」
 匠さんが腰を突き出す度に俺の身体が親父さんの穴を貫く。抜かれるときには脊髄を扱き上げられるような感覚に思わず腰を引き、親父さんも声を上げる。前と後ろから絶え間なく襲ってくる快感を、お互いの喘ぎ声が更に増幅する。
 親父さんの顔が歪み、だらしなく開けられた口に俺は自分の唾液をなすりつけるように食らいつく。背中に当たる匠さんのぬめった肌が、鳥肌が立つような快感を運ぶ。べったりと密着させた俺の腹筋の下でごろごろと転がる親父さんの勃起が、男同士の交わりを強烈に意識させる。首を伸ばし親父さんと唇を合わせた俺の首筋を、匠さんがべろべろとしゃぶるように舐め吹き出る汗を味わっている。
 睾丸の裏側を匠さんのチンポがずりずりと擦り上げる度に、俺は腰から下の下半身がしびれるような快感に襲われる。匠さんと親父さんも最後の時が近づいたのか、俺の身体が痛いほどに抱きしめられた。

 

「あっ、出るっ、出るぞっ、もうたまらん、出る、出るっ」
「んんっ、親父さん、匠さんっ、イくっ、イくよっ」
「俺も出るっ、あんちゃんの中に出すぞっ、イくっ、イくぞっ」
「んっ、イくっ、イくっ」
 親父さんが一瞬早く射精した。二人の腹に、熱いほとばしりが走る。俺の腹と自分の毛深い腹肉に挟まれた親父さんの太いチンポがびくびくと痙攣する。その瞬間の締め付けが俺のチンポにぎゅっとからみついた。俺は親父さんの締め付けをしゃくり上げるような抽送をしながら味わった。雄汁が吹き出すたびに震える親父さんの身体の動きに、俺はあっと言う間に昇りつめた。
 俺がイッたのと、匠さんの腰ががしがしと叩きつけるようにして動きを止めたのはほぼ同時だった。

 

 汗だくになった親父さんの顔を俺は真上から眺めると、抱きしめるようにして短い首に顔を埋める。親父さんの体温で暖められた汗の塩辛さが、唇に心地よかった。匠さんは二人の上からごろりと転がるようにして布団へと身体を横たえた。俺と親父さんの間に身体を寄せると、三人でキスを交わす。舌と舌とが絡み合い、ぬめぬめと唇や歯茎が舐め回される。出したばかりというのに、二人の肉棒が再びむくむくと勃ち上がる。お互いの雄汁を潤滑油に、三人の腰がゆっくりと押しつけられてきた。ぬちゃぬちゃとした感触が、更なる欲情を誘うように部屋中に響いていた。

 

 翌日、俺は二人が朝の漁から帰ってくるまで目を覚まさなかった。病み上がりの身体に、昨夜の一戦が応えたのだろう。二人は朝立ちに膨らむ俺の越中の前垂れを握りしめ、俺の目覚めを促すのだった。

 

「あんちゃんがよければしばらくここで一緒に暮らさないか」
 朝飯を食べ終えた後、親父さんが俺に問いかけた。
「俺、あいつと暮らしていた街に戻ってみたいと思っています。あいつの写真と一緒に、今度は二人で来たいと思います」
 俺は膝を正し、二人の顔を交互に見つめ、一言一言、区切るように話す。
 二人は俺の答えが分かっていたかのように、ゆっくりと穏やかな顔でうなずくだけだった。

 

 身繕いを終えた俺は、二人に頭を下げ、小屋を後にする。
「つらくなったら、また来いよ」
 親父さんの声が背中に届く。懐かしい街へと向かう列車に乗った俺の耳に、海鳴りの音がいつまでも響いていた。