白山下ろし

その2

 

 金っ気のあるものは陣内に持ち込めない決まりのため、時計や携帯なども無いのはもちろんだが、そこはなんとなくの時間感覚で進めていくことになる。

 普段の農作業の組み立てそのものが、時間よりも作業の区切りや夜明け日没といった自然現象に依るものが多いためか、そこまで不安には感じないのはこの村での生活の賜物なのだろう。

 

 陣入りからおよそ15分も経たぬうちに2度の射精を済ませた俺と信治さんが、少し休憩とばかりに再び胡床に腰を下ろす。

 含み紙を交換し、無言のままの俺の背中に信治さんが抱きつき両手を前に回してきた。

 篝火が焚かれているとはいえ、御簾で囲まれただけの屋外の吹き曝しの中である。

 背中に感じる体温が心地よかった。

 

「夜中過ぎるとまちっと寒なるけんな。そんときは上ははだけてしまうか、2人っとも素っ裸になっちから、直に肌ば合わせた方が温く(ぬく)なるけん、そぎゃんすっばいた。

 夜ん間ずっと緊張しとっと疲るっけん、よこいよこいせんといかんばい」

 肩口に顎を乗せた信治さんが耳元で囁く。

 

 張っていた気持ちを少し緩め、信治さんの言葉通り、体重を預けるようにして甘えさせてもらうことにする。

 俺の身体の緊張が取れたのを感じたのだろう。信治さんが言葉を繋ぐ。

 

「よかよか、イくときはどきゃんしたっちゃ身体に力の入っとだけん、他んときはそぎゃんゆるっとしとって良かつばい。

 儀式とか神さんのこっとかはあんまり考えんでよかけんな。

 浩平は気持ちよお、自分が汁ば出すこつだけ考えとくとよかけん。

 きつかときは、おっが浩平んとばしっかこぶって扱いて、出してやるけん、なんも心配せんで良かけんな」

 

 おそらくは若い時分より何度も何十回も、この「白山下ろし」を行ってきたであろう経験者からのアドバイスだ。

 事前の準備のときなども青年団の連中や少し上の男達からも皆一様に、この地方の方言で言う「せにゃならん」ではなく、「楽しめ」と教わった。

 なるほど、己の生命力を土地に注ぐのは、自らそのものが生き生きとした中でこそ行われるべきだ、という、この土地ならではの楽観的享楽的な風潮を感じたものだ。

 

 これが家や若衆宿でのいつもの交わりであれば、唇を合わせ、それぞれの唾液を混ぜ合わせながら互いの舌で相手の口の中をかき回していただろう。含み紙を噛んでいるとそれもままならない。

 信治さんも思いは同じだったのか、肩口から頬を寄せてくる。

 せめてもの接触をと、お互いの少し伸びた髭の感触を味わった。

 

 いつの間にか信治さんの手が両襟に差し込まれ、左右の乳首に触れるか触れないかのタッチで刺激してくる。

 二度の吐精後のせいか、いきなり勃ち上がるとことはなかったが、それでも下腹部にじんわりと血が通い始めるのが自分でも分かった。

 

「次ばそろそろ始むっかな。イきそうになるまで浩平は座っとってよかけん。イきそうになったら知らせちはいよ」

 

 信治さんが俺の前に膝を突くと褄下を分け、金玉とチンポに手を伸ばす。

 ふぐりは柔らかく揉みほぐされ、チンポは根元に少しの引き下ろされると亀頭の鈴口がぱっくりと開いた感覚が伝わってきた。

 

「やっぱ浩平んとは太かな。ゆっくりしゃぶるけん、よかごてなったら合図ば送んなっせ」

 あまり性急にやっても、というのが経験的に分かっているのだろう。宣言通りにじっくりと味わうかのようにしゃぶり始める。

 手と口との愛撫に、がちがちとはいかないまでも俺のチンポが勃ち上がった。

 

 張り詰めた亀頭を舌や口蓋の粘膜で刺激される。亀頭と棹の一部は信治さんの熱を持った口中で、ぐちゅぐちゅとねぶり回される。根元から亀頭冠の鰓の手前までは右手でゆっくりと上下に扱かれる。

 いきなり射精へと向かう刺激ではないのだが俺を確実に追い上げていく信治さんのテクニックは、この村で何十年と男達の肉棒を味わい、嬲り尽くしてきた者だけが持つものに思えた。

 

「イく前にたっぷり感じとると、イッてからもしばらく萎えんけんな。次もよかなら西と北と、2回出しとくと、後がたいがな楽だけん」

 男の生理と儀式に臨む側の心理を知り尽くした信治さんの台詞そのものが、俺を興奮させる。

 

「んっ、んんっ」

 まともな声が出せない俺は喉の奥から出すうなり声で快感を信治さんに伝えた。

 

 10分近く、ゆるゆるとした嬲りが続いた頃か、最初はぼってりと太さを増していた俺のチンポは血管の浮かび上がりも見えるほどにガチガチと硬度を増していた。

 勃起具合と金玉の上がり方で察した信治さんが、唾液を溜めた口の中で亀頭をすわぶりながら、俺の顔を見上げてくる。

 俺は軽く頷くといったん信治さんの頭を離し、立ち上がった。

 右を向き西の浅穴に向かい立つと、信治さんが俺の横に陣取り右手をチンポに伸ばしてくる。左手は腰に回して支えてくれている。

 汚れないようと袂をたくし上げた信治さんの剥き出しの腕から伝わってくる暖かさが、実に心地よい。

 

「イくときはおっが扱いてイかせたがよかな? それとも自分でする方がよかかな?

 もいっぺん聞くけん、よか方でうなずきなっせ」

 信治さんが射精の瞬間の扱きの主体をどちらにするか、選ばせてくれる。

 後半になれば扱くタイミングのずれなどで自分でやらないとイかないことも増えるだろうと思って、扱いてイかせてもらえるうちはそっちでお願いしようと考え、信治さんの扱きあげにOKを出した。

 

 しゃぶられながら口の中で出すだけならそうでもないんだろうが、それだと射精の瞬間に口を離すタイミングを間違うとうまく地面に出すことが出来なくなる。

 必然、自分や助の役である信治さんの扱き上げがメインになってくるのだが、いくら唾液を使っても一晩中扱き続けてダメージが無いわけでもなかろう。

 そのため、こっそり、という感じではあるようだが、どの圃場でも白山下ろしのときには陣内にオイルを持ち込んでいるとのことだった。

 若いときならいざ知らず、肌の水分量が減ってきた世代にとっては仕方のないことだと思ったものだ。

 

「ん、んっ、んんっ!」

 ローションを垂らされたチンポが篝火にてらてらと光りながら、高速に扱き上げられる。俺の気配を感じ取った信治さんが手の動きのギアを上げる。

 

「んっ! んんっ! んんんっ!!」

 

 信治さんの唇と舌先が右の乳首に触れる。チンポだけでなく乳首からも与えられる快感に、俺はその日三度目となる雄汁を噴き上げた。

 

「次、すぐイくっかい?」

 尋ねてくる信治さんの目を見つめながら、俺が頷く。

 一周目を早く終わらせておきたいのは俺も信治さんも同じ思いだ。

 胡床に腰を下ろすとかえって疲労感が増してしまうだろうと考え、俺はそのまま北側の穴の前に進む。信治さんは位置についた俺の前にしゃがみ込むと、まだ汁の残る俺のチンポをじゅるりと口に含んだ。

 

「むんっ……」

 射精直後の敏感になった亀頭をグチュグチュと刺激され、含み紙を噛み締めた俺の口から呻き声が漏れた。

 この村での一年半に渡る男達との情交の日々の中で、連続した射精をするときには力による上下の扱き上げよりも亀頭を中心にねぶり上げた方が、柔らかくなった肉棹に芯を入れるのが早くなるのは俺も学習済みだ。

 もちろん信治さんがそのことを理解していないはずは無く、溜めた唾液と俺の残り汁と先走りを混ぜ合わせ、亀頭を吸い上げながら口中の体温で俺のチンポを温めるように含んでいる。

 

 亀頭への強烈な刺激に少しばかり勢いを無くした俺の逸物が再び頭をもたげるのに、そう時間はかからなかった。それでも最初の射精から小一時間も経たないうちの四回目の放出は、さすがにあっと言う間、という訳にはいかない。

 重なる吐精で赤黒く膨れ上がった亀頭粘膜があるときは信治さんの口中で吸われ、しゃぶられる。あるときは唾液とオイルを混ぜ合わさったぬめりで分厚い手のひらでこねくり回される。

 その間に絶え間なく扱きあげられる肉棹は、張り裂けそうになる血管が浮き出ている。

 自分のものでありながら、信治さんの手で、口で、あらゆる刺激を与えられている逸物は、どこか別世界の存在のもののようにすら思えてしまう。

 それでも思わず腰を引きそうになるほどの刺激と快感が一瞬の後にはこれが自分の股間から突き出している肉の柱だということを思い出させてしまう。

 

「んんっ、んっ、んっ!」

 俺は声にならない呻きで放出が近いことを信治さんに知らせた。

 

「よしっ、イくかっ! イケっ、イケっ!」

「んんんっ、んむっ、んっ、んん、んんんんーっ!」

 口を放し、力を込めた信治さんの扱きあげる手の動きに、俺は自分でも四度目とは思えないほどの量の雄汁を、大地へと注ぎこんでいた。

 

「四回目ばってん、いっちょん汁ん減らんともすごかな。

 五回目はさすがにすぐにてはいかんだろけん、ゆっくりよこうときなっせ」

 

 なるべく装束が汚れないようにとの思いなのか、射精の度に信治さんが俺の逸物をしゃぶりなおし、竿に垂れた汁を舐め上げ、尿道に残った雄汁を吸い上げてくる。

 手のひらに零れた汁を旨そうに舐め上げ、舌先に乗せたものを俺にわざと見せつけてから飲み込む様は、こちらの興奮を冷めないようするための演出でもあるのだろう。

 信治さんの狙い通り、この村での男同士の肉の交わりを堪能してきた俺に取っては、あたりに漂う匂い、信治さんの言葉、態度、それらすべてが強力な催淫と興奮の両方をもたらすものだ。

 

 周りの連中が「助の役がいるだけで、安心して何度でもイケるので心配するな」と忠告してくれた気持ちもよく分かる。

 重なる吐精に頭を下ろしてしまっている俺の肉棒が、うなだれてはいるものの勃起時とさほど変わらぬ体積を保っていられるのは、信治さんの存在によるところが大きかったのだ。

 

 用意してある薪を篝火にくべると、風が無い夜であることも手伝って、それまでよりも強くなった光と熱がこちらにも煌々と届いてくる。

 体感的な計算でもまだまだ早い時間ではあるだろうし、たとえこの後の射精が一時間に一度のペースに落ちたとしても、夜明けまでには十分にこなせると判断できた。

 

「よこうとる間に、おるが最初に白山下ろしばしたときの話でん、しとこうかな」

 

 同じ思いが助の役として動く側にもあるのだろう。

 時間的なゆとりのせいか、はたまた次に行う2人同時での射精へのイメージを高めるためか、火の世話を終えた信治さんが再び後ろから俺の上半身を抱き抱えるようにして腰を下ろすと、耳元に口を寄せ、昔語りを始めたのだった。

 

 

「おっが初めてうちん田で白山下ろしばしたつは、高校出て親父と一緒に百姓し始めちから、四年ぐらいしちからだったったい。

 前ん年までは親父がしよって、来年はお前がせなんばいて言われて、うんて答えたつはよかったばってん、たぶんそん年に母ちゃんの入院したもんだけん早めに譲らなんて親父も思とっただろな。

 他んとこは田んぼの権利ば動かすときか、逆に百姓継いだそん年んうちに儀式だけでん代譲りするとが多かて聞いとったけん……。

 

 周りから儀式ん中身んこつも聞いとったし、青年団連中とももう色々いやらしかこつもしよったけん、センズリしちかる汁ば飛ばすこつそのもんは、そぎゃんおかしかこつては考えとらんだったて思う。

 まあ、親父も白山の中で毎年10回も汁ば飛ばしよっとたいなていうとば想像すっと、なんかもやもや興奮はしよったし、50も過ぎとる親父が助の役ん人とどぎゃんこつばしよらすかていうとは、興味はあったばってんな。

 

 なんさまたまがったとは、助の役で親父が一緒に御簾に入るて話ば聞いたときだったな。

 てっきり青年団の上んもんか、親父の知り合いか、そんくらいのもんに頼むてばっかり思とったけんな。

 

 助の役のすっこつが話に聞いとったごつなら、まさか親父に自分のば扱かれたりしゃぶられちから、我ががチンポの勃つどかなて、最初はホントに思うたたい。

 後から聞いたつは、やっぱりどこの田でん、白山下ろしの一等最初は親父が助の役ばするごたって話んごたった。

 二年目かるは我ががよかて思う人に頼むて話だったばってん、こんには代譲りにはそんくらいの覚悟の要るちゅうとば分からする意味もあったごたるなあ。

 

 さすがに親父も俺と2人きりだとどぎゃんもしきらんて思うたっだろたいな。もう1人の助の役に親父より年の上ん、良作さんて人ば頼んどらした。

 青年団の団長の良三さん、うん、良さんたいな。良作さんはあん人の親父さんばってん、こっがまた身体も太して、よか男だったもんな。

 おっはまだ22になるかならんかぐらいで親父が54、良作さんが60手前ぐらいじゃなかったかいな。

 

 青年団にゃ親父の手伝いば始めちからすぐに顔ば出しよったけん、男同士で色々すっとは別に構わんだったばってん、そんころはまだ青年団も今より人ん多かったけん、あんまり年の離れたもんとはいやらしかこつはしよらんかったけんな。

 祭りんときとかに親父の裸やチンポも、そんチンポから汁ば出すとも、色々見たこつもあったばってん、自分とはさすがにしゃぶったり汁ば飲んだりとかはしとらんだったけんなあ。

 そっがいきなり親父が俺のチンポば扱いたりこぶり上げしたりしちから、精液ば出さすっごてすって言われたら、そら驚くどたい?

 

 ただ自分が若っかったもんだけん、なんか周りに怖がっとるて思わるっともしゃくだけん、青年団の連中には強がっておったったい。

 そっでも不安に思とるとはみんな分かっとったっだろたいな。

 みなからして『度胸試しんごたるもんだけん、がまださなんたい』『土地の神さんに捧ぐっとだけん、親父にしゃぶらるっぐらいんこつで勃たんとか言うとは、たいぎゃな不遜かばい』とか、色々言われてしもた。

 

 気合いば入れんといかんては思うとったばってん、親父と2人きりだとさすがにどぎゃんなるだろかては思うとったつたい。

 そぎゃんしとったばってん、良作さんもおらすて思うと、ちと気の落ち着いたつだろな。

 当日にはもう腹も据えとったて覚えとる。

 そっでん、やっぱ緊張と興奮で『溜めとかんといかんけん、テテンゴすっといかんばい』てようと言われとった前ん日に逆に興奮してしもて、自分で4回は出してしもうたとは、田の神さんにちいっと失礼かったかなて思うたたいなあ」

 

 信治さんの話に俺の鼓動が高鳴る。

 親に自分の勃起した逸物を扱かれ、さらには口での刺激を加えられ、あまつさえ射精にいたるまで嬲り抜かれるというのは、いくらこの村に育つ信治さんに取っても耐え難いほどの恥ずかしさだったのでは無いか。

 これまで青年団や祭りでの見聞から考えると、この村での男同士の行為においては、やはり独身者を中心とした比較的若い連中の間での性的な交渉が一番多く、次が還暦を迎えるぐらいまでの壮年層だ。

 秋祭りでは親世代との接触があったかもだし、信治さんが最初に金精様の祭りで童男をいつやったのかは気になったが、含み紙を咥えた今の状態では聞くすべが無い。

 

「さっきの浩平んごつ御簾入りしてな、最初ん東と南、西ん神さんには自分で扱いて出したったい。

 親父の見とる前で勃つどかて思とったばってん、こっが不思議と最初からガチガチに勃っとって心配はいらんかった。

 どっちかっちゅうと、親父の見とる前でせんずりもしきらんごたる、細か(こまか)男じゃ無かばいち、自分に言い聞かせとっただろな。汁ん出たときの勢いもすごして、前ん日も4回はしとっとに、穴に入るっとに下向きに押さえつけんといかんぐらいだった。

 

 四ヶ所目ん北ん神さんのところに来たとき、こるはもう最初からそのままセンズリし続けて行ったけん、御簾入りしてまだそぎゃん経っちゃおらんかったどな。おっがセンズリしてイくまで、それまでん三カ所ん神さんのときより、ちっと時間のかかったったい。

 自分じゃそこまで遅なったとは思とらんだったばってん、そんときそれまでおっの胸ば弄ってくれよった良作さんが、親父に『そろそろしてやらんといかんとじゃなかとな』て言わしたったいな。

 そっまでは親父もせいぜい俺の乳首ばさわさわしたり、金玉ば良作さんと交代で揉んでくれとるだけだったけん、ああ、こっから親父にチンポば握られて、扱いてしゃぶらるっとばい、そっで親父の手と口とで、子種ば出さんといかんとばい……て、なんか覚悟したとば覚えとる」

 

 

 最後まで続きを聞きたいのはやまやまなのだが、信治さんの吐息を首筋に感じながら聞かされるその話の内容に、俺の興奮はもうそれどころではなかった。

 背中から抱きかかえるように密着した信治さんの体温と自分の体温が溶け合い、腰には信治さんの堅く勃ち上がったものがゴリゴリと押しつけられている。前に回した両手が装束の上下の合わせ目から差し込まれ、乳首と逸物をいたぶる。

 それらすべてが一体となって、俺の逸物の先端からの先汁を漏らす刺激となってしまう。

 

「おっの話ば聞いて、浩平んともガチガチになってきたばい。そろそろ一緒に出そうと思うばってん、よかかな。話ん続きは、もう一周回る間にしてやっけん、そっでよかろ?」

 浩平さんの囁きに頷いた俺はチンポの先端から先走りの糸を引きながら、ぐいっと立ち上がった。

 

 二人して白装束の褄下(つました)を端折り、臍を叩きそうな肉棒を曝したまま左後ろの浅穴の前に立つ。

 北東の鬼門にあたるこの場所では、なぜか助の役と一緒に精液を注ぐことが慣例となっている。

 身体を寄せ合い互いの逸物にオイルを垂らせば中年男二人でのセンズリ合戦開始の合図だ。

 

 まずは向き合い、相手のチンポをぬるぬると刺激する。

 射精した雄汁さえ穴へと放たれればいいことから、直前までは互いのそそり勃った肉棒を利き手で扱き上げ、しゃぶり上げて、放埒寸前まで昂ぶることに専念するのだ。

 

「浩平んとも、もういつでんよかごたんな。おっは今日は始めてだけん、すぐイくけん、浩平んとば、しっかしゃぶってからイくけんな」

 すでに五回目の射精を控え、かつ声を出せない俺に気を遣ってか、しばらくの扱き合いの後、信治さんが俺の前にしゃがみ込む。

 一度裏筋をべろりと舐めあげた後に、ぬるりぐちゅりと旨そうにしゃぶり始めた。

 

「んんっ、んむっ……、んっ、んんっ……」

「急いでイかんでよかけん、ゆっくりおっのこぶっとば楽しまなんばい。いよいよイくてなったら合図せなんけんな」

 せっかくの二人一緒の行為に楽しむ時間を作りたいのか、信治さんのねぶり上げはこれまでの穴前のものとは違い、じっくりとこちらの興奮を高めるように、唇と舌、口中の粘膜を総動員したものだった。

 直接の射精でイかせるためというより快感を楽しませるための尺八は、粘膜同士の触れ合いと唾液とオイルの混じり合ったぬめりが、蕩けるような快楽を生じさせる。

 イかせるためだけであれば当然伴うはずの手を使った棹の扱き上げは無く、少し冷えてきた外気に触れる金玉をほぐすように柔らかく揉まれる手の温もりが心地よい。

 

 それでも肩の力を抜いて快感に浸っていられたのは数分だったのではなかろうか。

 軽く信治さんの頭を押しやろうとすると信治さんが口を離し、よっこらしょと立ち上がる。もちろん、扱き合いを再開し、本来の目的である精汁の撒種を行うためだ。

 もっと長くしゃぶり上げを堪能したかったのだが、先ほどまでの信治さんの親父さんとの快楽の共有話しと腰の奥深くからこみ上げてくる感覚に、尺八の中断を依頼するしかない俺だった。

 

 信治さんとしてみれば、これまでさんざん俺の逸物を扱き、しゃぶりながらも自分のものには触れずに過ごしてきたわけであり、この村に育った男としてはおあずけ状態がずっと続いていたはずだ。

 普段、互いの家を訪のうときや月待ちの泊まりのときは、もちろん互いにしゃぶりしゃぶられ、ときには尻穴を使った交わりもする間柄であり、もっさりと茂った股間の陰毛の中から太ましく勃ち上がる肉棒に思わず唾液を溜めた口を開きたい俺だった。

 残念なことに今日は口に咥えた含み紙の存在がその欲望を押しとどめ、オイルをまぶした手の平で握りしめ、互いの体温を伝えあうしか出来ない。

 信治さんがのっそりと立ち上がったそのとき、ごつごつと血管を纏わり付かせた肉棒の先端からは糸と呼ぶにはあまりに太い、書類紐のほどの太さはありそうな先ばしりが、地面への軌跡を途切れることなく描いていた。

 

 

「浩平んとばしゃぶっとっただけで、おっのからも先走りのずるずる垂れちきよるばい。

 おるはもういつでんイくるけん。

 浩平もよかな? よかな?」

 

 少し慌て気味な信治さんの口ぶりからすると、握った刺激だけでもイきそうなのだろう。

 一緒にイきたいのは俺もその通りだった。

 急いで手を伸ばし、熱を持った肉棒を上下に擦り始める。信治さんもオイルを追加した手で俺の逸物を握り締め、その圧力を保ったまま動かし始めた。

 

「んっ! んんっ!!」

「うおっ、おっ、おるもっ、イくっ! イくっ!」

 

 ほとんど同時だった。

 さすがにこの日初めての射精である信治さんの初弾は、足元の穴をはるかに越えてしまう。

 信治さんが話してくれた始めての白山下ろしでの吐精時のように、下向きに強く押さえ直しながらの二撃目三撃目はその分刺激が増したのだろう、上半身を反射的にくの字にしてしまうほどの快感だったようだ。

 俺の方はさすがにこの夜五回目の射精ともなると、信治さんのような艦砲射撃の勢いは無かったが、それでもぼたぼたと垂れ落ちる白濁した粘液の量は、そこそこ誇れるものだったのではなかろうか。

 

 溜めに溜めた上での吐精となった信治さんも、五回目という一区切りを果たした俺も、さすがにすぐ次の東の穴に向かう気力は無かったため、陣の中央へと身体を戻し、2人とも腰を下ろす。

 感覚的にはまだまだ日付は変わっていないだろうと思えるほどの時間しか経っていない。

 その思いは信治さんも同じらしく、耳元で再び聞こえ始めた話しのスピードも、ゆっくりとしたものだった。

 

「二人ともよか気ばやったな。

 後はゆっくり、すっとよかけん。時間も早かろけん、別にもだえちせんだっちゃよかけんな。2人で楽しみながら、ゆたっとすっとよかけん。

 おっの最初の白山の話しも途中だったけん、ぼちぼち言うけん、またイこごつなってきたら、合図ばしなっせ。

 すぐおっが浩平のチンポばこぶってやるけん、次もよか気持ちでイくとよかけんな」

 

 最終的にはやはり信治さんの話しの終わりを待てず、二週目の東南西北と四度の射精は話しの腰を折りながらやってしまうことになったのだったが、それでもやはり続きが気になって仕方がなかった。

 明け方近くのことになるだろう、儀式最後の射精は、また2人で楽しむことが出来る北東の鬼門封じだ。

 こればかりは最後まで聞き終わってから、2人して最高の吐精にしようと心に決めていた。

 

 先ほどまでと同じように、起床に腰掛けた俺を後ろから信治さんが抱きしめてくる。

 背中には温もりを、腰には信治さんの逸物のごろつきを感じた俺のものにも、じんわりとまた血流が集まり始める。

 前に回した信治さんの両手がまさぐる乳首と肉棒の感触を楽しみながらも、俺は早く続きをと促すように、肩越しの信治さんの顔に左頬の髭を擦りつけた。