金色の贄

設定

SOTについて

 

金色の贄設定資料(SOTについて)

 

●SOTとは

 

The Struggle on the Table

テーブルの上の戦争、チェス板上での戦争など

 

AS暦500年前後に以前より量子コンピューター内に蓄積されていた生体内ナノデバイスによる生体ポテンシャル(肉体及び精神分野)の数値化とそのフィードバックシステムの開発・定着化、それに付随した個別IDシステムと仮想空間上での集団戦闘シミュレーションを統合し、実戦闘行為に代わるものとして全球会議にて提案される。

度重なる戦乱により土地の荒廃、人心の疲弊、軍隊維持のための国内労働力の低下等に悩まされてきた各国と地域集団はそのシステムに光明を見いだし、二十年ほどをかけて実戦闘行為が換装されていった。

しかし、実際にこのシステムが定着後は各地において、負傷者の排出や土地の荒廃を伴わないために戦闘行為を重ねることによる相互国間の国力疲弊の差が縮まり、戦争→国力疲弊のための終戦・和解、というのが道が逆に閉ざされることとなった。

戦闘行為はシミュレーション上でのものであり、実際の各国・地域集団間の利害勘定における離散合一は大国に有利に働くため、小国においての近隣国や集団の同盟や協定締結の動きが活発化し、現在に至っている。

 

 

 

●標準化されたプロトコル

 

SOTシミュレーションは原則として次に述べるプロトコルにより展開される。

 

1.平時において、各国・集団毎に最大2000人とする登録された実戦闘集団の生体ポテンシャル個別IDが周毎に集計されている(予備集計)。このことは各国・集団についておける戦闘員が2000人を越えることを規定しない。

 

2.紛争国間よりSOT開催申込みがテーブル主催同盟(以下、主催国)に伝えられる(4カ国まで参加可能)。同時に勝敗における勝者側の権利選択(土地収用権、租税割合と納税先変更等)も宣言される。

 

3.予備集計での総合数値の低い国・集団側に600名から2000名までの中での戦闘参加人数の決定権、戦闘時間(12時間から8週間まで)の決定権、及びシミュレーション上の戦闘地域(遮蔽物のある荒野、森林山岳地帯、砂地、都市部、高低差、海浜部、それらの組合せ等)の選択権が与えられる。

 

4.相手国側に上記の人数・時間・地域設定情報が通達され、各々が戦闘部隊の編成及び初期配置を主催国に通知する。同時に開催テーブル国より勝利条件(戦闘参加国には提議出来ない)の提示が行われる。

 

5.リアルタイムでのシミュレーションは各国・集団における獅子族指揮官の特殊ケージ利用及び6人まで参加できる軍事参謀の手によってリアルタイムで行われる。

 

6.戦闘参加者は各々の国・集団における戦闘参加者待機所において没入型VRによる戦闘疑似参加を必須とする。参加国国民や他国においても中継映像による聴衆が可能。

 

7.勝敗の結果は土地の収容権、管理人民の労働力集約先の変更にて再設定される。

 

8.戦闘結果による個々の戦闘参加人員に対し、シミュレーション上の肉体・精神ポテンシャルのフィードバックが行われる。

 

9.参加国・集団における次期開催に向けての各軍隊の生体ポテンシャル向上に対しての取り組みが行われる(1.の前段階となる)。

 

これらの繰り返しにて運用される。

 

 

 

●参加する兵士について

 

兵士の生体ポテンシャル向上に当たっては実戦闘訓練、肉体鍛練、精神涵養、戦術戦略教養等の他に獅子族との直接接触における数値上昇の取り組みが各国・集団で普遍化している。

 

参加に当たり該当戦士として選抜されたもの(600人から2000人)はそれぞれの国内の専用区域において没入型VRデバイスと自らの体内デバイスを結合させることにより参戦する。

SOT内での戦闘力は各個体の実体における数値が体内デバイスを通して反映される。

VR内で経験する戦闘は実体験と変わらぬ再現度で五感官能体験及び痛み等を神経デバイスへとフィードバックされる。

各個体の痛みへの恐怖、他者殺傷への禁忌感は集団の戦闘耐性を著しく毀損してしまうため、平時SOT間における訓練は肉体及び精神ポテンシャルの賦活化を目的として行われる。

 

かつてSOT導入後の数年は終了後に精神面での変調をきたすものが若干見られたため、VR内での肉体損傷や疼痛については精神的な受容感覚はそのままに、肉体反応を性的興奮へと転換するように神経接続の組み換えが行われた。

そのためSOT時間内において雄性個体の実体については性的オルガスムスによる複数回の射精が観測される。

 

SOTを支えるナノデバイス技術とその双方向コントロール方法については全般的な直接制御の方法はすでに失われているが、刺激反応の組み換えと強化、通常利用における視覚と触覚、痛覚のリンク、重力方向の是正などは部分的にではあるが制御可能である。

この時代の大部分の住人に取っては「戦争に負けた側が弱くなる、勝った側が強くなる」という状態変異のみが常識としての社会通念となってしまっている。

 

 

 

●参加する獅子族(軍団長)について

 

戦闘参加において獅子族以外の種族はあくまでも没入型VRシステムにおいての観念参加となるが、軍団長の任に就く獅子族と参加国6人まで認められている戦術参謀についてはこの限りではなく一定の権限ながらSOT内戦闘を「外」から参加する形となる。

とりわけ軍団長の責務を担う獅子族においては、その役割の特殊性から専用のケージ内での実際の生理活性物質(フェロモン)散布を行う方式となる。

VR空間内での行動そのものはあくまでも観念参加ではあるが、没入深度係数が多種族に比べ非常に低く設定してあるため、多種族に対して行われている痛覚や肉体損傷感覚の性的興奮への転換は行われない。

そのため戦闘中の負傷・死傷を負った場合、実体に意識を移した際に該当する疼痛や恐怖感も持ち越されるが、実際のSOT上で軍団長たる獅子族の肉体損傷が起きることはほぼあり得ず、ここ600年ほどは記録にも見当たらない状態となっている。

 

 

 

●運用基盤

 

量子コンピューターによる計算内容の全容は6000年ほど前の戦乱期以降ブラックボックス化しており、その能力の全的利用も出来なくなっている。

その後の研究の中でSOTにおける個人IDとの神経系フィードバック、その他生殖や医療に当たってのデータベースとしての利用等は可能ではあるが、それ以外の利用技術の存在可能性についてはガイシアン王国にその概念のみが伝わっている。

物理的磨耗を伴わず、かつ核兵器の侵襲にも耐えうるとされるこのシステムは戦乱後全球に少なくとも6台の存在が確認されていたが、現在ではそのうちの一つは所在不明。おそらくはCP本体の問題ではなく周辺地形の変化によるものと推測されている。

理論及び操作システムが復活をすれば現在の利用範囲に比べ非常に広範な利用が可能となるが、その可能性があることそのものもガイシアン王国の代々の王に伝わる口伝以外には知られていない。