男性専科クリニック Part 2.5

その6

 

06 田畑君

 

 施療室に敷かれたマットの上に、田畑君のむっちりとした身体が横たえられる。

 豊かな胸から続く滑らかな曲線が少し盛り上がった腹を通り、肉厚な腰のラインへと続いている。

 勃ち上がった逸物は腹のカーブに沿ってヘソへと頭を向け、亀頭は絶え間なく滲み出る先走りにてらてらと濡れそぼっていた。

 野村医師とは対象的に体毛は薄いのだが、それでもふてぶてしく勃ち上がるチンポの根元には黒々とした茂みが広がっている。でっぷりとした金玉を湛えたふぐりにはあまり生えていないところが、むっちりとした全身の筋肉と脂肪の重なりとともに、さらなる艶めかしさを醸し出していた。

 

 目の前の若い肉体から発せられるむわりとした体温と雄臭が、私の肌と鼻を同時に刺激してくる。

 かすかに漂う性臭は、すでに濁った汁さえ漏らし始めているのだろうか。

 

「さあ、まずは乳首や感じそうなところを指や舌で責めてあげて、まずは田畑君の興奮を高めてあげてください。山崎さんも同じ男として、どんなことをされたら感じるか考えながら、やってみましょう。このとき、前回の西田さんとのセッションのときと同じように、必ず相手の名前を呼んで、互いの気持ちを」

 

 野村医師がうながす。

 私は横たわった田畑君の横に膝を進め、声をかける。

 

「田畑君、今から私、山崎が田畑君の気持ちいいところを刺激して、その快感で射精してほしいと思ってます。触ってもいいですか」

「はい、山崎さん、お願いします。僕の方も気持ちよくなったりイきたくなったりしたらちゃんと伝えますので、よろしくお願いします」

 

「いいですね。二人ともちゃんと見つめ合って、自分の気持ちを伝えることが出来ていると思います。

 山崎さんは田畑君に対して、手や指で刺激する、身体のどこかを舐めたりしゃぶったりする、上から抱きしめる、足下から局部を重点に責めるなど、自由に動いてもらってかまいません。ただ、田畑君が感じてイきそうになったら、最低でも数回は寸止めしてあげてください。

 田畑君の方は、自分の気持ちいいことを山崎さんに伝えながら、不意にイってしまわないよう、なるべく我慢して楽しむように」

 

「はい、分かりました」

「僕も了解です」

 

 医師の指示に、私も田畑君も神妙な答えを返す。

 

「最初は乳首から責めるよ」

「お手柔らかにお願いします」

 

 田畑君の右側に、添い寝をするような形で私も身体を寄せる。

 横抱きにするような形で、手のひらに余るたっぷりとした田畑君の胸に、唇を寄せる。

 

「ひあっ、あああっ……」

 

 右の乳首の先端を、ちろりと舐め上げてみた。

 田畑君や野村医師にやられたときには、私も同じような喘ぎ声を出してしまったと思う。

 突然の刺激に声を上げた田畑君の風情に、同性ではあっても「可愛さ」を見い出してしまうのは、私の年齢のせいなのだろうか。

 このクリニックの門を叩く前、そう、2ヶ月と少し前までは、同性への性的な行為など考えもしなかった私だったのだ。

 ここしばらくの経験の積み重ねは、私の意識を根本から変えてしまってきている。

 

「気持ちいいのかい?」

「はい、気持ちいいです……。山崎さんに、乳首舐められて、気持ちいいです……」

 

 上半身を覆うように身体を乗り出し、唇を左の乳首へと寄せる。

 唾液で濡らした右の乳首の先を指の腹でさりさりと細かくなぜながら、左の乳首を歯の先でこりっと甘噛みする。

 びくびくと腹筋に力が入り、漏れ出しそうな声をこらえている田畑君のおののきが、こちらの身体に伝わってくる。

 

「ほら、野村先生が仰ってたように、声を出していいんだよ」

「気持ちいいっ、乳首っ、気持ちいいです……。ああっ、あんっ、ああっ……」

 

 これまでの診療では、野村医師と田畑君に私の全身をいいようにもてあそばれ、勃起した後はあっと言う間にイかされるのが常だったのだが、こちらが主導権を握っていい今回は、どこか支配的な言葉遣いをしてしまっていた。

 愛撫を受けている田畑君だけでなく、舌と唇、指先の動きで悶える肉体を目の前にした私自身も、興奮してしまうのだ。

 受け身の快感とは違う、責める側の快感というものを、妻との行為以来になるのか、実に久しぶりに味わっている。

 

「こっちも一緒に責めると、どうかな?」

 

 先ほどから勃起したままの、若い逸物に手を伸ばす。

 太竿を握り締めると、野村医師が私の指の間から、とろりとローションを垂らしてくれる。

 

「んんっ、ふぐっ、ううっ……」

 膝を立てて股間への刺激を避けようとする右脚に、こちらの脚を絡めて動きを阻止する。

 両乳首とチンポと、三ケ所同時の責めはかなり効くはずだ。

 

「すごいっ、すごいっ……。すごい、気持ちいい……」

 腰横に押し付けた私の股間が、しっとりとした肌と擦れ合い、リングをしたそこにとてつもない快感を呼ぶ。

 

「私も気持ちいいよ、田畑君……。もっと感じて、声出していいよ……」

「チンポ、もっとしごいてもらっていいですか。もっと感じたい……」

 

 乳首を舐め回しながら、逸物を握る指先に力を入れる。

 垂らされたローションのとろみを肉竿にまぶしつけ、ゆっくりと上下運動を開始する。

 

「あっ、ああっ、あっ……」

 急に早いテンポで20回ほどしごくと、一気にそのスピードを緩める。

 肉竿と根元を、先端と雁首を、なるべく不規則になるように弄り倒す。

 

「ひあっ、ダメっ、先っぽはダメですっ、変になるっ、変になるっ!」

 

 ガチガチに固くなり、重たい腰が浮きそうになると、亀頭を手のひらの窪みにおさめ、ぐりぐりと粘膜を責め立てる。

 それまで仰け反りそうだった若い肉体が、一気にくの字に折れ曲がる動きを見せる。

 密着させた肌から、田畑君の受ける快感がダイレクト伝わる。

 これまでの治療で私も悶絶させられた亀頭責めだ。

 正直、自分がこんな技術を持っていたのが不思議なほどに、相手を喜ばせたい、気持ちよくさせたいという気持ちが湧き上がってきていた。

 

「ダメですっ、イきそうっ、山崎さんっ、イきそうですっ!!」

 

 その瞬間、一切の手の動きを止め、乳首をねぶり回していた唇も濡れそぼった先端からふっと離す。

 いきなり途絶えた刺激に腰を突き上げようとする田畑君を、こちらの体重と絡めた右脚で押さえつける。

 

「イきたい、イきたいです……」

「まだイっちゃだめだよ。我慢して、もっと、楽しまなきゃ」

 

 自分が逆の立場だったら、ましてや年若いときの自分だったら、とても耐えられるものではないだろう。

 亀頭責めなど、この生涯一度も受けたことが無かった人生なのに、青年の逸物をいいようにいたぶっている自分がいた。

 それこそ射精を懇願するほどの快感が、ローションのぬめりと相まって、若い肉体を翻弄する。

 

 田畑君の呼吸が落ち着いた頃合いを見計らい、再び舌と右手の動きを再開する。

 

「山崎さんの寸止め、いいですね。田畑君も気持ちいいだろう?」

「もう、すごすぎますよ……。山崎さん、こんなにテクニシャンだったなんて……」

「この2ヶ月、お二人に鍛えられたせいですよ。お二人が私の師匠なんですから」

 

 会話を交わす間も、手の動きは鈍らせはするものの、決して止めることは無い。

 横抱きにした肉体から発せられる熱気が、こちらの体温と混じり合い、空調の効いた施療室ではあるが、二人の肉体はうっすらと汗ばんできていた。

 

「うっ、あっ、そこっ……。気持ちいい……」

 

 最初の寸止めまでの時点で、こちらの力の入れ加減での田畑君の反応がだいたい分かったように思えていた。

 亀頭責めは、強くやれば、それまでの扱き上げと相まって射精への渇望が高まるようだが、ゆっくりとしたそれだとひたすら快感を味わえるような感じなのではないだろうか。

 相手の快感がすべて理解出来るわけではないのだが、それでも同じ男同士、ああ、これはイきそうに感じているな、これはリラックスしながらの気持ちよさだ、というのは分かるつもりだ。

 

「田畑君。これ、気持ちいいんだろう?」

「いいです、すごく気持ちいい。山崎さん、そんなふうに亀頭をゆっくり責められると、もうとろけそうになります……」

「とろけていいよ、もっと感じてほしいから……」

「はい……。あっ、あっ、ああっ、気持ちいい……。それ、気持ちいいですっ……」

 

 存分に、とろけさせてやれ。

 

 そんな気持ちがふつふつと湧き上がる。もちろん、さんざんに喜ばせた後は一気にしごきあげ、再びの射精への昂ぶりを誘発する。

 射精への懇願と、玉の根元が引き上がるような肉体の準備を感知すれば、一切の刺激を中断しイく寸前での寸止めを繰り返すことで、若い肉体の暴発を阻止していく。

 

 亀頭を責め、太竿をしごき上げ、乳首を嬲る。

 腹肉を爪弾き、脇の窪みに舌を這わせる。

 

 全身のどこを責めても、若い肉体が敏感に反応する。

 のけぞり、身を縮めようとし、あるいは手でかばおうとする。

 膝を立て腰を引こうとすれば、こちらもさせるものかとその足を押し広げるようにと力を入れる。

 

「イかせてくださいっ、イきたいっ、もうイきたいですっ!」

 

 いったい何度、寸止めを繰り返したろうか。

 まさに「懇願」というような声が、田畑君から上がり始めた。

 

「山崎さん、田畑君をよくここまで追い込みましたね。こういうプレイは始めてだと思いますが、どんな感じですか?」

「ええ、なんだか私の方もよがる田畑君を見ると興奮してしまいますね。自分がやられたのを思い出して、色々やってみてます……」

 

 自分の逸物をしごきながら、野村医師が声をかけてくる。

 そのタイミングから、まだ若者をイかせるタイミングでは無いのだなと判断し、太竿をしごきあげていた右手のスピードを二段階ほど落としていく。

 

「あ、ああ、イけると思ったのに……。ああっ、乳首っ、そんなっ!!!」

 

 うらめしそうな田畑君の声に、小豆のように膨れあがった乳首を前歯で磨り潰すように刺激する私だ。

 

「どうでしたか山崎さん。相手の快感をコントロールする楽しさ、快感を味わうことが出来ましたか?」

「はい、なんだか、田畑君に申し訳ないというか、指示的になってしまって……。自分がこんな感じで相手を楽しませて、そのことが自分でも心地よく感じるなんて、思ってもみませんでした」

「山崎さんの言われるその感覚は、相手の気持ちよさが想像しやすい同性同士、男同士ならではのものですよね。田畑君の方は山崎さんから責められて、どうだったかな?」

「とにかくすごかったです……。いつもはこちらが責めることがほとんどで、せいぜいしゃぶってもらったりしごいてもらったりだけだったのが、山崎さんが責める側に回ったとき、あんなふうに普段と変わられるなんて、なんだかそのことにゾクゾクしました」

 

 自分でも意外だったのだ。

 もちろんこれが野村医師や西田のような、年上や同年代を相手にしたときはどうなるか分からなかったが、少なくとも年下としっかり認識している田畑君のような存在に対しては、こういう接し方も悪くないなと思ったことだった。

 

「田畑君もだいぶ感じたようですし、ちょっと休憩しましょうかね」

「あ、はい、分かりました」

 

 少し身を引くが、どこか名残惜しさを感じて、田畑君の股間からは手が離せない私だ。

 

「今度は山崎さんを二人で責めたいと思います。

 次のセッションでは、山崎さんは私と田畑君からの責めを拒否せず、すべて受けきってください。

 これまでのセッションと同じように、互いの名前と気持ちいいこと、快感を素直に口に出しながらでお願いします。

 これは自分の快感を言葉に出すことで再認識し、その快感が誰から与えられ、自分自身がそれを十分に味わっていることを再確認するための必要なことですので。

 そして、先ほどの田畑君と同じように、山崎さんにも快感と射精をコントロールされる受動的な喜びを感じてほしいですから、何度も寸止めを楽しんでもらうこととします」

 

「はい、リングして敏感になってるので急にイってしまわないか、ちょっと怖くもありますが、頑張ってみます」

「そのあたりは私達も経験者ですので、注意しますから」

「先生はこれからですけど、僕はもう、生殺しなんですけどね」

 

 相変わらず田畑君の突っ込みは笑いを誘ってくれる。

 

「では、山崎さん。マットに横になってください」

 

 田畑君への責めの間もまったく体積を減らさなかった肉棒が、びくびくと鎌首を振り立てている。

 その勇ましさに男としての充実感・満足感をも味わいながら、白いシーツが敷かれたマットに身体を預ける。

 これもまたいきり勃った股間を隠すこと無く、野村医師と田畑君がにじりよってきた。