白山下ろし

その3

 

「どこまで話たつかいな。ああ、いよいよ親父におっのチンポば握らるっとじゃなかか、ちゅうところまでだったな。

 

 御簾入りしちから最初ん3回はあっちゅう間にイッたもんだけん、親父も良作さんもたまがっとっただろたいな。北ん神さんのところでちっとばっかしおっがイくとが遅なったもんだけん、これは手伝わんといかん、て思わしたっだろたい。

 それまで胸とかは良作さんがよおといじってくれよったけん、てっきりチンポも良作さんがメインにしてくるっとばかり思とったとばってんな。良作さんが後ろからおっの胸ばいじりながら、親父に早よしてやらんと、みたいな声ばかけらしたつには、こっちがたまがったたい。

 しかも最初は手でセンズリさるっぐらいに思とったら、もう、いきなりおっの前に親父がしゃがもうとさすもんだけん、ああ、こりゃ今から親父にしゃぶらるっとばいなて思うたたいな……。

 

 高校ば出て親父と一緒に百姓するごてなってからは祭んときの直会(なおらい)にも出よったもんだけん、秋祭りやら正月やら、親父の裸やチンポももう何度も見とったし、他のモンと親父が色々してからイくところとかもちらちら見よったしな。

 おっも親父に裸やチンポば見らるっとにはそぎゃん何も思とらんだったと思うとたい。

 

 実際、おかしかこつかんしれんばってん、早かうちから親父の太かチンポから汁の飛ぶとや、親父が他のもんのチンポばしゃぶったりしゃぶられたりすっとば見とって、おっのチンポも勃ちよったけんな。

 ただ、こっは小まか(こまか)ときに親父と母ちゃんが夜中にしよっとば覗いてしもて、なんかしらん興奮しよったのと同じようなもんばいなて、そんときは思とったったいなあ。

 

 ばってん、そぎゃん思うておったつと、実際に親父に自分のば直に握られて、しゃぶらるっととは、やっぱり違うとったもんな。

 親父が俺んとば握ってしゃがんではみたもんの、やっぱり実の息子のば舐めてこぶるのに、ちっと考えたっだろな。

 一瞬動きが止まった親父ば見て、良作さんが「早かうちにしてやらんと、信治の魔羅ん萎えっちまうばい。親なら子どもん恥ずかしかなかごて、さっさとイかしてやらなんたい」って言わしたとは、妙に覚えとっとたい。

 

 背中は良作さんから抱かれて、太か腕で胸と尻穴ばいじられとった。

 前は親父がしゃがみこんで、いよいよおるのチンポばしゃぶろうて、舌でべろべろとねぶってきたったいな」

 

 

 このあたりでもう我慢が出来ず、信治さんを促して二周目の射精に向かったのだと思う。

 

 信治さんの親父さんは今ではもう70を越えておられるが、まだまだ畑仕事は現役だ。

 さすがに年のせいか色々な行事でも直会まで参加されることは無かったが、昼間の会合や信治さんの自宅周りで見る限りにおいては、いつも穏やかに過ごされている感じがしていた。

 小柄ではあるが厚みのある胸と腰回りのがっちりとした体型は、若いときはさぞや精力に溢れていたのだろうと思われるいい男だ。

 

 良さんの親父さんの良作さんはさすがにもう引退されているが、信治さんの話の通りのあの世代にしては縦も横も大きい人で、縁側で農具の手入れをされている姿をよく見かけていた。

 20年近い前であれば、二人とも男盛りの膂力精力に溢れていただろうし、その二人に挟まれた信治さんの姿を想像するだけで、俺のチンポはまたもや頭をもたげ、先端からはとろとろと先汁を垂らしていた。

 

「まだ痛うはなかな?」

 信治さんが気を遣って尋ねてくる。

 今のところ痛みも無い俺が頭を横に振ると、安心したかのようにその分厚い手の平で肉棹を包み込むようにと握り締めてくる。

 数十回扱かれただけで、俺は自分でも大丈夫かと思うほどあっけなく、その日六度目の精液を東に掘られた浅穴へと撒き散らした。

 

「おっと親父んとの話に興奮してくれとっとだろ?

 いっちょん萎えんけん、浩平がよかならこのまんま南ん神さんとこの二回目も済ますっかい?」

 

 信治さんが尋ねてくる。

 自分でも不思議なのだが、普段であればこれほどの回数をこなしていれば射精後すぐはどう弄っても勃ちそうにないと思うのだが、今日は白山下ろしの陣内という特別な空間がそうさせるのか、あるいは信治さんが語る親父さんとの交情に異常な興奮を覚えてしまっているのか、イった直後の亀頭を垂れ落ちる精液とオイルでぐちょぐちょと弄られても、くすぐったさよりのけぞるような快感を感じてすらいたのだ。

 俺はまるでセンズリを覚えたての中学生のように信治さんの問いに頭を何度も上下して、今すぐにでもイきたいとの欲望を露わにしていた。

 

「すごかなあ、浩平は。

 おっも毎年しよるばってん、さすがに二周目はよこいよこいするばいた。

 ここ何年かは青年団の昭則さんに助の役ばお願いしよるばってん、けっこうゆるっと朝までかけちしよっとばってん、こらあ浩平の白山下ろしは夜んうちに終わるかんしれんなあ」

 

 話に出てきた昭則さんは青年団の中でも良さんのすぐ下になり、信治さんとは5、6年違ったはずだ。がっしりした身体付きの、団の中でも俺と信治さんと並んで体毛の濃い三人のうちの一人だった。

 月待ちの泊まりで見慣れているはずの信治さんと昭則さんの交わりもまた、今の俺と同じような白御簾の中で毎年行われていると思うと、自分の逸物がびくびくと震えるほどの刺激になる。

 そんな俺の様子が信治さんにも伝染するのか、にやりと笑うと俺の股間に顔を埋めてきたのだ。

 

 ぐぢゅぐぢゅと聞こえる口中の水音は、俺の興奮を高めるためについてわざとさせているのではないかと思えるぐらい、陣内へと響いている。

「んんっ、んっ、んっ……」

「感じとるごたんな、おお、もうイくかっ? よしっ、イけっ、イけっ! 気持ちよう、イけっ!」

「んんっ、んむっ、んんむっ!」

「おお、ぼたぼた出よるぞ。七回目ち言うたっちゃ、よかしこ出とる」

 

 頭の中に描いている信治さんと親父さん、信治さんと昭則さんの交情に、七度目とは思えない早さで射精の瞬間を迎えた。学生時代の寮生活での射精大会のときですら、今日のような回数とスピードの両立は出来ていなかったろう。

 そんな俺の射精を、ひたすら奉仕して手伝ってくれている信治さんが我がことのように喜んでくれる。

 そんな信治さんをもっと喜ばせたい、信治さんがいることで、俺はこの白山下ろしを無事にやり終えたと、胸を張って言いたい。

 まるで実の兄貴の前ではしゃぐ弟のような、自分でも妙としか思えない興奮が俺の全身を包んでいた。

 

「さすがにちっとばっかり休憩しょうたい。浩平んとも太かままじゃあるばってん、柔らこうなって下向いてきたごたるしな。

 おっと親父ん話も最後まで聞いちもろて、浩平の興奮すっごて話ばすっけん、最後までがまださなんばい」

 

 唾液で濡れそぼった含み紙を交換してもらい、篝火にも新しい薪をくべる。

 揺らめく炎が信治さんの顔立ちに落とし込む陰影が妙になまめかしく感じられる。

 

「話の続きたいな。

 四回目ん射精のときたい。

 おっが北の穴ん前に仁王立ちになって、良作さんは後ろから太か身体で抱きしめてくれて、乳首や尻、金玉ばやわやわ揉んでくれとらした。

 親父はいっぺんだけおっの顔ば見上げちから、心ば決めたごてして舌でおるがつばこぶりはじめらしたたい。

 もうそんときは、親父が俺んとば舐めよる、そぎゃん思うただけでイきそうになっとってな。

 たぶん良作さんがおるの身体の緊張したっとで分からしたっだろ。

 親父に『信治のもうイくごたっばい!』て、言うてやらした。

 

 親父は親父でたぶんえらく興奮しとって、普通なら相手がイきそうなんち、こん村ん男ならすぐ分かっところば、相手が初めての実の息子のおっだけん、わけくちゃ分からんごてなっとらしたて思うとたい。

 良作さんが言うてやらしたおかげでおるの精子ばひん飲んでしまうとは免れちな、どうにか口ば離して飛んだ汁がちっと顔にかかったぐらいで済んだったい。

 眼にちっと入ったごてして痛がとったばってん、後からもどうにもあんときんことは話ばしきらんでおるもんだけん、謝りもしとらんとは親父に悪かなあては、ずうっと思とっとばってんな……」

 

 

 話の端々に垣間見える信治さんの木訥さ優しさに、こんないやらしい状況にあってもこちらの心は震えるものだ。

 そうだ、もともと過疎化が急速に進むがゆえに、俺のような定住者が求められている村なのだ。

 住まう人々も端から見れば特有の排除的な空気もあるのかもしれないが、少なくともこの俺については柔らかく受け入れてくれている。

 

 信治さんや良さんの親世代から見てもう少し上の世代、80代以上の人ともなればまた違うのかもしれないが、子を成していないこの俺でも村の成員として認められ始めているという実感はしっかりとあるのだ。

 俺は自分の逸物が勃起し、さらなる射精を求めていることを理解しながら、頭の片方では親父さんを思う信治さんの優しい気持ちに感動も覚えていた。

 

 

「おっが親父がちょっと舐めただけでいきなりイってしもたつに、2人ともたまがっとってな。

 その日の四回目だったばってん、びゅうびゅう飛んだし汁ん量もたいがなあったけん、前ん日に何度も出しとったなんて、親父も良作さんも露にも思っとらんだったろうては思うとる。

 おっも自分でんこぎゃん早よイくちゃ思わんかったけんな。

 イッた後も全然萎えんで堅かまましとるけん、良作さんも親父もそのまま鬼門の神さんのところばしようたいて感じになっとった。

 

 さっきの浩平んごつ、鬼門のところに出すとは助の役の2人も一緒にてなっとったけん、親父と良作さんと3人で一緒にセンズリばすって思うと、もういっちょん俺んとも萎えんでな。

 

 良作さんが煩わしゅうなったつか、装束も脱いでしもち、素っ裸になってしもてな。

 そっば見て、親父もおるも、全部脱いでしもた。

 そぎゃん寒なかったつもあるばってん、もう興奮して3人ともそっどころじゃなかったつだろと思うたい。

 あんとき3人でしたつは、今でん思い出してセンズリすっこともあっとばいた。

 

 とにかく口の使えんおるが2人んとばしゃぶっとと、キスばすっと、ああ、尻ば使うともばってん、そのあたりばせんだけで、もうそら3人で出来るいやらしかこつは何でんした、って感じだったつばい。

 

 おっがしゃがんだ目の前で親父と良作さんが互いのチンポばしゃぶったりしゃぶられすっとば見とったり、おっのチンポに2人が顔ば寄せちから、片っぽが先っちょ舐め回すと片っぽが金玉ば口に含んでぎゅーって吸わしたり。

 俺も2人の太かつば両手に握らしてもろて、ぬるぬる扱いたり、口では咥えられんけん、両方の頬に2人んとばなすりつけてもろたりな。

 

 一番感じたつは、こっも不思議かこつばってん、チンポばこぶってもろたり2人の舐り合いば近くで見とったこつよりも、おっの目の前すぐんところで、良作さんと親父がキスばして唇ばべろべろ舐めおうたり、片っぽの舌に溜めた唾液ばもう片方の口に垂らしたりとかば見たときだった。

 なんでか分からんだったばってん、自分に近かもんと良作さんのごたるよか男と、そん2人が口ば吸い合いよるとば見たとが、一番興奮したったいなあ。

 今でん泊まりんときとかにみなや浩平と色々すっともらたいがな気持ちんよかし興奮もするばってん、あんときのあれはもう、なんにも替えられんごたる気持ちだったなあ……」

 

 

 話の流れとしてはこんなものだったろう、そのときの俺はまた我慢の限界を迎えていた。

 ゆるゆると胸や腹、股間を撫で回す信治さんの毛深い腕の感触と、腰に押しつけられる火傷しそうな熱の塊。

 さらには耳元で囁かれる親子の交情の様が、もう何度目か分からないほどに俺の雄汁をふつふつと煮えたぎらせ、思うがままの噴出を欲して腰の奥底で渦巻いていた。

 

 ちょっとした信治さんの手の動きに意識とは関係無くびくびくと反応する肉棒と、俺が立ち上がろうとする動きに助の役である信治さんが反応する。

「準備ん出来たごたるな。こぎゃん堅としとるなら、また西と北と、二発いっぺんに出来るごたるな」

 

 普段は木訥の塊のような信治さんが見せるにやりとしたいやらしげな笑いに、俺はもう暴発しそうだった。

 

「んんっ、んっ、んっ!」

 

 西の浅穴の前で、信治さんのしゃぶりあげに俺はひとたまりも無く精を漏らす。

 

「んんんんっ、んむっ、んっ、んっ、んんっ!」

 

 北の穴ではオイルをたっぷりと手に取った信治さんが、半身で俺を抱きながら力強い上下運動で肉棒をじゅるじゅると扱き上げる。

 こちらも扱かれて数分も保たなかったろう。

 飛距離はもちろん出ないが、それでもぼたりぼたりと落ちる精液からは、まだまだ空になっていない俺の睾丸のがんばりが伝わるようだった。

 

 

 さすがにか、それとも、やはりということなのか。

 今日9度目の射精の後は天を仰いで大きく息をしたくなってしまう。

 あくまで口からの呼気を防ぐための含み紙が、その本能的な動きをかろうじて押しとどめる。

 信治さん自身はそのまま続けてもなんら問題は無いのだろうが、こちらの体力や気力の変動を敏感に察してくれているのだろう、胡床に腰を下ろせと、柔らかく誘導してくれる。

 そう、俺自身も、信治さんと親父さん、良作さんとのセンズリ射精話を聞きたくて仕方がなかった。

 そして、その話を聞いた上で、そのときと同じように俺も信治さんと一緒にイきたい、その思いだけが頭の中をぐるぐると回っていた。

 

 

「あとは最後の3人でのセンズリだけたいな。

 浩平がおっのごたっとの親父との話ば聞いち興奮してくれたて思うと、たいがな嬉かばい。

 おっの時の一周目のこつが、おる自身も一番興奮する思い出だけん、聞いてもろちから、2人で最後によか気ばやろうな。

 

 もうそんときのおっ達はさっき話したごつ、もうみんな装束も脱いでしもおとって、みんな素っ裸たい。

 そっで3人で色々しよって、さっき言うたごつ、もうおっの方が堪らんごてなってな。

 親父と良作さんが目の前でキスばして、ベロベロ互いの舌ば舐め合いよらすとば見とるだけで、勝手にチンポがひくひくしてな。

 ああ、こるはもう、扱くどころかちっとチンポに触っただけで、いや、もしかすっと触らんだっちゃ風にちっと当たっただけでん、イく、イってしまうち思たたい。

 

 親父はおっと同じでかなり興奮しとったけん、こんときはあんまり分からんだったごたるばってん、良作さんが、もうおるが堪えきれんごたっていうとば分かってやらしてな。

 親父にも促しちから、親父と良作さんとで両側からおっば挟むごてして、穴ん前に立たしたったい。

 

 たぶんもうそんときの俺は、浩平とおっが前からしとったごたる打合せとかもなんもしとらんかったけん、とにかくイきそうていうとば伝えるとも、やおいかんでな。

 紙ば咥えたまま、うーうー唸りよっただけだったつと思う。

 良作さんがおっと親父に、タイミングんずるっと信治が気持ちんよおなかろけん、一周目は3人とも自分で扱いてイくばいて、言うてやらしたったい。

 

 こるはもうホントにありがたくてな。自分でも、親父や良作さんに今触られたら、その瞬間にどこ目がけちとかも出来んまま、びゅうびゅう飛ばしてしまうて分かっとったけんな。

 そのあたりも良作さんは分かっとらしたっだろ。

 まず、良作さんと親父が自分のば扱きだしてから、もういつでんよかてなったら、俺のば扱けて言うてやらした。

 

 あん頃はまだ、今んごてローションやオイルもようなかったけん、つばばいっぱい手に溜めてから、親父と良作さんが扱き始めらした。

 親父はもうこっちも寸前だったごてして、イきそうイきそうて言うちな。

 良作さんはちっと余裕のあったごたるばってん、こっちもすぐによかばい、イくばいて言うやらした。

 

 良作さんが自分のつばばどろって手に取って、おっの右手に垂らしてくれらした。

 浩平も最初にオイル使おたときと使わんときと、気もちんよかとが100倍ぐらい違うとは分かっどたい。

 さっきまでの親父達の姿が目に焼きついとって、今は今で親父と良作さんのぐちょぐちょしたセンズリば目の前にして、もう、ぬるぬるぐちゃぐちゃの手で自分がつば握った瞬間に、太か唸り声ば上げち、おっがイったたい。

 

 親父も良作さんも、おっのイくとば見ながら、もう堪らんかったつだろな。

『おっ、おおっ、イくっ、イくっ!』

『ああ、づっ、づるっ! 汁の、汁の、づるけん、づっけん!』

 て言うち、2人ともびゅんびゅん飛ばさした。

 

 あんときのイった気持ちよさはもうなんとも言えんだったな。

 親父も良作さんもおるも、もう呆けたごてして、素っ裸のまんま尻餅ばついたごつしてへたりこんでしもたつば覚えとる……」

 

 

 堪らなかった。

 もう、ただただ堪らなかった。

 

 実の親と、祖父の世代に近い良作さんと、そして信治さんと。

 3人が素っ裸で肩寄せ合い、互いの顔を視野に入れながらセンズリで汁を飛ばす。

 その光景を、今目の前にいる信治さんが実際に体験し、親父さんも良作さんも、まだまだ元気に暮らしている。

 そのことがもう、性的な興奮と、なにかしら訳の分からぬままの感動とで、俺の心と肉体の両方を揺さぶってしまう。

 

 俺の目での訴えがすぐさま信治さんには伝わったんだろう。

 

「話ば聞いちもろてありがとうな。

 浩平ももう準備もよかごたっけん、最後のセンズリで汁ば飛ばそうたい。

 親父達と一緒んときんごて、3人じゃなかばってん、おっが浩平にいっぱいいやらしかこつばしてやるけん、最後も気持ちようイかなんばい。

 気持ちようイって、ぐっさん種ば撒くとが、なんさまよかこつだけん。

 さ、最後の穴んとこに行こうたい」

 

 信治さんに促されてか、いや、率先してか。

 俺と信治さんは北東の、最後の浅穴の前に進んだ。

 

 あのときの信治さんと親父さん達のように、2人とも装束も脱いでしまい、一晩で汚れてしまっているだろう白足袋だけを身につけた裸になっていた。

 信治さんのもっさりと茂った胸の毛や、動かす度に肌に触れる腕毛の感触に、興奮に敏感になった俺の全身が反応してしまう。

 信治さんも俺の毛深い肌との触れあいに感じるのか、わざと背中に腹や胸を擦りつける。

 

「最後に、ぎゅっとしてよかな?」

 信治さんがどこか恥ずかしそうな顔をして、俺を正面から抱きしめる。

 含み紙のせいでキスこそ出来ないが、互いの髭の当たる頬面を擦りつける。

 胸も腹も、ぐっと引き寄せての密着感が心地よい。

 全身に感じる信治さんの体温と、どこかしっとりとした毛深い体毛が、互いの肌の情欲を刺激する。

 

 ここから先は、信治さんも言葉では無いと思っているのだろう。

 寄せ合った肉体を少しだけ押しやり、俺の右の乳首に舌を這わせてきた。

 

「んんんっ!」

 これまでの嬲りと耳からの刺激、目の前にいる裸の信治さんの姿、なにもかもが興奮剤となって俺を襲う。

 その中でねろねろと舐められ、たまに混じる歯の刺激さえ、のけぞる程の快感を引き出されてしまう。

 

 右、左、右と胸を堪能したのか、腰に両手を回したまま信治さんの分厚い身体が俺の前に沈みこむ。

 股間の茂みに顔中を埋めた信治さんは、肉棒の根元から発する雄にしか出し得ない匂いをすべて吸い取ろうとしているかのようだ。

 大きく肩を上げて息を吸い込んだかと思うと、茂った股間の毛を吹き分けるかのように温かい息がもわっと漂う。

 腰の後ろに回されていた両手がいつの間にか前にまわり、ついには金玉と肉棒へと達してしまう。

 

「んんっ、ん、んん……」

 手の甲までびっしりと黒い毛に覆われた信治さんの右手が、みっしりと俺の逸物を握りしめる。左手は厚い手の平にたっぷりとしたオイルを湛え、発射の予感に張り付きそうになる金玉をぬるぬるやわやわと揉み上げてくる。

 

 もう、俺には限界だった。

 

 軽く肩を揺らす俺の意図にすぐに気付いてくれた信治さんが、一度だけその小さめの唇の中に俺の逸物を吸い込むと、厚いその舌でべったりと唾液を塗りつける。

 

 ああ、これは互いに相手のを扱いていこう、お互いの射精の脈動を感じながら、一緒にイこう。

 そんな信治さんの意図が明確に伝わる。

 

 互いに立ったまま、向き合うと右手を相手の勃ち上がった肉棒へと伸ばす。

 

 握る。扱く。弄る。亀頭をずるずると撫で回す。

 

 そのすべてが純粋な快感となって脊髄を駆け上る。

 2人が迎える最後の瞬間は、すぐそこに迫ってきていた。

 

「んんっ んむっ! んむっ! んんんむっ!」

「イくけんっ、浩平さんっ、イくっ、イくっ!!」

 

 2人がともに少しだけ身体の向きを変え、己が逸物の先端を穴へと向ける。

 びゅるびゅると噴き出す信治さんの雄汁と、ぼたばたと塊のようにばらまかれる俺の雄汁が、浅く掘られた田の土の上で重なりあう。

 10回の射精に及ぶ俺の雄汁と、本日二度目になる信治さんのそれが混じり合い、大地へと染み込んでいった……。

 

 

 俺は自分でも気付かないうちに泣いてしまっていたようだ。

 

 今でもあのときの涙がなんだったのか、半分は分かっていない。

 大役を成し終えたという安堵の気持ちだったのか、信治さんとの共同作業として互いの肉体を駆使した上での疲労だったのか、信治さんと親父さんや良作さんとの間に見た、なにか説明のつけようのない思いだったのか。

 あるいはそのすべてが10度目の射精を終えた途端、ずっしりと俺の心に落ちてきてしまったのかもしれない。

 30後半の大の男が自分の胸で泣きじゃくるその様を、信治さんはずっと抱きしめたまま受け止めてくれたのだ。

 

 

 今年の俺の白山下ろしの儀式はこれで終わりとなった。

 御簾の片付けは足を取られても危ないので日が昇ってからにするとあらかじめ打ち合わせていたし、暗いうちにすることは五カ所の穴に土を盛り返し、大地にしっかりと精汁を染みこませることだ。

 篝火の熾をしっかりと始末し、動物が入り込んでもいけないので供物は全部持ち帰る。

 

 両手に撤饌(てっせん)となった供物を抱え、御簾の結界を出る。

 信治さんが柔らかく笑うと、俺の咥えたままだった含み紙をひょいと取り上げる。

 儀式の間はキスや尺八が出来ないもどかしさにずっと気になっていたその紙が、終わった途端に存在すら忘れたのか、陣を出てもきつく咥えたままだったのだ。

 きょとんとした俺を前にして、「言葉ば忘れたわけじゃなかろたい?」と、信治さんがいたずら小僧のような目で問いかけてくる。

 

「あ、ああ、その、今日はお世話になりました……」

 

 互いにチンポを握り合い、精液を交わらせた者同士の数時間ぶりの挨拶としてはずいぶん間抜けなものだったろう。

 そんな俺に一度は脱いだ装束を羽織った信治さんが、「家に帰ったら、おるのば何遍かしてもらうと、そっでよかこったい。浩平も、まだまだイきたかて、チンポの方が言いよるばい」と笑う。

 

 含み紙同様、気の抜けたようになっていた俺は、自分の股間の有り様すら目に入っていなかったようだ。

 二桁の射精という大役をこなし、一度は下を向いていた肉棒がいつの間にか先端に露を浮かべて勃ち上がっていた。

 この暴れ息子が、とも思ったが、この後の信治さんとの、ようやく己の口をも使ってあの太いチンポを味わえることを考えると、ますます太さを増してしまう。

 

 日の出までに、いや日が昇っても構わない。

 この後、信治さんと2人だけの俺の部屋で、いったい何発俺は射精し、信治さんのものをいったい何発飲めるのだろうか。

 

 田の神を迎え入れる準備を終えた俺と助の役の信治さんの儀式は、まだもう少し続けることが出来そうだった。