男性専科クリニック

その2

 

 女遊びなど程遠い生活だった訳で、性病などの心配はしていなかったが、年の割には出てきた腹に糖が出ていないということを聞いただけでもほっとするものだった。

 

「最近のバイアグラ等の勃起薬は物理的、精神的どちらの要因にも効果がありますが、うちのクリニックではまずは実際の機能回復訓練を第一選択とし、そちらでの回復が足りないと思われる場合に内服薬との併用を行っていきたいと思ってます。

 そのため、まずは性機能面での物理的な障害がないかの検査をしたいと思ってます」

 

 物理的な、ということは、実際に勃起するかどうかという検査なのだろうか?

 野村医師の言葉は続く。

 

「その検査で物理的障害、神経的障害の影響が少ない、すなわち精神的な面が主たる要因と推察されるのであれば、心理的なカウンセリングを伴う機能回復訓練を治療のメインに、と考えています。

 もちろん山崎さんがご希望であれば初回から勃起薬の処方箋も出せますが、けっこう一錠あたりの値段が張るのでそのあたりも検討されてください」

 

 野村医師の話は、素人の私に分かりやすく説明してくれてるのだろう。こちらの方針なら、まずは検査からお願いします、ということにした。

 

「それでは機能検査についてご説明します。検査の方法は二種類ありますので、どちらか都合のよい方を選んでください。田畑君に内容を説明してもらいますので、ズボンとパンツを下ろしてもらえますか」

 

 野村医師はあっさりと言ったが、たとえ医療的な検査が目的といっても下半身を剥き出しにするということは、顔から火が出るように恥ずかしいことだ。

 それでも気を使わせまいとしているのか、わざと何でもないように対応する二人の態度に思い切って私は立ち上がり、ズボンのベルトに手をかけたのだった。

 

 風呂場などでは気にもしないが、よく考えてみれば着衣の二人の男性の前で下半身を晒すなどというのは始めての経験だった。

 

「ひとつは山崎さんに御自宅でやっていただく検査です。

 寝る前にぺニスに簡単な器具を巻き付けておいてもらって、就寝時の勃起があるかどうかを調べるものです。俗に言う朝勃ちですが、一晩に何回も起こっているもんなんですよ。こんなふうにぺニスにベルトを巻き付ける感じですね」

 

 驚いたことに田畑君は「失礼します」と声をかけると、私のうなだれたままの肉棒の中ほどを、人指し指と親指で作った輪の中に柔らかく握りこんできたのだ。

 

 検査法の説明だとは分かっていても、目の前でしゃがみこみ私の肉棒をさすっている田畑君の姿は、自分自身を奉仕されているような気にさせてしまう。

 ここは病院なんだという必死の思いで、自分の頭の中の卑猥な妄想をあわてて打ち消そうとする。

 

「もうひとつはこの診察室で行なうことになります。

 プラスチックのシリンダーを使って、気圧の差でぺニスに血液が送り込まれるかどうかを調べるものです。三十分もあればすむ検査です。

 中身を言葉で説明するのはなかなか難しいのですが……。そうですね、病気も無かったみたいだし、山崎さんもこんなにされるとその感じがつかめるんじゃないですか」

 

 今度は彼はなんと、今まで手のひらでやさしく揉みほぐしていた私の肉棒を、その小さめの唇に咥え、ざらついた舌で亀頭をゆっくりと舐めあげながら強烈な吸い上げを始めたのだった。

 

「あっ、あのっ、か、家族に知られたくないので、こ、ここで出来るのでお願いします」

 

 私は、怪しい感覚が田畑君がしゃぶっている自分の肉棒から脊髄を伝って駆けあがっていこうとするのを感じ、あわてて彼の熱い唇から自分の肉棒を引き抜いた。

 

「では、さっそく検査に移りましょうか。そちらのベッドに横になってください。

 ああ、潤滑用のローションで汚れるかもしれないから、上も全部脱いだ方がいいですね。田畑君、検査機を持ってきてくれないか。じゃあ、山崎さん、お願いします」

 

 野村医師が、私の内心の動揺などまったく気づかないように、検査を促した。

 私はあくまでもただの検査なんだと自分に言い聞かせ、動悸を隠すように慌てて服を脱ぎ始めた。

 

 

 検査

 

 先ほどから下半身は晒していたとはいえ、素っ裸になってベッドに上がるとさすがに恥ずかしい。田畑君が隣の部屋からコードやじゃばらのホースがついた機械の乗ったワゴンを押してきた。

 

 野村医師が自分の手を消毒しながら、横たわっている私に向かって、先ほどまでよりは少しくだけた調子で話しかけてきた。

 

「山崎さんは四十二才になられるんですよね。身体つきもがっしりしてて、年相応の貫禄があって魅力的ですよ。なにより元気がないって言われるこの息子さんも、ずいぶん太いものをお持ちじゃないですか。それとも田畑君にしゃぶられて少しは感じてらっしゃるのかな」

 医者として私に自信をつけさせるために言ってくれているのであろう。そのときの私は野村医師の言うとおり、先ほどの田畑君の口から受けた刺激が自分の下半身にほんの少し血液を送り始めているのを感じとり、己の変化にとまどいを覚えていたのだ。

 

「皮膚が傷つかないようにローションを塗って、この小さなリングをぺニスの根元に差し込みます。その後、機械につながっているホースの先の筒を山崎さんのぺニスにかぶせ、リングパッキンに止めます。

 あとは機械が筒の中の空気を少しずつ抜き取って行くにつれ、陰圧の関係で山崎さんのペニスが大きくなっていきます。

 では、始めますので、リラックスしてください」

 

 検査の手順を器具を示しながら説明すると、医師は太さだけは人並以上だと思っている私の肉棒を、右手ですくいあげるようにして握りこむ。

 消毒薬を浸した脱脂綿で拭き終わると、医師は透明なゼリー状の液体をたっぷりと私の肉棒に垂らしてきた。一瞬のひんやりとした感触の後に、何とも言えない快感が伝わってくる。

 頭をあげてみると、野村医師がローションまみれになった私の肉棒を、ゆっくりと上下にこすりあげているのだ。

 以前であればそれだけで射精してしまいそうな刺激を受けながら、私の肉棒はほんの少し充血してきたような感じがしていた。

 

「ああ、先生、そ、そんなにされると、なんだか変な感じです」

「握られただけで感じるとは、心配いらないかな。勃ててもらうためにやってるんですから、感じてもらっていいんですよ。ぬるぬるが気持ちいいでしょう。

 でも、まあ、検査も始めないといけないし。リングをつけますね」

 医師は私の狼狽を楽しむかのように肉棒を揉みあげると、シリンダーに注意深く差し込んだ。

 陰毛が巻き込まれないように避けながら、パッキングリングを心なしか太さを増してきている根元に取り付ける。透明な円筒の中に、きれいに竿全体がおさまることとなった。

 

「では、田畑君、ホースをつないでくれないか。それじゃあ、山崎さん、始めますよ」

 

 田畑君がスイッチを入れたのだろう。軽いうなりとともに肉棒のまわりの空気が少しづつ抜かれ、同時に私の肉棒が見る間に太さを増していくのを感じていた。

 

 

 興奮

 

「勃起してもらうのが目的なので、いやらしいことを考えたりしてなるべく興奮してください。私たちも山崎さんが興奮するよう、色々スケベな話しをしますので」

 機械による強制的な尺八という、これまで体験したことのないそれは、まさに強烈な刺激だった。

 しかし、正直に言うとそのときの私は下半身に伝わる直接的な刺激よりも、ベッドに横たわった私の視線の先に目を奪われていたのだ。

 

 私の目の前で、白いズボンに包まれた野村医師の股間が、もっこりとした盛り上がりを見せているのだ。

 田畑君の方へと目を移せば、彼の股間も野村医師に劣らない、中身の巨大さを物語るような膨らみを見せていた。

 そして二人のその膨らみが増せば増すほどに、私の肉棒も太さを増し始めていたのだ。

 

 私は男の股間の膨らみに欲情している自分自身にとまどいながらも、下半身から伝わる力強い勃起の感覚に、こちらも男としての安堵を感じていた。

 

 三カ月ぶりの強烈な快感と男だけの空間の中での気安さが、私の口から小さな声を洩らした。

「あっ、あっ、先生、いいです、感じます」

 

「感じてきたらもっと声を出していいですよ。山崎さんのも大きくなってきてるじゃないですか。こりゃあ、外すとき大変だな。田畑君、少し動かしてあげたまえ」

 ニヤリと笑って言う野村医師の言葉に、田畑君が上下にゆっくりと筒を動かし始める。

 

「ああっ、せ、先生、それは、そんなふうにされると、だめです、だめです」

 

 見れば私の肉棒は、透明な円筒の中できちきちに膨らみ、窮屈そうに身をよじっている。

 円筒に密着した亀頭の部分は、潤滑油の働きで上下運動のたびにベットリとまとわりつかれているかのような感触を伝えてくる。

 幹の部分もローションのぬめりが、ぬるりぬるりと私を責めたてる。

 

「どうですか、もうたまらんといった気持ちになってくるでしょう。私も見ているだけで勃ってきましたよ。田畑君は先走りまで出てきてるんじゃないかな。ズボンに染みまでつくってますよ」

 あまりの快感に喘ぎ声をあげている私の頭の上で、二人が驚くような話を始めた。