再び、工場にて
わけが分からぬまま、OHARAの社員達の熱気に巻き込まれた製作所員一同であった。
OHARAの職人達にバンバンと肩を、背中を叩いて送り出され、会場を後にした一行は、全員が知らぬ間に夜中の工場へと帰ってきた。
なんとなくこのまま別れるのも変な気がしていたのだろう。
「親父、文さん。なんかしらんが、あれでよかったのかな?」
「まあ、職人が集まってるんだ。あんなノリになることも分からんではないしな。ケンコーが若いときは、うちでもよくみんな素っ裸になって踊ったもんだ。なあ、あの頃は……」
「文さん、そんな昔のことを話されてもっ!」
文四郎が昔語り始めようとする気配に慌てた健幸が止める。
「へえ、社長、うちでもそんなんだったんですか?」
世代的に初めて知った史朗が驚いたような声を出す。
「あの頃はみんな元気もありあまってたからな。退職した良平さんが音頭取って、色々やったもんだ」
「えっ、色々って、どんなことやってたんです?」
左右吉の話に友一が食いつく。
「はは、親父も色々やってきてたんだな。かずさんは知ってた?」
「いや、史朗さんでも知らないことは自分もちょっと……。ただ、社長の本気のドジョウすくい、ちゃんと見たこと無いので見てみたいとは思います」
「ほう、確かに若い連中はまともには見てないよな。
どうだケンコー、来週のうちの忘年会、俺たち二人、いや左右吉と三人のおっさんトリオで、素っ裸でやってみるか?」
健和と数彦の話に、文四郎が健幸をけしかける。
「うあ、まあ、そうだな、文さん。きちんと準備してやるってのは、うちではしばらくやってないな……」
「社長、やりましょ、やりましょ! 俺もきちんと覚えたい!」
相変わらずへらへらと賛同する友一に、みなが笑う。
みなの話を聞きながら、健幸の額に季節はずれのうっすらとした汗が浮かぶ。
机の下に隠れた健幸の股間が再び勃ち上がっていたのを知るのは、健幸本人だけだったのだろう。
了