『金精の湯』秘境温泉物語

その10 貫通

 

 俺と日高君の乳首ピアスを入れたいという要望に、四方さんや他の宿守りたちも、何度も何度も説明と意思確認をしてくれた。

 俺たちの意思が固いと知った四方さんは、この宿での湯治の日々も半分過ぎる14日目、『入りの湯』の最後の日に、2人のピアスを貫通させる処置をするという。

 

「最後にもう一度伺います。本当によろしいですか、北郷様、南川様。

 人にもよりますが、貫通時にはかなりの痛みを感じることもありますし、ピアスが慣れるまでの期間の継続した痛みや不便さは避けようがありません。

 ここの温泉と濃縮した『魔剋湯』の効能で、慣れるまでの期間はかなり短縮されるとは思いますが……」

 

 何度も確認された言葉だったが、俺も日高君も、気持ちはもう揺るがない。

 

「お願いします。痛みもあるとは思いますが、堪えます」

「僕も気持ちに変わりはありません。怖くもありますが、お願いします」

 

「分かりました。では、施術は広間で行います。東尾様も、西山様も、よろしければ見届け人として、お二人の挑戦を見守ってあげてください」

「はい、朝熊君とも話してそのつもりでおりました。自分たちのことも考えながら、しっかり見届けたいと思います」

 

 広間に用意された低い台の上には、滅菌消毒されたニードルのパッケージや手袋、最初につけることになる宿守りたちのそれに比べるとかなり細いピアスがすでに用意されている。

 あの針が自分の乳首を、しかもこの二週間で敏感さが増しているそこを貫くかと思うと、その痛みに足がすくんでしまいそうになる。

 隣の日高君の肩が細かく震えているのは、必ずしも武者震いといったわけでも無さそうだった。

 

「これはいつもの飲泉用の温泉ではなく、成分をより濃縮させた『魔剋湯』を暖めたものです。飲めば温泉で上気するのと同じように心身をリラックスさせる効果があります」

 

 茶野さんが持ってきた湯飲みを飲み干す俺たち。

 しばらくすると日高君の震えもおさまってきたようだ。

 

 布団に横たわる前に、立ち姿、しゃがむ姿、身体をひねった姿など、様々な上半身の動きを行い、最終的に通したピアスが水平になる貫通点を探し出す。

 この二週間、毎回の『魔剋湯』の塗り込みで何度も薄皮が剥け、すでに大きめの大豆ほどに膨らんでいる俺と日高君の乳首だ。そのそれぞれの両側にニードルを通す目印となる点が印された。

 

「貫通するときに痛みからの恐怖や身体を逃がそうする反射的な動きを抑えるため、下半身と上半身、肩などを固定させていただきます。では、南川様より、始めます」

 

 まず日高君からの施術のようだ。

 おそらくは俺が受けるところを見て恐怖感を持たせないよう、宿守りたちの気遣いだろう。

 

「ここでは病院などと違い、麻酔を使うことが出来ません。痛みで身体を動かすことの無いよう、私ども総掛かりでお二人を押さえることになります。

 施術中のお二人の精神的な安定のため、東尾様は南川様の、西山様は北郷様の手を握っておいていただいていいでしょうか?」

「もちろんです」

 

 豊後さん、朝熊君の返事がシンクロする。

 

 布団に横になった日高君の頭を白山さんが、肩を緑川さんが、腰回りを黄田さんが押さえつける。

 バンドなどでの固定より、人の手によるものの方が確実だということは、俺にも分かっていた。

 

「みなさん、これまでの湯治の効能で、乳首もかなり敏感になっておられます。

 なかには針を通した瞬間に射精してしまう方もおられますし、それは決して恥ずかしいことではありません。

 貫通部位はなるべく清潔に保ちたいため、精液の付着などもしばらくは注意が必要です。万が一そのようなことが起こっても大丈夫なように、黄田が南川様のものを咥えさせていただきます。

 そこで味わう股間の快感もまた、痛みを和らげてくれましょう」

 

 下半身を押さえている黄田さんが、さすがに硬度は失っていた日高君のものを口にする。

 もともと平均を遙かに超える大きさで4人の中でも一番の大きさを誇っていた日高君の逸物は、この二週間でさらに成長し、もはや宿守りたちの巨根と見紛うばかりの太さ長さとなっていた。

 

「あっ、黄田さん、ごめんなさい……。こんなときでも、しゃぶられると、僕……」

「いいんですよ、南川様。黄田の舌と唇で大きく固く勃起するほど、貫通時の痛みは軽くなるはずです」

 

 黄田さんの喉が怪しく動き、日高君の亀頭を口全体を使って愛撫する様が目に見える。

 毛深い手で優しく日高君の頬を撫でる茶野さんの目が優しい。

 

「東尾様、南川様の手を握ってあげていてください」

「はい、四方さん……。日高君。私がすぐ側にいる。宿守りさんたちにすべてを預け、痛かったら声を上げていい。どんなに強く、私の手を握ってくれていい。みんな側にいるからな」

「はい、豊後さん……。手、痛かったらごめんなさい」

「謝らんでいいぞ。私が感じる痛みなんか、君の感じるそれの何分の一にもならんだろう」

 

 四方さんがニードルと、乳首の反対側にあてる消毒したコルクを用意する。

 

「左の乳首の方が敏感な人が多いため、そちらから通していきます。こちらを堪えられれば、右はそこまでは無いかと思いますよ」

 

 どこまでも気遣いのある四方さんの言葉に、一瞬日高君の顔つきがゆるみ、次の瞬間にはぎゅっと引き締まった。

 

「それでは」

 

 四方さんの言葉と同時だった。

 唇をしっかりと閉じたはずの日高君の口から、くぐもったうめき声が上がる。

 

「んんんんんーーーーー、んんっーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 ぐっと右手を力一杯に握りしめられた豊後さんの顔が歪む。

 それでも、頑張れ、頑張れと小さく囁く豊後さんの声が、俺たちの耳にも届く。

 耳のピアスならば一瞬なのだろうが、皮膚の厚さ、貫通する距離が段違いの乳首では、針が通る時間すら何倍のものとなる。

 それでも叫びそうになる声を押し殺し、なんとかうめき声だけで押さえた日高君の姿は、実に立派だったのではなかろうか。

 

 いったん乳首の根元に埋まったニードルの終端部にキャッチャーを外したピアスが差し込まれ、そのままぐっと圧をかけ、日高君の初ピアスの貫通が終わった。

 

「すぐに右を行います」

 

 痛みを思い出す暇を与えないためだろう。紫雲さんに左の貫通後の処理を任せ、四方さんが右乳首に新しいニードルを用意する。

 

「堪えられない痛みでは無い、ということもお分かりになられたかと思います。今度はこの肥大しはじめている乳首に針を通す感覚を、黄田の口からの快感とともに味わってみてください」

 

 四方さんの説明は日高君だけでなく、俺たち全員に聞かせる目的もあったんだと思う。

 その説明を聞いた朝熊君の股間がびくびくと震えるのが分かった。

 

「んぐぅっ! んっ、んっ、んぐーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」

 

 ずぷりと音がしそうな勢いで、突き刺さった針が反対側の皮膚を押し破りその先端を露わにした瞬間だった。

 日高君の雄叫びには、先ほどの痛みを堪えるだけのうめき声とは、明らかに違う音色が混じっている。

 そう、敏感になった乳首の根元、そこを貫通する針の痛みと感触、口舌奉仕される逸物の快感、その渾然となった痛みと快感に、日高君はその逸物の先端から黄田さんの口中深く、己の精汁を大量に噴き上げたのだった。

 ごくごくとその汁を美味そうに飲み上げる黄田さんの喉の動きに、俺の股間も打ち震えてしまっていた。

 

 四方さんの指先が慎重に動き、丸いキャッチを取り付けて日高君の貫通儀式が終わった。

 腫れ上がった乳首には『魔剋湯』がたっぷりと塗り込められる。

 

「この『魔剋湯』、消毒と傷を早く治す効能がどちらも非常に高いものです。

 ピアスの安定も、ここの湯への入浴と『魔剋湯』の塗布を繰り返せば、およそ一週間もすれば日常生活への影響はほぼ無くなるでしょう」

 

 貫通した穴が定着するまで、通常の乳首ピアスだと半年一年はかかると聞いてはいたが、四方さんの話は驚くべきものだった。

 確かに日に何度も『魔剋湯』を塗られ、その度に薄皮が剥がれるようにして皮膚の交代が進む乳首も亀頭も、敏感にはなりはすれ、痛みや出血があるわけでは無い。

 それこそが代謝と治癒が猛然としたスピードで進んでいる証左なのだろう。

 

「頑張ったな、日高君」

「僕、僕……。もう、なんて言ったらいいのか……」

 

 日高君は涙ぐんでさえいるようだ。

 

「南川様の射精、堪能させていただきました。そのまま飲ませていただきましたが、いつもに増して、濃いのが出たようでしたよ」

「もう、黄田さんったら、なんだか恥ずかしいですよ。でも、あの瞬間、僕、全身で痛みを受け止めながら、同時にイッちゃってました……」

「それは感覚としては『どう』だったんだね」

「その、すごく、『よかった』です……」

 

 豊後さんが施術したばかりの乳首に触れないよう、日高君の背中から腕を回し、互いの増大した肉体を密着させる。

 親子ほどにも年の離れた2人だったが、その姿にどこか美しささえ感じる俺だった。

 

 

「さ、次は北郷様、こちらへ」

 

 促されるままに布団に横たわる俺。

 緑川さんが頭を、白山さんが肩を、下半身を担当の赤瀬さんが押さえ込む。

 赤瀬さんの目の前で、痛みの予感と緊張で萎えるはずの俺のチンポは、なぜかガチガチにいきり勃っていた。

 

「勇ましいですね。南川様がそうだったように、貫通の瞬間の射精は、いつものものより何倍にも、何十倍にも感じることが出来るかと思います」

 

 四方さんが俺の目を見つめながら言う。

 俺は先ほど目の前にした日高君の貫通に、痛みの予感よりもどこか感動めいたものを覚えていた。

 俺もまた、声を堪え、敏感になった乳首を貫かれる痛みとともに盛大に噴き上げたい。

 そんな思いにすら駆られていたのだ。

 

「あっ、赤瀬さんっ、すごい……」

 

 そんな俺の思いを見透かしたかのように、赤瀬さんの舌が俺の肉棒を翻弄する。

 口蓋に擦りつけられる亀頭。べろべろと裏筋から舐め上げられる鈴口の周囲が、しびれるほどの快感を生む。

 俺の手を握る朝熊君が、そっと俺の頬に唇を寄せてくる。

 

「頑張ってください。俺も、ここにいます」

「頼む、俺の手、握っててくれ……」

「絶対に、離しませんよ」

 

 これから体内に針を刺されるというのに、俺の心は不思議と安定していた。

 この二週間での宿での生活が、周囲の男たちへの信頼を絶対のものにしている。

 どんな姿を見られても、どんな声を聞かれても、受け止めてくれる。

 その確信が、俺にはあった。

 

「そっちも準備がよさそうですね……。では、通します」

 

 ゴムの手袋越しに、四方さんの指を感じる。

 次の瞬間、小さな火を当てられたような、その火が胸の奥から全身に広がるような、痛みと快感が入り交じった波が俺の全身を襲った。

 

「んんんんんーーーーーーー、んぐっ、んぐっ、んぐーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

 声は上げまいと思っていた。

 たとえ射精するにしても、針に慣れた二度目だと思っていた。

 

 そんな俺の気構えを吹き飛ばすように、ニードルが胸を貫いた瞬間、俺の肉棒は赤瀬さんの喉奥に、大量の白い粘液をぶちまけていたのだ。

 

「ああっ、イくっ、イってるっ! 俺、まだ、イってるっ、どくどく出てるっ……」

 

 肉棒と亀頭の律動に合わせ、赤瀬さんの喉が上下する。

 俺も宿守りたちのそれを何度か味わったが、大量に噴き上げる汁をこぼさないようにするには、とにかく飲み続けないといけないのだ。

 

「おお、左乳首の貫通での射精は珍しい。それだけ北郷様の身体の準備が『整っていた』ことなのでしょう。余韻があるうちに、右も通してしまいます」

 

 余韻どころか、俺の射精はまだ続いていたのだ。

 この宿に来て、日内の射精回数の増加とともに、その毎回の射出量もそれまでとは段違いに増えてきている。

 数分にもわたる吐精の感覚は、金玉の奥から魂を引き抜かれたかと思うほどだ。

 

「まだイッてます!! まだイッてるからっ!!!!」

 

 そんな俺の抗議も空しく、四方さんが持つニードルが俺の右乳首の根元に狙いを定めた。

 俺は次に来る大波を予想して、朝熊君の手を握りしめる。

 

「ああああっ、あああああああっ、またっ! またイくっ、イッちまうっ! また、また、イくーーーーーーーーー!!!!」

 

 針先がぷっくりと腫れた俺の乳首を貫いた瞬間、一度目の貫通での発射が続いていた肉棒の奥から、再び大量の雄汁が駆け上ってきた。

 

 イきながらの、二度目の射精。

 

 それは本当に、生まれて初めての、経験だった。

 

「あああっ、ああっ、あっ、あっ、ああっ、ああああああ……」

 

 両足を抱えこみ、股間の茂みに顔を埋める赤瀬さんに加え、黄田さんもまた、痙攣するかのような俺の下半身に覆い被さる。

 2人合わせて250キロにもなろう肉の重しすら、びくびくと跳ね上がる俺の腰を押さえるにはその重さが足りなさそうな勢いだった。

 

「あっ、んっ、んんっ、ぐ、ぐあぁぁぁ……」

 

 俺の乳首貫通による吐精が終わったのは、それから数分経ってからだった。

 その間、朝熊君はずっと俺の手を握り、もう片方の手では下半身を押さえつける赤瀬さんを助けて、俺の玉を柔らかく揉んでくれていたのだ。

 

「ありがとうございます、四方さん。ありがとう、赤瀬さん、朝熊君。ありがとう、みんな……。ああ、2回連続、もう、すごかったよ……」

 

 放心してしまいそうな気持ちをなんとか引き留め、俺はゆっくりと上体を起こす。

 長い射精の間に染み出た体液の拭き取りやキャッチの装着、消毒と治癒のための『魔剋湯』の塗布も済まされており、俺は朝熊君の手を借りて、布団の上に座り直した。

 

「どうですか? 貫通した自分のピアスを見て?」

 

 四方さんが問いかけてくる。

 先に済ませた日高君がすぐに答えた。

 

「もう、ホントに感動っていうか、なんて言えばいいのかって感じです。僕も宿守りさんたちみたいな太いピアスに変えていけるんでしょうか?」

「お二人に通したのは12G(12ゲージ)という、直径2ミリほどのまっすぐなものです。

 普通の乳首であればもっと細いものから始めるんですが、お二人ともかなり肥大化も進んでいますので、最初としては少し太めのものですが始めてみました。

 慣れてきたら段々と太いものに変えていき、いずれは小指ほどのものでも通るようになりますよ」

「すごい……。その四方さんたちの太いピアスって、その、『気持ちいい』んですか?」

「それは穴の太さによるというよりも、その太さの分のバーベルとキャッチの重さの方が重要なポイントになります。

 もちろん何かに触れたときの快感は乳首の肥大化とともに増大していきますが、ふと身体を動かしたときなど、わずかにずれる重心の移動でピアスの重さを感じるときに、この乳首ピアスの真髄が現れると言ってもいいでしょう」

 

 短時間のうちに2度イキ、大量射精をしたはずの俺の逸物が、四方さんの話を聞いて再びその頭をもたげはじめていた。

 日高君の巨大なそれは、すでにもう臍を叩くほどの勃起を見せている。

 

「北郷様はいかがだったでしょうか。もっとも、左右貫通と同時の二度の射精は、私も初めての経験でしたが……」

「はい、あれはもう、なんというか、天国と地獄を一緒に味わったような感覚だったと思います。究極の気持ちよさと究極の痛み、いや、実際にはそこまでの痛みじゃなかったんでしょうけど、それでも『痛みを堪えている自分』に興奮していたのかもしれません。

 とにかく全身が快感の炎に灼かれるっていうのは、ああいうのを言うんでしょうね……。俺、思い出しただけでも、またイきたくなってしまってます」

 

 俺の右横にあぐらをかいた朝熊君の股間もまた、今にも噴き上げそうに湯気が立ちそうに勃起している。

 いや、この場にいる湯治客、宿守りたち、その全員の逸物がいななき、先端をぐっしょりと透明な液体で濡らしていたのだ。

 

「さて、皆様もそれぞれ興奮しておられるとは思いますが、北郷様、日高様にあたっては乳首や上半身をよじってしまうような愛撫や刺激は、しばらくは避けていただかないといけません。

 これにつきましては、私ども宿守りも、また皆様同士における行為においても、北郷様、南川様の胸をいじる、乳首に触れることは、これからの一週間、湯治三週目の『盛りの湯』の期間において、禁止行為とさせていただきます」

 

 覚悟はしていたことだったが、これまで獲得してきていた乳首への刺激が禁じられることは、なんとも切ないことのように思えた。

 

「もちろん、ここまでの肉体と精神の変化を受けとめて来られた皆様、北郷様も南川様も含めて、乳首をいじってもらえない、お二人の乳首を舐め、つま先で刺激することが出来ないということは残念なことでございましょう。

 そこでそのご不満の解消のためにも、先日より私どもが『魔剋水』を使い、ゆるゆると触れてきていた、皆様の尻を使っての行為を本格的に行おうかと思っています」

 

 言葉にならないどよめきが、俺たち湯治客の間で沸き起こる。

 いつの間にか、尻穴を使った行為すら『当たり前のこと』と受け止めていたのは、俺だけではなかったようだ。

 

 俺たちは皆、初日のそれぞれの個室での『揉み療』のときから、すでに宿守りたちの指による刺激を後口とも言える尻穴で味わってきていた。

 毎日指を入れられる、という頻度ではなかったが、数日に一度は『魔剋水』のぬめりを利用してぬるぬると『そこ』を刺激される。

 その切なさは、とろみのある液体を唇に塗られ、指先でとろとろと撫で回される状態が一番近いものだろう。実際、肛門と唇は、体表に現れた粘膜と考えると同質のもののはずだった。

 

 ここの温泉水を毎日大量に体内に取り入れる効能の1つに、腹の調子を整える整腸と、便意を感じない限り、排泄毎に直腸に便の残渣が残らないほどの『キレの良さ』があるらしい。

 初日に宿守りたちから指摘があったように、たとえ指が少々出し入れされても、そこには匂いも付着するものもなにも無いという、実に不思議なことが俺たちの身に起こっていたのだ。

 

「それ、その、肛門を使って、その、乳首の代わりにするってことですか?」

 

 朝熊君の質問は、驚きや拒否というニュアンスを含んだものではなく、どこか熱を持った期待に満ちたものに聞こえた。

 

「そうですね、そう受け取ってもらって構いません。皆様はこの二週間で、その肉体も精神もかなりの『変化』を受け入れてこられたかと思います。

 それと同時に、逸物が目に見えるスピードで増大する中、当初は私どもが口に含んで前後運動が出来ていたものが、相対的な大きさが増すほどに、亀頭中心の責めに変わっていったこともお分かりかと思います」

 

 これはまったくその通りの指摘だった。

 俺たちが宿守りの逸物をなかなかしゃぶれなかったのは、単純にその『大きさ』ゆえに、その全長を口に含むことが困難であるという『物理的な障壁』にぶつかっていたからだ。

 それはもう、たとえ先端を口に入れることに成功したにしても、舌や歯、口蓋による愛撫など出来はしないのでは、との思いが強く反映していた。

 そんな宿守りたちの股間の巨大さに、俺たち湯治客のそれも近づきつつあるのだ。

 しゃぶり合うことで互いの性的な興奮を高めることすら、難しくなってきている。

 

「皆様も戯れ言にて『フィスト』などという言葉をお聞きになったことはございましょう。あれは男性同士の肛門を使った交わりにおいて、その太い腕を肘まで入れることが可能となるほどのものでございます。

 故に巨大化する逸物をその根元まで受け入れ、前後、あるいは上下の摩擦により吐精を促すに、まさにこれに超したものは無いと私は考えておるのでございます」

 

 分からない説明ではない。

 それでも男の尻に、自分の指や手、あるいは魔羅を差し込む・差し込まれるということを、俺の身体と心が受け入れることが出来るのか、少しばかりの疑念は生じていた。

 これまでの『ふとした瞬間に宿守りたちの指が触れる』とは、明らかに違う段階へと進むことなのだ。

 

「ご心配、ご不安もよく分かりますが、この湯で半月にわたる湯治を済ませてこられた皆様の肉体は、すでにそれぞれのすぼまりの緊張は解け、挿入を待ちわびている状態にと変化しているはずでございます。

 これまでの固定観念に囚われず、純粋に、肌と肌、粘膜と粘膜の触れあいを楽しんでいただければと考えるのです」

 

 四方さんの言葉に、俺たちは返す言葉を見つけきれないでいた。

 頭では理解しているのだが、実際に身の内にあの巨大なものを受け入れるとなると、どこかためらいが浮かんでしまう。

 

「大丈夫ですよ。いきなりや、痛みが伴うことの無いよう、最初は私どもがゆっくり丁寧にほぐしながら、道をつけていきます。

 痛みや出血などが無ければ、皆様の方でもすぐにその心地よさ、気持ちよさを感じ取っていただけるはずです。

 ご不安もあられるかもですが、大船に乗った気持ちでいていただければ……」

 

「そこまで言われて『それはちょっと』と拒否するものでもなかろうや。皆、宿守りさんたちに、ここはこの身を任せてみようじゃないか」

 

 こういうとき、頼りになるのはやはり豊後さんだった。

 その言葉に背中を押され、俺たちは新たな刺激とその反応を、宿守りたちに教え込まれることとなったのだった。