月待ちの講 如月

その3

 

 道則さんは大きな背中を丸めて兄である昭則さんの逸物をしゃぶり上げ、次の瞬間には唾液を溜めた分厚い手の平で昭則さんのがちがちに勃ち上がった逸物を扱きあげる。

 義久さんは朋久さんの右の乳首をねちっこく舐め回しながら、右手では器用に朋久さんの赤黒く張り出した亀頭を責め上げている。

 イかされる立場の2人の喘ぎ声が、広間の室温さえ上げていくようだ。

 

「実の弟にこぶられとっとに、チンポのびんびんに勃っとるばい。兄貴はまっこついやらしかな」

 道則さんが煽り立てる。被虐や羞恥心を快感と感じる昭則さんの嗜好を十分に理解した上での言葉責めだろう。

 片手で自分の顔を隠すようにした昭則さんが「恥ずかしけん、そぎゃんこつは言わんではいよ……」と呟いているが、それが本心で無いのは明かだった。

「チンポの割に金玉の太かつは俺(お)っから見てん、うらやましかごたるばい。こん太か玉で子種ばどしこでん作りよっとだろけん、おもさん出さなんばい」

 大きな手の平からはみ出しそうなぼってりとした昭則さんのふぐりを揉み上げながらのその言葉は、弟である道則さんの本心でもあるようだ。

 艶めいた亀頭を舌で、太棹を右手で、尋常では無い大きさの金玉を左手で。責める側の道則さんの楽しそうな表情が、見ているこちらにもウキウキしながらの欲情を保証してくれる。

 道則さんの逸物がごろごろと昭則さんの腰に押しつけられ、昭則さんに取ってはその感触すら快感になっているようだ。

 そしてその感覚は、男同士の交情に慣れ親しんだこの村の男に取って当たり前のことのように思えてならなかった。

 

 互いの言葉のやり取りでも快感を高めている昭則さん道則さんに比べ、義久さんと朋久さん2人の絡みからは、イかされる側の朋久さんの喘ぎ声しか聞こえてこない。

 義久さんの、舌と歯、唇を使っての乳首への刺激は、見ているだけでもあれは気持ち良すぎるだろうと思えるほどの丁寧かつ強力なものだった。

 頬の窄まりから見てかなりきつく乳首を吸引した直後に、歯先でかりかりと先端を刺激する。外仕事で荒れた唇のがさつきをも利用した小刻みな擦るようなその動きは、責められている朋久さんの脂の乗った身体をのけぞらせるほどの刺激なのだろう。

 なによりも俺がいやらしく感じたのは2人の濃厚なキスだった。

 俺も信治さんから教えられた、唇を交わす間にしっかりと相手の目を見ながら行うキスは、互いの信頼感と尊敬心をも周りの目に写しだす。

 唾液をたっぷりと相手の口中に流しこめば、相手もさらに己の唾液を加えて舌先での交換を行う。

 歯や歯茎、相手の口蓋をも舐め回すような舌の動きは、周りの男達に見せつけるようにゆっくりと、そして丁寧に展開されていた。

 その2人が実の兄弟だと知った今は、白沢さんの祭りや先月の月待ち講で見ていたときよりも、遙かに俺の興奮の度合いが違ってしまっている。

 実の兄弟や親子での色事に躊躇することの無いこの村の風習そのものが、俺に取っては興奮を高めてしまうのだ。

 俺自身に取っても新たな嗜癖とも言えるものの出現でもあり、自分が成人した後にこのような発見があることそのものが驚きだった。

 

 スタートの合図から5分も経っていなかったと思う。

 どうやら昭則さんが最初にイきそうな気配だ。

 

「あっ、ああっ、もうっ、出(ず)っ、出(ず)るけんっ」

 

 昭則さんの切羽詰まったようなあえぎ声に、道則さんの右手の逸物を扱き上げるスピードが早まる。

 太玉を握りつぶさんかのように力が入った左手の蠢きも、相当な刺激となっているに違いない。

 

「よし、兄貴っ、イケっ、イケッ!」

「道則っ、イくっ、イくけんっ!」

 

 その瞬間、昭則さんの頭を優に越え、びゅるびゅると迸りが噴き上がった。およそ身長ほども飛んだのではあるまいか、白い軌跡が敷き布団の端から昭則さんの顔へ、胸へ、腹へと描かれていく。

 下半身を兄の重い尻肉の下から抜き出した道則さんが、イッた直後の昭則さんの先端を舐め回し、くっきりと溝を刻んだ鈴口から最後の一滴までも吸い上げる。敏感になった亀頭を責め上げる舌の動きに昭則さんが声を上げる。

 逸物から腹、胸、首、顔と飛び散った汁を舐め取った道則さんが、口中にどろりとした白濁汁を溜め込んだまま昭則さんと唇を合わせれば、汁と唾液の混じり合った濃厚な液体を互いにすすり合う。

 

「あっ、よかっ、よかけんっ、イくっ、イくっ!」

 その姿を横目で見ていた朋久さんも、自らの肉体に与えられる直接的な愛撫と目からの刺激に耐えられなくなったのだろう、こちらも粘りのある汁を高く噴き上げることになった。

 

「おお、イくっ、イくっ」

「俺(お)っもっ、出(ず)っ、出(ず)っけんなっ!」

「イくっ、イくぞっ」

 

 俺や他の団員、OBも、二組4人の痴態に自らの昂ぶりを止められなかった。

 保典さんと茂さん、篤志さんは3人が朱杯の周りに膝立ちになり、それぞれせんずりでイッたようだ。

 俺と良さん、信治さんは自分の手の平に出した汁を朱杯にこぼし、その縁で手の平に粘り着く雄汁をこすり取る。

 若衆宿中に栗の花にも似たあの独特の匂いが一気に立ち昇った。

 

「皆、よか気ばやったごたんな。

 勝負はアキミチん2人の勝ちだったばってん、義久と朋久ん2人もいやらしゅうして、たいがな良かったばい。俺(お)っは義久と朋久のキスば見とって出てしもた。人んすっとば見とっとも興奮するばってん、兄弟て思ち見とっと、それだけでイッてしまうごて興奮すっけんなあ。

 4人ともおつかれさんでしたな。みなも気持ちようイッたごたっけん、シャワーで流すもんは流してかる、こん後(あと)はぼちぼちしていこかい。アキミチん方が勝つて思とったつは、茂と信治んごたるけん、後から楽しませてもらうけんな」

 

 酔いを覚ます目的もあるのか、保典さんのジャッジでいったん湯を使おうと三々五々風呂場へと向かう。

 シャワーで流すぐらいではあったが、一度抜いた後にもかかわらず皆の股間がその太さを失っていないのはさすがと言うべきなのだろう。

「次は信治にこぶってもらわるっち思うと、なかなか萎えんばい」

 保典さんの言葉に皆が声を上げて笑った。

 

 日が変われば3月の声を聞くとは言え、山間のこの地ではまだまだ冷え込みも厳しい季節だ。一晩中裸でいても大丈夫なようにと、大きな丸ストーブ2台が置かれたやかんをしゅんしゅんと沸かしている。

 汗ばむほどの室温はシャワーを浴びた裸体にも心地よく、それぞれの人数が寄り合えば後半戦の開始となるようだった。

 

 ほとんど賭け事の体を成していないとは思うのだが、一応は昭則さん道則さんの勝利に張っていた茂さんと信治さんが、次のラウンドの主役になるらしい。

 その茂さんと信治さんが背中合わせに膝立ちになる。

 他の8人が風呂上がりの素っ裸のまま、2人の周りを取り囲むように円陣を組む。

 どうやら周りの男達のせんずりを中の2人が手助けしながら、皆で金玉に溜まった汁を噴き上げようということらしい。

 背も体重もばらばらではあるが農作業で鍛えた身体はみな厚みがあり、8人が輪になった姿は壮観だった。

 自分の視野がすべて素っ裸の壮年の男達で埋まり、しかもその股間は8本すべてが今か今かと発射を待つ砲台として準備は完了しているなどという光景は、およそこの村でしか見ることが出来ないものだろう。

 

「茂と信治は俺(お)ったちんとば扱いたりこぶったりしてせんずりすっとば助けちくれな。2人は後から皆でまた楽しませてやっけん。

 他ん者(もん)はイくときはなるべく杯に出しちはいよ。最後に酒ば入れちかる、皆でまた飲もうて思とるけんな」

 先ほどの朱杯が信治さんの足元に用意してある。白沢さんの祭りでの籠もりの際、「白差しの儀式」で俺の汁を溜め、良さんに後ろを貫かれる潤滑油として利用したときに使ったものだ。

 全員がイくときにはあの杯に向かって出すのかと想像すると、それだけで俺のチンポからは先走りが滲み出る。

 快感とともにすり込まれてしまった記憶とは、かくも強いものらしい。

 

「始むっばいた!」

 保典さんのひと声で、男達のせんずり大会が始まった。

 

「あっ、あっ」

「よか、よかばい」

「もっとぐちゅぐちゅこぶってくれっ」

 

 8人がずらりと円陣を組んだ内側では、茂さんと信治さんがそれぞれ2、3人の相手を同時にしている。

 目の前のチンポをしゃぶりながら右隣の肉棒を扱き上げる。左隣の男のふぐりを揉み上げているのはごつい左手だ。

 数分毎に横に移動し、また違う相手のチンポにむしゃぶりつく。

 2人の股間も勃ち上がったそれぞれの先端から敷布団の白いシーツの上へと、途切れることの無い透明な糸を垂らしていた。

 

 立ったままの8人もそれぞれ隣の乳首をつまみ上げ、あるいはチンポに手を伸ばし、左右を交互に向きながら首筋に垂れるほどの唾液の交換を行っている。

 眼前に繰り広げられる逞しい男達による痴態と、耳から入ってくる喘ぎ声や唸り声、チンポをしゃぶりあげる淫猥な水音。シャワーの後ではあるが、かすかに漂いだした確かな汗の臭い。

 それらすべてが神経が焼き切れるほどの刺激となって、俺の五感を襲ってきていた。

 

「男同士で、こぎゃんしてチンポ扱いて、ほんに気持ちんよかなあ」

 保典さんがその大きな丸鼻を赤く火照らせながら、しみじみと呟く。年齢からしても、回数を重ねるより十分に快感を味わいながら、より長く楽しみたいのだろう。

 節くれ立った己の逸物をゆるゆると扱く右手は、決して急いではいないようだ。

 

「浩平さんも、みんなしてこぎゃんせんずりばかくとはどぎゃん思うな?」

「たいがな気持ちんよかですよ。若っかときに寮とかでしたこつもあるですばってん、あんときはなんか急いでしよったごてして、今んごて、イくともイかんとも自分のよかごてすっていうとは、なんさん気持ちんよかです」

 左隣の義久さんがべろべろとこちらの口周りを舐め回しながら尋ねてくる。

 唾液でまみれた口でこちらも答える。

 

 学生時代の寮では男だけの集団ということで、ある意味この村での様々な行事と同じような経験もあるのだが、その時代の戯れ事はどこか互いに競争や矜持のようなものが先に立ち、純粋な快感を楽しむというものではなかったような気がしている。

 それが不思議なことにこの村の男達に囲まれていると、純粋に「快感を互いにこの楽しむ」方策としての色事であることを、素直に受け入れることが出来るのだ。

 目の前で自らのチンポを扱き上げ放埒へと向かう男達の誰一人として、互いのその姿を笑ったり卑下したりするものはいない。その安心感はなにものにも代えがたいものであり、各々が純粋に追求する快感を互いに増強する存在として認め合っている気がするのだ。

 

 信治さんが俺の前に回ってきて、こちらの顔を見上げると「任せておけ」とばかりに唇の端を持ち上げる。

 両手は隣の義久さんと朋久さんの股間に伸び、その舌と唇だけが俺の先端に近づいてきた。

 

 伸ばした舌が裏筋を舐めあげる。

 そのまま舌先を先端に絡めながら、すぼめた唇の中に張り詰めた亀頭が吸い込まれる。

 溜め込んだ唾液がぐちょぐちょとまぶせられ、鈴口から棹に向けた部分が舌の上面すべてを使ってすわぶられていく。

 

「あっ、ああっ、よかっ、気持ちんよかよっ」

 舌と頭の動きだけで刺激を続けるには、首や腹筋、背筋がかなり必要かと思うのだが、農作業で鍛えられているのか、何人もの男をしゃぶって来た信治さんには少しも疲れた様子が見えない。

 逆に、しゃぶられ、扱かれている周りの俺達の方が、互いの裸体に腕を回し引きずられないように両足を踏ん張っているのだ。

 

「おおっ、そろそろイきそうばいっ。みんなはどぎゃんな?」

 

「俺(お)っももう、イこごたる!」

「いつでん、よかばい」

「もう、そぎゃん保たんけん、早よイこう」

 保典さんの声かけに、みなが次々に答えた。

 

「信治っ、杯ば支えちはいよっ! みんななるべく杯に出しちはいよっ!」

 

 円陣の中にいた信治さんが朱杯を持ち上げ、保典さんの腰の前にと捧げ持つ。

 茂さんも立ち上がり、先走りに濡れた自分の逸物を扱き始めた。後からイかせてやる、という保典さんの話しもあったが、みなのチンポをしゃぶり上げているうちに我慢が出来なくなったのだろう。

 全員一斉に、という訳でもなかろうが、まずは保典さんを中心に3人ほどがイきそうだ。

 

「出(ず)っ、出(ず)っばいっ」

「よかっ、イくっ、イくっ」

「ああ、あっ、ああっ、イくぞっ、イくっ!」

 

 3本の先端から音がしそうな勢いで飛び出た汁が、朱色の杯にべったりと粘り着く。濃厚な若い樹木の匂いがまたも一気に空間に満ちる。

 その射精を見ていることで一層の興奮を増した4人が、これまた次々と杯の前に身を寄せる。

 

「よかばいっ、よかっ、イくっ」

「イくっ、イくっ!」

 

 一度イった連中はすぐさま場所を譲る。残ったのは茂さん、俺、信治さんの3人だ。

 

 茂さんも俺も、順番がやっときたという感じで杯を前にする。信治さんも自分のものを扱きながら左手だけで杯を支えている。

 

「ああっ、イくっ、イきますっ」

「出(ず)るっ、出(ず)っけんっ!

「イけっ、イけっ、俺っも、イくっ、イくっ!」

 

 結局、参加者10人全員がイってしまうことになった。

 朱杯の見込みにかかる色や粘度が様々な雄汁が一度目の汁と混じり合い、ゆっくりと溜まりの量を増やしていく。

 立ち昇る匂いは山がちなこのあたりではもう少し先の季節にお馴染みとなる、あの青臭い匂いだ。

 布団に腰を下ろした男達は目の前の棹をねぶりあい、垂れ残った汁の味を口中で楽しんでいる。

 俺もまた信治さんとしゃぶりあい、股間から伝わる快感の余韻をじっくりと味わっていた。

 

「乾かんごつ、焼酎ばちいっと入れとくけんな。終わったらみんなで一口ずつやりとりすっばい」

 顔も隠せるほどの大きさの杯に、保典さんがとくとくと焼酎を注ぐ。

 夜明けが来るまでに、後どれほどの精液があの朱杯へと放たれていくのだろう。

 

 信治さんの手と口の働きか、この部屋に籠もる男達から発する熱気のせいか、俺の逸物はまだまだ上澄みを抜いたばかりだと言わんばかりに、再びその容積を増してきている。

 

 射精直後の亀頭をしゃぶられるくすぐったいような堪えられないような快感を感じながら、俺は朝までにOB3人のチンポも口にしたいと考えていた。

 次の瞬間、そう考えていた自分がそれほどまでにこの村に馴染んで来ているのだと思わずにはいられなかった。