『金精の湯』秘境温泉物語

その11 乱場

 

 俺と日高君が乳首にピアスを貫通させた日から数日。

 俺たちの湯治逗留生活は『盛りの湯』と呼ばれる三週目を迎えていた。

 

 乳首への刺激への代替案として提案された肛門への刺激。

 これについては俺たち自身が拍子抜けするほどの用意さで、その快感を知ることになった。

 

「あっ、あっ、すごいっ、黄田さんのチンポ、おっきい……。でっかいリングも、ゴリゴリ、ゴリゴリ当たりますっ……」

「おうっ、紫雲さんのリングもすごい……。俺の金玉の裏に、当たるっ、当たるっ……」

「あああああっ、もっと突いてくれっ! 赤瀬さんのチンポ、すげえっ、すげえっ」

「緑川君っ、いいよっ! 緑川君の、緑川君の固いのが、すごいっ、すごく気持ちいいよっ!」

 

 なんら精神的な拒否も、肉体が反射反発する反応も無く、肛門を使った行為を受け入れていた俺たち。

 痛みや恐怖すら感じず、もはや最初から己の肉体に備わっていた『機能』を使いこなしていくように、快感と快楽のボルテージが上がっていく。

 

 そう慣らす必要もなく、いや、四方さんが言っていたように、それまでの湯治療法で俺たちの身体の方が、既にどのような大きさのものでも受け入れられるよう、初日から二週間のうちに『整って』いたのだ。

 

 繰り返される入湯と、たまにあった指による刺激。その度に肛門と直腸に塗り込められる『魔剋水』は、確実に俺たちの肉体に『ある変容』をもたらしていた。

 

 三週目『盛りの湯』の初日に、指一本から始まった慣らしはすぐさまその本数を増やし、俺たちの尻穴は、なんとその日のうちに、宿守りたちの巨大な逸物を受け入れてしまっていた。

 同時に皆の応援を受けながら、自分の逸物を担当宿守りの尻穴に挿入し、直腸粘膜の柔らかさと肛門括約筋の締め付けを始めて味わった俺たちは、もう尻穴での刺激なしの射精など考えられないほどに、それのもたらす快楽に溺れていったのだった。

 

 俺や豊後さんはまだ女性との行為の経験があるだけクッションがあったのかもだが、おそらくは初めての『挿入』『抽挿』を経験した日高君、朝熊君に取っては、それはもう中毒を引き起こすほどの快感を得ていたのだと思う。

 

 

 それまで全員に課せられていた『せんずり禁止』、さらには宿守りたちだけに課せられていた『宿守り同士による直接の射精扱き』も解禁された。

 後から聞けば、これは俺たち湯治客が否応なしに宿守りの、すなわち他者の股間を刺激することで、それらの行為への抵抗を無くすためのものだったらしい。

 これらの行為の解禁で、それこそこの『盛りの湯』の期間中、俺と日高君の乳首に触れないという禁止事項だけが残ったことになる。

 そう、互いに快感を与え合う行為として、ほとんどのものが解禁されたのだ。

 

 俺たちと宿守り、俺たち湯治客同士、宿守り同士。

 口を、手を、チンポを、金玉を、尻穴を。

 そのどれを、どう使うのか。

 扱き、握りしめ、揉み、いじる。

 挿入し、出し入れし、あるいは焦らすように先端だけをぐるぐると擦りつける。

 

 そうは言っても、宿守り同士が盛りあうことがメインになるわけでも無く、あくまでも俺たちの肉体を宿守りが刺激しつつ、という形に変わりは無い。

 それでも乳首の刺激の代替として提案された、肛門への刺激と指や逸物の挿入解禁は、この宿での湯治生活に、まさに新たな段階と刺激を加えることになっていった。

 

 ありとあらゆる組み合わせと行為が、宿の日常となった。

 それまで甘い温泉香に包まれていた宿の中に、濃厚な性臭が加わることとなったのだ。

 

 ある日、俺はもう30分以上も赤瀬さんの指を後ろに受け入れ、おっ勃ったままのチンポからだらだらと先走りが流れ落ちるままにしていた。

 蕩けるようなその悦楽は、行為の切れ目、息抜きすら必要とせず、延々と続く快感を生み出していく。

 

「どうですか、北郷様。このようにずっと指でいじられるのも、また、気持ちいいでしょう?」

「あっ、それっ、たまらないですっ……。ダメだ、扱いてないのに、俺、なんか、なんか漏れそうですっ……」

 

 これが前立腺への刺激、『ところてん』などと言われる感覚の一歩手前なのだろう。

 チンポを直接挿入され、激しく出し入れされる圧迫感と快感も素晴らしいものだったが、この『身体の内側からトロ火で炙られるような刺激』は、これもまたこれまで俺が一度も経験したことのないものだった。

 

 じっくりとほぐされ、とろみのある『魔剋水』を塗られた肉壁が微妙な熱感を持っている。

 睾丸の裏側あたりを赤瀬さんの太い指先、おそらくはその人差し指と中指の腹で撫でられる度に、俺の肉棒がびくびくと蠢く。

 玉の奥から噴き上げそうになる液体が、精液なのか、あるいは小便なのか、俺の惑乱した頭では判断出来ないほどの快感が襲う。

 

「男の身体はここをじっくりと刺激すると、手や口を使わずとも射精することが出来るのです。私どもに身体と快感を委ねて、扱かずにイく快感も楽しんでください。ほら、朝熊様はもう白山の指の刺激だけで、3回は射精されてますよ」

 

 俺たちの肉体は、遠目にはもう宿守りたちと見分けがつかないほどに、その体重、体毛の増量を果たしていた。

 仰向けになり、子どもの胴体ほどもある両足を抱えた朝熊君の毛むくじゃらの身体を、白山さんたちがいいように嬲り抜いている。

 

 夕食後の全員での『揉み療』の時間、いや、もう今ではあからさまな『乱交』の時間と言ってもいいだろう。

 広間のあちこち、布団の上に横たわった男たちが上下左右と入れ替わりながら、互いの欲望と快感の渦に溺れていく。

 

 あくまでも一人一人についている担当との絡みがメインではあるのだが、そこは残り三人の宿守りの縦横無尽な動きが、ありとあらゆる体位、行為を可能にしていくのだ。

 

 俺の尻を指で犯している赤瀬さんの言葉通り、朝熊君の毛深い腹には、すでに多量の白い粘液が撒き散らされていた。黒い毛にへばりつく白濁した汁は、あの独特な濃厚な匂いを放っている。

 俺や日高君と違い、乳首への責めに遠慮が要らない分、四方さんや茶野さん、紫雲さんの手を借りながらの三所攻め、四所攻めが行われているのだ。

 

 ある瞬間にはその口に四方さんの太いピアスが通った逸物を含み、存分に先汁を味わっている。同時に指ほどにも膨れ上がった朝熊君の両の乳首を、茶野さんと紫雲さんが舐め上げ、噛みつぶす。

 白山さんの右手は、これ以上に無いほどの大きさに成長した朝熊君の亀頭をその分厚い手のひらで責め上げ、左手の三本の指が尻の中をかき回す。

 

「ああーー、白山さん、もう、俺、俺、何度イッたか分かんないっス……。ケツやられて、チンポしゃぶれて、俺のチンポ、もうたまらんっス……」

 

 朝熊君の4度目の射精だろうか。

 息も絶え絶えな、そのなんとも言えないあえぎ声を聞きながら、俺は自分の肉棒の先端から、握られも扱かれもせず、ただ尻穴をいじられているだけで漏れ出る汁の感触を味わっていた。

 

「赤瀬さん、俺も、俺のチンポも、出ちまう、扱かれてもいないのに、汁、出ちまうよ……」

「いいですよ。何度でもイッてください。空打ちになるまで、今日は指だけでやってみましょうか」

「あっ、ああっ、出る……。漏れる、漏れちまう……」

 

 内側から押し出されるようなその吐精に、それなりに出した、との思いもあるのだが、赤瀬さんの指の動きは止まらない。

 柔和な笑顔のまま、俺の尻穴をいじめ抜いてくる。

 イった直後ですら萎えない俺の逸物は、次の射精を待ちわびるようにその頭を揺すり上げる。

 

 

 そして、二週目から行われているこの『広間』に全員が集まっての行為は、俺たち自身の感覚にも、またある『変化』をもたらしてきている。

 

「ああ、豊後さんが見てる! 僕がイくところ、見てくれてるっ!!!!」

「日高君、見てるぞ。君が黄田さんのぶっといチンポ入れられて、リング魔羅でケツ穴を犯されて、毛深い手で扱かれてイくのを、見てるぞ!」

「見てくださいっ、豊後さん、見てくださいっ! 僕がイくところ、見てくださいっ!!!!」

「見てるぞっ、日高君のイくところ、見てるぞっ! ああっ、いいっ! 乳首も、乳首もたまらんっ!!!!」

 

 日高君が尻穴に黄田さんのピアスチンポをねじ込まれ、豊後さんは緑川君の後ろを犯していた。

 その2人が互いに相手の痴態を見ながら、卑猥な言葉を交換する。

 豊後さんの背中から茶野さんが回り込み、その熟した乳首をギリリと摘まみあげる。

 

「大和さんのせんずり、すごいっス! ぶりんぶりん、亀頭揺らして、金玉揺らして、もう、もう、俺もたまらんっス!!」

「おおっ、俺がせんずりかくところ、朝熊君、四方さん見てくれっ! 俺のチンポ、見られてギンギンにおっ勃ってるっ! チンポ見られて、俺、射精するっ!!!!」

 

 俺たち全員に芽生えた、この『見られることによる快感』は、これまで持っていた『いやらしい行為を見ることで感じる快感』を遙かに凌駕したように思う。

 

 自分の痴態を、せんずりを、尺八を、掘られている姿を、掘っている姿を。

 

 そのすべてを周りの男たちの視線に晒し、己もまた、他の男たちのすべての行為を目にしている。

 そこでは、実際にチンポや金玉、尻穴で感じる刺激、肌と肌、体毛と体毛を擦り合わせる刺激とはまったく違う、文字通りの意味で『脳を焼き尽くすような』快楽物質を生じさせていた。

 

 

 この三週目を『盛りの湯』の期間としているのは、絶妙なネーミングだったろう。

 食事と入湯、午前中の風呂掃除や薪割りの時間以外、まさに宿のすべての男たちが『盛り合って』いた。

 それでもそこでは、俺と日高君の乳首には誰の指も唇も触れることが無い。

 俺はこの禁が解かれたときに、いったいどのような快感が俺の身体を貫くのか、ある意味恐怖すら感じるほどの不安と期待を胸に抱いていたのだ。