男性専科クリニック Part 2.5

その10

 

10 三人

 

「先生が言われた最後の最後での、キス。すごかったです……」

「僕も、山崎さんとちゃんとキスしての、初めてだったから……」

 

 互いに照れたような顔で見つめ合う田畑君と私に、野村医師がにいっと笑う。

 

「これまでの治療では口に出した精液を相手の口に流しこむとか、イった後のペニスをしゃぶった後に、残り汁をみんなで味わうための口接はやったかと思うんですが、いわゆる普通のキス、相手の唇と舌を味わうためのキスは、山崎さんは初めてだったと思います。

 射精のコントロール、快感のコントロールとともに、乳首や胸、ペニスや睾丸といった直接の性感帯や性器と違う、どちらかというと精神的な快感を味わってもらいたかったんですよ」

 

「それならもう、大成功だったと思います。正直、あんなに感じたキスは初めてでした。いや、キスだけじゃない。射精の快感も、元気だったときと比べても、とにかく段違いだった……」

 

「これまでの射精を目的とした受動的な刺激と比べ、どうでしたか? なにか違いを感じられましたか?」

 

 野村医師の質問は、学術的な興味からのものでもあるのだろう。

 自分の内面の考察も、治療の目的の一つのはずだと、真剣に自分の頭の中から言葉を拾っていく。

 

「そうですね……。

 これほど我慢し、我慢させられての射精そのものが初めてのことでもあって、とにかくすごかったです。

 田畑君のをいじっては寸止めし、交代してお二人にいじられては止められ、ってのを繰り返したのが確かにためになったんだと思います。

 あの経験で『快感をコントロールする』と先生が仰っていた言葉の意味が、なんとなく分かったような気がして……。

 そう、私がこれまでやってきたセックスや射精は、結局は自分の欲望のおもむくまま、快感を一気に駆け上っていただけだったように思います。

 それが、今回の、今日のセッションで、『互いにコントロールしあう』快楽というものを知ることが出来ました」

 

「私達が今日のセッションで期待していたことを、山崎さんに受け止めてもらえたようで、とても嬉しいです。

 田畑君の方は、初めて私が関わらずに山崎さんと二人で絡んでもらったわけだが、どうだったかな?」

 

「もちろん野村先生との打合せや前回の治療の振り返りでも、山崎さんに対する治療方針と目的は理解していたつもりですけど、自分自身がこれほど能動的に関わらせてもらったのも初めてですし、感動&快感の極地って感じでしたよ。

 山崎さんと年齢は違うけど、快感をコントロールして射精の瞬間を、タイミングを合わせるって、なんだかそこでは、年齢や治療者と患者さんという垣根も、一瞬で無くなった気がしました」

 

「うむ、田畑君にとってもいい経験になったみたいだな……。

 さてさて、お二人さん。

 私は自分でしごいてて、二人の絶頂でこっちもイってはみたが、どうにも消化不良の部分もあるし、二人もまだまだ元気だと思うんだが、そのあたりはどうだろう?」

 

 野村医師がくいっと顎を動かした先には、田畑君と私の逸物が、まだまだイきたりない、これから何度、イかせてくれるのかといなないていた。

 

「え、もちろん後半戦でしょ? 先生、最初から2ラウンドは予定に入れてたくせに」

「私ももちろん、先生ともやりたいです。リングは、たぶんもう外しても萎えないんじゃないかなって感じもしてて……。治療効果がこんなに早く表れてるわけじゃあ無いんだとは思うんですが、気のせいでしょうか?」

 

 不思議なことに、自分の腰奥、金玉の裏側あたりに感じる充実感、充足感が、リングはもう無くても大丈夫だ、臨戦体勢を保てるよと、伝えてきているような気がしていたのだ。

 

「もともと精神的な自信の有り様が、山崎さんの勃起の継続を阻害していた部分と判断していました。

 今回のセッションの課題をきちんと終えられた山崎さんの状態が改善するのは、ある意味当たり前のことなんですよ。

 それでは、ここからはリング外して、生身の快楽を三人で味わい尽くしましょうかね」

「あ、先生! 山崎さんの状態からだと、あと軽く2、3回イかせないと、リングも外せない気がするんですが?」

 

 野村医師のおそらくは治療というものを外れた自らの欲望の吐露と、田畑君の少しおどけたような指摘に一気に場の空気が和んでいく。

 

 西田に誘われ二人によって開花された私の性的関心の方向は、これからどこへ向かっていくのだろうか。

 今日の私は、これから野村医師と田畑君、二人の魅力的な同性の身体に、全身を覆う体毛に覆われた野村医師と、むっちりとした肉感の灼けた肌を持つ田畑君と、その二人の身体に、どれほどの精液を吐き出すことになるのだろうか。

 

 その快楽と快感を想像するだけで、二つのリングを填められたままの私の股間が、再びびくびくとした武者震いを始めるのだった。