カテキョの時間

その2

 

 前回、家庭教師をお願いしている翔太の家に行ってから、数日が過ぎた。

 再び迎えた家庭教師の日。

 4時前に下校した祐也は、自宅のマンションに帰り着くやいなや、学生服を脱ぎ捨てる。

 

「どうするの? 今日は翔太クンとこ、早めに行くの?」

「うーん、行きたいけど、どうしよう? 翔ちゃんとこ、月末だから、おばちゃんもたぶん今日も遅いし」

「道子さん、遅くなるって言ってたし。じゃあまたおかず早めに作っとくから、持っていって翔太クンと一緒に食べる?」

「うん、そうする。ごめんね」

「あんたが謝るこっちゃないわよー。道子さんにはこっちからご飯のこと、連絡しとくから」

「はーい、じゃ、ちょっとシャワー浴びとくー」

「ほい、早く入ってきなさい」

 

 ころころと笑いながら答えているのは、祐也の母親、田野島千春(たのしまちはる)である。

 

 消防署勤務の夫が亡くなった翔太の父親と親しかったことから、翔太の母親、野間道子(のまみちこ)とも姉妹のように付き合いをしており、以前から野間家については家族同様と思っている。

 なにかあったときのためにと、互いの家の鍵を預けあっているほどの付き合いだった。

 元々、祐也の家庭教師として翔太に白羽の矢を立てたのも、女手一つで翔太を育てている野間家の経済状況になんとか手助けが出来ないかと、夫である田野島幸也(たのしまさちや)と話してのことであった。

 

 祐也はさすがにまだそこまで思いを巡らすには若さが邪魔をしていたが、野間道子と翔太の親子にあっては、田野島家の意向を感じとり、感謝の念を持っている。

 

 祐也の父親である田野島幸也が消防署での夜勤体のシフトなどもあり、専業主婦である千春は、祐也と智也、二人の子とともに過ごす時間が長い。反抗期を脱しつつはあっても、中学生の祐也と野間家の翔太が、週に二度、自分達で一定の時間を過ごしてくれることは、千春に取ってもありがたい母子分離の時間でもあったのだ。

 

 翔太の母親である野間道子は、亡き夫が務めていた消防署で共済事務の仕事をしていたが、月末期末には日付が変わるほどの残業となることも多く、あの日も結局帰宅は22時過ぎであったのだ。

 今日もまた、道子の帰宅が遅くなることは翔太より聞いていた祐也であり、千春もまた前回の夕食の手筈の御礼を電話してきた道子から、だいたいのことは聞いていたらしい。

 実際にはこっちで夕食用意しとくわよ、との千春の話に、道子もありがとうと返事をしていたことでもあった。

 

 あの日、祐也と翔太は、本来の家庭教師の時間になされるべき勉強などまったく出来なかった。

 性の発露に一番能動的だと思われる年代の二人に、それを責める言説は無理を通り越してしまうだろう。

 

 親にも、兄弟にも、ましてや学校の連中などにも絶対に言えない秘密。

 それは祐也と翔太が互いの肉体の秘部に手を伸ばし、しごき合い、しゃぶり合ったという、あまりにも「特別な」関係を持ったことであった。

 

 あの日、互いの股間をまさぐる手による射精を果たしたのち、一向に萎えない逸物をなだめるためには、さらに数回の吐精を行うしかなかったのだ。

 部屋中に立ちこめる初夏の香りを、あわてて窓を開けて逃がした二人だった。

 

「翔ちゃん、来たよ!」

 

 早めに行く、との連絡を母から入れてもらい、翔太の家の玄関を叩く祐也。

 こちらから開ける前にガチャリと音を立てたドアの向こうには、やはり軽装となっていた翔太の姿があった。

 

「母ちゃんがご飯一緒に食べろって、また持たせてくれた」

「うん、電話で千春さんが母さんの分もあるからって言ってくれてて。冷蔵庫入れとこうか」

「その、『終わってから』食べるんだ」

「あ、うん、そうしようかなって……」

 

 微妙に言い淀む二人。

 夕方5時過ぎの日差しが、部屋の窓から差し込んでいる。

 翔太の母、道子が戻るのは早くても5時間後の10時過ぎ、ややもすると日付が変わる時間にすらなってしまう。

 

「今日は最初に勉強やっちゃおう」

「うん、俺もそう思ってた」

 

 翔太も祐也も、そこで交わされる会話に「ことが終わってのお楽しみ」が前提になっていることには気付いていない。

 もはや二人にとり「家庭教師の時間」と「互いに快感を求め、肌を寄せ合う時間」が、切り離せないものになってしまっているのだ。

 

「古語の係り結びって奴、全然分かんね」

「うーん、古語で無くていいんだけど、普通の文の活用形って習ったの覚えてる?」

「みぜんれんようしゅうしれんたい、って習ったけど、そっちもよく分かんないよ」

「ああ、そっちからやったが早いかなあ……」

 

 テーブルの2辺に頭を付き合わせるようにして、翔太と祐也が教科書を覗き込んでいる。

 文系が得意な翔太に取っては当たり前の知識であったが、どちらかというと理系が好きな裕也にしてみると、ちんぷんかんぷんな話しだろう。

 

「まずはとにかく、ぞ・なむ・や・か・こそ、この5つを頭に入れる!」

「その呪文みたいなの多すぎ、きーけりつーぬーたりけんたしってのもあるんだろ?」

「祐也だって、ちゃんと覚えてるじゃん。あ、どこが切れ目になるか分かってないのか?」

「……うん、その通り」

「いばって言うこっちゃない!」

 

 漫才のようなやり取りだが、その軽妙さを祐也も翔太も気に入っていた。

 親や同級生が介在しない、年の近いもの同士の「分かり合った」やり取りは、心地よいものだ。

 

「それだったら、元々の活用からやったが分かりやすいと思うんで、そっちからやろうか。たぶんネットに分かりやすい解説あると思うからちょっと待って」

「タブレットいいよなー」

「学校からくれたけど、祐也んとこも秋には来るんだろ?」

「そんな話しだけど、持って帰っていいかはまだ分かんないって」

「祐也んとこのお父さん、携帯とかには厳しいよね」

「高校入ったら持っていいって言われてるけど、周りのみんな持ってるし、なんかちぇって感じ」

「あ、あった! 未然形とか、連用形とか、そのあたりのだよ、これ」

「どんなだったっけ?」

 

 翔太という年上の存在と一緒に何かをやれることだけでも楽しいのか、拒否感も見せずタブレットの画面を覗き込む祐也。

 

「あ、これならなんとなく分かる!」

「未然形とか、否定形とか言った方が分かりやすいのにね。で「ない」を付けたときに変わる奴ね。『分かる』が『分からない』ってなるときの『分から』までの部分が未然形=否定形で覚えるしかない」

「うんうん」

「で、後ろに『ます』が来るときが『分かり』ってなって連用形」

「連用って?」

「用言が後ろにくるときのことだけど、ますます分かんないよね……」

「うん、降参」

「降参するの、ちょっと早すぎる。たとえば『分かる』って言葉に、『にくい』とか、『やすい』を後ろに付けるとどうなる?」

「えっとお『分かりやすい』『分かりにくい』?」

「正解。で、『やすい』とかって、『やすくない』とか形が変わるじゃん。そういうのが『用言』っていって、それが後ろに付くときの形を『連用形』って言ってんの」

「分かったような、分からないような??」

「先に『連体形』の方が分かりやすかったかもなあ……」

 

 おそらく祐也にとり、学校の教師とではこのような会話は成り立っていなかったのだろう。

 古典の前にまずは現代文の文法と進めた翔太の方針は、間違っていなかったようだ。

 

「翔ちゃんの話しって、先生の説明より分かりやすいよ」

「いっぺんに何十人もに説明するわけじゃないからね。僕、文法って割と得意だったし。国語はここまでにしといて、今日は英語もやっとこうか?

「もう頭パンクしそうなんだけど」

「休憩ちょっとしてから、もう一踏ん張りしとこう。ちょっとジュースでも持ってくる」

「あ、俺も手伝うよ」

 

 特に試験前というわけでも無いこの時期、2教科ずつ時間を取ろうというのが教師側の翔太の戦略だった。

 理数系は比較的得意な祐也の成績を考えてのものだったろう。

 2時間ほど、あーでも無いこーでも無いと、家庭教師としての時間が過ぎていく。

 

「お疲れさんでした」

「うん、疲れた。頭使うと、ぐったりになる」

「どうする? 持ってきてくれたご飯、お腹に入れちゃう?」

「その、おばちゃん、遅くなるの?」

「早くても11時ぐらいになりそうってことで、遅くなるなら12時回っちゃうので、寝ててってのは聞いてる」

「そのさあ、先にやっちゃって、後からゆっくりご飯にしない?」

「僕もそう思ってた。千春さんには遅くなるって連絡しとかなくていいの?」

「おばちゃん帰ってくるまでいるかも、って言ってるから大丈夫」

「じゃあ、さ、や、やろうか?」

「う、うん……」

「祐也って、さっきから勃ててただろう?」

「翔ちゃんだって、そうじゃん」

 

 する、やることは前提だった。

 

 よくよく考えれば部活の無くなった祐也と、図書委員の活動だけで比較的放課後の自由のある翔太であれば、特に週2回だけの家庭教師の時間にとらわれる必要も無いのだが、なぜかその日で無ければならないと、二人とも思い込んでしまっている。

 翔太の母親に残業が発生する期間で無くなれば、必然的に会う予定も変わってくるのであろうが、まずは家庭教師の時間の前後で欲望を満たしたいとの思いは一致していた。

 

「俺、来る前にシャワー浴びてきた」

「あ、僕も。その、色々洗っておいたし……」

 

 翔太の含みのある言葉に祐也は気付かない。

 

 家での管理が厳しい祐也と違い、翔太は病気をしていた父に関しての緊急連絡の必要があったこともあり、中学時代からスマホを持たせてもらっていた。

 最初から買ってもらったスマホにはペアレンタルコントロールがかけてあり、直接アダルトなサイトや情報にリーチ出来るわけでは無い。

 それでも画像や過激な言葉がたまたま無いサイトやネット辞典などで、自分が同性を性的対象とするゲイであり、その周辺の知識もかなり習得している。

 すべてのゲイがそうというものでも無いのだろうが、手や口でのそれとは別に、アナルを使ったセックスにも、かなり正確な知識を得ていたのだ。

 

 薬局で浣腸を買うのはまだはばかられているのだが、シャワーを使って「色々と洗う」ことは、すでに経験済みだったのである。

 

「じゃあ、このままでいいかな?」

「うん、翔ちゃんの本、また見せて」

 

 胸と股間を滾らせながら、服を脱ぐ二人。

 170センチと、165センチの伸びやかな肢体が、染み一つ無い滑らかな肌を晒す。

 二人の股間に屹立する若き樹木は、すでにその亀頭はつるりとした粘膜を剥き出しにし、くっきりとした鈴口の切れ目には、蓮の上の朝露のように透明な球体を乗せていた。

 

「すごいよ、これって口でしゃぶられてイってるの?」

「口と手でイく寸前までやって、顔の前で出してるんだよね、きっと」

「顔射って奴だよね」

「うん、でも実際には目に入ったりしたら危ない気がする」

「確かに!」

「うわ、この人、かっこいい!!」

「祐也って、筋肉はっきりしてる人がいいんだ」

「腹筋ばきばきの人って、普通にかっこよくない?」

 

 裸でベッドに腰かけ、雑誌を見ながらの他愛も無い会話。

 だがそこには「性的興奮を伴う」という、日常ではなかなか遭遇しないシチュエーションがあった。

 

「祐也がこういうの見て興奮してくれると、なんだか僕、嬉しいんだ」

「翔ちゃんが興奮してるってのもあるけど、やっぱり普通にエロいじゃん、こういうのって」

「気持ち悪がる人も多いと思うけどなあ……」

「そう? そこらへん、よく分かんないけど。でも、俺、この本見てても、翔ちゃん見てても嫌じゃないし、興奮するよ」

「……祐也、ありがと」

「ありがとうって、翔ちゃんが言うこっちゃないじゃん。俺も気持ちいいんだし」

「ん、そだね」

 

 あくまで祐也は雑誌のグラビアで見る「裸体」に興奮しているのだが、そこには男女にとらわれることのない「性的ないやらしさ」を見て取っているのだろう。一方、翔太にとっては、目の前の祐也の興奮そのものが欲情の対象だった。

 もう何十回見たか分からず、グラビアのページ、小説の内容、その一字一句さえ暗記しているほど熟読しているゲイ雑誌は、翔太にとっての宝物だったのだ。

 そんな翔太に取っても、目の前にある生身の肉体が発する魅力の方が勝っていることに疑いは無い。

 

「祐也……、しゃぶっていい?」

「キスから、したいな。翔ちゃん……」

 

 裸の肉体を絡め合う快感に、興味津々の雄太。

 それでもキスという行為に、まずは興奮するのだろう。

 たくましい祐也の肉体が醸し出す存在感に、性の対象として惹かれている翔太。

 

 二人の思いに微妙なずれはあるのだが、肉体に表れる反応は同じような興奮と滾り。

 若さゆえに互いの欲望は目の前の雄の肉体を、ひたすらに求めあう。

 

 祐也の言葉に翔太が唇を奪うことで応える。

 

「ううっ、むっ、うっ……」

「あっ、翔ちゃん……」

 

 唇の端から唾液が流れ落ちるほどの、激しいキス。

 舌と舌が絡まり合い、互いの吐息を感じる唇と粘膜の感触さえ、快感のやり取りとなる。

 

「あっ……」

「気持ちいいっ……」

 

 互いの手が、互いの勃起へと伸びる。

 握ったペニスは2本とも、同年齢の平均よりは遥かに巨大なものだ。

 翔太のものは先端からの長さで、ゆうに18センチほどはあるのではなかろうか。

 年下とはいえ、祐也のものは、翔太のものよりさらに一回り大きなシルエットを誇っている。

 

 くちゅっ、くちゅっ、くちゅっ。

 逸物を扱きあう手のひらが、絶え間なく流れ出る先走りに卑猥な水音を響かせる。

 

「チンポ気持ちいいっ、翔ちゃんの手っ、気持ちいいよっ!」

「祐也にしごかれると、僕っ、すぐイっちゃいそうになるよっ!」

「翔ちゃんの、飲みたいっ! まだだよっ、まだだよっ!」

 

 前回の行為とグラビアに触発されたのか、祐也がとんでもないことを言い出す。

 それまで具体的な対人との性交体験が無かった二人にとって、「当たり前」の感覚が少しばかり世の中のそれとずれてしまうことは必然だったろう。

 もっとも、何をもってして「当たり前」の行為と判断するかは、おそらくは二人が年齢を重ねていったにしても、難しい答えとなるのだろうが。

 

 腰かけたまま身体を捻り、互いの逸物を扱きあっていた二人がベッドに倒れ込む。

 相手の股間を目標に、身体をずらす。

 69の体制だ。

 

「すごい、祐也の、ビンビンだ……」

「翔ちゃんのも、デカいよ……」

 

 目の前にそびえる巨大なペニスから視線が外せない二人。

 その屹立は、手で触れられるだけで仰け反りそうな快感が脊髄を駆け上り、玉を揉み上げられれば身を捩りたくなるほどの痛気持ちよさが全身を貫く。

 

「しゃぶるよ」

 

 翔太の声に、祐也も意を決し、互いの亀頭が口中にと含まれた。

 

「んぐっ、ひぐうっ、ううんうう……」

「んごっ、がっ、ふっうあっ……」

 

 ぐちゅぐちゅと唾液を溜め込んだ口の中でやみくもに蠢く舌が、思いもかけぬ刺激を生む。実地の経験はほとんど無かった二人のテクニックは、互いに刺激し合うことで急速に上達していく。

 

 ぐちゅっ、ぐちゅっ、ちゅば、ちゅば……。

 ちゅばっ、ちゅばっ、ずちゃ、ずちゃ……。

 

 翔太の口から、淫猥な水音が聞こえる。

 わざと唾液を溜め込んだ口で、意図的にしゃぶり上げる音を響かせているのだ。

 祐也に耳からのエロさを感じてほしい。そう考えた翔太なりの工夫だった。

 

「翔ちゃんが俺のしゃぶってるの、すげえやらしい音がしてる……」

「ぐちゃぐちゃっていうの、エロいだろ?」

「俺も、負けないから!」

 

 年齢、体格に比して巨大な二本の肉棒が、唾液と先走りの混じり合った液体でじゅぷじゅぷとしごかれ、先端のプラムは真っ赤に熟したかのようにその粘膜を光らせる。舌と口蓋の間で、ずっしりとした重みを持つ亀頭がその全周を刺激されていく。

 竿の根元へと引き上がろうとする睾丸をぐりぐりと引き下ろす手の動きは、軽い痛みをともなった快感を生み出していく。

 

「チンチン気持ちいいっ……」

「祐也の、すげえおいしいよ……」

「翔ちゃんのも、我慢汁がしょっぱくて、美味しい」

「我慢汁って、知ってるんだ」

「先走りとかも言うんでしょ?」

 

 どこで知ったのか、いや、今どきの若者であれば当然の知識なのか、ゲイ雑誌でよく見かける言葉が口をついて出てくることに、翔太も内心驚いていた。

 互いに負けまいと、相手をもっと喜ばせたい、感じさせたいと、競うようにして舐めしゃぶり、玉を責め合う二人。

 

「ああっ、いいっ、俺っ、翔ちゃんにしゃぶられてるっ! いいっ、気持ちいいっ!」

「僕のもっ、あっ、あっ、祐也っ! そこいいっ、先っぽっ、いいよっ!」

 

 あまりの快感に、互いの先端から口を外し、よがり声が上げる。

 仰け反りそうになる肉体を引き寄せながら、尻を、脇腹を撫で回す。

 

「それも気持ちいいっ! 翔ちゃんっ、もっと触って!」

「祐也もっ、祐也の手も気持ちいいよっ!」

 

 下になった祐也の身体に身を預けていた翔太が、互いが横抱きになるようにと二人の身体の向きを変える。

 上下では射精するときの体勢としてはやりにくい、との判断だったのだろうか。

 

「このまま口でやってイく? どうする、祐也?」

「うん! 俺、イきたい。翔ちゃんの口で、イきたい」

 

 唾液を溜め込み、ぐちゅぐちゅとねぶられる亀頭。

 巨大さゆえに肉竿まで呑み込むことは不可能ゆえに、その扱き上げは互いの手によってなされ、根元から雁首までが激しく上下運動の刺激にさらされる。

 

「ああっ、気持ちいいっ! こんなされたら、イっちゃうよっ、翔ちゃんっ、俺、イっちゃうよっ!」

「祐也っ、一緒にイこうっ! イくとき言ってっ! 一緒にっ、一緒にイこうっ!」

 

 二人のボルテージが一致する。

 性感の頂点が一致する。

 

「イくっ、祐也っ! 飲んでっ、僕の飲んでっ!」

「翔ちゃんもっ、翔ちゃんも俺のっ、俺のをっ!!」

 

 手の動きは止めず、慌てて相手の逸物を口にする二人。

 絶頂は、ほぼ同時にやってきた。

 

「んんんーーーー、んっ、んっ、んっ、んっ……」

「んっ、んんっ、ううんっ!」

 

 喉奥にぶつかる、火傷するかのような熱さを持った、大量の粘液。

 一瞬にして口の中に広がる、苦みと生臭さ。

 それを気にする間も無く、次々と打ち付けられる迸る樹液を呑み込まざるを得ないのは、咽せ返りを防ごうとする人間の本能だ。

 喉奥に粘つくねっとりとした液体が、ゆっくりと食道を下り胃の腑へと納められていく。

 その何とも言えない感覚を堪能する二人。

 

「んあっ、イってすぐはっ、祐也っ……」

「翔ちゃんも、すごい、まだ出るっ、どんどん出てくるっ……」

 

 口蓋を直撃し、その熱さが鼻に抜けるほどの、幾度もの噴き上げはようやくおさまってきていたが、それでもまだびくびくと震える亀頭からは、どっぷりとした白濁液が二人の舌の上に溜まっていった。

 

「へへ、初めて飲んだけど、精液って、変な味だよね、翔ちゃん」

「祐也のもすごい量だったけど……。あ、まだ出てる!」

「翔ちゃんのも、まだ、どくどくいってる……」

「あっ、ダメっ、祐也っ! もう、舐めちゃダメっ!!!」

 

 大半の量を飲み込んでしまった二人ではあったが、喉への直撃を免れた後半の噴き上げについては、どこか思うところがあるのか、二人ともそれなりの量を口中に溜め込んでいく。

 溢れるほど、しゃべれないほどの量では無いのだが、それでもその匂いは強烈に鼻を抜け、独特の臭気を部屋へと広げていった。

 

 射精後の余韻を味わい尽くした二人が、ベッドの上に身体を起こす。

 口中にはまだまだ大量の雄汁が唾液と混ぜられている。

 口を閉じたまま見つめ合う二人の間に、まさに「暗黙の了解」が交わされていた。