金精様の秋祭り

その3

 

「あっ、信治さん、イくっ、イくっ」
 信治さんの後頭部と肩に回した手で支えているとはいえ、立ったままの姿勢での発射特有の、膝ががくがくとけいれんする快感が全身を襲う。
 3度4度としゃくり上げる動きにもむせ返ることもなく、信治さんは俺の発射を一滴も漏らさず口中へと受け止めた。最期にねっとりとざらついた舌で亀頭を舐めあげて俺の肉棒を外に出すと、足下の朱盃へ俺の精汁をねっとりとはきだした。

 

 俺の腰を抱いたままの信治さんが俺の顔を見上げると、「よくがんばったな」という声にならない思いが伝わってくる。俺自身、年が近いせいで何でも話ができる兄貴分としての信治さんの男らしい顔が、一瞬涙腺からの分泌物で曇ってしまうような感動をおぼえていた。

 

 ミガキの最後の男である俺への奉仕を済ませた信治さんは、膝立ちの姿勢からゆっくりと立ち上がった。猫掻きの荒縄に擦りつけられた膝には薄く血が滲んでいたが、それも気にもせずに男達の前へと進み出る。
 一時間近くかかったミガキの儀式にもかかわらず、信治さんの肉棒は反り返ったまま、働き盛りの肉体に似合ったふてぶてしさで、皆を見下ろしていた。

 

 山あいの日暮れは早い。薄闇が下り始めた白沢さんの広場に赤々と燃える大焚き火の影が、信治さんの逞しい裸身をなまめかしく彩っている。

 

 ミガキの神事が一巡し、男揺すりの事前準備も一段階が終わった。男揺すりの儀式でトコロテンで発射するためには信治さんの興奮を極限まで高めておかねばならない。これまでのミガキ神事で昂ぶっているとはいえ、未だ誰の手も触れていない信治さんの肉棒からは先走りの露が光るだけで、まだまだ余裕のかまえを見せていた。

 

 男達の精汁を潤滑油とするための準備がミガキ神事であったが、信治さんの負担を軽くするためにはもう一つの儀式が必要なのであった。続いての儀式では青年団の男達が、今度は信治さんの勃起を口にし、発射寸前まで導くのだ。
 もちろん絶頂に達することは許されるはずもなく、そのための準備として若衆宿の井戸より汲んできた冷水が桶に用意される。これから童男である信治さんは7人の男達の奉仕を受け、己が高まりを最高の地点にまで持っていかねばならないのだ。ミガキ神事とは逆に一番年若い俺が最初に前に進み出た。

 

 俺は両足をぐっと開き仁王立ちになった信治さんの前に膝を下ろす。張り出した尻に手を回すと、目の前の勃起がふてぶてしく顔面に迫る。漆黒の茂みからたちのぼる慣れ親しんだ匂いを一息吸い込み、目をつぶって信治さんをずるりと舐めあげた。

 

「うっ」
 最初に一声もらした信治さんは俺の攻撃に腰を動かして答えてきた。ミガキ神事で味あわせてもらった快感を倍にして返そうと、俺は持てる限りのテクニックを使った。

 

 裏筋に沿って舌を這わせ、口蓋に亀頭を擦り付ける。右手のひらでふぐりをやわやわと揉みほぐしながら、中指は奥の秘口をゆるゆるとなでまわす。左手は堅く這った尻肉を、爪立てた指先で下から上へとなぜ上げる。たっぷりと含んだ唾液を幹全体にまぶし、唇で何度も扱きあげる。
 信治さんは俺の後頭部に手を回し、切なさそうに鼻をならす。くぐもった声が一層の男らしさを感じさせ、俺自身の興奮も否応なしに昂まっていく。

 

「ああっ、こんままだとイくっ、イクけんっ」
 あとほんの一擦りでというその瞬間、信治さんの両手が俺の頭を股間から勢い良く引き剥がした。すかさず、良さんが柄杓に汲んだ冷水に信治さんの勃起を浸す。
 水の冷たさが、信治さんの高ぶりをほんの少し引き戻し、次の男の奉仕に耐えうる力を溜めさせていくのだった。

 

 俺は信治さんの前にゆっくりと立ち上がると、次の男へと場所をゆずった。7人の男によって繰り返される射精寸前までの嬲りと冷水による刺激は、信治さんの興奮を高め、祭りのクライマックスに向けての男達の高ぶりをも増していくのだった。
 次から次に襲い来る快感と冷水による刺激で、信治さんのふぐりには雄汁が溢れんばかりに溜まっていく。7人目の良さんの嬲りでは、爪先立ちになって快感を堪え、赤銅色に膨れ上がった亀頭が冷水に浸されるとがくがくと全身を震わせるほどであったのだ。

 

 一ヶ月間の禁欲とイかず勃起の切なさに今にも噴き上がらんばかりの信治さんの肉棒は、男達の舌技でさんざんに嬲りぬかれ、まさにあと一擦りでというところまで昂ぶっていた。

 

 7人の奉仕を受けきった信治さんは、金精様の鎮座した台座に一礼をした。

 

 良さんがミガキ神事で集められた男達の汁が入った朱盃を掲げる。良さんは指先でどろりとした汁をかき混ぜると、信治さんの尻穴にねっとりとした汁をなすりつける。一ヶ月の禁欲のあとにくじられる尻穴が信治さんの興奮を一層高める。
 信治さんの後口が十分に潤ったのを確認した信治さんは、台座の上の金精様に残りの汁を垂らした。
 あたりに栗の花のきつい匂いが広がり、否応なしに皆の欲望に火をつける。扱くように男達の汁でぬめりをつけられた金精様は、焚き火の炎に妖しく揺れる光を返していた。

 

 飾りを外した台座の上に立ち上がった信治さんが、皆の前に勃起を見せつけるように突き出し、ゆっくりと腰を下ろした。後ろ手に金精様をさぐり慎重にねらいを定める。男揺すりの儀式では、この台座からぬっと突き出した金精様の上に腰を下ろすのだ。座ったとたんに漏らしてしまう者もいるとのことだったが、信治さんはうめき声は洩らしたものの、何とかおさめることが出来たらしかった。


 しゃがみこんだ足を台座の端から下ろし信治さんは苦しげな顔を見せながらも、ぐいと股を開き、股間を男達に見せつける。見事に勃ちあがった肉棒は、後庭の刺激のせいか鈴口から大量の先走りを糸のように滴らせて、びくびくと切なげに揺れ動いている。

 

 信治さんが後ろ手に台座の紐をしっかりと掴むと、いよいよ秋祭りの最後の儀式、「男揺すり」が始まるのだ。

 


男揺すり

 

 毎年毎年、幾人もの逞しい男達を泣かせてきた男ゆすりの儀式は、村の青壮年の男達の手によって行なわれる。童男である信治さんの世話や祭の準備は青年団の連中が取り仕切るが、さすがに1屯近くもある山車を揺らすには多くの人手が要るのだった。

 

 台座に金精様によって固定された形に座っている信治さんの肉体を、山車の前後に10人ずつほどの男達が曳き綱を持って集まり、かけ声とともに山車全体を前後に大きく揺らすのである。担ぎ棒の長さが6メートルほどもある山車が男達の力で大きく揺すられれば、しっかりとつかまっているとはいえ台座の上の童男の肉体も、大きく前後に揺すられることになる。
 当然、後ろに突き入れられた金精様は男の肉体をぐりぐりと突き上げ、その途方も無い刺激に肉棒は擦られることもせずに男の汁を噴き上げてしまうのだ。

 

「そーいや、そいやっ」
 男達のかけ声にあわせて山車は大きく前後に揺さぶられる。かけ声に合わせて大きく揺れる山車は前をぐっと下げた形で止められる。

 

「あっ、あっ、いいっ、いいっ」
 このとき信治さんは台座から転げ落ちないように自分の肉体をぐっと後ろにそらす。その度に、尻穴に収まった金精様が男の敏感な箇所をぐりぐりとえぐりあげる。

 

 山車の揺れ方は童男を傷つけぬように、反動を押さえて男達の手でコントロールされている。それでも信治さんにとっては自分の肉体の重みが尻穴で支えられるこの一瞬が、とてつもないほどの快感を呼び起こすのだ。
 ゆっくりと、しかし何度も山車が揺さぶられる。一揺れ毎に信治さんは声を上げ、己の意識を股間へと集中させていった。

 

「そーいや、そいやっ。そーいや、そいやっ」
 8度目の揺さぶりのときだった。ここまで耐えに耐え抜いてきた信治さんに最後の瞬間が訪れたのだ。

 

「ああっ、イくっ、イくっ」
 その瞬間、前綱を引く男達の頭上に、白い虹がかかった。
 肉棒から放たれた雄汁は男達を濡らし、信治さんのけいれんしたような動きに合わせ、何度も噴き上げるのだった。

 

 男達のどよめきが、山あいにこだまする。
 次々に務めを果たした童男へ賛美の声をあげながら、男達がぐったりとなった信治さんを台座から下ろす。
 金精様によって手も触れずに射精へと昇りつめた信治さんの顔は、童男としての最大の務めをやりあげどこか誇らしげにすら感じた。

 

 この童男の吐精で全ての神事が終了する。金精様を勧請するための童男は撤餞(てっせん)として下げられ、ケの祭りとしての宴である「白入れ」が始まるのだった。
 ここから先は男同士の交わりを楽しみとする、この村特有の肉宴へと変わるのだ。

 

 今年は初めて参加する俺もが、肉宴の主賓へと祭り上げられた。

 

 神事としてのミガキや男揺すりと違い、直会(なおらい)としての行為が、祭りに参加したすべての男達によって行われるのだ。神に捧げられた童男を撤餞としてその肉体と一つになることで、男達もまた清められる。
 その男達に俺の毛深い尻を犯してもらうことで、俺もまた清められた村の成員として認めてもらえるのだった。


 信治さんは一ヶ月の禁欲地獄からうってかわって、今度は男の汁を出し尽くすまで搾りとられるのだという。金精様の突き上げで見事トコロテンを果たした肉棒を、30人の男達全員が扱き上げるのだ。さすがに実際には、雄汁は15人ほどで打ち止めになると言う。それでも儀式として全員が射精するまで扱かれ続けるのだ。

 

 30人の男達に尻穴を犯されつつ、肉棒は出すものが無くなっても休む間もなく扱かれ続ける。尻穴を擦り上げる男達の肉棒と、汁をまぶした手と口で念入りに嬲られる肉棒は、一時たりとも萎えることは許されない。
 ふぐりが空になるほど出し尽くしても、肉棒を嬲る手が止まることはないのだ。

 

 俺と信治さんは、30人の男達の前に膝を付き、尻を突き出すように高く掲げる。秋祭りの夜は、これからが本番なのかもしれなかった。



付記

いくつかの用語について

●「童男」神が降りる対象として選定される。本来は童貞、処女より選ばれる。

●「猫掻き」ねこぼく、ねこぶく。縄で編んだむしろ。今でも農家等では実用にされる。

●「直会」神事が終わった後の酒宴。「なおらい」

●「撤餞」神に捧げられた御神酒、神餞のおさがり。直会で食される。「てっせん」

以上