男性専科クリニック Part 7

その4

 

拡大セラピー 西田と村岡

 

「あっ、そこやっ、そこっ! 西田さんの指が、指が当たっとる!」

「ここがいいんですか、村岡さん? すごくぽっこり、前立腺が盛り上がってきてる……」

「いいっ、気持ちいいっ! もっと、もっとえぐってくれっ、西田さんやっ!」

 

 仰向けになり足を抱えた村岡の尻は、すでに西田の3本の指を受け入れている。

 人差し指と中指で軽く強く圧迫する西田は、的確に村岡の急所を捉えているようだ。

 

「どうです? 指よりもっと太いのを挿れてほしいんじゃないですか、村岡さん?」

「ああ、そんなに焦らさないでくれ、西田さん。儂、そうされるともうたまらんのですわ……」

 

 指を抜いた西田が、ぐいと村岡の腰を持ち上げる。

 ぱっくりと開いた村岡のアナルが上向きになり、今か今かと西田の逸物を待ち構えていた。

 

「すごいですね、先生。西田さん、煽り方も腰の扱い方も、男が初めてとは思えないですよ」

「ああ、西田さんも山崎さんも、私達の指示なしで自然に挿入まで行けそうだからな」

 

 セラピーが始まる前の時点においては、野村医師と田畑看護師は山崎にしろ西田にしろ、実際にその逸物の肛門挿入までについては物理的な手助けが必要かと判断していたのだ。

 それはやはり未経験である『男の尻に自分のペニスを挿入する』という、様々な心理的障壁の高い行為を提示した側として、当然の予測であった。

 もちろんこの間の2人へのセラピーでは、その障壁を上手く乗り越えるための様々な取り組みを行ってきてはいたのだが、実践にあたってはやはり心理的な負荷が大きいかと考えていたのである。

 にも関わらず、山崎も、今、目の前で村岡の尻を狙っている西田にしても、医療者としてのスーパービジョンをほぼ必要とせずに、ことに至ることが出来ているのであった。

 

「へへ、田畑君が褒めてくれましたよ。俺、こんな感じですけど、大丈夫ですか、村岡さん?」

「すげえ感じますよ、西田さん。もう少し荒く扱ってくれても、そういうのも感じるんですわ、儂……」

「オッケーです。じゃ、挿れますね、村岡さん……」

 

 西田のガチガチに硬く嘶く逸物の先端が、村岡の窄まりの周りをぬるぬると撫で回る。

 一気の貫きを予想していた村岡は、当てが外れたようだ。

 

「あっ、あっ、西田さん……。それも気持ちいいんじゃが……」

「いいんだがって、なんですか?」

「いや、その、そのまま、ほら、ぐいっと……」

「ぐいっと……。何をです?」

「焦らさんでくれ、西田さん……」

「先生達がいつも言われてるじゃないですか。はっきり口に出してくれないと分かんないですよ、村岡さん」

 

 まさに『焦らして、煽る』西田であった。

 村岡の狼狽を面白そうに見つめるのは、胡座をかいた山崎の後ろからその両乳首をさわさわといじっている宮内である。

 田畑看護師に促され、シャワーで局部だけをさっと洗い流してきた山崎と宮内の2人。

 

「西田さん、ああいうのも得意なんですね」

「いや、その、あんな感じは私も初めて見ます。なんかすごくいやらしいですよね」

 

 山崎にしてみれば西田の新しい面を見た形であった。

 山崎自身もあの温泉旅行で田畑看護師相手に少しばかり荒い口調の真似事をしたこともあるのだが、それとはまた違うレベルの西田の焦らし方だ。

 

「こりゃ、僕たちの方が習わないといけないですね、先生」

「んん、田畑君? 君も興奮してるときは、けっこうあんな感じになってることがあるんだぞ」

「ええっ、そうなんですか?! 自分じゃ気が付いてなかったです……」

 

 人の振り見て我が振り直せ、とはこのことであったのか。

 いや、互いに昂ぶらせるため、悦楽を求めての行為と思えば、直す必要も無いことなのではあるが。

 

「ああっ、たまらんっ! 西田さんっ、あんたのチンポをっ、その固いのをっ、儂の尻に挿れてくれっ! 儂の肛門に、突っ込んでくれっ!」

「よく言えましたね、村岡さん。了解了解。じゃ、挿れますよ、村岡さん!」

 

 村岡の言葉を待っていたかのように、ずいと突き出される西田の男根が、一発で村岡の尻肉をえぐる。

 

「あっ、ああああっ! すごいっ、すごいっ、西田さんっ、すごいっ!!」

「動かしますよ、村岡さん。根を上げんでくださいね」

 

 いったん最奥まで入れ込んだ西田が、ぐっと雁の手前までを引き抜く。

 

「ふあっ?!」

 

 そのまま腰を止め、村岡の反応を待つ。

 

「あっ、あっ、そ、そんなっ……。西田さん、西田さん、挿れてっ、挿れてくれっ……」

「待ち遠しいんですか?」

「疼くんじゃ……。ああ、そこで止められたら、疼くんじゃ……」

 

 にやりと西田が笑う。

 相手が『男』、『同性』であるというのは確かに初めてのことではあったが、性的な経験そのものが豊富な西田にとっては、ある意味『相手が誰でも』よかった、ということもあったのやもしれぬ。

 

「では」

 

 ずいと進める大腰に、村岡の尻がえぐられていく。

 

「ああああーーーーー、ゆっくりっ、ゆっくり、西田さんのが、は、挿入ってくる……。奥まで、奥までくれっ、あんたのその固いのをっ、奥までくれっ……」

「最後まで挿れたら……、ほら、またゆっくり抜きますよ……」

「焦らさんでくれっ、そ、そんなっ、焦らさんで、あっ、ああっ、あっ、あっ……」

 

 ゆっくりと、いや、アリやナメクジのようのじっとりとしたまでの速度で出し入れを繰り返す西田。

 彼の言う『根を上げないで』というのは、その場にいる誰しもが『激しい抽挿』を意識したのであったが、どうやらその認識は誤っていたようだ。

 

「すごい……。西田さん、ああいうテクを持ってる人だったとは……」

「ああ、田畑君。見てるこっちが堪らなくなるな……」

「ええ先生、こればかりは手と口中心のこれまでのセラピーでは、ぜんぜん分かりませんでしたよね」

 

 野村医師の毛深く豊満な腹を撫で、そのぽっちりとした乳首をしゃぶっている田畑看護師。

 胡座をかいた医師の股間では、びくびくと上下に揺れる逸物が先走りを大量に流しながらいなないている。

 

「宮内さんも村岡さんとあんな感じなんですか? ゆっくり、っていうの、すごくいやらしいですよね……」

「いや、私はどちらかというと挿れちゃったらガンガン行っちゃう方なので……。ああいうのはあまりやってないです……。ああ、昭一のよがり様がすごい……」

 

 山崎の質問には、西田に対しての驚きと同時にゲイとしてのカップルである宮内と村岡の性生活への興味もあるようだ。

 

「見てるだけでも先走りが出ちゃいますよね……。その、聞いちゃ悪いのかもですが、その、こういうのって、その、『嫉妬』とかされないんですか? お2人は付き合ってると聞いているので……」

「ああ、そうですよね。私達はそういう点ではホモの中でも珍しいかと思いますが、嫉妬というより、こういうときには『あいつ、楽しみやがって俺にも分けてくれよ』と思うタイプです。一緒になって、もっと楽しめればいいな、って感じですかね」

「なんだかすごいですね、そういうの……」

「セラピーに入る前に話しましたが、山崎さんや西田さん、野村先生や田畑看護師さんもそんな感じでしょう?」

 

 宮内はベッドの上で両足を投げ出して座り、山崎を背中から抱きかかえながらその乳首と逸物をいじっている。

 山崎もまた宮内から肩越しのキスを受けながら、後ろ手に回した指先は宮内の勃ち上がった逸物をぬらぬらと責めているのだ。

 互いにイくほどでは無い、緩くも心地よい刺激をし合う2人。

 

「言われるとそうなんですが、『付き合ってる』とはそのあたりがまた違う気がしてまして」

「仰ると確かにその通りですよね。まあ、『付き合い』にも色んな形があるのだと知ってもらえれば。私も昭一も、お2人や先生方に逢えて、すごく嬉しいし、こういうの、楽しいんですよ」

「なんかそういうの言われると、ホントに面はゆいですねえ……」

 

 まるでゲイバーで隣同士になった中年の男同士の会話のようではあったが、これが全裸で互いに身を寄せ合いながらのものであれば、社交辞令の入り込む隙間は無いようである。

 

 西田と村岡に目を移せば、先程までよりは幾分か西田の腰の動きが速くなってきているようだった。

 

「あっ、あっ、当たるっ……。西田さんのがっ、儂のいいとこにっ、当たる、当たる……」

「ここがいいんですね、ああ、突き甲斐がある。村岡さんの尻、柔くて熱くて、すごく気持ちいいです」

 

 先程までのゆっくりとした突き入れに比べれば、幾分か浅い出し入れとその先端の上向き加減に変化を持たせているようだ。

 垂直に近かった肉棒と尻穴の位置関係が、少しずつ変化していた。

 

「そこっ、そこっ、もっと、もっと! 西田さんっ、もっと、もっと突いてくれっ!」

「おおおおっ、いいっ、村岡さんのケツがっ、いいっ、いいぞっ!!」

「あっ、あっ、あっ、あっ、ああああっ、ああっ、ああああああああーーーーーー!!」

 

 逸物の出し入れの度、短く上がっていた村岡の声が、だんだんと長音へと変化していく。

 

「ああ、昭一の奴、あれだともしかして、トコロテンでイっちゃうかもしれない……」

「もしかして、扱かなくても出てしまうって、あれですか?」

「そうですよ、山崎さん。あいつも色んなのを受け慣れてはいるけど、初めての人でトコロテン出来るってのは、相当相性がいいんだと思います」

「聞いてるだけで、たまらなくなってきます、宮内さん……」

 

 後ろを振り向きながらキスをねだる山崎。

 宮内とのそれは舌を絡ませた濃厚なものだ。

 

「あっ、あっ、儂っ、このままイきそうっ……。西田さんにやられてっ、トコロテンでイきそうっ……」

「いいですよ、村岡さん。ほら、ほら、ほら、ほらっ! ここでしょう? ここがいいんでしょう?」

「ああっ、ああああっ、あっ、あっ、ダメだっ、西田さんっ。漏れるっ、儂っ、儂っ、そんなんやられたら、漏れちまいますっ……」

 

 初めての同性との肛門性交となる西田。

 初めての相手との肛門性交となった村岡。

 

 丁寧に前立腺を刺激することを学んだ西田と、長年ウケとして宮内はじめ多くの男との経験豊富な村岡のコンビが、初めての性交でのトコロテンという、ゲイ同士のセックスにおいてもなかなかに為し得ない結果を出そうとしていた。

 

「いいですか、西田さん? このままだと、ああっ、ホントに、あっ、あっ、そこっ、そこやられるとっ、嘘だっ、うあああっ、あっ、ああああっ、あああっ、ああっ……」

「扱かずにイけますか? イってほしいです、村岡さん。ほら、ほら、あっ、締まるっ! 村岡さんのケツが締まるっ!」

「ああっ、出ますっ、出ますっ、西田さんっ。ダメだっ、ああっ、漏れるっ、漏れるっ、うああああっ、出るっ。出るっ……!」

 

 勢いのある射精では無かった。

 

 びくびくと震える村岡の太短い逸物。

 膨らんだ亀頭の先端がぱっくりと割れ、鈴口から大量の汁が撒き散らされる。

 西田の腰の動きがそのまま伝わる村岡の下腹部は大海に漕ぎ出した小舟のように激しく揺れ、その強烈な匂いを放つ白濁液を広範囲に飛び散らせていく。

 

「すごい、昭一が初めての人なのに、トコロテンでイった……」

「めずらしいことなんですか?」

「当て掘りは、慣れないとなかなかで……」

「西田の腰使い、すごかったですもんね……」

 

 先走りでシーツを濡らしながらの宮内と山崎のやり取りを尻目に、西田が己の腰の前後運動を加速する。

 本人もこのまま、中イき、中出しをやりたいようだ。

 

「締まるっ、村岡さんのケツが締まるっ! いいですか、村岡さんっ! 村岡さんの中にっ、中でイっていいですか?」

「出して、出してくださいっ、西田さんっ! 西田さんの子種っ、たっぷり欲しいっ!!」

 

 ばすばすと派手な音を立て、村岡の腰を打ち付ける西田。

 半拍子ずれたふぐりと尻肉の立てる音が、妙に卑猥に響く。

 

「西田のケツが、すごい……。あいつの尻の動きが、あんなにいやらしいなんて……」

 

 このクリニックでの時間をともにするようになって1年近くが経ってはいたが、山崎にしても西田の本気の腰使いをその目にしたのは初めてのことだったのだ。

 

「イきますっ、俺っ、村岡さんの尻にイくっ! ああっ、イくっ、中にっ、村岡さんの中にっ、出しますよ! ああっ、出るっ、村岡さんのケツにっ、俺っ、俺っ、イくっ、イくっ、イくぅっーーーーーーー!!!」

 

 雄叫び、だった。

 ものすごい早さで打ち付けられていた西田の腰が、最奥部まで貫いたままの姿勢で村岡の尻肉に押し付けられている。

 西田の尻肉から腰、背中にかけ、筋肉の上に脂肪が乗ったがっしりとした体幹が、びくびくと痙攣する。

 その一つ一つの動きがまさに吐精の脈動と連動していることは、男であればみなが共感出来ることであったろう。

 

「ああっ、先生っ、今、チンポいじんないでくださいっ! 見てるだけでイっちゃいそうなんですっ!」

「我慢しなさい、田畑君。先走りならどれだけ出してもいいから」

 

 目の前で行われた雄交尾は、一番若い田畑看護師には強烈な刺激となっていた。

 無論、中年の男たちにとっても他人の交わりとまじまじとこの距離で見ることなど、なかなか無いことである。

 発展場に通う、若いときには3Pなど複数の経験のある宮内であっても、煌々とした照明の下で自らの相方の掘られる様を目にするなどということは、その人生でもほんのわずかなことであったのだ。

 

 山崎、宮内のときと同じように、西田もまた汗まみれの上半身をどさりと村岡の豊満な身体へと倒れ込ませる。

 何度もキスをしながら、村岡の腹と胸に飛び散った雄汁を手にすくい、2人の口でねぶり合う。

 その光景を見る4人の男たちもまた、吐精寸前の昂ぶりを感じながら、それぞれペアを組んでいる相手との濃厚な口接を楽しんでいた。

 

「よかった、村岡さん……。俺のちんぽで、トコロテンでしたっけ? 扱かずにイってくれるなんて、すげえ感動ですよ……」

「西田さんのがすごく上手く当たって、もうダメだったんですわ。いや、ダメというと失礼ですな。すごくよかった、と言わなきゃならん」

「初めてが村岡さんでよかった……。って、こんなこと言うと、宮内さんに怒られますかね?」

「なんの、あやつも絶対、一緒にやりたかったって言うてくれますわ。なあ、寛、そうやろう?」

 

 こんなときに、と思いながらも宮内が村岡の言葉に返事する。

 

「ああ、昭一の言う通りだけど、こっちはこっちで山崎さんのをずっといじらせてもらってて、すげえよかったんだぞ」

 

 それぞれが大きなベッドの上で絡み合いながら、それなりに心地よいひとときを過ごしたようであった。

 

「いやあ、山崎さんも西田さんも、相手をしていただいた宮内さん村岡さんも、お疲れ様でした。

 山崎さんと西田さんの、同性のアナルに挿入し、その刺激で射精するという初めての経験を、皆さんの協力で上手く取り組めたことだと思います。

 最初に山崎さん、どんな感じでしたか?」

 

 シャワーを終えた西田と宮内。

 再び揃った6人の男たちは車座になって、広いベッドに座っていた。

 

「ああ、はい……。正直、尻に入れる、出すところに入れるというので、本番がどう自分が感じるかが不安だったんですが、宮内さんのおかげで全然スムーズにやれて、まずはそこでほっと安心しました。

 そうなると今度は締め付けの凄さと中の気持ち良さがものすごくて、なんだかあっと言う間にイってしまって……。宮内さんから気にしないで、と言われたのもありがたかったですが、その、次回はもっと、その尻の『中』の感触を楽しみたいな、とか思っちゃいましたね」

 

 このクリニックに通い始める前の山崎ではとても言えない台詞であったろう。

 幾度もの治療やセラピーの中で『自らの快感を言葉に出し、正直に相手に伝える』ことを学んできた成果であった。

 そしてそのことは山崎自身も気付かぬうちに、家族への言葉かけや職場での議論のやり方へも影響を与えてきている。

 

「ありがとうございます、山崎さん。次回はもっとずっと、楽しめるようになるはずですよ。

 では、ウケに回ってもらった宮内さんはいかがでしたか?」

 

「やはりこれまでのセラピーで先生方に言われていた『ノンケさんに手ほどきする』という感覚がものすごく快感に繋がったかと思います。

 私や昭一みたいに何十年もホモをやってると、ノンケさんと接すること自体が仕事以外ではまず無くなっていきますしね。

 正直、いつもはウケをやってももう少し保つんですが、今日はもう、ホントに感じてしまってあっと言う間にイってしまいました。

 もちろん皆さんに見られながら、というのも興奮に繋がったんだと思います」

 

 カルテに記録を残すためか、田畑看護師はA4のバインダーにカリカリとボールペンで記入をしている。

 

「宮村さん、ありがとうございました。

 ではパートナーであられる村岡さんは、山崎さんとアナルセックスをする宮村さんを見て、また御自身も西田さんとのセックスを通して、どのような気持ちになられましたか?」

 

 村岡がちらりと宮内の顔を覗ったのは、互いの満足した顔を確認するためか。

 

「あー、儂と寛はまあ週末は一緒に過ごしとりますが、他の日はそれぞれ勝手に動いとりますから。

 儂の方はホモ向けの色気のあるマッサージ行ったり、寛の方はなんかスマホで相手見つけたり、淫乱サウナとかですな。

 それもどこそこ行ったとか誰と会ったかとかも、別に言ったり言わなかったりで」

 

 このあたりは村岡なりにノンケの(元ノンケ、が正確であろうが)山崎と西田に気を遣った答えだろう。

 

「そんなワケでして、寛の奴がさっき山崎さんとヤるのを見てても、特に嫉妬とかは思わんのですわ。

 それより『寛の奴、あんなやらしい声出すんじゃな』とか『今度の土日はどう責めてやろうか』とか、かえってこっちに火が付く感じで」

 

 なんとも正直な村岡である。

 

「で、西田さんとのスケベですが、これはもうやっぱり『男のケツが初めてというノンケに尻を掘られてる』っちゅう興奮がすごかったですな。

 ノンケさんにしてみると儂たちにはよお分からん『処女信仰』みたいなもんかもしれんのですが……。

 またその西田さんが、とにかくすごくケツほりが上手い、というのが率直な感想ですわ。

 あそこまで具合良く当て掘りされちまうと、まあ、なりやすい質(たち)ではあるんですが、トコロテンも已む無しって感じでしたな。

 いや、ホントに気持ち良かったですわ……」

 

 記憶の掘り起こしがさらなる興奮を呼ぶのか、村岡は再び勃ち上がった己の逸物をゆるゆると扱きながら語っていた。

 この男だけの集団においての、勃起やせんずりという、己の興奮を何一つ隠さなくてよい、むしろ積極的にアプローチすべし、という雰囲気そのものを、実に心地良く感じているのだ。

 

「西田さんはいかがでしたか?

 友人である山崎さんの同性とのセックスを見られて、また御自身の村岡さんとの交わりをやってみられて?」

 

「ぶっちゃけ、見る分もやる分も、とんでもなく興奮した、ってのが正直なところです。

 山崎や先生達はご存じだと思いますが、俺そのものは風俗もけっこう使ってたし、その中で前立腺いじられての射精も経験してました。

 それでも自分が自分のチンポで男の前立腺を刺激して、それで相手の人がイってくれるなんてのは、なんというか、もう口では説明できんほどの感動って言うか。

 まあ、ここではその『口では説明出来ない』ってのを、ちゃんと言葉にしろと習ってきたわけじゃあありますが」

 

 田畑看護師がくすりと笑う。

 野村医師と交わす視線は、クリニックの方針が伝わっていることの確信でもあったろう。

 

「ここでのセラピーを受けてきて、俺は自分の身体が、いや、他の人の身体もか、もっともっと貪欲に快感を、快楽を求めていって構わないわけだし、それを追求するときに相手が同性でも異性でも構わない、かえって同性同士の方がポイントが掴みやすい、ということにも気付かされました。

 そういう意味で、俺は山崎が宮内さんを掘るのを見てすごくエロく感じたし、自分が村岡さんのケツを犯して、村岡さんも俺自身に『ちゃんと感じてもらえた』ってことに、すごく感動してます。

 ああ、ここに通って良かったな。山崎と知り合って良かったな。温泉で村岡さんや宮内さんに知り合えて、本当に良かったな。

 今はホント、そんな気持ちです」

 

 野村医師の目が潤んでいるように見えたのは、錯覚だったのか。

 いや、医療者として目の前の裸の男たちに関わってきた自分の労が報われた、と感じていたのではなかろうか。

 涙目の野村医師に気を遣ってか、田畑看護師が仕切り直す。

 

「皆さん、ありがとうございました。西田さんの言葉には、僕も関わらせてもらった看護師として、なんだか誇りのような気持を持たせてもらいました。

 さて、セラピーの前半はここまでで、この後は本日の後半のプログラムに移りたいと思います」

 

「でも今日は、私や西田は挿れる側で、挿れられるのは次回ってことでしたよね?」

 

 事前の説明を覚えている山崎が質問する。

 

「はい、その通りです。

 実際に『同性の肛門にペニスを挿入して快感を得る。同時に相手にも男性ならではの器官である前立腺を刺激することで快感を与える』という、西田さん山崎さんにとっては初めてとなる快感獲得の目的そのものは達成できています。

 いわゆる『ノンケに自らの尻を犯してもらうことで、精神的な満足感を充実させる』という、村岡さんや宮内さんに課した課題についてもクリアしたと見ていいでしょう」

 

「となると、後半は……。

 あ、もしかして、その、相手を変えて、なんちゅうか、その、言い方は合っとるかどうか分からんのですが、いわゆる、まあ、スワッピング、とか言うみたいなことですかいの?」

 

 村岡が尋ねるが、その口調と期待に輝いた瞳を見れば、嫌がっているわけではまったく無いと断言できる。

 

「はは、村岡さんの言うとおりですよ。

 ここからは基本は山崎さんが村岡さんに挿入を、西田さんが宮内さんに、というセックスを、二組同時進行でやっていただきたいと思います。

 相手が変わっても先ほどの興奮をぜひ堪能していただきたい。

 これは個人間の愛情だけを快感獲得の前提条件とせずに、あくまでも対人における触れ合いの素晴らしさ、正確な知識に裏付けられた快感獲得の技術としての取得を目指した実践となります」

 

 野村医師が、はっきりとした声で皆に伝える。

 

「私達はもちろん大歓迎なんですが、その、先生や田畑さんがずっと見てるだけだと、その生殺しってことになりませんかね?」

 

 宮内の心配そうな声は、受診を始めてまだそう長くはならないものの、野村医師、田畑看護師との逢瀬を存分に楽しんできたものとしての言葉であったろう。

 

「私もそこが気になってます。

 もちろん患者である私たちに対してのセラピーであることは理解していますが、正直言うと、私はもう、野村先生や田畑君のチンポをしゃぶったり、精液を飲ませてもらうことそのものも、ここに通う理由の一つになっているので……」

 

 大胆な山崎の意見表明であったが、その思いは患者である中年の男たち、その4人全員に共通したものであった。

 

「私達のことにまで気を遣ってもらってありがとうございます。

 私達も皆さんと情を交わし、互いの精液を飲み合いたい気持ちは同じです。

 そこでこれは許可をいただきたい提案でもあるんでしょうが、二組の交わりに、私と田畑看護師も『混ぜて』もらってよろしいでしょうか?

 もちろん、最優先はアナルセックスをされている皆さんの快感の追求となりますが、そこにアドバイスをしながら、私と田畑君も参戦させていただく、という感じにはなるかと思います」

 

「異議無し!」

 

 4人の男たちの声が揃う。

 今日のセラピーの後半、第2部が始まろうとしていた。