ホテルの部屋に駆け込んだ2人が、持ち込んだスポーツドリンクを荒々しく飲み干していく。
2リットルのボトルをあっと言う間に空にした2人が、互いを正面に仁王立ちになった。
「いのさんも分かってるだろう?
ここで今、一人でせんずりをヤっちまえば、一人で射精しちまえば、俺達は『火災の炎の燃え盛る様を見て興奮して射精する』ってのが意識に刷り込まれちまう。
これだけは俺達が踏み入っちゃダメだって習ったあれだ。
だからだ。
だから、俺といのさんで、せんずりを掻き合って、互いのチンポをしゃぶり合って、互いの金玉を揉み合って、その気持ちよさでイっちまったってことにするんだ。
分かるだろ? いのさんも!」
勤続年数、現場経験ともに場数を踏んできた二人であった。
その両人ともが、先ほどまでの現場で危惧をしていた『火災現場危機中毒』。
その症状は『炎』『火災』に対峙することで引き起こされる性的な興奮に表れる。
炎に取り囲まれた現場で、勃起したまま、あまつさえ爆風を全身に浴びた衝撃で吐精した2人。
小隊を任されている隊長と、実質的に実働班体制を支えている副班長。
己の受けてきた教育内容からして、2人はそれぞれに自らの心身に対してあきらかにその兆候を感じ取っていたのだ。
「ああ、隊長……。それは俺も分かってました。このまま自分で扱いちまったら、1人で出しちまったら、絶対ヤバいことになるって……。
あのときは、勝手に汁が漏れちまってた。
だから、だからこそなんですよね。
そうだ、俺はあくまで、隊長とヤることに興奮してるんだ。
あくまで、隊長のデッカイのを、しゃぶって、扱いて、一緒にイくことで、その快感で射精するんですよね?」
「ああ、そうだ!
俺達二人は、あくまでお互いの、手と、口と。いや、お互いの肉体全部を使って、それでイくのが気持ち良くて、射精するんだ!
それこそ、勃起がおさまるまで、何回でも、何十回でも、やるぞっ、いのさんっ!」
互いに叫ぶように、相手の肉体を使っての射精なのだと言い合うのは、それこそが『火災現場危機中毒』症状の応急対処法として、教わってきているがゆえである。
「俺とキスしろっ、いのさんっ!」
吠えるように言った熊部が、耐火装備を脱ぐ間もなく猪野山へのし掛かる。
ボンベだけはなんとか下ろした猪野山が、それに応える。
放水を浴びての洗浄はしてきてはいたが、ガサガサと纏わり付く耐火服からは現場で浴びた油と煤の匂いが強烈に立ち上る。
「ああ、俺は今、隊長と、弦さんと口を吸い合って、キスしながら、すげえ勃起してる……」
「そうだ、いのさん! 俺といのさんと、抱き合いながら、キスしながら、勃起してるんだ!」
乱暴なまでに互いのマズルを交差させ、伸ばした舌先で相手の口中を舐め回す。
わざとのようにダラダラと唾液を垂らし相手の口中へと流し込むのは、あくまでも興奮の矛先が『目の前の相手だ』と印象付けるためだ。
「ああ、いのさんの唾が、すげえ旨え……」
「隊長の唾液、もっと、もっと、俺にくださいっ! ああっ、すげえっ、すげえ興奮するっ! 隊長の唾、飲ませてもらって、俺は、俺はすげえ、興奮してるっ!!」
耐火服のファスナーを引きちぎらんばかりの勢いで下ろし、青い作業着の胸をもはだける2人。
むわりとした獣臭が漂い、耐火服に付着した油と煤の匂いすら凌駕していく。
その匂いの凄まじさは2人の流した汗の量にもよるのだろう。
今回、数百度の空気温度の中で炎に対峙し、10リットル近くの発汗をしている2人。
1000℃以上もの天井温度を計測した現場では、出た水分と同じだけ、体重が落ちるのだ。
大量に買い込んだスポーツドリンクは、物理的な意味合いを持つ水分補給のためであった。
「おう、いのさんの匂いがたまらん。汗と、漏らした雄汁の匂いがここまで昇ってくるぞ」
「ああ、隊長の、隊長の匂いも凄い……。この匂いで、俺はいつも仮眠室でせんずりして、汁を噴き上げてたんです……」
はだけた作業着の下、顕わになった互いの胸をまさぐる指先。
汗でぐっしょりと濡れそぼる体毛が、太く、無粋な指先に絡みつく。
「乳首も、乳首も感じるんだろう? いのさん? こうして摘まんでやれば、いいんだろう?」
「うがあああっ、隊長に潰されてっ、乳首がいいっ! 感じますっ、隊長っ! 俺っ、隊長に乳首いじられてっ、感じてますっ!!」
「俺のもっ、俺の乳首も舐めてくれっ、いのさんっ!! いのさんの歯でっ、血が出るまで噛んでくれっ!」
熊部の煽りに、血走った目をした猪野山が、その口を黒毛茂る熊獣人の胸へと寄せる。
爆発が起きた瞬間の、恐れと昂ぶり。
あの瞬間の、あの情動を上書きしようと、二人はさらに互いの情欲を煽り、刺激しあう。
「あがああああっ、いいっ、いのさんに噛まれてっ、乳首が感じるっ! 感じるぞっ、いのさんっ!!!」
「俺のもっ、俺の乳首もっ、もっと、もっと千切れるぐらいにっ、いじってくださいっ、隊長っ!!」
まさに『血が滲むまで』互いの乳首を摘まみ、いらい、噛み潰す男達。
猪野山の牙が当たった熊部の胸から、一筋の赤い血流が垂れ落ちる。
「いのさんっ、たまらんっ! たまらんぞっ!! もう、もうっ、堪えきれんっ! いのさんのチンポをっ、デッカイ逸物をっ、俺にしゃぶらせてくれっ!」
「俺もっ、俺もっ、弦さんのっ、弦さんのをしゃぶりたいっ!! 弦さんのをぶっといのをっ、握って、扱いてっ、ベロベロにしゃぶりたいっ!!」
「脱ぐぞっ、いのさんっ!! 素っ裸になってっ、俺達2人でっ、盛り合うぞっ!!」
「ああっ、すげえっ、すげえっ! 隊長とっ、弦さんとっ、俺っ、俺っ、すげえやらしいことしてるっ……」
煽り合い、昂ぶらせ合い、己達の色欲が、どこに、誰に向かうのかを幾度も確認する逞しい男が2人。
現場でのあの昂ぶりを、勃起を、射精を、ひたすらに上書きするための、互いに課した責務。
耐火服から下半身を抜き去り、活動服を投げ出すようにして脱ぎ去った2人は、生まれたままの姿で正面に向き合っていた。
「すげえ……、弦さんのが、弦さんの摩羅が、ビンビンに勃起してる……」
「いのさんのも、すげえデカくなってるじゃないか。扱かせてくれ、いのさん。しゃぶらせてくれ、いのさん。俺に、俺に、いのさんのぶっといのを、しゃぶらせてくれ」
思わず抱き合った二人が、その厚く重い腰を押し付け合う。
ゴリゴリと重なる2本の肉棒は、既に汗と先露でどろどろになっている。
「ああ、当たる……。いのさんの熱いのが、俺のチンポに当たってる」
「弦さんのが、すげえ堅いし、熱くなってる。俺も、俺も弦さんのをしゃぶりたい。しゃぶって、扱いて、雄汁を飲ませてくださいっ!!」
「ああっ、いのさん! イくときは、いのさんの汁を俺がっ、俺の汁をいのさんがっ、互いに飲み合うぞっ! 何度も何度もイって、互いの射精が、いのさんとだから、俺とだから気持ちいいって、分かり合うぞっ!!」
慟哭にも近い、熊部の言葉。
悲壮感すら漂うその声に、猪野山も大きく頷いている。
互いの舌を吸い合いながら、ベッドに倒れ込んだ2人。そのまま濃厚な口接は、だらだらと多量の唾液を相手の口内へと送り込む。
現場でかいた大量の汗が部屋の湿度を一気に上げながら、男達の全身から立ち上る。
脇に、首筋に、そして股間に。
鼻先を埋めてその『匂い』を吸い込むのは、あくまでも目の前の相手が『生きている存在』であることを確認するためだ。
「たまらんっ、いのさんの匂いがたまらんっ!」
「弦さんのっ、弦さんの汗がっ、股座がっ、スゲえ匂いますっ! その匂いでっ、俺っ、俺っ、興奮しちまってますっ!」
もちろんそこには教本に書かれている『対処法』の、『マニュアル』の存在は確かにあった。
だがこれまでの勤務の中、仮眠室での濃厚な時間を過ごしてきた二人にとっては、それは決して『やらねばならないこと』だけの行為では無くなっていたのだ。
素っ裸のまま絡み合い、ベッドへと倒れ込む二人の雄獣人。
相手の顔中を舐め回し、耳たぶをしゃぶり、太い首に歯形を残す。
相手の意識に自らの存在を、自分の意識に目の前の雄の姿を焼き付けるように、絡み、舐め、噛み、しゃぶり合う二人。
仰向けに横たわった猪野山の腰に、熊部が互いの肉棒を押し付け合うようにして跨がっていく。
「いのさんっ、1発目は、扱いて出すぞ。俺のチンポをいのさんがっ、いのさんのチンポを俺が扱く。俺の金玉をいのさんが揉んで、いのさんの金玉を俺が揉み潰す。いいなっ、いのさんっ! いのさんっ、いいなっ!」
「ああっ、弦さんっ、たまんねえっ! 俺のチンポを、俺の金玉を、弦さんが扱いて、揉んで、そして俺と弦さんと、一緒にっ、一緒に汁を飛ばすんだなっ!!」
普段は熊部に幾分かの敬語を使う猪野山も、今は学生時代の自分に戻りきっているのか、まるで同級のような口調で、自分を見下ろす熊部を煽っていく。
「ああそうだっ!
俺が扱いて、俺のをいのさんが扱いて、俺達の目の前でチンポから汁が噴き上がるのをっ、しっかりと見るんだっ!!」
熊部の厚く大きな左手が、ごりりと猪野山のふぐりを握り締める。
痛みにも似たその刺激は、猪獣人の逸物をよりいっそう強く、逞しく、反り返らせる。
「ああっ、気持ちいいっ! 弦さんにっ、弦さんに玉潰されてっ、気持ちいいっ!」
「おうっ、いのさんの扱きもたまらんっ!
いのさんの顔見ながら、いのさんに扱かれてっ、俺っ、俺もっ、イっちまうぞっ!
あっと言う間に、いのさんに扱かれてっ、俺っ、イっちまうぞっ!!」
ベッドに入って幾許もしないうちであった。
二人の情欲は一気に昂ぶり、腰奥から湧き上がるマグマは今にも噴き上げようと、ぼってりとした金玉の、その表面積を縮め始めていた。
「出すぞっ、いのさんっ! 一発目っ、出すぞっ!!」
「イくっ、イくっ! 弦さんに扱かれてっ、俺っ、俺っ、イくっ、イっちまいますっ、イくっ!!!!!」
「俺もっ、俺もイくぞっ、いのさんっ、いのさんっ、いのさんの腹にっ、イくっ、イくっ、イくうーーーーーっ!!」
ヒト族用のそれに比べ、精液溜まりの耐用容量に20倍ほどの余裕のあるはすの獣人用スキン。その収縮性の高い素材を水風船にするほどの量の精液が、猪野山良次の腹へ、胸へ、顔へと打ち出されていく。
ドプドプと噴き上がる白濁液は幾度もの噴き上げを繰り返しながら、その飛距離を短かめていった。
「気持ちいいな、いのさん……」
「弦さんに、隊長に扱かれて、すぐにイっちまいました……」
「ぜんぜん、萎えないな、二人とも」
「仮眠室でも何回もイっちまうんだ。こんなもんで萎えてたら、話にならんでしょう」
盛大な射精ではあったが、熊部の指摘の通り、二人の逸物はより一層その硬度を増すようにいなないている。
30センチを越える熊部の逸物はその太ましき根元と亀頭下の2カ所でぐいと反り上がり、まさに自らの臍をも穿とうかとせんばかりの偉容を誇る。反り返り勃ち上がるその肉棒はうねうねとした血管をまとい、筋毎の盛り上がりは挿れられた肉腔を強烈に刺激するかのごとく固く張っていた。
巨大な肉棒を支える双玉は体毛と同じく黒色の毛に覆われており、一見周囲の体表と変わらぬ外観を見せる。しかしその実体を相対する者が手の平にでも載せてみれば、その持ち重りの凄まじさに驚愕するほどのものであった。
己と熊部の精汁にまみれた猪野山のそれは、樹齢数百年を数える杉のごとく太く逞しく垂直に勃ち上がり、かつての巨大戦艦の大砲のごとくに天を突いている。
長さで見れば亀頭一つ分ほど熊部のそれには及ばぬものではあるが、身長差を考えればその体躯比では熊部以上の比率となる。中太の肉竿は最大直径では熊部のそれを上回り、熊獣人の手をもってしても指を回しきれないほどの太さとなっていた。
太さが目立つその肉棒の根元には、熊部のそれを2倍ほどにもした見事なふぐりが鎮座している。熊部のそれとは違い、ごくごく短い毛に覆われたそれは、一見すれば被毛の無い皮膚そのものに包まれているようにすら見えた。
猪野山良次の腰に跨がっていた熊部が上体を倒す。
お互いの顔が近付けば、二人分の汁にまみれた良次の顔からは強烈な性臭が立ち上る。
「キスしよう、いのさん……」
「俺と弦さんの雄汁で、汚れてますよ、隊長……」
「しゃぶり合って飲み合ってるんだ。今さら自分のが混ざったからってな」
上からのし掛かる熊部が、少しばかり強引に良次の口吻を押し開ける。
口、鼻、頬、額。
どろどろにまみれた精汁を、舐め合い、互いの口へと運び合う二人。
互いの性臭がフェロモンとして働いてしまう獣人達にとっては、その行為そのものがさらなる興奮を呼んでいく。
「俺のと、弦さんの汁が混じって、すごい匂いだ……」
「飲み比べると、なんとなく味が違うな」
「そんなやらしいこと、言わんといてください、隊長……」
互いの舌が首筋の汗を舐め取り、摺り合わせた顔から滴る精汁をすする。
そのまま熊部が、ゆっくりと上下に腰を動かし始める。
「うおっ、弦さんの腹に、腹に擦れて……」
「俺のもっ、俺のもっ、いのさんの腹の毛がっ、すごいぞっ、汁がぬめって、すげえ気持ちいいっ」
「弦さんっ、二発目はっ、このままっ、このまま弦さんとキスしながらイきたいっ、弦さんのと擦り合って、イきたいっ!」
「俺もだっ、いのさんっ! キスしながらイこうっ! 動かすぞっ、いいなっ!」
「やってくれっ、弦さんっ! 激しくっ、擦りあげてくれっ! 弦さんの汁と、俺の汁とにまみれてっ、すげえ、すげえいいよっ!!」
熊部がその重たげな腰を上下に動かしていく。ごろごろと互いの腹の間で揉みくちゃになる逸物同士が、その亀頭を、裏筋を、指ほどの段差を見せる兜を、押し込め、嬲り、削り合っていく。
汗と雄汁と多量に流れ出した先走りが潤滑油となり、獣毛特有の固さを誇る腹被毛の刺激さえ、恐るべきほどの快感へと変えていく。
「ううっ、擦れるっ……。チンポがっ、弦さんのチンポと俺のチンポがっ、こ、擦れてっ、擦れてっ、すげえっ、すげえ気持ちいいっ!」
「ああっ、いのさんの魔羅がゴリゴリ当たるぞっ! 俺のとっ、俺のといのさんのがっ、先っぽ潰し合って、すげえっ、すげえよっ!」
「このままっ、このままイきたいっ! 弦さんっ! 弦さんのと兜合わせでっ、このままイきたいっ!!」
ぐちょぐちょと卑猥な水音を響かせながら、互いの下腹部が激しく揺すり上げられる。
下腹部にかかる重さに押しつぶされそうになる逸物が、腹の肉を押し分けるほどの固さを保つ。その固さのままに相手の肉棒を押しやり、抉り、ずり上げる動きは、手と口とはまた違う荒々しさだった。
「当たるっ、弦さんのが当たるっ!」
「いのさんっ、いのさんっ、このままイこうっ、一緒にイくぞっ!!」
「ああっ、イくっ、イくっ! 俺のがっ、俺のチンポが弦さんのに擦られてっ、イくぞっ、イくっ、イくっ、イくっーーーー!!」
「俺も出るっ、いのさんの腹にっ、腹の毛にっ、出すぞっ、出すぞっ、出るっ、出るっ、出るっ!!!!」
部屋に入室し、口接を繰り返し、腰にまたがったまま相手の魔羅を扱き合う。
一発目、二発目と重なる吐精が、互いの腹に、胸に飛び散れば、ぬめりと匂いが更なる昂ぶりを誘う。
二度の射精で濡れそぼった互いの上半身を愛おしむかのように撫で、さすり、舐め合う二人。
「次は、弦さん、次はどうする?」
「しゃぶり合おう、いのさん。お互いの汁にまみれた魔羅をしゃぶり合って、出ちまう汁を飲んじまおう」
勢い込む良次の問いは、解消するにはまだまだ足りえぬ射精への欲望からのものだ。
熊部の答えもまた、己の欲望と性欲の昂ぶりを示している。
「ああ、すげえ……。弦さんのぶっといのが、俺と弦さんの雄汁で、どろどろになっちまってる……」
「しょんべんと汗と、精液で、すげえ匂いだ、いのさん。俺、俺は、いのさんのこの匂いで興奮してる。いのさんのチンポをしゃぶって、全部、全部飲んじまいたいと思ってる」
「しゃぶるぞ、弦さん」
「俺もしゃぶるぞ、いのさん」
互いに頭を股間に寄せれば、そこにはもう、目の前の逸物と金玉が湯気を上げていた。
体内に籠もった熱がそこ一点から発散するかのような、かんかんに勃起した肉棒と、ゆるゆると蠢く二つの玉。
相手の股間に顔を埋め、ぐりぐりと押し合う。
流れた汗と、小便の匂い。火事場での一発と、ここでの二発。
三発分の汁はコップに注げば溢れるほどの量である。
じゅくじゅくとした被毛が体温でその水分を蒸発させれば、粘度の高い白濁液に泡が立つほどの引きが生まれる。なにかの拍子にふと下腹を離せば、ねっとりとした汁が糸を引く。
「いのさんの太いのを、すげえ匂いしてるのをしゃぶらせてくれっ!」」
「弦さんのも、もうたまらんですっ! 弦さんのチンポ、たまらんですっ!」
どろどろになった逸物をしゃぶり始めた二人。
唾液と雄汁、汗と小便。
そのすべてが入り混じった味と匂いが、獣人の研ぎ澄まされた官能を直撃する。
「弦さんのをしゃぶると、俺のからっ、我慢汁が出ちまうっ!」
「いのさんの逸物、すげえ旨いぞっ! 染みてる味が、味がすげえっ!」
「そ、そこがいいっ! 弦さんっ、雁のところが、気持ちいいっ!」
「おおっ、鈴口を舌をねぶられるとっ、たまらんっ、たまらんぞっ、いのさんっ!」
舐めては己の快楽を言葉にし、開いた口そのままに再び巨大な亀頭を呑み込んでいく。
舌先を震わせ、口中の圧を下げては吸い上げる。
とろとろと流れ出る先走りの塩味が、あくまでも『生』と『性』を実感させていく。
舌が、歯茎が、口蓋が、牙が。
唾液が、雄汁が、小便が、先走りが。
刺激とぬめり、堅さと柔らかさ。
相反する感触と感覚が混乱を生み、それこそが粘膜の感じる悦楽と、互いの脊髄を駆け上る。
「ああっ、イくぞっ、いのさんっ! いのさんの口にっ、イくぞっ!!」
「俺もっ、俺もイきますっ! 弦さんにしゃぶられてっ、俺もイきますっ!!」
三度目となる絶頂も、間近に迫っていた。
喉奥深くに届けとばかり、互いの尻を引き寄せ、己の顔を股間に埋める。
「イくぞっ、イくっ、イくっ、イくっ!!!!!!」
「出ちまうっ、弦さんのっ、隊長の口にっ、出るっ、出るっ、イっちまうっ、イくっ、イくっ、イくっーーーーー!!!!!」
「んぐっ、んんっ、ぬあああああっーーーーー!!」
「むぐうっ、ぐぐっ、があっ、おうっ、うっ、ううううううっ!!!!!!」
しゃぶっては声を出し、声を上げてはしゃぶり続ける2匹の獣。
声にならぬよがり声を聞き合う二人。
それはどこか、獣のうなり声に似てーーーーー。
……………………。
「……、水分、摂ろう、いのさん……」
「ああ、このままだと唾液も出んようになりそうだ……」
買ってきた飲料を、冷蔵庫に入れる間もなく番い始めた二人であった。
床に置いたままのペットボトルを取り上げ、一気に飲み上げていく。
二人がホテルに駆け込んだのは、深夜0時半を回った頃であったか。
枕元の時計は1時を差していた。互いに3回ずつの吐精までの時間はわずか20分足らず。
それほどまでの情欲と、それほどまでの昂ぶりと。
三度の吐精と2リットルの飲水でも萎えぬ逸物は、びくびくと振り立てた鎌首から、とろとろとした先走りを流し続けている。
「何度イったら、萎えますかね」
「萎えるまで、何度もイくのが目的だ。回数気にしてるうちは、まだまだだろうな」
「どうします、これから?」
「繰り返そう、いのさん。扱いて、擦り合って、しゃぶって、飲んで。何度でも、何十階でも、繰り返そうや、いのさん」
二人の少しばかり荒げてた呼吸が落ち着いていく。
大量のスポーツドリンクと、大量の精汁と。
その『質』には大きな違いがあれど、水分摂取という意味では、互いの肉棒から噴き上がる雄汁ですら、己の体内に取り込みたい二人であった。
「疲れたでしょう、弦さん。今度は俺が、上になります」
「別に疲れちゃいないが……。上からいのさんの顔見てるのも、よかったんだぞ」
「だから今度は、それ、俺の番ですって」
大きなペットボトルを空にした熊部が、そのままどすんとベッドに背を預ける。
その小山のような肉体に、今度は猪熊良次が乗り上げていく。
「また、キスからいいですか、隊長……?」
「ああ、今度はいのさんが、リードしてくれ……」
先ほどまでの上下とは逆パターンで、再びの射精合戦が始まる。
扱き合い、舐め上げ、しゃぶり合う二人。
ありとあらゆる体液を、混ぜ、飲ませ、飲み合う二人。
深夜に始まった二人の『応急処置』は、合間合間に飲水を挟みながら、互いに40回以上の吐精を数える中、夜が白むまで続いた。
……………………。
………………。
…………。
「すっかり夜が明けちまったな、いのさん」
「さすがにイってしばらくはおとなしくなってきましたな、二人とも」
「お互い40回もイけば、ちったあ落ち着いてくれんとなあ」
「それでもこうやって胸でもいじってりゃ、隊長もすぐにおっ勃つでしょう?」
「そりゃいのさんも同じだろうに」
時計を見れば、早朝5時過ぎであった。
都合4時間半の間でのそれぞれ40回の射精となれば、時間に換算すれば仮眠室のそれとは3倍以上の差が開いている。
それでもまったく疲れを見せない二人の様子は、日頃の鍛錬と獣人ならではの精力の双方が噛み合っていたためか。
特別サイズのベッド、それもロイヤルスイートとなれば、獣人の中でも大柄な二人が横になっても余裕はあるものだ。
天井を向いて一息ついていた熊部が、横向きになり、重たげな頭を片腕で支える。
視線に気付いた良次が、こちらもまた仰向けから己の身体を横へと向ける。
「仮眠室の件から、おかしなことになっちまいましたな、隊長……」
「おかしなことと言えばそうだが、また、こうなっちまったら最低でも2年はこいつをやり続けろって教本には書いてある」
「いつもの仮眠室のはカウントに入るんですかね、あれ?」
「うーん、アレはどっちかというと普段の性欲処理だからなあ……。やっぱり、『こういう』ことを言うんじゃないのか?」
右手を伸ばした熊部が、ぐっと猪野山の身体を引き寄せる。
猪獣人の顔を自分の胸に押し当てた熊部が、猪野山の耳元で囁いた。
「ほら、こうして抱き合うと、いのさんのも俺のも、また元気になってくる。たぶん、この『処置』は、こういうのを繰り返せって言ってるんだと思うんだ、俺は……」
でろりと頭を下げていた二人の逸物。
堅さだけは最盛期に比べれば落ちてはいたが、ゆったりとしたその姿から見れば、太さについてはほぼ勃起時のままの状態を保っていた。
握りもしない、扱きもしないその二人の逸物が、抱き合った刺激のためかだんだんと熱を帯び、再びその血流を増していく。
「まあ、俺としては、その、こういうのはぜんぜん悪くはないんですが……。ただこうしてると、またその、ほら、ヤりたくなっちまうっていうか、なんちゅうか……」
「はは、俺もだよ、いのさん。あと2、3発でも出してから、牛ノ宮に帰るって電話入れてみるか」
「ですな。このままだと隊長の顔見てるだけで、おっ勃っちまう」
「それもまた同じだな。どうせ帰ったら、火の試験としゃぶり合いの試験が待ってるんだ。せめて抱き合ってキスするまでは、勃たないぐらいにはしとかないとな」
「合点承知。じゃ、弦さんのをしゃぶらせてもらいますかね、また」
自らが帰署した後に、何が待ち構えているかも熟知している二人である。
熊部弦蔵と猪野山良次の口吻が交わされ、再び、いや、この日数十回目の口接がまた始まろうとしていた。
……………………。
結局、熊部が牛ノ宮の携帯を鳴らしたのはそれから2時間後、7時半過ぎとなった。
あれから猪野山が5回、熊部が4回の吐精を果たしてのことだ。
「ああ、牛ノ宮班長の携帯か? 俺だ、熊部だ。
うん、これから身繕いしてホテルを出るので、帰署はちょうど朝礼引き継ぎが終わってからになると思う。ああ、活動服と耐火服の洗いを頼まんといかんので、誰かを車場に下ろしておいてくれ。
ああ、そうだ……。心配かけた。
ああ、本当に済まなかった。俺もいのさんも、大丈夫だと思う。待っててくれ……」
寝乱れたシーツ、6本入り2ケースあったペットボトルはすべて飲み干したままに転がっている。
乾燥だけでもとランドリーにかけた活動服はしっかりと乾いてはいたものの、洗濯をしたわけでも無いそれは、袖を通せばむわりとした汗臭さが立ち上る。
「さて、帰るか、いのさん」
「ええ、ミヤさんと蘭童が待っててくれるみたいですな」
牛ノ宮の声が聞こえていたのか、良次もまた誰が待ち受けているかも分かったようだ。
「ヒト族の蘭童には迷惑かけるがな……。こいつぁ、どっちかっていうと俺達獣人族で本来はケリ付けんといかん奴だからな……」
「そのあたりは蘭童のことだ、しっかり分かってくれてると思います。そう教育したのは、隊長、あなたですよ」
消防士にしろ、警察官・自衛官にしろ、この『現場危機中毒』の発症は、圧倒的に獣人の比率が高いのが、過去統計にも表れている。
ベースとなる精力性欲の高さが、発症の大きな要因の一つであることは否定出来ない事実であった。
「だといいんだが……。さて、車を回してくる。いのさんはフロントに、『部屋はそのままにしといてくれ』って言っててくれるか?」
「え? またこっちに帰ってくるんですか?」
「署ではキスしてしゃぶり合いするんだぞ、いのさん。どうせ一回はミヤと蘭童の前で射精せんといかんだろうし、そうなって、そのまま家に帰れるのか、いのさんは?」
「あ、たしかに……。今でもギリギリですしな。分かりました、フロントに伝えておきます」
「ん、じゃあ、玄関に下りておいてくれ。車持ってくるから」
「了解です。熊部隊長っ!」
およそ8時間ぶりに冨士見署へと戻る二人。
車場に待ち構えていた猪頭と猪狩を見た二人が顔を見合わせる。
待ち受ける試験を前に、消防士としての緊張を隠せない二人でもあった。