その10 後半戦とは その意味を問う
身体使った後のシャワーは気持ちよかった。
それでも勃起薬はぜんぜん効いたまんまだし、当然、試合の興奮も残ってるし。なによりこの後のホテルでどんなことされるんだろうって想像しちまうし。
シャワーの細かな水滴が勃起したままの竿と亀頭に当たるだけで、なんか感じてしまうほどだったんだ。
俺と中洲君、明友の2回生達はシャワーだけでいいんだけど、百道先輩や東比恵さん、箕島さん達の3回生は、ケツも洗ってこいって言われてて、ちょっとだけ待ちが生じる。
これ、俺達も今回の『興行』済んだらさ、OBからの『持ち帰り』対象になるわけで、もう自分達の身にも迫ってること。
前の会話からして教えてくれないかなっては思ったけど、俺、東比恵さんに聞いてみた。
「先輩達、確か合同で『ケツの練習』もされてたんですよね。あれって、その、お互いのをお互いの尻に挿れて、練習するってことなんですか?」
東比恵先輩がいたずらっぽく笑う。
「どうせお前らも、興行終わったらOBからの『お持ち帰り』喰らうんだ。その前にはじっくり教えてやるから、今はただ、期待に胸とちんぽを膨らませとけ」
やっぱりはぐらかされる。
教えちゃダメって言うより、3回生の雰囲気からして、ホントの意味で必要になったらちゃんと教えるってことなんだろうなって、俺は俺で納得。
たぶん、マジですぐに教わらないと、そう間も置かずにOBの人、来るんだろうなってのは思ってたけど。
「上川端? あ、もしかして、俺たちのケツのこと、心配してくれてるんか?」
トイレに何回か行ってる百道先輩の顔見てたら、向こうも気付いたみたい。
百道先輩、明友の他の3回生の人達と顔見合わせて、にやっと笑ってさ。
「まあ、お前らも、今日明日のコレが終わったら、OBからすぐに指名がかかるだろうからな。
心配かもしれんが、やり始めたらすぐに手順も覚えるし、やってみれば腹がスッキリして気持ちいいもんだぜ。
べつに俺達も今となってみりゃ、いやいやヤってる訳でも無い。
そのあたりは、お前らももう、男のちんぽしゃぶったり汁飲んだりする自分を嫌に思ってるんじゃ無くなってると思うがな」
東比恵さんと結局同じこと言ってる。
明友の他の人たちもウンウン頷いてるとこを見ると、まあ大丈夫なのかな。
それよりなにより、自分がどんなことされるかっての方に、気を回さなきゃいけないんだろうけど。
「三六(百道先輩のこと)とも話したんだが、2回生のお前らの方が、これからどんなことされるか心配だろう。
だが、3回生、そう前回の経験者の話まとめてみると、そいつもそう心配しなくていいと思うぜ。
まあ、お前らも気楽に楽しんで来いや」
東比恵さん、さもお気楽な感じで言うんだけど、先輩達は確実に『ケツ』ヤられるわけで、なんであんなふうに気楽にしてられるんだろうとは思ったとこ。
まあ、ここで色々考えてももうコンベアは動いてる訳だから、乗るしか無いんだけどね。
「タクシー3台待たせてるから乗ってくれ。行き先も支払いも、お前らは何もしなくていいように頼んであるからな」
OBで案内役なのか、一人残ってくれてた中呉服さん。
3人ずつタクシーに乗り込んだ俺たちが、いよいよ『後半戦』に向かうことになったんだ。
ホテル、てっきり広めのビジネスぐらいと思ってたら、街で一番のシティホテルでちょっとビビった俺たち。
でもよく考えてみると、一部屋に6、7人も入って色々やれるとこって、そういうとこしか無いだろうし。
もうOBや有志の人達がチェックイン済ませてるからって、俺たち部屋番号だけ教わって、そのまんまエレベーターに案内された。
俺は1223号室。
12階建てのホテルの最上階。みんなフロアは同じで、廊下で『じゃあ、頑張ろう』みたいな感じでそれぞれの部屋に向かう。
いよいよ、ドアの前。
入った瞬間、仁王立ちになった人のちんぽ咥えさせられるんじゃ無いかとか、かなりドキドキで。
深呼吸2回して、ドアをノックする。
「お疲れ様でした。上川端君かな」
中から開けてくれたのは50手前ぐらいだろうか、もうバスローブ姿になってるなんかいい感じの縦横デカいおじさんだった。
「お疲れさま!」
「お疲れっ、大変だったね」
「待ってたよ」
次々に握手やハグ求められて、なんか勝手が違ったっていうか、なんて言うか。
いわゆる『オラオラ』みたいなノリを想像してたけど、みんな普通の感じで。
ザッと見たところ、ドア開けてくれた人が上から2番目かな。
一番年上はたぶん50代。けっこうお腹の出てるニコニコしてるおじさん。
後の4人の人はみんな30代からせいぜい40手前ぐらいまでっぽい。
1人だけ今日の試合のとき以前にどっかで顔見たことある人だと思うけど、名前までは思い出せなくて。
早めにチェックインした分、色々打ち合わせてたようで。
シャワーも済ませたのか、バスローブ姿の人が4人、シャツとケツ割れ、スポーツブリーフ姿の人が2人で、計6名が、今夜の俺の『お相手』になるらしい。
部屋も思ってたよりもだいぶ広くて、それにもびっくり。
奥のテーブルには夕食用にか、豪華そうなオードブルみたいなのが2つ乗ってる。
椅子はさすがに7人分は無いみたいだけど、一人用の椅子が3つとソファーがある。後はベッドにに腰掛ける感じかな。
で、そのベッド。たぶん普段は離して置いてある2台の(それもすごいデカいサイズの奴)が引っ付けてあって、まさに『7人(しかもみんなガタイのいいのが)乗っても大丈夫!』みたいになってるのが、スゲえエロい感じ。
だって、俺、あのベッドの上で、この人達のをしゃぶって、精液飲まされるんだよなあって。
「はは、なんか当てが外れたって顔してるけど、いきなり乱暴なことされるって思ってたんだろう?」
俺が部屋見回してると、割と年の近そうな、それでも30才ぐらいには見える人が声をかけてくれる。
ガタイの良さからしてOBかなって思ったけど、たぶん面識は無い人。
後から聞いたら『長浜』さんって、明友のOBの人だった。
「あ、はい、その、同好会の先輩も『行ってみれば分かる』ってばっかりで、詳しく教えてくれなくて。
あんな試合の後だから、一晩中、俺、その、また玉を責められるのかな、口にちんぽ突っ込まれて、無理やり飲まされるのかな、とかそんなん思ったり……」
あの『前半戦』経験してりゃ、そう考えるよな、普通は。
もっとも百道先輩や東比恵さん達のお気楽ムードは、なんかちぐはぐには感じてたけど。
「まあ、自然とそうなるわな。もちろん部屋ごとに雰囲気は違うかもだけど、少なくとも上川端君目当てで集まった俺たちは、乱暴や強引な感じではことを進めないから、それは安心してていい。
で、たまたまじゃあるけど、集まった中にお医者さんがいるから、試合後の君の身体、診てもらおうと考えてるけど、いいかな?」
なんか思ってたのとはまったく違う雰囲気で、かえって俺、ワタワタしてた。
「あ、は、はい、お願いします……」
「じゃあ、奈良屋先生、お願いします」
うん、と言って俺の前に来てくれたのは、さっきドアを開けてくれた人だった。
「こんばんは、上川端君。僕はOBから誘われた『有志』の方だけど、奈良屋と言います。
一応町医者してるので、深刻な打撲や、君の場合は特に睾丸に深刻な損傷が無いか診させてもらおうと思ってる。
これは僕たちの側のズルさでもあるんだけど、診察するのに全部脱いでもらっていいかな?
もちろん1人だけが嫌ってことなら、僕たち全員も脱いじゃうけど」
ああ、この人なら子どもとかも笑って診察されるんだろうなって、すごい暖かい笑顔でさ。少し白髪の混じった短髪が、すげえ紳士みたいに見えて。
奈良屋先生の言う『ズルさ』って、そのときはあんまりピンと来てなかった。俺だけ素っ裸になるなんて、ある意味当然のことだと思ってたし。
それでも俺、頭のどっかにこの人達が『活動を支えてくれる人達』『俺のカラダに興味持ってくれた人達』ってのはちゃんとあって、なるべく『そういう人達』に喜んでもらえるよう、言葉は選んだつもりなんだ。
「あ、大丈夫です。元々、男同士、裸でぶつかり合ってきてるワケですし、この間の『練習』で、素っ裸になるのも、その、精液、精液飲んだりするのにも、だいぶ慣れました。
ただ、薬とこれからのエロい展開想像して、俺のもうギンギンにおっ勃ってて、見苦しいもん見せちまうのが、かえって悪いかなって」
「なに言ってるんだい。それはこっちこそだよ。もうみんな早く君とやりたくて、君を感じさせたくて、うずうずしてるとこさ。
僕が始める前に、君の身体、無理が来てないか診ておきたい、って言った方が、我が儘な話なんだからな」
やっぱり、俺のセリフ、喜んでもらえたみたいで、みんなニコニコしてる。
ただ、奈良屋さんの言葉で俺を『感じさせたい』ってのが、何のことやらっては思ったとこ。
てっきり俺が、部屋に来てくれた人を『感じさせる』側って思ってたからさ。
「じゃあ、全部脱いで、ベッドにうつ伏せになってくれ」
言われた通り、素っ裸になった俺がベッドに横になる。
マットレスもしっかりした硬さのある奴で、あ、これ、高い奴だって俺でもすぐに分かるほど。
「ごめんな、ちょっと触って動かすから、痛かったり違和感があったら言ってくれ」
奈良屋さんが、脚から腰、手のひらから肩、背中、首って触ってくる。
その大きくて温かい手が、スゲえ気持ちがいい。
「よし、じゃあ上向いてもらっていいかな。僕たちも薬飲んできてるから、みんなもう勃ってるよ。恥ずかしがらなくていいからね」
いや、もう、あんな試合ヤったんだから、恥ずかしいとかは通り越してるのになとは思ったけど、そこは顔には出さず。
素直に天井を向いた俺なんだ。
「試合観てたときも凄かったけど、上川端君の金玉はホントデカいな。これで急所責めヤられて、キツかったろう?」
「人と比べられるもんじゃ無いっスけど、玉責められただけで射精しちまうとかって、これ、なんかの病気とかじゃ無いんですよね?」
せっかくの目の前のお医者さん。しかも『無料(タダ)』だって思って、俺、聞いちゃった。
ホントはダメなんかな、こういうのって?
奈良屋さん、上半身、得に胸のあたりを触診しながら答えてくれた。
「自分も直接勉強したわけじゃ無いけど、ネットで動画見てると確かにそういうふうに射精してしまう人は一定いるんだと思う。
よく生存の危機にカラダが子孫を残そうとしてるんだ、とか言われてるみたいだけど、僕はSMの世界での痛みが快感に転じる、その転用が睾丸に対しても起こってる、っての方を信頼してるかな……。
うん、咳したり、上半身を捻ったりしたときに痛みは無い?
よし、肋骨も大丈夫みたいだ。
最後にその睾丸、金玉を診させてもらうよ。痛かったりしたら、ホントにすぐに言ってくれ」
「お、いよいよ金玉ですか。儂も近くで拝見していいですかな」
「周船寺(すせんじ)さん、この後大丈夫なら、そのままプレイに入っていきますから、ベッドにどうぞ。
さっき決めたように、最初の3人の柳河内君も、こっちにおいでよ」
あ、思い出した!
1人だけ顔に記憶があった人、うちのOBの柳河内(やなごうち)さんだ!
たぶん飯喰わせに去年来てくれたけど、俺、覚えてなかった。ごめんなさい、柳河内先輩。
「あはは、その顔だとやっと思い出してくれたみたいだな。つっても同好会に顔出したのも去年の話だから、覚えられてない俺の方が悪いんだが……。OBの柳河内だ、よろしく頼む」
「儂は奈良屋さんと同じく有志の周船寺と言います。今日の試合、玉を責められてる上川端君を見て感じてしまってね。1人50代のおじさんで悪いが、よろしくな」
「あ、はい、奈良屋さん、周船寺さん、柳河内先輩、こちらこそよろしくお願いします……」
って、金玉触られながら言う挨拶でも無いんだけど。
「あっ、はっ、はあっ……」
「痛むのかい? 上川端君っ?」
玉揉まれて、思わず俺が上げた声に、奈良屋さんが素早く反応する。
「あ、違います、済みません、変な声あげで……。その、俺、奈良屋さんの手が、その、スゲえ、その、スゲえ気持ちよくて……」
「はは、奈良屋先生、さすがですな。診察で患者さんに、得も言われぬ快感を与えるとは」
「周船寺さん、からかわないでくださいよー」
奈良屋さん、なんか楽しそう。
「まあまあ、奈良屋先生も周船寺さんも。それに肝腎の上川端君もよがり声を上げれるぐらい気持ちいいってことは、金玉も無事ってことでいいんですかね、奈良屋先生?」
「そうですね。触ってみて特に熱感も無いですし、本人の様子からも変な痛みは無さそうだ。上川端君、僕が触ってるとき、なんか違和感を感じたりとかは無かったかな?」
「あ、その、済みません、俺……。なんかこう、その、もう、エロモードに入ってるのかと思ってて、勝手に感じまくってました」
6人みんなが声出して笑った。
俺、そんなにおかしいこと言った?
「はは、それならもう大丈夫だな。じゃあ、上川端君もお待ちかねの、そのエロモードに突入といこうかね。
一応、僕たちの中で全員一遍に君に群がるのも難しいよなってことで、3、4人ずつ入れ替わりながら、一晩中君を楽しませようっては考えてる。
君の方で、こんなのがしたい、こういうふうにヤられたいってのはあるかい?」
奈良屋さん、いや、先生がいいのかな?
奈良屋先生が話してくれたのに、俺、最初からの疑問をぶつけてみることにした。
「あの、ちょっといいですか?」
「ん、なんでもどうぞ??」
さすがにマジ話になりそうなので、俺、身体を起こしたよ。
もっとも、ちんぽは相変わらずおっ勃ったまんまなんだけど。
「あの、さっきから皆さんがちょこちょこ言ってくれてるのと、俺が思ってた『後半戦』の雰囲気がぜんぜん違ってて、ちょっと俺、混乱してるってのが正直なとこです。
今日明日と、俺、皆さんに俺のこの鍛えた身体で『奉仕する』『使ってもらう』と思って、あの試合の後、ここに来ました。
活動費や普段からも同好会を支えてもらってることもももちろんですが、俺たち学生のことを、皆さんが精一杯『守ろう』としてくれてるんだなってのも、勝手にですが分かってるつもりです。
そんな皆さんへの『恩返し』『嬲ってくれて構わない』覚悟で来てるんですが、そこらへんが、なんかこう、自分がズレてる感じがしてて……。
済みません。奉仕するとか言いながら、勝手なこと言って」
俺、なんか喋りながら勝手に熱くなってた。
ある意味この質問って、『上』に盾突いてるってことかもよな?
俺の言葉に、みんなが顔を見合わせている。
奈良屋先生が、みんなの視線辿って頷いて、俺の目の前に胡坐かいてどしりと座った。
「雰囲気に流してもいいことじゃああるんだが、学生の君がしっかり言葉に出してくれたんだ。
その疑問にはきちんと答えておこうと僕は思う。
もちろん、これはOBや有志全員の代弁をするわけでも無いし、俺個人の思いでもある。
ただ少なくとも、ここの6人に関しては、似たような気持ちがあったからこそ今晩の過ごし方の方向性をまとめることが出来たし、それを決めたときの流れにも違和感が無かったんだと思う」
あ、奈良屋さん、『僕』から『俺』に変わったって、妙に細かいことに気付く俺。
奈良屋さんの中で俺を見る目が『患者さん』から、何か別のものに変わったのかもだ。
「正直言うと、今回の興行のことやその目的を知らされてからの君達の『練習』や、昼間の試合のことを考えると、上川端君がそう考えてここに来てくれたのは、当たり前のことだと俺も思う。
実際、20年ぐらい前まではこの『後半戦』、モロにそんな感じだったらしい。
試合で疲れた学生が逆らえないことをいいことに、年齢の上の者達が寄って集って慰み物にする。それはそれで双方に満足感もあったのかもしれないし、2年に一度という特別感も感じ取れたのかも知れない。
だがそういうやり方はどうしても、学生の卒業後、OB会離れを生む土壌になっていただろうってことだ。
そして、君にも考えてほしいのは、OBから声をかけられた俺たちみたいな『有志』は、いったい何を求めて、この興行に高い金を出してるのかってことなんだよな」
なんか、シビアな話になってきてる。
「その、あの、傲慢な言い方かも知れないんスけど、その、俺たち学生の、その現役の『鍛えたカラダ』って、奴、ですか……?」
「もちろんそれが一番なのは間違いないし、今日も俺を含めて、君のカラダ目当てにくじ引きになるほどの希望者がいたわけだ。
ただ、よく考えてほしい。
試合見学は別としても、今日明日、長く見積もってもせいぜい24時間だろう。
たったそれだけの時間、君の身体を『モノにするため』だけに、あれだけの金をかけるってのも、どうなんだろうとは思わないかい?」
「俺、そこはどうなんか、分かんないッス……」
俺、分かんなかった。
本当に俺、分かんなかった。
「これは俺たち『有志』と柳河内君や長浜君のようなOB組との決定的な違いでもあるんだが、俺は今日明日を君と過ごした後、次に君の肉体に触れることが出来る可能性が出てくるのは、最低でも2年半後になるんだよ」
奈良屋さん、ちょっとだけ悲しそうな目をしてた。俺、奈良屋さんのここまでの話を聞いて、なんか切なくなってた。
なんで自分がそう思ったかは、ぜんぜん分かんないんだけど。
「OBの諸君は初回の興行参加を果たした君達を、そう、早ければ今日明日を越した明後日からでも、顔出しや差し入れに行けば『持ち帰り』出来ると聞いている」
「あ、はい、それはその通りだと思います」
明友OBの長浜さんとうちの先輩の柳河内さんが頷いてる。
各々が所属してたチームの後輩には限られるけど、それは俺も百道先輩の話から知ってたし。
「だが、例えば俺に関して言えば、たとえ俺が上川端君、君にどんなに会いたい、君とセックスしたいと思っても、君を知ることが出来たこの興行に参加するための『ルール』ゆえに、君に会えるのは早くても2年半後になるわけだ」
ああ、俺も、奈良屋さんが言うことが、なんかぼんやり分かってきた気がする。
「では、頑張って2年半待った後に、君が卒業したらもうこの『OBと有志の会』に参加しないとなったらどうなると思う?」
「えっと、互いに社会人な訳だから本来は会うも会わないも自由なんだけど、連絡する手段すら無くなってしまう……?」
「その通りなんだよ、上川端君」
一番年上の周船寺さん、優しそうな目で俺を見ながら、ウンウン頷いてる。
感覚的にはピンとは来ないけど、確かに周船寺さんみたいな年齢の方だと、年単位での待ち時間ってのは色々と考えてしまうことと多いんだろうな。
「俺が誘われてこの会に参加して、もう20年近くが経つ。その中で『これは!』と思った学生に出逢えても、その後にまた接する機会があるのは本当に年単位での計算になるわけだ。
参加を重ねていく中で俺から提案させてもらったんだが、この『後半戦』、現役の学生達には『いい思い出』になるようにした方が、その後の『OBと有志の会』の組織率、定着率が上がるんじゃないかなってね」
ああ、それって……。
「ちょっとはピンと来てくれたかな?
そう、この『後半戦』、参加した俺たちがその欲望のままに君のカラダを貪り尽くしてしまい、その結果、学生が『キツい』『痛い』『怖い』ってことに『ならないように』、してみようってことなんだ」
「えっと、それって、奈良屋さんたちが俺らのことを思って、自分の『ヤりたいこと』を『しないでおく』ってことなんスか?」
「んー、それともちょっと違うかな……。そのあたり、板付君や青葉君はどうなんだい?」
板付(いたづけ)さんも青葉(あおば)さんも、誘われた側の『有志』としての参加で、2人とも30代。
やっぱり鍛えたがっちりしたカラダしてて、青葉さんとか勃ってるちんぽもかなりの太さ。
「俺とかはウケだから、上川端君の太そうな逸物、早く尻で味わいたいなってのがまずはあるかな。
ただそれは今回は『ルール』のせいで決して叶わない。
となったら、次に会えるとき、そう、互いに社会人として対等な立場で目の前に立つときに『金のためだから』『同好会のためだから』裸になる、なんて縛りが無くなっててほしいなとは思ってます」
板付さんの言う『ウケ』。
ちんぽを尻に入れる意味とは分かってたけど、それを好きな人のことそのものを指すってのは後から知ったこと。
「単刀直入に言えば、今日、上川端君のカラダに俺たち6人で『男の良さ』を教え込もうってことですよね、奈良屋さん、周船寺さん」
こっちは青葉さん。
タッパのある人で、ガタイ全部がデカい人。
「まさに、その通りだねえ、青葉君……」
周船寺さん、太った身体を揺らしながら答えてる。
「上川端君、俺は、いや、もう俺たちは、でいいかな。
俺たちは、今日、君の身体を『使う』のが目的じゃなく、君の身体に『男同士ならではの、ひたすらな快感』を与えたくて、集まってるんだよ。
そしてその『男同士ならではの快感』に溺れた君が、学生のうちに仲間同士やOBさん達とのセックスを通して男同士の性的接触の気持ち良さ、たとえばもちろんそれは、尻の良さだったりもするわけだけど、それを、それこそを学んでほしいと思ってる。
今でも素晴らしい君の肉体が、もっともっと熟れた、熟した果実として実る、卒業の日を待ちたいってことなんだ」
「奈良屋先生……」
「ズルいと思うかも知れない。なんか意図的に依存性を高めて、将来の自分達の欲望を満たしたいというエゴからの方針転換だな、これは。
それを俺たちが、OBの人達も含めて、この20年、取り組んできたことなんだ」
聞けば確かに『ズルい』ことなのかもしんないけど、その『流れ』そのものが、俺たち学生を『守る』ことと結び付いてるだろうってことは、俺の馬鹿な頭でも分かる気がした。
「もちろん、君もそうなんだろうけど、こういう同好会に参加してるってこと自体が、裸の男同士が取っ組み合うことに抵抗が無い連中が集まってきてる訳だ」
奈良屋先生の言葉にこっくり頷く俺。
「それでも今日の状態に限って言えば、君のそのギンギンにおっ勃ったままのペニスは快楽追求のためだけで勃起してるんじゃない、そう俺は思ってる。
薬の力をも借りてはいるけれど、どちらかというと『同好会の存続のため』とか、あるいは『憧れの先輩や友人と一緒なら、どんなことでも耐えられる』みたいな、ある意味他者との関係性を盾にした、ヒロイックな自己陶酔・自己投影の結果ということもあるんじゃないかな」
俺が思ってたこと、考えてたこと、まんま言い当てられてた。
この瞬間までの俺、確かに『それ』をカッコいいこと、って思ってたんだ。
「ただ、それだけだと『活動費の調達』という目的が一定果たされ、勃起薬を飲む必要が無くなったときに、君自身の中で『同性との肉体接触による快楽と快感の追求』への思いが残ってくれるのかな、と、おじさん達は心配してしまうんだよ」
「ああ、やっと分かりました……。
今日の俺、奈良屋先生の言う通りの気持ちでここに来てました。
先生達や皆さんは、『同好会のため』とか『先輩から言われたから』ここに参加するんじゃ無くて、次に会うときには『俺自身がみんなと裸でちんぽ勃たせ合って、セックスすることに楽しみを見いだしておいてほしい』、『俺自身が俺自身の気持ちの選択の結果として』また会ってほしいって、ことなんスね……」
奈良屋先生、ガバッと俺を襲うようにして抱き締めてくる。
俺の顔を両手で挟んで、キスしようかってほどの勢いだ。
さっきまでの、ちょっと悲しそうな目から、ウキウキするような目の光りに変わってた気がしたのは、俺の気のせいなんかな。
「そうだよ、そうなんだよ。良かった、分かってくれて……。
もっともこれは、最初に言ったように、君にとってはかなりの『ズルい』戦法であることには間違いない。
それでも、俺たちとの今晩を、楽しく過ごしてくれるかい、上川端君?」
「もちろんです。俺も、いや、俺を感じさせてくれるってのに、拒否するなんて、男が廃ります」
どっとみんな笑ってくれて、微妙に漂ってた部屋の中の緊張がやっと解れた感じ。
「そうと分かればやっとエロモード突入できるかな?
あ、それともなにかしら、腹に入れるかい?」
「いえ、大丈夫です。試合も今も、緊張してたせいか、あんまり腹減って無くて」
「はは、俺たちもそんな感じかな。じゃあ、みんな一度は出し合ってから、食事でも摂ることにしようか」
椅子に座ってた板付さん、青葉さんが長浜先輩の近くに集まる。
あっちの3人は3人で、それなりにやり合おうってことみたい。
俺はまた、引っ付けられたベッドの真ん中に、これこそどうにでもしてくれって感じの大の字になって横になった。
皆さんに、俺の肉体預けますっていう、そんなポーズ。
「それじゃやっとこさ、『後半戦』を始めるとするかな」
ニッと笑った奈良屋さん。
周船寺さんと柳河内さんも、俺ににじり寄ってくる。
ここからの快楽の時間。
後から振り返ってみると、『前半戦』の激しさや勢いとは違って、この『後半戦』は、実に淡々と進んだような気がしてる。
でも、その『淡々と』ってのは、ものすごい快感とエロさに満ち満ちていたんだけど。