山崎と西田
「お二人とも前立腺をいじられながらの2回ずつの射精と、最後は私と田畑君に対しての前立腺刺激。
お二人の射精では、最初は私と田畑君による刺激、2度目は西田さんと山崎さんと、それぞれ立場を交代しながらでしたが、どうでしたか?」
濃厚で淫猥な3時間のセラピーを終えた山崎と西田であった。
「はい、私は1回目は田畑君にいじられての射精でしたが、さすがに『上手いな』と思ってしまいました。四つん這いになって尻を突き出す格好もかなり感じましたし、なんと言ってもまったく扱かれずにボタボタ出るようになってしまって、恥ずかしいやら気持ちいいやらで……」
最初に答えたのは165センチの85キロ、典型的な中年太り体型の山崎登(やまざきのぼる)、43才である。
EDの不安からこのクリニックの門を叩き、もう10ヶ月ほどになるのか。EDについてはゴルフ仲間であった西田との合同セラピー等を通じてほぼ回復し、現在は医師が提案する新たな性的快感の獲得開発を行うことで、男としての自信をより深めつつあるところだ。
このクリニックに通う前の山崎であれば、赤面してしまうような、いや、人前で話すことすら出来なかったであろう内容である。
野村医師と田畑看護師、男性2人だけで切り盛りしているこのクリニックでは『自らの快感や状況を言葉にして相手に伝えることで、より深い快感を味わえるとともに、肌を合わせている相手との距離が縮まる』という野村医師の信念が、その治療方針の中にも貫かれている。
治療のどの段階においても『自分の感じたこと、思ったことを率直に言葉にし、相手に伝えていく』という訓練が、多種の快感獲得の方法とともに為されてきていたのだ。
その性格から元々性的な言動があっけらかんとした友人の西田はさておき、山崎の方はどちらかと言えば奥手であり、クリニック来院までは肉体的な接触を伴う性行為としては、今は寝室を別にする妻とのそれのみという、実に奥ゆかしいものであったのだ。
その変化に一番驚いているのは、元々ゴルフ仲間としての長い付き合いがある西田であったろう。
「まあ、先生や僕は、ある意味『プロ』なワケですからね……。西田さんに指でいじられての2回目の射精はどんな感じでしたか、山崎さん?」
看護師とはいえ、院長の野村医師とはもう長く同棲をし、性的生活のパートナーとしてともに治療に当たっているという自負のある田畑看護師が、ニコニコと笑いながら、山崎にさらなる感想を求めてくる。
山崎がチラリと西田を見遣りながら答えていく。
「西田とのときは先生達からの指示で仰向けになって、西田の顔を見ながらだったので、それはそれでなんだか興奮してしまったところはあります。
西田が尻の中をいじりながら私のペニスをしゃぶってくれて、しかも片手では乳首をいじられたときに、もうあっという間に出してしまいました」
「あのときはケツに入れてる右手の親指で、山崎の金玉をコリコリ下側からやってみたんだが、あれはどうだった?」
山崎の話に西田が割り込む。
その雰囲気を許す、というよりも、積極的に推奨していくのがこのクリニックの方針なのでもある。
互いの行為、己の快感を言葉にして伝えること。
そこに互いがより高まり、性的な意味での『枷(かせ)』が取れていくはず、との強い確信があるのだ。
「ああ、あれもたまらんかったな。そう考えると、あのときの私は、四処責めをされてたってワケなんですね……」
「刺激が足りないようなら僕たちが介入しようと先生とは打ち合わせていたんですが、もうその必要は全然なかったですもんね」
答える田畑看護師も嬉しそうだ。
「西田さんの方は、いかがでしたか?」
野村医師が話を振る。
西田は山崎より一つ年上ではあるが、日常の付き合いでは互いに対等にやり取りしているらしい。
170センチに82キロのがっしりした体躯は、一年中のゴルフ灼けも手伝って若く見られることも多い男だった。
「俺は最初は野村先生にいじってもらったけど、山崎と一緒で、やっぱり上手いなって思いましたね。前に風俗の姉ちゃんにやってもらったときと同じ四つん這いの体勢だったけど、イく、というか、出るまでの快感と時間が、姉ちゃんのときとは全然違って……」
奥手の山崎とは違い、西田は性体験も豊富であった。妻ある身ではありつつも、それなりの風俗体験も多いようだ。
「やはり女性と男性では『どうされたらより感じられるか』の受け取りが、違ってきてしまうとは思います。
西田さんのは、快感の高まりとともに前立腺の収縮、平たく言うと『固くなる』感じが強く、そういう意味では『いじりやすい』んですよ」
「へえー、そういう違いが人それぞれあるんですね!」
経験の豊富な西田にとっても、初めての知識だったようだ。
「前立腺は前にも話したように、尿道を取り巻く形で存在していて、直腸からはあくまでも腸壁を隔てての刺激になります。
その点、西田さんは感じれば感じるほど、指先に触れる感触が『固くなる』傾向にあられるかと。そうなるとこちらも『どこを刺激していいか』が、とても分かりやすくなるのです。
ああ、もちろんこれは、西田さんと山崎さんが受けておられる快感のどちらがどう、とか、固くなるならないが問題になるわけでは無いことはお伝えしておきます」
医師の説明はもちろん専門職としての知識に基づいてのものではあるのだが、山崎と西田にとっては先ほどまで広いベッドの上で行われていた行為を思い出させるものなのだろう。
2人ともに、その股間が再びの盛り上がりを見せている。
「山崎さんにいじられてのときは、どうでしたか、西田さん?」
「あれもたまんなかったですな……。山崎が尻をいじりながら玉も揉んでくれて。
山崎の尺八に感じ始めたら、今度は野村先生と田畑君に乳首を舐められて。
もう、全身のどこがかんじてるのか、気持ちいいのか分からないぐらいの快感で、あっという間にイっちまいました」
「あのときはちょっとびっくりしたな。いつもは西田の方が我慢しての射精のイメージだったんで、思わずゴクンと飲んでしまって……。
ザーメン分け合って飲めなくて、皆さんには悪いことしちゃったなと」
驚くべきことに、異性との性行為が当たり前だった2人が、このクリニックに通ううちに互いの精液を口にし、口中に溜めたそれを互いに飲み合い飲ませ合うことすら『当たり前に』行ってきているのだ。
「確かに西田さんの精液も飲んでみたかったですが、それより何より山崎さんと西田さんが互いにアナルへの愛撫をしながら、射精をし合えたことが素晴らしかったと思いますよ」
相好を崩しながら語る野村医師。
それは自らが進める『治療』が、上手くいっている確信があるからこそのものなのだろう。
「まあ、最後に僕と野村先生がお二人に尻をいじられながらイかせてもらって、そのときの精液はいつもみたいに皆で分け合えましたからね」
山崎と西田が練習を重ねてきた同性同士による、アナルと前立腺刺激の手技。それを医療者2人の尻穴で確かめたのは、ある意味当然の『帰着点』とも言えるものか。
「私が西田さんに、田畑君が山崎さんに尻をいじられながら、お二人に口内射精させてもらう。
その射精した雄汁を、お2人から4人全員で混ぜ合わせながらのキスは、もう凄まじいぐらいにいやらしかったですよね」
小山のように盛り上がった野村医師の股間。
名残惜しそうに見つめる山崎と西田ではあるが、その情欲をさらに昂らせるような提案が医師からなされていく。
「いよいよ次回は、この前からお話ししている村岡さんと宮内さん、皆さん4人での拡大合同セラピーになります。
いつものことではありますが、セラピー前には出来れば一週間、最低でも3日ほどは溜めてきてもらえると、当日も楽しめるかと思いますので」
ゴルフ合宿の温泉宿で知り合った、村岡と宮内の2人。
ゲイカップルである彼ら2人と、いわば『元ノンケ』である山崎と西田、総勢4名での合同セラピーについての提案を受けていた2人であった。
「その、今度の合同セラピーは、ホモ……、ゲイのお二人に、私と西田が色々『教えてもらう』と思ってていいんでしょうか?」
「俺もそこが気になってて……。というか、その『付き合って』るっていうお二人に、なんだか俺らみたいなのが割り込んでいいのかなって、そこが悪い気がしてて……」
山崎も西田も『新たな快感獲得』というセラピーの目的よりも、すでに『性的な意味を含めてパートナーであるの二人』と、そのような行為に及ぶことへの不安があるのだろう。
この手の提案に対して山崎はもとより、西田が少しばかり慎重な態度を取るのは珍しい。
「そこがやっぱり、気になられますよね」
どうやら若い田畑看護師が説明するようだ。
「村岡さん、宮内さんの『付き合い方』は、実は今では『オープンリレーショナルシップ』という言われ方をしているものです」
怪訝な顔をする西田と山崎。
「これはまあ、ご結婚もされお子さんもおられるお二人にはあまり馴染みが無かった考え方かもですが、同性同士の付き合いで妊娠出産と言う概念が薄かった私達の間では、その言われ方、呼び方は別として、割と多く見られた『付き合い方』なんですよ」
男女と男同士、その違いに立脚するという看護師の話しには、奥手の山崎にもいくらか納得できる部分もあるようだ。
「互いに相手を『付き合っている相手』『相方』『相棒』として認識しながらも、それ以外の人とも互いに同意を得ながら、性的な関係をも取り結んでいく人達のことを指しています。
そして『オープンリレーショナル』という言葉は『開かれた関係性』という訳が当てはまるわけで、そこをお互いに秘密にしたり隠したりするのでは無く、話し合いを重ねながら関係を繋げていく、というようなものと言えるでしょうかね」
「それって、なんというか『浮気し放題』ってことになるんじゃないですかね?」
ストレートな質問をぶつけるのは西田である。
「僕と野村先生もその立場に近くはあるんですが、たとえば西田さんや山崎さんと色んな『行為』をしても、それを『浮気』になるとは考えていません。
どちらかというと『友人と楽しく食事をする』『趣味の時間を仲間たちと一緒に楽しむ』というものと同じように捉えていると思います」
山崎が、ふと気付いたように呟く。
「ああ、そうか……。それって、私が先生や田畑君、西田と、こんなに『いやらしい』ことをたくさんやってても、別にうちのを『嫌いになる』ワケじゃ無いのと同じなのか……」
「ええ、そういうふうに受け取ってもらえるのが、一番近いかと思います!」
田幡看護師の勢いは、我が意を得たりとの思いの強さであったか。
「もちろんお二人にとっては医者側、私達からの『治療』ということで色々な『行為』をともにする形になっていることは我々の関係性の中で外すことは出来ません。
しかし、これまでの時間を過ごす中で、医療者と患者、それ以外の関係性が私達の中に構築出来たのではないか、そう私は信じています。
そしてそれと同じような、ある意味対等な、性的な快感を共有し合える『仲間』『同士』として、村岡さんや宮内さんとのセラピーを受けていただきたいと思っています」
話しを引き継いだ野村医師の言葉は、目の前の二人にも充分に伝わったようだった。
「まあ、俺なんかは『もっとエッチなことが出来ればいいな』ぐらいのもんではあるんですが、それでもあのお二人の付き合いが壊れるようなもんで無いって分かれば充分ですよ」
「私もそこが一番心配だったので……。そこを村岡さん達が了解しておられるんであれば、その、私も西田みたいに、もっと色々経験してみたいなと……」
自分達よりも村岡や宮内の関係を心配していたのは、性格の違いはあれど山崎も西田も根が優しいことの表れだったのか。
それでも若い田畑看護師が安堵の表情になったのは、一抹の不安を感じていたせいであったのかもしれぬ。
「お二人にも了解いただいたようですし、次回のセラピーのいいものになるようにしますので」
にこやかに話す野村医師だ。
「その、やっぱりアナルを、ケツを覚えての、その、村岡さんや宮内さんとのセラピーってことは、やっぱり、その、村岡さん達に俺達の尻を『やってもらう』、って、そういうことなんですかね……?」
西田にしてみると、やはりここしばらくのセラピーで尻穴での快感は存分に感じ始めているとはいえ、実際に『挿れられる』ことへの覚悟もまた必要なのであろう。
指や舌での愛撫や拡張はこなしてきているものの、西田も山崎も、まだ『本物』の経験は無いのである。
言葉で確認する、というこのクリニックでの約束をきちんと果たしてくれるだろうとの医療者2人への期待でもあるのだろうが。
「ああ、ゲイのお二人と一緒のセラピーと聞けば、そう思われる方が自然ですよね。
実はこの件については村岡さん、宮内さんには先にお話しさせていただいているんですが……」
「……?」
首をかしげる西田と山崎。
「次回の合同セラピーでは、西田さん、山崎さんのお2人には、村岡さん、宮内さんの尻に『挿れてもらう』側になってもらおうと思ってます」
「えっ? ええっ?!」
「お、俺達が『挿れる』側なんですか???」
村岡達の受診の際にも、同じ驚きをぶつけられたことを思い出し、こっそりと田畑看護師は微笑んでいた。
「はい、合同セラピー、まずは2回連続を考えていて、初回は西田さん、山崎さんが、村岡さん、宮内さんの尻に自分のペニスを挿れる、挿入する側の立場を経験してもらおうと思ってます」
「えっと、てっきり、その、私達が『挿れられる』ものとばかり思ってました……」
「俺もです。その、村岡さん達は『慣れてる』わけでしょうから、その、そういうのを『教わる』立場になるのかなって……」
いわゆる『ノンケ』であった二人に取って、自分達の方がゲイの二人に先に『挿れる』側になるというのは、想像外のことであった。
山崎が言うようにゲイの二人が『ノンケ』の二人の尻を、という図の方が、頭の中に描きやすかったというのは確かであろう。
「はは、村岡さん達も驚いておられましたよ。
一般的には元々同性に性的魅力を感じてなかった人、西田さんや山崎さんといった『ノンケ』さんになりますが、そういう方々がアナルを使ったセックスを求められると、この前も話しが出ていた『匂い』や『不潔感』といったものの方が強いために、いわゆる『ウケ』、挿入される側に回ることが多いとされています。
ただ、これについては私なりの考えがあって、そのために前回までのような『洗浄行為』や『ほぐし行為』によって、その手の違和感を軽減していくための過程を踏ませてもらいました。
その上で、まずは西田さん山崎さんが挿入側、二回目のセラピーにてその立場を逆にしようと思ってます」
「なにか、理由があるんですか?」
山崎が率直に尋ねる。
「セラピーのときにでもお話ししようかとは思っていたんですが……。そうですね、少しだけお話ししておくと、村岡さんや宮内さんにとっては先ほど西田さんが仰ったように、アナル、そう、肛門を使った性行為は『当たり前』であり『慣れて』おられるものとなります。
それに対して、西田さんや山崎さんにとっては、挿入する側、受け入れる側、どちらも男性に対しては『初体験』ということになりますよね?」
「はい、その通りです……」
山崎と西田にとっては、まさに『当たり前』の話である。
だからこそ、『教えを請う』形になるのかと思っていた2人だった。
「もともとこのクリニックで皆さんに提示している治療方針は、お一人お一人が自らの性機能と快感追求への意欲や自信を持っていただくことを目的としています。
その点において特に今回のセラピーでは、まず西田さんや山崎さんに『自分の性機能で相手を喜ばせる』ことに対しての自信を持っていただきたいと思ってます。
それゆえに初回は、ゲイであるお2人に、西田さん山崎さんが『挿れる』ことで、相手が喜んでくれる、快感を感じてくれる実感を得てほしいのです」
西田と山崎が顔を見合わせる。
「それはとてもありがたいんですが、私達の方はそれが当てはまったとしても、村岡さん達にとっての治療目的は無くなってしまう、ということですか?」
自分達にとっては『初体験』『新たな体験』になるわけだが、ゲイの2人にとっての目的が何か、という疑問であった。
「はは、これはゲイの中で特有の思いかもしれないんですが、2回目のセラピーで計画している山崎さん達が『挿れられる』側になること、そう、もともと同性愛者で無かったお2人をゲイである2人が『犯す』ことは、なんというか、かなりの興奮を伴う行為になるんですよ」
へえ、という顔をする2人。
「あー、そこらへんは分かるような分からないような……」
「男女だと例えようの無いことですからねえ、こればっかしは……」
「まあ、それであちらさんが喜んでもらえるんならいいんですけどね」
どこか照れたように笑う山崎は、もうすでにセラピーの内容を想像し始めたらしかった。
「それはもう、お2人と『出来る』ってことで、村岡さん、宮内さんともにすごく嬉しがっておられますよ」
「あは、それならいいのか、なあ山崎」
「ああ、そうだな、西田。こっちも頑張んなきゃいけないんだろうなあ」
何を『頑張る』のか、思うほどにその股間も硬く強く、盛り上がっていく2人。
それを見やる医師と看護師もまた、己の逸物への充血を感じ始めている。
「その、先生。お2人も僕達も、その、また興奮しちゃってるというか……」
「ああ、田畑君。今度のことを考えてしまうと、私もそうだよ。でも、もう、お2人とも服も着てしまってるからなあ」
面白がっているような野村医師の視線が、3人の股間と顔を行き来する。
「先生、その、僕がお二人のをしゃぶらせてもらうとか、どうですか?」
「田畑君だけがずるいよ。それなら私達が交代で、お2人のを処理させてもらおうか」
「いやいや、先生。こっちも先生方の、しゃぶらせてもらわなきゃ。だって、俺達は2回はイってるけど、先生達は今日は1回しか出してないわけだし」
話も一段落と判断したのか、どうやらもう一回戦、という形になりそうな診察室である。
最後にしゃぶり合いでの吐精をすべく、4人の男達が一斉にズボンを下ろし始めたのだった。