13 初入れの儀式
ぷすっと、最初の感触があった。
「しっかり見てろ!」
目を逸らしそうになった気配が伝わったのか、親方がどなる。
シリンジの中にじわっと純也の血が遡り、小さなきのこ雲を作る。
逆血を確認した田山が、プランジャーをゆっくりと押し始めた。
ああ、なんなんだ、この冷たい感じは。
半分くらい入ったあたりから、判ってきた。
尋常では無い感覚。
生まれて初めて味わう、純粋無垢の、快感だった。
身体中の体毛が、一斉に逆立ち始める。
下半身から龍が上る。
ぐわあっと何か、氷のように冷たく、そして灼熱を帯びた棒のようなものが、金玉の付け根から脳天を刺し貫いていく。
「な、何だ、これは?
何か、すげえことになってるっ!
お、俺の、か身体がっ!
変だっ、変なんだっ!
なっ、なんなんだっ、これはっ?!?」
純也は注射器の中の透明な液体が自分の体内に入っていく様子を、最後まで見届けた。
田山は純也の変化を冷静に観察していた。
残りの液を押し入れ、素早く針を抜く。消毒綿で針穴を押さえた。
再び万歳の格好で、両手両足をくくりつけられ、身動きがとれなくなった純也の肉体が、次第に変化し始めた。
小刻みに身体が揺れ、やがて痙攣のような大きな揺れとなる。
「うわああっ、あっ、ああああっ……!
た、たまんねえっ!
すげえっ、すげえですっ!
俺のっ、俺の全身がっ、チンポみたいに勃起していくっ!
ああっ、たまんねえっ!
身体中が勃起してるっ!。
身体が全部っ、チンポになってるっ!」
典型的な中年太りの体型だった純也の肉体が、まるでその脂肪がすべて筋肉へと変化するかのように、ゴツゴツと内側からの圧を伴って膨らんでいく。
ケツ割れの横から、上から、わさわさとした陰毛がはみ出し、胸も腹も、黒々とした毛に覆われ始めた。
「田山の見込みは確かだったな。初めての、しかも水溶きなのに、こりゃあ、スゲえ反応だ。」
親方がニヤニヤしながら、周りを見渡した。
作業員達の反応が、嬉しくて仕方ないようだ。
野郎たちは口々に、新人の初入れに、その肉体の変容に、悦楽の声を上げている。
「見ろあの表情、たまんねえ……。」
「おとなしそうな奴が、一気に淫乱な顔になっちまったな。」
「変わり様が、俺たちの比じゃねえな。どっちかというと親父さん達やまもるみたいだ……。」
「見てるだけで、漏らしちまいそうだ。ああ、すげえぞ、こいつ……。」
「俺も初めて入れられたとき、あんなやらしい顔、してたんかよ。たまんねえなっ、おいっ。」
男達は、皆が自分たちの身体を弄っていた。
その手は自分の股間と乳首だけでなく、近くの野郎の身体へも伸びていく。
田山と親方は、磔台で身動きの取れない純也の目の前で、見せ付けるかのように舌を絡ませ始める。
ぬちゃっ、ぬちゃっ。
びちゃっ、びちゃっ。
全身に剛毛渦巻く巨漢の怪物が、互いの巨大化した舌を舐め合い、唾液まみれになっていく。
目の前で繰り広げられる光景に、純也はたまらず、自分から舌を突き出していく。
「ほう、ワシらの、この舌が欲しいのか?
この淫乱な、いやらしい唾液を飲みたいのか?」
「はいっ! 親方様のっ、田山様のっ、淫乱な舌が、やらしい舌が、欲しいですっ!!」
純也は、自分が何を言ってるのかすら、分からなくなっていた。
肉体の変容と限りない性欲の滾りをもたらすこの『クスリ』によって、秘められていた純也の被虐性が引き出されたのだろうか?
幾度も初入れの儀式を行ってきたとはいえ、今日の純也のような精神・肉体変容をあまり見たことが無かったのか、瞬間のたじろいを魅せた親方と田山。
これはもしかして、俺たちと本当に『近い』男なのでは?
だが、その躊躇いは刹那に消え、純也の求める新たな役割を演じ始める。
親方と田山、二人の親父が、同時に分厚い舌を純也の口に捩じ込み、ドロドロと唾液を注いだ。
「ワシらの雄汁で溶いた霊薬と、ワシらの唾液を飲み干した山口純也。
さあ、変わるんだ。
お前は今日から、雄同士の盛り合いを楽しむワシらの仲間になると誓え!
この場で、この場にいる雄兄弟の仲間すべてに、忠誠を誓え!」
「はいっ!
私、山口純也は、死ぬまでこの組に奉仕し、男として生きていきます。
そして、雄の中の雄になるため、日々鍛錬に励み、同志の快楽に協力するために、命を捧げることを誓います!」
練習した文言では無い。
純也の心の奥底から、自然に立ち上ってきた言葉だった。
男達の中から、一斉に拍手が起こる。
「よし、よくぞ言った。
ワシらもお前を我が一族の仲間に加え、同志として認めよう。
今日から、いついつ、どんなときも、ワシらとともに男だけの、雄同士の快楽を互いに与え合うように努めよ。
互いにどのような命令も受け入れて、どのような欲望も隠さずに、みなで淫乱な雄となるのだ!」
二人が純也の両脇に並び立つ。
親方は自分の左腕を、田山は右腕を高く上げ、汗と体液にびっしょりと濡れそぼった腋毛を見せつけた。
まずは親方が、その強烈な臭いを放つ腋を、純也の顔面に押し付ける。
「さあ、吸い込め!
存分に、ワシの臭いを、お前の胸いっぱいに吸い込むんだ!」
深呼吸をするように、純也は親方の腋の臭いを肺に入れる。
「うぅうぅっ、うわああっ!
たまんねえっ、たまんねえッス!
親方のっ、親方の臭え腋でっ、臭え腋汁でっ、俺っ、俺っ、淫乱になっちまいますっ!
ド淫乱にっ、なっちまいますっ!!」
純也は左右に激しく身体を揺すり、何とか自分の乳首や竿を触ろうと、無駄な努力を繰り返した。
「ふふふ、こいつめ。
触りたいんだろう? しごきたいんだろう?
チンポも乳首も、滾って滾って、たまらんよな?
そしてワシらの身体も、欲しくなったろう?」
今度は田山が、剛毛がびっしりと生えた右腋を純也の鼻に押し当てた。
「んんっ、んぐぐぐぐっ!
も、もっとっ、もっとくださいっ!
田山さんのっ、田山さんのっ、臭え雄腋をっ、もっと俺にくださいっ!!
ああっ、たまんねえっ!
親父たちの、くっせえ腋の臭いが、たまんねえッス……。」
純也は必死に舌を伸ばし、田山の腋を舐めとっていく。
その臭いの凄絶さにか、純也の腰がビクビクと蠢いた。
近くで見ていたまもるが、田山の腋に顔を埋める純也のヒクつきに気が付いたようだ。
「親父っ、見ろよっ、純也さんのケツ割れっ!
どうやら、親父と田山のおっちゃんの腋の臭いだけで、漏らしちまったみたいだぜ!」
「ええっ?! 俺っ、漏らしちまってるっ!
扱いてもいないのにっ、触られてもいないのにっ、漏らしちまってるっ!!」
本人の反応からして、無意識のうちの吐精であったのか。
果たして、純也のケツ割れの白い膨らみに、内側からの噴き上がるわずかに黄色みを帯びた雄汁の染みが、どんどん広がってきているではないか。
一族の伝わるその『クスリ』の、まさに驚くべき『効果』なのだ。
「おおっと、腋汁の臭いだけで汁を漏らすとは、やはりこいつは淫乱な血が流れとるわい。
そうか、純也には、汁止め、してなかったな……。」
そう笑いながら親方は純也のケツ割れをずいっと下ろし、例の汁止めでこれ以上出せないようにぎっちりと縛り上げた。
再び引き上げたケツ割れの前袋、純也の汁でベトベトになったそこをぐじょぐじょと揉みあげる。
自らの雄汁が潤滑油となり、ケツ割れの荒い生地で揉まれる刺激に悶絶する純也。
「まっさらなケツ割れが、もう染まっちまったな、てめえの淫乱汁で。」
今度は田山が純也の前袋を撫で上げ、手のひらについた臭いを嗅いで楽しんだ。
親方と同じように純也の精液を手に染み込ませると、純也に舌を出すように命令し、なすりつけた。
自分の精液を舐めるなど、純也にとって初めてのことである。
まるで当然のことのように目の前の状況を受け入れ、あまつさえ口中の粘つく汁を『美味い』とすら思う純也。
肉体と精神の変容した40男が目を見開き、みんなを見渡した。
「兄貴たちの汁も、欲しいっス。お願いしますっ!」
と懇願したのだ。
こいつ、変わったな。
親方、田山、まもる。
三人の共通の思いだった。
あの、どちらかと言えばおとなしめに見えていた中年男が、たった一度の儀式で、ここまでの変化を見せるとは。
これまで多くの作業員達の『初入れ』を見てきた三人にとっても、純也のそれはかなりの驚きであったのだ。
よし、純也、しっかり見ておけ。今から、今度は全員で乾杯するからな。
まあ、皆の汁をもらうのは、もう少し先になるがな……。
親方と田山が、声を出さずに言葉を交わす。
無論、まもるもまた、この次に何をやるかは、了解済みだ。
ここ『極雄会』での特別な『乾杯』とは、アルコールの場のそれでは無い。
男達が一斉に、淫乱液のクスリを自分に、あるいは仲間同士で打ち合って、まさに飲み干すかのようにすっかり最後まで注入することを指すのだ。
全員が一斉に入れ、全員が一斉にケモノへと、色狂いへと化す。
淫乱な雄へと変身することを全員で確かめて、互いの健勝を祝い合うのだ。
「さっきはみんなから見られて、どんな気分だった?
今度はみんなが狂って、変わっていく姿を、よく見るんだ。」
親方が純也に囁く。
田山が大声で、みなに指図をする。
「いいか?
今日は全員分の雄汁を用意した。
俺や親方、まもるの汁で溶きたい奴は、順番に並べ。
しょんべんで溶きたい奴は、こっちに用意してある。」
作業員たちは自分の注射器を持つと、なんと全員が雄汁の方に並んだではないか。
「ほほう、今日はすげえな。
まあ、雄汁入れの効果を見せちまったからなあ。
今日初めて汁溶きに挑戦する奴もいるしな。
純也も初入れは水ときだったが、慣れてきたら、俺らのしょんべんや雄汁溶きで、入れてやるぞ。」
そう言うと、田山は作業員たちが注射器に汁を吸い上げていくのを手伝っていく。
ほどなく、全員分の、汁溶きの注射の準備が整った。
田山と親方は2回目の(一日で考えれば3回目の)汁入れをすべく、自分達も注射器を高く掲げて、乾杯の音頭をとった。
「さあ、新しく仲間になった、純也の汁入れを祝って、乾杯!」
全員が、『乾杯!』と叫びあう。
自分で腕に刺して入れる者、向き合って互いの腕に入れる者、自分が終わったら、まだの野郎の手伝いをするものなど、これだけの人数が一斉に入れている光景は、凄まじく淫靡だった。
一人手足を縛られ、自分では情欲の滾りに悶えることしか出来ない純也にとって、この光景は死ぬまで忘れることは出来ないだろうと悟ったのだ。
二人の親父たちも、互いに向き合って同時に追加した。全員が入れ終わったのを確認すると、親方が叫ぶ。
「みんな入ったなっ!
よしっ、みんな男になれっ!
ど淫乱なっ、雄汁野郎になっちまえっ!」
注射器をしまうと同時に、さまざまな場所で、さまざまな形の、肉の塊があちこちに出来始めた。
蠢き、のたうち回る雄の肉。
吹き出す汗と野郎の体臭。
見つめる、臭いを嗅ぐ純也は、両手両脚を縛られたまま、身悶えをするしかない。
純也は部屋の隅から隅まで、あらゆる男達の交わりを見渡しながら、涎と先走りを流すしか無いのだ。
右の端では、69の形になり、しゃぶりあっている二人がいる。その二人のケツを、さらに別の二人が掘り始めている。
左手には、自分の竿をに顔を押し付けてしゃぶらせながら、しゃぶっている奴は別の奴が寝ている上にまたがり、自分からチンポを入れて上下に動いている。
目の前ではまもるが別の親父を四つん這いにさせ、背後から掘っていた。
その親父にチンポを咥えさせた若い奴の乳首を、左右からまた別の二人がねろねろと舐めしゃぶっている。
汁止めをされた竿からは、先ほどのように勝手に汁を漏らすことは、もう出来ない。
腰奧深く睾丸の底から湧き上がる情欲は果てること、イくことを許されず、ひたすらに純也の肉体を滾らせていく。
まもるの後ろに田山が近づき、ぶりぶりと鍛えられたそのケツに、指を入れた。
3連結を楽しむためか、まもるもまた後ろを振り返り、ニヤリと笑うのだ。
親方は、肉塊のあちらこちらを見て回っていた。
三人で抱き合い、舌を絡めているグループに割って入り、自分の舌を三人がかりで舐めさせながら、4人が同時にお互いの竿を扱きあっていく。
みな、汁止めをしたままでの情交であった。
純也と同じく吐精せぬままの、淫乱な、淫らな行為が続いていく。
射精は出来なくてもいい。
せめて、男の肌を触りたい。
チンポを扱いてほしい。
俺も皆とキスをして、チンポを、金玉をしゃぶりたい。
目からの、耳からの、鼻からの刺激だけで何度もイきそうにはなるのだが、キツい汁止めが思いきりの吐精を阻む。
いやらしくも幾度も腰を振り立てる純也の頭を、ただひたすらに純粋な色欲のみがその脳を、蕩けさせていく。
純也の思いを他所に、男達の肉宴は続く。
新人の『初入れ』の儀式では当たり前に行われてきているこの意図的な『放置』は、純也の肉体と精神を、どうしようも無いほどの色狂いにするための方策であったのだ。
2時間ほどが経ったろうか。
狂ったようにほてった純也を見た親方が、ようやく縛られた純也へと近付いてきた。
「お前も仲間に加わりたいよな。淫乱汁を入れられてカラダもココロも変わってんのに、焦らされるだけ焦らされて、このままじゃ地獄だろう。」
がくがくと、激しく頷く純也。
親方は磔台に縛られた純也の両足の縄をほどくと、じゅっくりと濡れそぼったケツ割れを脱がせた。
太く逞しく勃ち上がった肉棒と、入れる前の倍ほどにも膨れ上がった金玉が衆目に晒されていく。
「おおい、お前たち。ちょっと休んで、こっちに来い。」
と、親方が全員を呼び寄せた。