親方の現場の規則(平成編)

その11

儀式の挨拶

 

11 儀式の挨拶

 

「今日から我々の仲間になる男を、皆に披露する。

 さあ、彼が、我らが『極雄会』の一員として活躍してくれる、『山口純也』君だ!」

 

 田山の掛け声で、一気にカーテンが開かれた。

 目隠しを通してではあるが、目の前が明るくなる。

 今、純也は、真っ白な新品のケツ割れ一丁の裸体を、大の字に張り付けられた全身を、大勢の欲情した男達に見られているのだ。

 

 部屋のあちこちから聞こえるのは、憧れを伴ったため息まじりの声、『ほう……。』という値踏みするような声、小声で聞こえる『いやらしいなあ』という囁き。

 それら部屋に満ちる男達のざわめきが、視覚を奪われていることでより敏感になっている純也の聴覚を、一斉に刺激する。

 かすかに聞こえる衣擦れや、どこか生々しい擦過音は、男達が自らの肌を、乳首を、ケツ割れの前袋を揉み上げている音だろう。

 

 さて、自己紹介だ。

 

 田山が純也の目隠しを取り去り、40歳になる中年男の顔を、野郎達に見せつけた。

 

「いいつらがまえだ!」

「雄臭え身体だな!」

「うわっ、タイプだぜ!」

「一緒にチンポ、見せ合おうぜっ!」

 

 次々に掛け声が起こる。

 

 しばらくして静かになったのを確かめると、純也はまもるから要領を教わり、頭の中で何度も繰り返した自己紹介の台詞を、ゆっくりと話し始めた。

 

「俺の名前は山口純也です。

 前の会社をリストラされて、色々あって、ここに辿り着きました。

 身長は170cm、体重は90kgの40才。学生時代は本格的なものでは無かったですが、まもるさんと同じ柔道やってたんで、力仕事は大丈夫です。

 資格については測量士と、土地家屋調査士を持っています。

 

 女姉妹に囲まれた中で、ただ一人の男として育ちました。

 父親も長く仕事で家を空けていたために、男兄弟のいる友人や、父親の姿を見ることの出来る家に、すごく憧れていました。

 

 だからこそ、ここ『極雄会』のような、野郎だけの世界で働けるのが嬉しくってたまりません。

 親方や田山さん、まもるさんから少しだけ、ここのことを教わりました。

 その上で、それを分かった上で、俺はここを選びました。

 

 先輩の皆さんに鍛えられ、野郎同士の交わりを一から教えてもらいたいと、今はそう思ってます。」

 

 純也の語るその内容が、男達の琴線に触れたのだろう。

 部屋中からの、割れんばかりの拍手が響く。

 

「おうっ、いいこと言うじゃんか。ビシビシ鍛えてやるぞっ!」

「歓迎会の時点でここまで『分かってる』奴は珍しいよな。この後がすげえ楽しみだぜ。」

「はは、今度の新人さんとは、最初からすげえ楽しめそうだな。」

 

 皆が勝手なことを言い合ってはいるが、どうやら純也の決意表明は、この場にいる男達にも好意的に受け取められたようだ。

 

 純也の斜め前に立っていた田山が、次の紹介をと目で促した。

 

「えっと、感じる場所は乳首と首の柔らかいところ、もちろんチンポが最高です。

 得意な技は自分でも分かりませんが、少なくとも、男の、同性のチンポをしごいたり、しゃぶったりすることに、嫌悪感は無いと思ってます。

 このあたりは、先輩の皆さんに、厳しく教えてもらえればと思ってます。

 

 測量や建築の現場で長く働いてきたので、やはり好きな格好は作業着です。自分も、そして周りも、仕事で汚れてるのも慣れてますし、男として汗を流して頑張った勲章だと思ってます。

 

 下着はこれまでトランクスかボクサーブリーフでしたが、ここに来させていただいて、褌やケツ割れもすげえカッコいいなと思い始めたところです。

 今日いただいたこのケツ割れも、先輩の皆さんのように臭っせえものになるよう、鍛えてもらいたいと思ってます。」

 

 部屋のあちこちから、拍手とともに『ほうっ!』という声が漏れる。

 舌舐めずりをするように見定める男達のケツ割れは、その前袋が早くも膨らみ始めているようだ。

 

 ここまで何度も頭の中で繰り返してきた挨拶を一気に済ませ、純也としても一息ついたところである。

 落ち着いて、ゆっくりと一人一人の男達に目をやるゆとりも出てきた。

 

 男達はみな、がっちり、むっちりした柔道、ラグビー、レスラー体型のものがほとんどであった。

 すでに何度もあの『クスリ』を味わった連中は、平均的な日本人のそれをはるかに凌駕する体重を誇っている。

 前の職場では一番のデブだと言われ続けていた純也の90㎏という体重も、ここでは平均以下に、そう、軽い方かとすら思えるのだ。

 20人を超す男達の中、純也には鍛えてもいない自分の肉体が、一番貧相なものに思えて仕方がなかった。

 

 人によっては親方や田山に引けを取らないほどの体毛に、その厳つい全身が覆われたものも少なく無い。

 一人一人異なりはするが、その男ならではの特徴的な黒毛の茂りように、今では欲情の兆しすら覚える純也である。

 逆説的に捉えれば、親方の息子、まもるはこの会社の中では珍しく、体毛の薄いタイプのようだった。

 

 まもるの言葉を思い出し、目をこらして眺めていると、全員のケツ割れの前布が、それぞれ違う形、違う色合いに染まっていることも分かってくる。

 おそらくはそれぞれが好むセックスのやり方、体液の処理方法の違いなど、多彩な個性を表しているようだ。

 汚れた(汚した)要因も、それぞれの臭いも、人によって大きく違うんだろうなと純也は分析する。

 そういう目で見れば、新入りの自分が履いている真っ白な新しいケツ割れが、実に情けなくすら思えてしまう。

 挨拶でも言ったように、1日でも早く、先走りや精液、唾液や小便を染み込ませ、目の前の男達のそれのように育てなければとの思いを、熱くする。

 

 ずらりと並んだ男達。

 目隠しを外した純也の次の関心は、まもると二人のときにも訊ねた『あの』ことだ。

 

 歓迎会の前、今日の午後に見せつけられた親方、まもる、田山の股間。

 そこにはこれまで純也がチラチラと目にしてきたものとは、明らかに異なる特徴があった。

 

 デカくて、太い。

 

 通常、公衆浴場などで見かける男のそれには、どちらかと言えば『長さ』においての差異を感じていたように思っていた純也だった。

 だが、この『極雄会』の事務所で目にした三人の男達。

 彼らの持つそれには、平常時においても明らかな『太さ』あるいは『量感』といったものを感じ取れたのだ。

 

『見てみるといい』

『比べてみるといい』

 

 現場を案内してくれた、まもるの言葉。

 

 今、しっかりと作業員達の股間を眺める純也にとって、やはりその『太さ』に関しては、決定的に自分とは違うモノを感じていたのだ。

 逸物の太さともに、ケツ割れの前袋にしっかりと膨らみを提示する金玉の大きさ。

 皆からは少し離れた純也でもはっきりと分かるぐらいに、ケツ割れの膨らみの規模が違う。

 作業員達、親方達の股間が大人のそれだとしたら、自分のそれは、せいぜい小学校の高学年程度だと、妙にがっかりした。

 おそらくはあの『クスリ』に起因するかもしれないことではあるが、この『差』が今後、果たして埋められるものなのか、今の純也には皆目見当が付かず、自分が何をしたらよいのかすら分からぬことであったのだ。

 

 純也の複雑な思いもありはするのだが、一方、作業員達はそれぞれが自分なりの新人の品定めをしていた。

 

 感度が良さそうなでかい乳首だと、妄想の中でコリコリと指を伸ばす者。

 あまり毛深くはないが、自分達の精液を飲ませたり、親方たちの特製の『クスリ』を続ければ、次第に自分たちのように毛深く男らしい身体になるだろうと想像する者。

 ケツの穴は使えるのか、あるいは使えるように調教しようと企む者。

 

 それぞれが純也とのこれからの日々を、どのように交わっていくかを想像している。

 

「次はお前たちが純也に自己紹介をしろ。

 一人ずつ前に出て、名前、身長、体重、好きな盛り合い、なんかを教えてやれ。

 あとは純也の身体で興味を持った箇所を、一回だけ触れていいぞ。

 それが自分が責めたい場所だと、純也に伝えることになるからな。」 

 

 田山の指示で、20人近い男の群れが純也の周りに集まってくる。

 

 いずれも毛深く、ゴツく逞しい男達が前に立ち、純也を見つめながら、己の性的な関心をアピールしていく。

 

  「木下雅也(きのしたまさや)、35歳、170cmの90kg。

 ちんこはぶっとい方だと思う。乳首の舐め合い、責め合いが大好きだ。

 よろしく頼みます。」

 

 最初に出てきたのは、ここの連中の中では比較的小柄な男だ。

 自分の乳首を摘んで純也に見せながら、純也の乳首にも指を伸ばす。

 

「うあっ、ううっ……。」

 

 これまで性感帯とは思ってもいなかった胸の突起をいじられる純也。

 思わず唸りながら身悶えしてしまうのは、親方達の臭いに、純也がすでに当てられてしまっていたせいか。

 

「感じるか?

 これから皆で、この乳首も育ててやるからな。乳首だけでイケるようになれば、また世界が変わるぞ。」

 

 やり取りを聞いている親方がニヤニヤしながら、次の男へと促していく。

 

 「三谷慎二(みつやしんじ)、41歳。175cm98kgだ。

 お互いの亀頭を合わせた、兜合わせをよくやる。

 俺も柔道やってたから、よろしくな。」

 

「高田政則(たかだまさのり)、46歳。177cm、100kg。

 三度の飯よりケツ堀り好きだ。山口君はまだ使ったことが無さそうだが、クスリ入れてのケツは、そりゃもうトブぞ。

 ラグビー部では後輩たちのケツにも、ぶち込んできた。

 あんたの穴にもどっぷり中出しして、種付けしてやるからな。」

 

「富山慎太郎(とやましんたろう)、39歳。180cmの97kgだ。

 多分、この中じゃ一番毛深いかな。

 金玉を痛いぐらいにいじり合うのが大好きだ。互いの玉を、しゃぶり合おうぜ。」

 

 次々に、20人以上の男達の手が、純也の乳首、亀頭、玉、ケツの穴、腋、耳たぶ、それこそありとあらゆる性感帯を刺激していく。

 手足の自由を奪われ抵抗も出来ず、自分から野郎たちの身体を触り返すことも出来ない純也は、その心地良くもいやらしすぎる刺激を、焦れったくさえ感じていたのだ。

 

 21人の作業員達。

 それらの挨拶が済めば、残るは『一族』とやらの3人だ。

 

「堀護(ほりまもる)、親方の息子で32才、178cm122kgだ。

 もう紹介する必要もないかな。

 純也さんも柔道やってたってのは嬉しいな。技の掛け合いとかも興奮しそうだ。

 周りの連中の想像通り、俺、純也さんみたいな純朴そうな年上のおっちゃんが、大好きなんだ。

 純也さんの『初入れ』に、今からもうすんげえ興奮してる。

 純也さん、これからよろしくお願いします。

 そして俺が好きなプレイは……。」

 

 まもるはそう言うと、皆の目の前で、純也の口の中に舌を捩じ込んだ。

 一瞬戸惑った純也も、すぐにそれに応え、自らの舌をねろねろと絡め始める。

 

「おおっ……! まもる君と山口さんのキス、すげえエロい……。」

 

 周りを取り囲む男達から、思わずの歓声があがる。

 舌先を絡め合い、互いの唾液を飲み合う二人のキスは、あまりにもいやらしいものだった。

 

「おい、おい、二人とも。それくらいにしておけ。

 初入れ乾杯の前に、興奮しすぎるなよ。」

 

 長く続く絡め合いに流石に呆れたのか、親方が割って入った。

 

「みんな、純也が気に入ったようだな。この後、思う存分歓迎してやれ。

 最後に純也もみんなも、分かりすぎるぐらいに分かっているだろうが、一応儀式なんでな。」

 

 最後の自己紹介にと、親方と田山が前に進み出る。

 

「田山康裕(たやまやすひろ)、55歳。親方と同じ学年の169cm 91kg。まあ、見た通りの狸腹だ。

 好きなプレイは、腋と股ぐらの臭い責めだが、もう純也も皆も、当然知ってるよな。」

 

 男達にどっと笑いが起こる。

 

 田山がまさに挨拶代わりにと、腕を上げて縛られている純也の右腋を、ねろねろと舐め回す。

 

「うあああっ! か、感じますっ!」

 

 ビクビクと身体を強張らせる純也の姿を、ケツ割れの前袋を揉みあげながら、見惚れる男達。

 

「最後になったな。

 ワシがこの組、極雄会の責任者、堀徹(ほりとおる)じゃ。

 56歳の、185cm101kg 。

 まあ、この身体は純也君も気に入ってくれてるようだし、ワシとしても、純也君の肉付きはたまらんものだと思っとる。

 うちでの男同士の絡み合いは、言うまでもなく、何でもありの盛り合いだ。

 皆の欲求を何でも聞いてやるかわりに、ワシの欲求にも何でも応えてくれればありがたい。」

 

 親方の言葉は、男達の集団を束ねるものとしての、決意表明でもあったのだろう。

 その場の男達全員が直立不動になり、一斉に声を上げた。

 

「押忍っ!

 俺たち全員っ、親方について行きますっ!!」

 

 満足そうに笑った親方は、純也の身体を触るかわりに、40歳の新人の左腕に、例の皮紐を巻いてきつく縛ったのだった。