搾精される狼獣人(長編Ver.)

その7

 

その7 混濁

 

「わ、ワシは、私は、き、喜三郞さんに、私の、ワシの、ペニスをしゃぶってほしい……。しゃぶってくれ、喜三郞さん……。

 私の、わ、ワシのペニスを、しゃぶれ、喜三郞……」

 

 豚田の手が震える。

 それでも、しゃぶれ、と命ずるその声は、あくまでも『今日の豚田』のものだ。

 

「豚田八戒さん、私はあなたにあなたのペニスをしゃぶれと命令されたことが嬉しい。

 あなたのペニスを、ちんぽをしゃぶることが出来て嬉しい。

 これは『命令されたこと』が嬉しいんじゃなく、『私が性的に興味を持ったあなたから命令されたこと』が嬉しいんだ。

 さあ、しゃぶるぞ。

 私があなたから命じられて、私が興味を持つあなたのちんぽを、今からしゃぶるぞ」

 

 己の意思発露の過程を、意図的に言葉にしていく喜三郞。

 果たしてその喜三郞の判断と行動は、この如何ともし難い状況に変化をもたらすものなのか。

 

 ぬるり、と、喜三郞の舌が豚田の逸物を迎え入れる。

 己やヒト族のものともまた違う、イノシシ科独自の先端の『硬さ』と『ねじれ』を丁寧に舌先でなぞり、唾液をたっぷりと蓄えた口吻が前後に長いストロークを描く。

 知らず知らず喜三郞の頭を押さえ込む豚田の手の温もりに、どこかホッとした思いの狼獣人であった。

 

(この手の温もりこそが、本来の『豚田八戒』の持つ温かみのはずだ。

 私の喉奥を突くための圧では無く、あくまでも快感をともに味わおうという、優しい手の温もりのはずだ)

 

 監禁された拉致被害者が、閉鎖された空間における拘禁の末に内包してしまうと言われる『ストックホルム症候群(シンドローム)』は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の一つとして扱われている。

 己が豚田に『持ってしまった』憐憫と共感情が、その症候群に由来するところが大きいと理解している喜三郎ではあったが、その『寄り添い』こそが、己の身の安全を確保するためにも必要との冷静な意識構築をも成し得ていた。

 

 じゅぷじゅぷと豚田の耳へと届く淫猥な水音は、喜三郎の意図的なものであろう。

 同性同士の性的接触はあまり経験の無い喜三郎ではあったが、犯罪捜査への協力の中、性的な様々な行為の『やり方』については、知識としては十分すぎるほどの蓄積を重ねてきていたのである。

 

「ああ、白狼さんが、わた、私、の、わ、ワシの、逸物をしゃぶってる……」

「そうだ。私、白狼喜三郎が、あなた、豚田八戒の命令で、あなたのペニスをしゃぶっているんだ」

 

 豚田の中で『私』と『ワシ』が、『今日の豚田』と『明日の豚田』が、快感を共有している。

 これは喜三郎にとっての嬉しい『変化』であった。

 

(これまでの2つの人格『らしき』もの同士には、おそらくはその得ている『快感』の受け止めに乖離があったはず。

 監禁と脅迫の下に進められる『明日の豚田』による快感獲得は『今日の豚田』にとっては、幼少期の己の手の中で得た感触にも似た、暗い喜びであったのだろう。

 それを、両者が(正確には完全に分離・独立している訳では無いが)『共に味わう』経験は、互いにとって必ず『良い』変化をもたらすと、私は信じている)

 

 喜三郎にとっても、己の為す『行為』への理由付けが必要であった。

 

 硬く渦巻く先端を舌先で捉え込み、太ましい肉竿を右手で小刻みに扱き上げる。

 喜三郎のそれの倍ほどにもなるずっしりとした豚田の双玉を左手で下から包み込めば、手のひらと指先で、やわやわと、ゴリゴリと、揉み上げる。

 口中の逸物の硬度がさらに増し、ふぐりを支える皮膚が肉竿の根元、会陰部へと急速に体積を減じようと蠢いていく。

 

「ああ、イきそうだ……。喜三郎さんの、口に、イきそうだ……」

 

 言葉を発することで口を離す時間すらも惜しみ、喜三郎の舌と口吻、両手の動きが激しさを増す。

 

「ああ、イく……。白狼さんの口に、イッてしまう……。ああっ、イくっ、イくっ、イくううっ……」

 

 粘度の高い、実に粘り気のある汁が、喜三郎の喉を打つ。

 逸物の律動やふぐりの容積変化により、吐精を待ち構えていた喜三郎ではあったが、初めて異種族の射精液を口にした戸惑いとともに、その物理的な『量』が、焦りを生む。

 

「うぐっ、むうっ、ぐ、ぐうっ……」

 

 その喉奥深くに次々と打ち付けられる多量の精汁を、必死に呑み込もうとする喜三郎。

 

「ああっ、白狼さんっ!

 わ、ワシのはっ、私のはっ、濃くてっ、すごく多いんだっ!

 飲めなかったら吐き出せっ! 喉に詰まって窒息してしまうっ!

 いいから吐き出すんだっ!!」

 

 喜三郎もまた獣人類の1人として、基準となるヒト族と比べれば1回の吐精における精液量が『多い』のは当然の存在であった。

 それでもヒト族のそれの数倍として、イヌ科トーテム獣人の一度に放出される精液量は、多くても30~50ccといったところであったろう。

 しかし豚田に代表されるイノシシを祖とする属においては、陸上哺乳類をトーテムとする獣人類の中でも実に特異的な平均精液量を誇り、およそ200cc以上もの粘度の高い精汁が放出されるのである。

 コップ1杯強の液体を飲み干すことは通常であれば容易いことではあるが、舌根での流量コントロールが出来ない喉奥への放出、さらにはその粘性の高さゆえに喉粘膜や食道への粘り付きを伴うこの白濁液の飲み下しは、豚田が言うように相手に窒息の危険をも伴う『行為』となってしまうのだ。

 

「大丈夫か、白狼さん……」

 

 鼻水を垂らし、涙を流し、むせ込む喜三郎の背中を、豚田がさすっている。

 

「あ、ああ、なんとか大丈夫だ……。ありがとう、豚田さん。恥ずかしいところを見せてしまったな……。

 豚やイノシシをトーテムに持つあなた方の精液量が多いというのは知識としてはあったんだが、経験の無さというのはこういうときに露呈してしまうものなのだな……」

 

 自嘲しての言葉は、ある意味研究者らしい喜三郎の言葉であった。

 返す豚田には、どこか暗い表情が付き纏っている。

 

「恥ずかしいなどとは……。

 だが、白狼さん。

 今現在、『私』の中の『私』が、苦しむ白狼さんを見て興奮していることも、事実なのです……」

 

 大量の精汁を噴き上げた豚田の逸物は、その体積を一切減ずることなく、さらなる吐精を待ちわびるかのように豚獣人の毛深い胯間から硬く勇ましく、勃ち上がったままであった。

 

「すぐには無理だが、次はもっと上手くやれると思う。

 興奮したのなら、その分を吐き出せばいい。

 私の身体で豚田さんが喜ぶことなら、なんでもやろう。

 それに……。あなただけでは無い。私もあなたの汁を飲んで、飲まされて、興奮しているんだ」

 

 何時間ものイかず勃起を強いられていた喜三郎の逸物は、豚田の豹変とも言えるほどの『変わりよう』への対応でその体積を一度は平常時のものとしていたのであるが、思わぬ口接が再びその情欲に火を灯していた。

 隆々とした喜三郎の逸物は臍を越え、遙かな天を突く勢いで勃ち上がっていたのである。

 

「私の肉体は先ほどまでの機械による凌辱で、性欲の炎は燻ったままなのだ。

 豚田さん、あなたにこれを癒やしてほしい」

 

 刺激され続けた性感帯。

 嗅がされ続けていたフェロモン。

 

 その影響はいまだ色濃く残っている。

 

「あ、あ、明日になれば、明日の『私』、が……」

「その明日を待ちきれないのだよ、豚田さん。

 私は『今』ここで、『あなた』に私の尻を犯し、私の乳首を甘噛みし、私の滾った逸物を扱き、私に盛大な射精をさせてほしいのだ」

 

 おそらくは『今日の豚田』も『明日の豚田』をも刺激するであろう言葉を浴びせる喜三郎。

 そこには6日間を過ごす『今日の豚田』に、これまでにない性体験を引き起こし、これまでにない感情を引き出そうという外挿意識とともに、己の中に滾る情欲を放出したいという、確かな自意識も含まれている。

 

「白狼さん、私は、ワシは……」

「豚田さん、私の尻を、あなたのその硬くねじれた逸物で犯してくれ!

 私をあなたの荒い腰遣いで、凌辱してくれ!」

 

 それまで日付が変わる前までのある意味堂々とした佇まいが幻かと思えるほどにおどおどした動きを繰り返していた豚田が、がばりとその身を起こす。

 

 腰掛けていたソファーの背もたれを倒せば、広めのベッドとなる。

 おそらくは監禁した対象者の仮眠ベッドとしていたであろう灰色の布地のマットの上に、喜三郎がドンと押し倒された。

 

「わ、ワシは、私は、白狼さん、あんたを、わ、私は、わ、ワシは、狼獣人の、白狼、さん、あ、あんたを、お、おか、犯、す、ぞ……」

 

 チカチカと接続が瞬く電球のような豚田の言葉。

 それをも意に介さずに、応える喜三郎。

 

「望むところだ、豚田さん。

 私はあなたに犯されたいんだ。私の尻にあなたの濃い精液を注いでほしい。

 私のこのぷっくりと腫れ上がった乳首を、あなたの歯でギリギリと噛み潰してほしい。

 私の金玉を、あなたの太い手でゴリゴリと握りつぶしてくれ。

 そしてあなたの射精に合わせ、この滾った私の逸物から私の精液を搾り取ってほしい」

 

 これからの予測される展開であれば、たとえそれが豚田のもともとの願望であったにしろ、初めて喜三郎が望む『行動』を豚田が取ることになる、まさに試金石となる喜三郎の問いかけであった。

 

 荒い息を吐き、のしかかる豚田の巨体。

 その瞳は、冷静に喜三郎を甚振っていた『昨日の豚田』とも、喜三郎を気遣っていた先ほどまでの『今日の豚田』とも違う、情欲に満ちた輝きを放っている。

 

「あの機械でやられ続けて、私の尻穴は十分過ぎるほどに解れて、熟れているはずだ。いや、幾らか熱を持って、今か今かとあなたのちんぽを待ち望んでいるほどなんだ。

 挿れてくれ、豚田さん。あなたのそのデカい摩羅を、私の尻に挿れてくれ!」

 

「き、きさぶ、喜三郎……。わ、私の、わ、ワシの、い、いち、逸物を、あ、あんたの、あんたのし、尻に、い、挿れ、挿れるぞ……」

 

 喜三郎の両脚を抱えむ豚田。

 豚獣人が、狼獣人の尻穴に、ぐいとその逸物をねじ込んだ。

 何時間も張り型を出し入れされていた喜三郎の窄まりが、硬くねじれたその肉棒を受け入れていく。

 

「ああっ、すごいっ! 豚田さんっ! 熱くて硬いのがっ、私の尻に挿入っていくっ!」

 

 先端の『ねじれ』は自らの変形を許さぬほどの『硬さ』があるがゆえに、己の進行により周囲の肉壁を『ねじれさせていく』。

 

「あぁ、ぐちゃぐちゃになるっ! 私の『中』がっ、引き攣れるっ!」

 

 腸壁が強制的に『ねじれさせられる』感触は、喜三郎が生まれて初めて味わう『内臓を直接変形させられる』経験なのだ。

 端的にその状態を表す言葉を博識であるはずの喜三郎であっても思い付かないのは、ある意味当然のことか。

 

 一度奥まで達した豚田の剛直が、今度はずりずりと引き出されていく。

 その悍ましいほどの肉々しい感触は、喜三郎が予想していたそれを遙かに越えていた。

 

「ああああっ、内臓がっ、私の『中』が、全部引きずり出されそうだっ! 豚田さんっ、待ってくれっ! ちょっと待ってくれっ!」

「ま、待てぬ……。ワシは、わ、私は、ま、待てない……」

「あっ、ああっ、凄いっ! 持ってっ、持っていかれるっ!」

 

 出し入れを繰り返されるたびに、仰け反るほどの反応を示す喜三郎。

 首輪と足枷以外、拘束するものが無い肉体が、豚田の巨体を押し上げるほどの躍動を示す。

 

 喜三郎の逸物もえぐられる腸壁と前立腺からの刺激に生え反り、互いの腹を濡らすほどの先走りを漏らしていた。

 

「ああっ、出そうだっ! 豚田さんっ、あんたに尻を掘られてっ、イきそうなんだっ!」

「あんた、の、摩羅が、イきそう、な、のか……? わ、ワシ、私、に、掘られ、て、イきそう、な、の、か……?」

「そうだっ! 豚田さんっ! あんたに、あんたのチンポに掘られてっ、イきそうなんだっ! 私の摩羅をっ、扱いてくれっ! 金玉を握りつぶしてくれっ!」

 

 この場の『行為』、そのイニシアを握ったままで、互いの吐精を果たしたい。

 その思いは喜三郎の中に確かにあった。

 だが、今の喜三郎に取って、普段ではまず口にしないようなその言葉は、己の内心の昂ぶりをそのまま表しているものでもあったのだ。

 

 私はこの状況に興奮している。

 己の口から吐かれる淫語と、豚田の逸物に犯されている自らの状況に、異常とも言えるほどに興奮している!

 

 その認識こそが、喜三郎の前に開かれた新たな性癖への入口であった。

 

「豚田さんっ! 私の乳首を噛んでくれっ! チンポをガシガシと扱いてくれっ! あんたがイくのと同時に、私の摩羅をイかせてくれっ!」

 

 豚田の厚くぬめる舌が喜三郎の脇をじゅるじゅると濡らし、乳首を歯の先端が嬲る。

 睾丸をゴリゴリと揉み上げていた右手が逸物へと矛先を変え、凄まじいまでの握力と速度で、太長い喜三郎の逸物を扱き始めた。

 

「イくぞっ、喜三郎っ! あんたの尻でっ、わ、ワシはっ、私はっ、イくぞっ!!」

「ああっ、私もイくっ!! 豚田さんっ、あんたに尻を掘られてっ、あんたに摩羅を扱かれてっ、イくっ、イくよっ、一緒にっ、一緒にイこうっ、豚田さんっ!」

 

 頂点が、一致した。

 

「イくぞっ、喜三郎っ!! あんたの中にっ、ワシの汁が出るっ!! ああっ、私もイくぞっ、イくっ、狼獣人のあんたの中にっ、イくっ、イくっ、イくっ!!!!」

「私もイくっ! 豚田さんっ、あんたと一緒にっ、イくぞっ、イくっ、ああああっ、出るっ、出るっ、汁がっ、出てしまうっ!!!!」

 

 ガクガクと、重たい豚田の腰が喜三郎の尻にぶつかる。

 その揺れと圧力が押し寄せる津波のように、喜三郎の逸物からの噴射を誘う。

 びくびくと引きつる狼獣人の腹筋が内側の異物を揉み上げ、その先端から吐き出される大量の白濁液を受け止めていく。

 

「ああっ、分かる……。腹の中が、あんたの、豚田さんの汁で満たされていくのが、分かる……」

 

 一度の吐精量がコップから溢れるほどの豚田のそれであった。

 通常の消化過程とは逆側から注入されるその液体がもたらす『熱量』が、喜三郎の腹を満たすのだ。

 

「ああっ、まだだっ、まだ出てるぞっ……。ワシの、私の汁が、あんたの腹の中に、出てるぞっ……」

 

 喜三郎に覆い被さった豚田の腰がゆるゆると蠢く。

 そのたびに喜三郎もまた、己の『内側』から生じるすさまじい『快感』を、その全身で味わっていた。

 

 

 ……………………。

 ………………。

 …………。

 

 

「出し尽くしましたか? 豚田さん……?」

「あ、ああ……。済まなかった、白狼さん……」

 

 互いの腹の間、胸まで飛び散った喜三郎の精液は、何時間も刺激され続け、同属のフェロモンを摂取させられていたせいか、普段の倍量近く、80ccにもなる大量のものであった。

 喜三郎の体内深く、豚田の硬い先端から打ち付けられたそれは、およそその4倍以上もの量であったか。

 

「出してこないと、腸壁が吸収できる量では無いはずですじゃ……」

 

 ぼそりと言う豚田の言葉に、喜三郎が尻を押さえつつシャワー室へと枷の鎖を引きずりながら処理をしにいく。

 

「豚田さん、あなたもシャワーを浴びたらどうだ。私の汁だけでも、それなりにべたついているだろう。

 こちらも勃起はおさまったが、まだ太いまんまなのは、やはりフェロモンをずっと嗅がされていたせいと、あなたがそこにいるせいかもな」

 

 処理を終え、シャワーを浴びた喜三郎。

 いつの間にか、ソファーの背もたれが元に戻してある。

 がっくりと肩を落としたかのように見える豚田の姿。

 そこにあくまでも、今のこの状況がさも『普通の出来事のように』声をかける喜三郎。

 用意してあったバスタオルで全身を拭きつつも、確かにその巨大な逸物の太さは減ずる様子は見えない。

 

 豚田の隣にどさりと腰を下ろしたのは喜三郎であった。

 狼獣人の首と、脚。上から下へと、豚田の手が伸びる。

 

 カチャリカチャリと、思っていたよりは軽い響きで、その留め金が外されていた。