戌亥武之進、日の出に立つ

その7 人物や世界観

 

■■登場人物や世界観など■■

 

 

■主な登場人物(年齢表記は数えにて前作時→今作時)

 

●戌亥武之進(いぬいたけのしん)

戌亥家の庶子、母は戌亥家当主、戌亥源三郎が側室の「えん」。

数え14才→25才。

今作時にはその体格も犬族としては大柄に成長し、熊谷家親子との交情も盛んにこなしている。

 

●戌亥源三郎(いぬいげんざぶろう)

かつての戌亥家当主(享年42才→生きていれば53才)。

最後は家屋敷を包囲され、敵軍に囲まれる中、甲子郎とともに奥座敷にて、腹を切った後に互いの首を差し違えて自害。

敵ながらあっぱれと言われつつも、この世を去る。

 

●黒虎(くろとら)

源三郎は「くろ」、武之進は「黒爺(くろじい)」と呼ぶ、戌亥家に仕える忍びの者。

16才時より戌亥家先代との契約を為し、現在56才→67才(この時代としては老人の域に達している)。

庭のものとして己の血を残す行為は避けてきたが、同族からの弟子として「赤虎」「黄虎」がいる。

 

●ふせ

男3人の兄弟に囲まれ、勝ち気に育った源三郎の長女。18才→29才。

形としては生涯独身であった。武之進による戌亥家再興の際には赤虎より知らせを受け、後見となった熊谷家に駆けつけ、戌亥の姓を持った女性として、内外の対応を切り盛りしていく。

 

●赤虎(あかとら)

黒虎の弟子。24才→35才。

戌亥家長女「ふせ」を領外の寺へと逃がす。

その後も猿日和尚とは連絡を取りながら、ふせの成長を見続けていく。

黄虎と同じく、忍びの者として動いている。

戌亥家の凋落により1度は契約が切れるが、熊谷家との仮契約を結び、後に武之進による戌亥家再興の際には再び主従としての契約を結んでいる。

 

●黄虎(きとら)

黒虎の弟子、14才→25才。

武之進と同い年。

戌亥家の凋落により1度は契約が切れるが、熊谷家との仮契約を結び、赤虎とともに忍びの者として動いていた。

後に武之進による戌亥家の再興の際には再び主従としての契約を結んでいる。

 

●熊谷勇剛(くまがやゆうごう)

熊谷家現当主、44才→55才。

熊族の中でも巨大と言われるほどの体格を誇る。6年前→17年前に息子勇一郎とともに、戌亥源三郎、長子源之進と家同士の『契り』を交わしている。

今作では老人とも言える年齢にはなってはいるが、いまだ体力精力ともに衰えを知らない。

 

●熊谷勇一郎(くまがやゆういちろう)

熊谷勇剛長子、28才→39才。

共に暮らし始めた武之進を年の離れた弟のように思い、同盟家としての後見となる(正式な後見人には源三郎より黒虎が選定(通常は忍びの者が選ばれることは無い)されているため、二人後見として黒虎とも契りを行い、杯を交わした)。後の戌亥家の復興に大きく力を貸すこととなる。

今作時には家督を父勇剛から引き継いでおり、正式な熊谷家当主となっている。

 

●狸丸(たぬきまる)

熊谷家庭の者。幻術と変身術を得意とする。

見た目では分からぬが、かなりの高齢らしい。

黒虎と同年齢とも言われるが、老いの兆候は見られていない。

 

●狐火(きつねび)

熊谷家庭の者。幻術、遁走術(撹乱術)を得意とする。

数年前、時代的に忍びの者への需要が減りゆくと判断した長老達により、出身であった忍びの里は跡形も無く消え去っている。そのため、現在は完全に個人としての熊谷家との契約を結んでいる。

 

 

■世界観など

 

●時代・環境背景

獣人世界における戦国時代。各地の武家が複雑な関係を切り結ぶ中、様々なレベルでの合戦が起きていた時代。

戌亥家は近隣の熊谷家と盃を結び(双方の当主と(生存していれば)嫡男が入り乱れて性交し、その血を一つのものと見なして互いに協力体制を築くこと)、周囲地域の覇権と安定を目指していたが、東方の猪西家を頭目とする巨大な勢力に目を付けられ、周囲を包囲されていた。

圧倒的な数の圧力に熊谷家も助けに入ることが出来ず、負け戦になるということは戌亥家の当主、戌亥源左衛門も充分に理解している。最後に戌亥家の気概を敵に見せつけようと年長の息子の一人だけを供に、敵軍を迎え撃つことになった。

 

●種族と「家」

犬、猫、鼠、虎、獅子、猿、鷹、烏など、多様の獣人種族がいる世界。

単一種族のみで構成された集団(家)もあれば、使用人等に他種族のものも採用している集団(家)もある。

生殖行為は同一種族間のみで行われるため、逆に異種族間における子を成さない性的な行為も盛んである(ときに異種族姦による『混じり者』の発生もあり)。

特に武家の間では、同一種族の異性との行為は、子を成すためのものと割り切り、戦友や上下関係の中での同性間での性行為は普通に行われていた。

 

●元服

それまでは稚児として慈愛と庇護の対象であった男子が大人の仲間入りをし、正式な名を持つことが許される契機となる儀式。

各家によってもその時期はバラバラであったが、おおむね12から18才の間で行われている。

各家、各種族によって儀式に当たっての通過儀礼は様々ではあるが、犬獣人にあっては一般的には『耳の形を整える』行為が行われている。

成人の凜々しさに垂れた耳は相応しくないとの風潮があり、ピンと立った耳朶を理想として、耳朶に刃を入れその形を整えられる儀式。

主に父親や同性男子の兄の手によって為されることが多い。『耳に刃を入れられる』『耳を整える』などとの表現もあり。

元服の披露より2ヶ月前ほどに行われ、様々な民族に見られる割礼や刺青の風習と同じく『痛みに耐えたものこそが集団の中で認められる』行為と言えよう。

この風習によって犬獣人の中では、成人に対しての『耳の垂れた者』という言い方は侮蔑語となり、元服前の子どもに対しては『可愛らしい・子どもらしい』と意義を同じくする。

また『まだ耳の形も整わぬ者』とは、元服前の子どもを指す言葉となる。

今作で武之進が身を寄せる熊谷家においては『精通した睾丸に朱の入れ墨を施し、その痛みに耐えた証拠として以降は睾丸に毛が生えるたびに剃り上げておく』ことが元服の証とされている。

 

以上