その5B 藤堂家にて
「動くなっ! 警察だっ! 両手を挙げて跪けっ!」
「なっ、なんだっ!
「被害者確保しましたっ! 通報者確保しましたっ!」
「君っ、大丈夫かっ! 酷いことをされたな……。んん、君は、もしかして四辻君か?」
「あ、師範代……。俺、俺、なんか薬を飲まされたり嗅がされて、頭がボーッとしてて……」
「大丈夫だ、四辻君。大丈夫だ……。おいっ、被害者は俺の知り合いだっ。家に連れていく。俺に任せろっ!!」
覆面パトを回したのは藤堂御蔵。藤堂禄郎の父、現職の警察官である。
真人に取っても自分が通っていた道場の師範代であり、その顔は安心を呼び起こすものであった。
果たして、最初に藤堂禄郎という父親が警察に勤務している同級生に話しをしていたのは、柳原信雄であった。
彼は藪のグループからの脱会をかねてから願っており、警察にルートを持つ同級生にと相談を持ちかけていた。
2人の計画では、グループの犯罪が確定した時点で現在地情報を柳原から藤堂禄郎へと送信。禄郎から父親である警察官、藤堂御蔵へと情報が流れる算段であったのだ。
本来であれば、いつもの流れで藪が3人にスマホの提出を求めた際に、こっそりと一回だけのクリック動作を行うはずであった。
その動作に失敗したのか、あるいは提出のタイミングがいつもと違い、動揺したせいか、柳原が意図した結果とはなっていないことは、彼の表情から明らかであったが、どうにか隙を見てのチャレンジがなんとか成功していたのだ。
グループの一員、柳原からの通報を受けた禄郎が、あらかじめ打合せをしていた御蔵へと伝え、急遽突入班が組織された。
通報がいつ、どこから為されるかはまったくの未定である。
そのために延々と警察官達を待機させるというわけにも行かない。
タイミングが悪ければ、父である御蔵が別の現場へと出動してしまっていれば、初動体制に遅れが出る。
かねてより目を付けていたグループの摘発ということで、すでに4人の身体的特徴は頭に入れていた突入隊ではあったが、現場到着が『間に合った』のは実に幸運なことであった。
突入隊の指揮官でもある藤堂御蔵が柳原を藪と酒井から引き離したのは、現場突入マニュアルにおいての内部通報者の保護として、当然のことでもあったのだ。
「親父さん、禄郎っ、いるかっ?!」
「親父っ、大丈夫だったのかっ? って、真人じゃないか?!」
「うちに来ておった、確か、四辻君か、彼は?」
「ああ、そうだ。ロクからの連絡で該当の家に急行したら、四辻君が監禁されていた。事情があって、署では無くうちに連れてきた」
若い肉体を覆っていた毛布を御蔵が剥ぎ取る。
見事なその肉体の中心には頭を振り立ていななく逸物が、とろとろと先走りを流し続けていた。
意識がぼやけたような真人に親父さんと呼ばれた老人、藤堂禄郎の祖父、藤堂御蔵の義理の父であり藤堂道場の師範の藤堂梓郞が活を入れる。
「真人、裸で……。って、意識が戻らないっ!! それになんだ、チンポがすげえおっ勃ったままって……」
「それがここに連れてきた理由だ」
息子、禄郎からの連絡を受け、先ほど現場を押さえた藤堂御蔵。
元々警察としても目を付けていた藪のグループであった。
これまでの彼らの悪行も県会議員の重鎮である藪の父親によって、何度も軽い処罰で済まされてきていた。
警察組織としても面子を潰されていた『恨み』とも言えるものが、あったのである。
御蔵のがっちりとしたその体躯は、まさに柔道の経験者であった。
義理の父、藤堂梓郞が師範である道場の師範代理であり、その息子、藤堂禄郎もまた、幼少期から畳の上を居場所としてきた柔道一家である。
「御蔵っ、この匂いは!」
「ああ、亜硝酸エステル類の、例の奴の一種だろう」
亜硝酸エステル。
真人が強制的に嗅がされたこの薬物は、心臓を取り巻く冠血管の拡張、平滑筋の弛緩を作用として、我が国でも所持が禁止となるまで、吸入による吸収か可能な一部のものについては性的な興奮剤としても使用されていた。
警察組織の一員である御蔵、青少年の更生保護活動にも関わっていた藤堂梓郞に取っても、馴染みのある薬物の一つであった。
「なんだよ、それ? 俺にも分かるように説明してくれよ、親父っ、爺ちゃんっ!」
「もう15年近く前のことで、お前が知らんのは当たり前だ。当時の中高生の間で流行った薬物で、うちの道場生の周りでもちらほら使う奴が出て来ていた。
俺も親父さんもそれなりに子ども達の対処をせざるを得なくなり、そのときに色々と勉強して知った薬物だ」
たとえ性的な興奮剤としても、せいぜい数回の吸入によってその効果が存分に発揮される薬物である。
それを2時間近くも連続して強制吸入させられた真人の意識の混濁は、なまなかなことでは戻らない。
「そんなの飲まされて、真人はどうなるんだよっ!」
「一晩経てばおさまるとは思うが、おそらくは凄い量を吸わされたようだな。本人の意識が上がってこないのは、そのせいだろう」
藤堂禄郎にとっては、言葉の意味は理解出来ても、それがいったいこの状況のどこに関わっているのかは、まだ認識できていない。
「まさかこれを、ずっと嗅がされておったのか、四辻君は!」
「そのようだ……。どうやら勃起薬も飲まされているらしい。このままじゃ署に連れ帰ると好奇の目に晒される。彼はまだ若い。強引にだが、うちで保護する形にして連れてきた」
祖父と父の会話を聞いていた禄郎であるが、その会話の意味を理解しろというのは難しいことだ。
「親父、爺ちゃん、何を言ってる? 真人の奴、何をどうされたんだ?!」
「よく聞け、禄郎。四辻君はお前の同級生が加わっているかなり質の悪いグループに拉致され、勃起薬と興奮剤を飲まされた上に、おそらく何時間も性的な拷問を受けている」
男に取っての性的な拷問。
少なくとも『お役士渡し』と毎日の『お務め』、されには遠い親戚にあたる藤原家との『二竿下ろし』を経験している藤堂禄郎にとり、そのなんたるかだけは理解出来たようだ。
「なんだよ、それ……。そんなことが許されるのかよ!」
「許されんからそいつらは逮捕されたんだ。俺はまた署に帰らんといかん。お前とお義父さんに、四辻君の対処を任す」
「対処って、病院に連れて行かなくていいんかよ!」
「おそらく、四辻君のこの状態は、病院ではどうにもならんのだ」
御蔵の判断は正しかった。
「その、親父、柳原君はどうなる?」
「彼もグループの一員だ。それはどうにもならん事実だろう。だが、お前を通して通報に協力してくれた。その点は強調しておく」
「頼んだ、親父……」
「ああ、出来る限りのことはやっておく……」
禄郎もまた、御蔵と同じく現実への対応力が高いタイプのようだ。
一瞬にして切り替えたのか、目の前の現実へどう対処していくかへと思い直す。
「俺や爺ちゃんは、何をすればいい?」
「彼はおそらく、勃起した性器にリングを嵌められ、一度も射精が許されないままにかなり強い性的な刺激を受け続けてたようだ。
薬がそれに輪をかけて、現在の彼の持続性の勃起と意識の混濁を引き起こしているんだと思う」
自らも構造は違えど藤堂家、藤原家に伝わる『務めの香』を体験した禄郎である。
父の言葉の意味は、正確に理解することが出来たようだ。
「それって、射精させれば治る、落ち着くってことなんか?」
「おそらくはそれもかなりの回数が必要だろう。この体格と若さでお前が同じ状況に追い込まれたらどうされるといいか、考えると分かるだろう」
「……」
己が初めて『務めの香』を経験したその夜。
果たして何十回の吐精を為したのか、思い出す禄郎。
「親父さん、禄郎、頼んだぞ」
「ああ、分かった、親父……。俺と爺ちゃんで、そのなんとかしてみる……」
「キツいことだとは思うが……。本当に済まん……」
「親父が謝ることなんて、なんも無いだろう。真人はうちの道場生なんだ」
「お前ならそういってくれると思ってた。では、親父さんも、頼みます」
「ああ、こっちのことは気にせんでいいから。四辻君はまだ若い。後始末をしっかりしてやってくれ」
「ああ、最善を尽くす」
御蔵を見送った祖父である梓郞と孫の禄郎。
2人は1階の梓郞の部屋へと真人の重たげな身体を運び入れ、敷き布団の上にと横たわらせる。
「爺ちゃん、これ、あのときの俺と同じって考えでいいんだよな?」
「ああ、そうじゃな。お前も確かあのときは、日を跨いでじゃああったが40回近くイったんじゃったか?」
「うん、確かそのくらいは……。親父だって確か30回近くはイってたと思うし」
禄郎が『お役士渡し』にて初めて『務めの香』を使って父の梓郞と道場で盛り合った
「さて、どうするか……」
「口で、ってのが一番だよな、たぶん」
「そうじゃな……。大丈夫か、禄郎。儂と御蔵、晧波君、沙吉君以外のものとはやったことがないじゃろう」
「爺ちゃん、大丈夫。今の俺、たぶん何でもやれる」
禄郎は禄郎で、これほどまでに後輩を痛めつけた者達への怒りがあるのだろう。
それは自らが選択するべき行為の正当性を保つためにも、真人と同じく若い禄郎にとっても、必要なものであった。
「汚れそうじゃな……。禄郎、お前も脱いでおくがいい」
「分かった、爺ちゃん……」
越中褌とボクサーブリーフだけの姿になった2人が、真人の逸物へと手をかけた。
「爺ちゃん……」
「最初は儂がやろうか、禄郎?」
「いや、真人は俺の後輩だ。俺からやるよ」
禄郎と真人。
二つ違いとは言え、少なくとも中学時代までは学校でも道場でも一緒に育ったようなものであった。
「無理はするなよ、キツかったらすぐに儂が代わるからな」
「うん、ありがと。爺ちゃん。爺ちゃんは真人に声をかけてやってくれ。思う存分、イっていいんだぞって……」
「ああ、そうじゃな。何時間もイかせてもらえなかったんだろう。最初は濃いのがあっと言う間に出るじゃろうから、喉に詰まらせんようにしろ、禄郎」
祖父梓郞の言葉に頷きながら、禄郎がその顔を勃起した真人の逸物へと寄せていく。
梓郞の言う通り、父と祖父、さらには藤原家の2人以外には、他の男の逸物を口にしたことの無い禄郎であった。
それもまた、初回に『務めの香』という藤堂家に伝わる強力な催淫剤を下にしてのものである。それは梓郞にしても同じことではあったが、それ以降の交わりの回数と、人的な意味での『数』という点においても、更に上の世代との性的接触のある梓郞と御蔵の方が『こなして』きていたことは間違い無い。
「真人、俺の口で、存分にイけよ……」
呟いた禄郎が、その口で真人の先端を包みこんだ。
じゅばじゅばと卑猥な水音がすぐに響き始める。
前戯などというものの一切無い、ひたすらに吐精を促す禄郎の手と口の動きは、それまで半日近くの寸止めを喰らっていた真人の情欲を、解放への高みへと上り詰めさせていく。
玉を揉み、肉棒を扱き、先端を舐め回す。
上半身を担当する梓郞は、その舌先で盛り上がった胸筋の頂点を甘噛みし、若者の肉体の性感帯をなぞっていく。
「あっ、あっ、ああっ、イくっ、イくっ、イくっ……!」
「出せっ、真人君っ、禄郎の口に出すんじゃっ!」
「むぐっ、ああっ、はあっ、はっ、はっ、ああああっ……」
先程までは許されなかった無意識下に行われる腰の蠕動。
そのわずかな上下の動きを支えるように、禄郎の尻に回した手がより深くと真人の腰を押し上げる。
喉奥に迸る大量の濁り汁は力強い喉仏の動きとともに、年のそう変わらない禄郎の胃の腑へと流れ込んでいった。
「あっ、ろ、禄郎さん……。ああっ、すみませんっ、俺っ、俺っ……」
吐精の瞬間、混濁した意識がわずかに戻ってきたのか。
真人には自らの顔を心配そうに覗き込む梓郞の顔と、己の肉棒をしゃぶり上げている禄郎がその目に映る。
「俺っ、俺っ、変なこと、色々やられて……。ちんぽがぜんぜん萎えてくれなくて、すみません。すみません、師範っ、禄郎さんっ……」
逮捕劇からの状況が少しは飲み込めてきたのか、涙を流さんとするかのような勢いで、真人が2人に謝罪の言葉を述べる。
その逸物が激しく大量の精汁を吐き出しても、まったく萎えようとせず、相変わらずも大量の先走りを溢れさせていることも分かっていることだろう。
「なにも言うな、真人。親父から聞いて、お前が何をされたか全部分かってる。俺と爺ちゃんで楽にしてやるから、黙ってやられとけ」
「そんな、し、師範まで……」
「御蔵の奴も、分かってここに連れてきたんじゃ。真人君、儂等2人に身を任せて、とにかく落ち着きなさい」
「やっぱりぜんぜん萎えないな……。爺ちゃん、まずは俺がやれるとこまでやってみるから、その後交代してくれ」
「ああ、分かった。朝までかかりそうじゃの、これは」
はたして梓郞の予感は的中する。
26回目の吐精は何度も入れ替わった末の禄郎の口によるものであった。
「お、萎えてきたか。やっとじゃったな……」
「ああ、爺ちゃん……。その、俺、真人のを飲んでるだけで、その……」
「分かっちょる。藤堂の男なら、もう仕方が無いことじゃ。儂ももう溜まらん。どれ、一丁互いにしゃぶりあうかの……」
「う、うう……」
「大丈夫か、真人。頭ははっきりしてきたか?」
「禄郎さん、俺……」
「良かった、良かったな、真人……」
半裸の禄郎が、素っ裸の真人を抱きしめる。
幼少期をともに過ごした弟分の無事が分かって、一気に気が緩んだのだろう。
腰を抜かしそうになる自分の肉体を、真人に投げかけた、とも言える。
130キロ近い禄郎の身体が、100キロの真人のそれと重なった。
「禄郎さん、その、きっと俺のなんだろうけど、その、禄郎さん、精液臭いです……」
「はは、大丈夫そうだな、真人。だいたいのことは分かってるか?」
「うん、師範代が助けてくれて……。後は、その、俺のチンポを師範と禄郎さんがしゃぶってくれて……」
真人の方も、どうやら現状の認識は出来ている。
「そこまで分かってりゃ上等だ。よかった、とにかく良かったな、真人」
「本当にありがとうございました。俺、あのままだったらどうなってたかと思うと……」
「持続性の勃起は血流が逆に滞って傷害となることもある。そう言う意味では御蔵の判断は間違って無かったということじゃな」
梓郞もまた疲れが顔に滲んでいる。
2人して『務めの香』の力を借りずに、一晩中、真人の逸物をしゃぶり続け、噴き上がる精汁を飲み込み続けていたのだ。
「師範、禄郎さん……。2人とも、勃ってる……」
「ああ、お前のをしゃぶってる内に、俺も先走りだらだらだ……」
「禄郎さん……?」
「ああ、その、変な話しだけど、俺も爺ちゃんも、そして親父も、『こういう』のにかなり『慣れて』るんだ……」
ばつが悪そうな禄郎ではあったが、梓郞の表情はそこまでも無いようだ。
ある意味、この手の状況への『慣れ』を引き起こす経験が、その年齢と社会状況からして禄郎よりも遥かに豊かであったのかもしれない。
「済まんが、真人君。儂も禄郎も、何発か抜かんと落ち着かんのだ。目の前で儂らのを見るのも気持ち悪かろう。動けるようなら、風呂でも入ってこんか?」
梓郞の気の使いようはもっともなものだった。
いわゆる『戦友愛』というものが語られていた梓郞の父の時代ならばいざ知らず、現代において祖父と孫のしゃぶり合いを好んで注視しようという若者は、『普通』はいまい。
「師範、禄郎さん……。俺にお2人のチンポ、しゃぶらせてください」
「何を言っとるんじゃ、真人君?!」
「そうだ、真人。俺や爺ちゃんはかなり『特別』なんだ。その、詳しくは言えないけど、お前が俺達のをなんてのはぜんぜん考えなくていいんだぞ」
真人の心境の変化は、禄郎と梓郞にも理解出来ないことである。
だが2人にも理解出来たのは、真人の真剣さという一点であった。
「いいのか、真人……」
「俺が助けてもらったんです。俺の意思で、師範と禄郎さんのちんぽをしゃぶります」
顔を見合わせる2人。
そして、それでも萎えない互いの下半身を見やる2人。
「師範、布団に寝てください。それとも立ったままの方がいいですか?」
「横にならせてもらおうかの。さすがにこの年で、一晩中ちゅうのはちとキツくてな」
「禄郎さんも寝てください。手と口使って、2人一緒にやります」
「あ、じゃあ頼むか……。って、俺達、すごい会話してるよな……」
布団に横たわった祖父と孫。
その足元には真人が腰を下ろす。
両の手に2人の勃起した逸物を握り、まずはその頭を禄郎のそれへと沈める。
四辻真人に取っての同性の性器を咥えた『初めて』は、柔道の師範と先輩道場生のものとなったのだ。
了