射精管理 ある柔道青年の場合

その1

 

その1 告白

 

「ロク君、僕、もう、怖くって……」

「分かった。でも、教えてくれたこの案件。今度何かあったら警察にって、君もその、罪に問われることになるんじゃないか?」

「……たぶん、というか、そうなると思う。でももう、僕はこれ以上『加害者』として罪を重ねたくないんだ。

 通報したから許してもらえると思ってるんじゃ無い。そのときにはきちんと捕まって、これまでの僕の罪を、すべて償っていきたいと思ってる」

 

 2人の青年が、それなりに賑わっているファミレスの奥の席で小声で話し込んでいる。

 2人の風体は、大学生あたりのようにも見える。

 あまり明るい話題では無いようだ。

 

「考えてるんだよな、色々……。ただ、話しを聞いた限りだと現行犯じゃ無いと難しいんじゃ無いか、それって」

「うん、だから、次に何かあったときロク君にどうにかして知らせるから、その、お父さんにお願いしてみてほしい」

「でも、そいつもけっこう警戒心強い奴なんだろう?」

「うん、会話や文章のやり取りはまず出来ないので110番への緊急通報も無理だと思う。それでもロク君に場所を伝えるだけなら出来ると思うから」

 

 2人がスマホを何やら操作し始める。

 どうやら相談を持ちかけたほうが、若干機械には詳しいようだ。

 

「これで、位置情報が出るので、なんとか警察に繋げてほしい」

「これ、俺に伝えてきてくれたときは、もう物事が始まってる、進んじまってるってわけだよな」

「言葉や態度での脅迫時点だと『弱い』と思うから、それ以上の状況に進んでから……。そしてそれを『確実に』ってなると、どうしてもそうなると思う」

「……分かった。親父にも相談しておく」

「ごめんね、ロク君。こんなこと相談できるのは、君しかいなくて……」

「……その、色々と『間に合う』といいよな」

「うん、もちろん、仕方が無いときは諦めるしか無いし、バレたらどうなるかも、分かってる」

「気を付けろよ」

「ありがとう、ロク君……」