勝者の栄光・敗者の無惨

その1

 

その1 特攻服の親父達

 

「さあ、いよいよ選手入場だっ!

 まずは、青コーナーっ! 青井真伍(あおいしんご)~!!

 42才、175センチ、98キロ~! 勃起時のペニス、長さ21センチ、最大直径5.5センチっ!。

 これは稀に見る巨根かっ!!

 デカい! 太い!

 特攻服の股間が小山のようだ!

 そしてそしてっ、なんと青井選手は、我が町が誇る『或仁希組(アニキ組)』の現役若頭だーーっ!」

 

 町役場前の広場。

 そこに設けられた特別リングに上がる、素肌に身に着けた青い特攻服の上下。駈け上がったのは、きりりと刈り上げた短髪に重量感溢れる見事な体躯の40代の男。

 小山のように盛り上がった股間が内容物の豊かさを物語っている。

 観客の声援に片手を上げて応えた男が大きく身体を揺すりながら、対戦相手を待つ。

 コーナー下のリングサイドで固まって応援している連中の外見は、それこそまさにヤクザ者の集団かと見紛うほどの荒くれ達。

 

「続いて赤コーナーっ!

 赤司恭一(あかつかさきょういち)~!

 48才の170センチ、89キロ~! 勃起時のペニスは長さ18.5センチ、最大直径5センチだ!

 こちらもデカい! デカいが、青井選手にはさすがに及ばぬか!

 深紅の特攻服、深紅の褌に秘められたその逸物の御開帳が望まれる!

 皆さんご存じ、代々続くこの町の職能集団、赤司工務店の三代目社長だ~!!」

 

 こちらも割れんばかりの拍手が颯爽たる入場を後押しする。

 胸板が覗く真っ赤な特攻服。その背中には『赤司工務店』のくっきりとした刺繍文字が浮かび上がる。

 相手コーナーと同じく、同僚なのか連む仲間か、鳶服特攻服の目立つ集団が盛大に指笛を鳴らす。

 こちらも目立つ臍下の膨らみは、どうやら平常時とは思えぬ昂ぶりを示すものか。

 

「どちらが勝っても負けても恨みっこ無し。この町の未来と町民の福利厚生。さて、勝負の行方は如何にっ!!!」

 

 3月末、海を渡り、この港町に吹き渡る風は、まだ冷たい。

 それでもリングを取り囲む広場の熱気は、真夏の暑さとも言えるほどに盛り上がる。

 深紅と濃青の特攻服が、晴天の空にその鮮やかな色合いを見せ付けているかのようだ。

 

 互いに観客へのアピールを済ませた2人が、トレードカラーの特攻服を脱ぎ捨てる。

 

 背の高さは違えども、鍛えられたバルクを観客の面前に晒す2人。

 ずっしりと豊かな筋肉と年相応に覆った脂肪。その肉感的な裸体を赤と青に染められた六尺褌だけが、猛々しい前袋の膨らみとともに覆っていた。