その1 合宿の誘い
「うおっ、山崎っ! そ、それっ、たまらんっ……」
「西田っ、もっとチンポしゃぶってくれっ! 俺の金玉っ、もっと強く握ってくれっ!」
「こうか? 山崎? こうか?」
「ああああああっ、玉がっ、玉もチンポもっ、気持ちいいっ! 西田にチンポしゃぶられて、金玉握られてっ、気持ちいいっ!」
施療室に中年男二人のよがり声が響いている。
白いシーツが敷かれたマットの上、69の体制で目の前の互いの股間を、いじり、しゃぶり、しごきあっている二人。
もう1時間近く、男達の絡み合いは続いていた。
「山崎さん、いいですよっ。もっと自分の欲望に正直になって、西田さんにやってほしいこと、感じることを伝えてください」
「西田さん、もっといやらしいことしたいんじゃないですか? やりたいこと、したいことを口に出して言ってください!」
こちらは横たわった二人を挟むように座った、毛深い太鼓腹の中年男と、日に灼けた肌にむっちりとした肉体をした30代らしき青年だ。
二人とも横たわって相手の肉棒をしゃぶりあっている男達同様、一糸まとわぬ姿で自らの逸物をゆるゆるとしごいている。
「ああ、もっとしゃぶってくれ、西田。私のチンポ、しごいてしゃぶって、イかせてくれっ……」
「山崎、すげえ、お前のチンポ、うめえよ。先走りもすんげえ出てる。イくときは、イくときは俺の口に出してくれっ!」
裸でマットに横たわり、かんかんに勃起した逸物をしゃぶりあっている二人。
典型的な中年太り、ずっしりとした腹回りをした男は、山崎登(やまさきのぼる)、42才。
学生時代に山岳部で鍛えた筋肉の蓄積は、サラリーマンとして過ごして来た年月にだいぶ消費されてはきていたが、それでも風呂や温泉などでは今でも「いい身体をしてるな」と周囲には言われる体格だ。
股間の逸物は普段は亀頭の鰓が隠れるほどの包皮に覆われているが、勃起した今現在はすっかり剥け上がり、プラムのような先端からとろとろと先走りが溢れ出ている。
山崎の逸物に喰らい付き、じゅぽじゅぽと卑猥な音を立てた尺八に没頭しているのは、西田隆志(にしだたかし)、41才。
肉付きのよいがっちりとした身体は滑らかな肌の袖下と首顔が日に灼け、典型的なゴルフ灼けの模様を描いている。年は1つ違うが、山崎とは学年としては一緒のようだ。
あえぐ男達の横にあぐらに腰を下ろし、それぞれ己の逸物をゆっくりとした手つきでしごいている二人は、ここ「野村クリニック」のスタッフだ。
全身が剛毛に覆われ、でっぷりと突き出た腹にも黒々とした毛が渦巻いているのは、クリニックの院長であり、山崎と西田二人の主治医である野村医師であった。
中年の男達の中、一人青年の面影を残す30代の男は、野村医師と二人でクリニックを切り盛りする田畑看護師。
半年と少し前、EDの不安にかられた山崎はゴルフ仲間の西田の薦めに従い、この「男性専科 野村クリニック」の扉を叩いた。
2週に一度の個別診療、クリニックを紹介してくれた西田を伴っての月に一度のグループセラピーで、だんだんと山崎のインポテンツも回復傾向を見せてきている。
とりわけ、最初の通院から半年ほど経った、先月の野村医師の先輩でもある玉井医師を迎えてのセラピーでは、医師達の研究成果でもある扇情興奮剤を利用したセッションで、なんと生まれて初めての短時間に2桁近い吐精をするまでになっていたのだ。
先月のセッションから一ヶ月、今日のセラピーも山崎と西田の絡みを野村医師と田畑看護師が「指導・助言」をしながら進められている。
男性の性的な疾病をメインに扱うこの「野村クリニック」では、ED治療にあたって精神的な支援や物理的な治具の使用、医師や看護師と一緒になって性機能開発の実践を積むことで成功体験を重ねること、あるいや薬物を使った治療など、多種多様な試みにて勃起不全の治療を行い、その界隈において高い評価を得ている。
今回のセッションは、野村医師の先輩でもある玉井医師が開発を進めている薬剤を使って、山崎、西田の患者二人だけでなく、野村医師、田畑看護師も欲情のボルテージを最大限に上げて臨んでいた。
4時間近くにわたったセッションではすでに山崎と西田は2度の射精を済ませ、さらなる欲望の炎に身を焼いている。
野村医師と田畑看護師はいまだ射精にはいたってはいなかったが、その溢れ出る先走りは股間から流れ落ち、シーツの染みは顔ほどの面積へと広がっていた。
山崎と西田のクライマックス、3度目の射精は迫っているようだ。
「先生っ、田畑君っ! 二人のザーメンも欲しいですっ! 私達の顔にぶっかけてくださいっ! 私達がイくときっ、一緒にっ、先生達も一緒にっ!」」
「ああっ、山崎の言う通りだっ! 野村先生のもっ、田畑君のもっ、飲みたいっ! 飲みたいから、口にっ、口に出してくれっ!」
山崎も西田も、もう堪えきれなくなっていたのだろう。
懇願された医師と看護師が、顔を見合わせる。
「二人が二人とも、僕達の汁が欲しいって言われてますけど、どうしましょう、先生?」
「困ったな。69の体制でイきたい、互いの汁を飲みたいってことなので、ぶっかけるところも2カ所になってしまう」
切羽詰まった二人に対し野村医師と田畑看護師の返事はのんきなもので、イく直前の二人を焦らすことを楽しんでいるようにさえ見える。
「ああっ、先生っ、そんなこと言わないでっ! もうイきそう、イきそうなんですっ!」
「俺もだっ、田畑君っ、野村先生っ、二人とも、俺達にぶっかけてくれよっ! もう、もうイッちまうよっ!」
そう言いながら、山崎と西田、二人の舌と手の動きは止まらない。
「先生、山崎さんも西田さんもああ仰ってますけど、どうしましょうか?」
「うむ、仕方ないな、田畑君。仕方ないので、私が山崎さん、君が西田さんの顔にぶっかけるか。その代わり、お二人とも飲み込まないでいて、口の中に精液を溜めたまま、終わった後、4人のキスでザーメンを交換して飲み合おうじゃないかね」
「おお、先生、それすけべでいいですね! じゃあ、僕は西田さんの方でイかせてもらいます」
「早くっ、早くっ、先生っ、私ももう、イきそうですっ!」
「俺もだっ、田畑君っ、早くこっちに!」
「ほら、山崎さん、名前をきちんと呼ぶというルール、忘れてますよ。西田さんは田畑君の名前、ちゃんと言えてるようですし」
野村医師がにやにやと笑いながら、山崎を焦らす。
医師が指導するセラピーにおいて「相手の名を呼ぶ」「欲望を言葉にして相手に伝える」というのは最重要視されている規定項目だ。
「ああっ、野村先生っ! お願いしますっ! 顔にっ、私の顔にっ、野村先生の精液をぶっかけてくださいっ!」
「了解ですな。田畑君もいいか?」
「はい、先生。ずっと山崎さんたちの交わり観察するだけだったので、もう先走りもずるずるでいつでもイけます」
野村医師が膝立ちになり、西田の尻側、山崎の顔の前に、田畑看護師が逆側の西田の顔の前に、それぞれの股間を持っていく。
「自分でしごいている分、私達の方がコントロールが出来る。山崎さん、西田さん、二人でタイミングを合わせて、イくときには合図してください。私も田畑君も、それに合わせて射精しますから」
「あっ、もうっ、もうイきそうですっ! 早くっ、早く!」
「俺もだっ! もう我慢出来んっ! 田畑君っ、こっちにこっちに!」
「いいですか? 僕はいつでもイけます!」
「おお、私もだっ。山崎さん、西田さん、いつでもいいです! 快感の最高点で、射精してください!」
山崎は目の前の西田の逸物をしゃぶりながら、毛むくじゃらの野村医師の股間が視界に入ってくる。
西田は山崎の亀頭をねぶり鈴口に舌先を差し込むその視界に、田畑看護師のむっちりとした下腹部を捉える。
しごき、しゃぶられるという物理的な刺激に、さらに加えられた視覚的なインパクトは、二人の放埒に最後のトドメを差すものだった。
「ああっ、イきますっ、イくっ! 西田の口にイくっ!」
「俺もっ、山崎のザーメンが飲めるっ! 田畑君のチンポ、すごいよっ! かけてっ、かけてくれっ!!」
「おおおおっ、私もイくぞっ! 山崎さんの顔に、顔に出すぞっ!」
「僕もイきますっ! もうダメだっ、イくっ、イくーーーーーーーーーー!!!」
4人の男達による、盛大な射精だった。
山崎と西田は互いの口と顔に、野村医師は山崎の、田畑君は西田の顔面に、それぞれの男の証を大量に叩きつける。
これまでの山崎と西田の射精で周囲に漂っていた雄の性臭がいっそうその濃度を増し、男達の汗匂いと体臭に混じっていた。
「はっ、はっ、はあっ……。すごい……、すごかった……」
「へへ、3度目のはずなのに、山崎にしゃぶられてると思うと、またすごくイっちまったよ」
顔中を雄汁まみれにしながら、ごろりと天井を向く山崎と西田。
その二人に医師と田畑君が手を貸し、上体を起こさせる。
「ふふ、お二人とも私達との約束を忘れてもらっては困りますよ。私と田畑君に、二人の精液も分けてください。まずは私が西田さんの、田畑君が山崎さんの顔を舐め上げて、互いの汁を回収しましょうか」
「山崎さん。山崎さんの顔にかかった野村先生の汁、僕が舐め取りますから、動かないでくださいね」
顔中をべっとりと汚した精液が、医師と田畑君の舌で丁寧に舐め取られていく。
山崎の口中には西田の汁が、西田の口中に山崎の汁、野村医師と田畑看護師の口中にもそれぞれ相手の汁がたっぷりと溜め込まれる。
「4人でキスしながら、混ぜ合いましょう。私が合図するまで、まだ飲み込まないように」
野村医師が指示を出し、4人の顔が近づく。
唾液と精液の混ざったどろりとした汁を乗せた舌先が、互いに絡みあった。
「うはっ、匂いがすごい……」
「うめえっ、みんなの精液、うめえっ……」
「先生の汁が、みなさんの口にっ……。エロい、エロ過ぎます」
「おおっ、みな汁を溜め込んでて、すごいですね。汁をたっぷり混ぜて、お互いやり取りをしましょう」
交情での快感について、互いの感想を述べ合うのは、セッションの基本として決められていたことだった。
口中の粘液をこぼさぬよう、みなが少し顎を上げながら言葉を紡ぎ出していく。
べちゃ、びちゃ、ぶぶぶぶ。
空気の漏れる卑猥な音が水音に混じる。
3度の射精を終えた山崎と西田のペニスはさすがに硬度を失ってはいたが、それでもまだゆったりとした太さは維持している。
野村医師と田畑看護師の逸物は、相変わらずかんかんにおっ勃ったままだ。
セッションの時間も終わりに迫った中、医師と看護師は山崎と西田が帰った後、二人で楽しむことになるのだろう。
「全員のが混じったかな? では、飲み干しましょう」
ごくり、と、4人の男達の喉が鳴る。
喉仏の上下運動が、その嚥下の確かさを証明していた。
4人の男達が身繕いを終え、椅子に腰かけての本日の振り返りとなった。
「今日のセラピー、山崎さんも西田さんも、お疲れ様でした。
今日は主に、山崎さんと西田さんに、口だけを使った射精、手でのしごき上げだけの射精、最後に手と口両方を使ってのそれと、3回の射精を経験してもらいましたが、セッションを終えて、どうでしたか?」
毎回のセッションの感想をきちんと口に出すよう求められるのも、このクリニックでの定番作業だ。
「口だけでやられたときには、西田との最初のグループセラピーを思い出して興奮しました。手でのしごきは西田のテクニックすごいと思いましたし、最後のは先生達の顔射も味わえて、ものすごく満足しました」
「俺は山崎のを自分の口だけでイかせられた、最初のがよかったですね。手を使わないとダメかなって思ってたので、しゃぶってるだけでイってくれた山崎には感謝です。田畑君の目の前での射精は、すごく迫力あったなあ……」
通常では「いやらしい」ことだと、なかなか言葉に出来ないことを、恥ずかしがらずに言葉にする。
心的な抑制を除去することで勃起や射精への障害を無くすという、それこそが治療の主軸であるこのクリニックでの方針に、いつの間にか馴れて来ている二人である。
「はい、山崎さんも西田さんも、すばらしい射精が出来たと思ってます。私達も最後に気持ちよくイかせてもらいました。
さて、山崎さんの治療開始から半年以上、西田さんの治療開始からはもう9ヶ月ほど経ったわけですが、お二人の当初の「勃起への不安」はだいぶ解消されてきたかと思いますが、どうでしょうかね?」
「はい、私については『もう勃起しないのか?』『男としてどうなんだ』という不安は解消されてきたかと思います。これも誘ってくれた西田や、先生や田畑君のおかげです」
「へへ、俺の方は勃起もちと不安ではあったんですが、それがどうのこうのよりも『もっとスケベを楽しみたい』ってのがあったのが本音ですね。で、先生や田畑君、この前の玉井先生との奴とか、すごい楽しませてもらってますよ」
「はは、お二人ともいい傾向だと思いますよ。
お二人の状況から見て、次回のセッションからは治療の目的を『勃起能力の改善』から『より深く、相手との性的な接触を楽しむ』ことに切り替えていきたいと思ってます。
もちろん、この二つは分かちがたいものですし、これまでの治療でも必ず内包していたものではありますが、次回からはそれをメインとして治療評価をしていこうと思っています」
「はい、先生がそう判断されるんなら、私に異存はありません」
「へへ、それってもっとやらしいセックスやろうってことでしょう? 俺は大賛成です」
「では、田畑君から、具体的な次回のセッションの内容を説明してもらいます。
これまでの私や玉井先生のマンションなどを使ったような、クリニックを飛び出した先でのセッションになります。さあ、田畑君、お二人に説明を」
「ほお、今度はどこでやるんですか?」
「場所が変わるとまた興奮しますよね。楽しみだなあ」
「はい、では説明させていただきますね。
西田さん、山崎さんが元々ゴルフ仲間ということでしたので、来月のグループセラピーは私達の懇親も兼ねて、『ゴルフハーフラウンドと一泊宿泊における、互いのさらなる性感開発と実践』を考えています。
本当は玉井先生にも参加していただきたかったんですが、地方での講演講師の予定が立て込んでるとのことで、この先二ヶ月ぐらいは難しいとのことでした。
そこで来月のセッションは、山崎さん、西田さん、野村先生と私の4人のメンバーで、土曜日の午前中にゴルフを楽しんで、午後には温泉宿にチェックイン。温泉と食事、夜にはセッションをこなしながら、互いの親睦と治療の目的である性感開発と実践の二日間に出来ればと考えています」
「すごい! なんだか想像しただけで、3回もイかせてもらったのにまた勃ってきますよ!」
「それって結局乱交合宿ってこと……、って、言っちゃいけないんですよね。すげえ楽しみだ」
山崎は思いを素直に伝え、西田は自分の台詞に苦笑する。
治療を終え、服も着込んでいる山崎の言葉に医師が反応した。
「山崎さんも自分の興奮をストレートに表現出来るようになってきましたね。本当にいい傾向ですよ」
「あっ、そういえば、私……」
医師の指摘に改めて自分の言葉を思い出したのだろう。
山崎の顔が真っ赤に染まった。
「お二人とも前向きに受け取ってもらったかと思いますが、スケジュール的にはどうですかね? 土曜は朝から、日曜も帰りに野村先生のマンションでちょっとゆっくりしてからの解散にしようと思うので、遅くなるかと思いますが……」
「あ、私は大丈夫です」
「俺ももちろん、先生達との予定を一番にしてますから」
「では、決まりですね。細かな時間は田畑君からまたメールさせます。
それでは本日のセラピーはここまでにしましょうか。山崎さん、西田さんともに、再来週の個人治療と、来月のゴルフ合宿、楽しみにしておいてください」
野村椅子が座った椅子がぎっと小さく鳴り、太鼓腹を浮き上がらせる白衣が今の山崎に取っては魅力的に映るラインを描く。
山崎と西田がそれぞれの個人通院の予約を入れ、本日のところはお開きとなったのだった。