まだまだ幼いとも言える体躯ではあるが、その骨は太く、肉の厚みを予感させる武之進の裸体である。
真っ直ぐに見つめる黒虎が、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「もう2年もすれば、兄上、お父上にも負けぬお身体となりましょう」
「この私が、父上のような立派な武士(もののふ)になるというのか」
「あなた様の御身体、その中の骨は太く逞しく、腱は強く太い。このような身体をしたものは、その身は厚く、太く、並ぶ者無き益荒男となりまする。それゆえに尻穴もまた深く、私の逸物を受け止めてくれることでありましょう」
代々の戌亥家の男達を見てきた黒虎の言葉である。
己の成長を不安に思う若者にあっては、甘露に等しきものであったろう。
「そうか……。父上のような立派な身体になり、父上とそなたが為していたような、あの快楽に満ちた行為も出来ると言うのだな」
「今宵一夜にてその境地に至れるかは分かりませぬが、ときを経て、互いの肉体の相性を合わせていくことで、それは満足いくものと変化していきます」
「ならば今宵はその手付けじゃ。くれぐれも優しく頼むぞ」
もはや武之進の言葉は黒虎が見つめてきた幼い稚児の、耳の垂れた者の言葉では無い。
そこには自らの心身の状態を確認しつつも、将来にわたりどのような変化が己に訪れるのか、十分に理解したものの決意があった。
もっとも、その『将来』こそが、この場の二人にとって一番不安なものでもあったのではあるが。
「承知いたしました、武之進様。まずは武之進様のお身体を解してまいりましょう」
静かに答える黒虎の目は、武之進の下腹部を見据えている。
「何から、始めるのだ?」
「私が武之進様の逸物をこの口で存分にしゃぶり上げ、武之進様の情欲を昂ぶらせましょう。
その後、今度は武之進様の後穴を私の舌と指で蕩けるほどの愉悦に導きますがゆえ……。
最後に私の逸物をあなた様の尻穴へと導き、その奥深くをこの黒虎の熱き汁で満たしてまいります」
逸物を尻で受ける前に武之進の肉体を昂ぶらせることを選択する黒虎の言葉は、この忍びの者の長年の経験から生み出されたものであるに違いない。
緊張による強張りがいかに貫通を阻害するものなのか。
女体であれ男体であれ、その巨大な逸物と色事の技量にて相手を『堕とす』ことさえ任務としてきた黒虎ならではの言葉であったろう。
「しかと分かった。すべてお主の導きに従おう。その、私は……、口で、というのは源之進兄様の話で聞いたことはあったのだが、初めてなのだ」
「心地よきものでございますぞ。一気に昇天なさらぬよう、お覚悟なされい」
「そう言われても、途中で汁が出てしまいそうなのじゃが」
男同士の交情については、昨夜の互いの逸物の扱き合いしか経験の無い武之進に取っては当たり前の不安であろう。
もちろんそこには、初めて体験する色事への期待も大きく滲んではいるはずであった。
「あなた様も、普段から一夜に幾度も自らをお慰めでございましたでしょう。
たとえ二度や三度、あるいはその倍、数倍の吐精をされたにしても、私の口、指、手、そして逸物での刺激は、あなた様を萎えさせるとは思っておりませぬ。
お父上も、私との交情では一晩に最低でも片手では足りぬほどの吐精をなさっておられました。
何度でも、どれだけでも、いっそこの黒虎の胃の腑に治まりきれぬほどの精汁を、いただきたいと思っておりますぞ」
黒虎の言葉は、武之進の若さと己の技量に対しての信頼から来るものであった。
不敵とも見えるその表情は、たとえ若者が暴発したとしてもすぐさま回復させうる己の手と口の働きを熟知しているがゆえに他ならない。
「相分かった。それでは、黒爺……。頼む」
ゆっくりとした頷きを返した虎獣人が、若者の裸体の前にしゃがみ込む。
犬獣人に比べて短いその鼻先は、逸物をねぶり上げるには適しているのだろうか。
「おおっ、く、黒爺っ……」
犬族の、若く張りのあるその尻を、虎獣人の両手ががっしりと掴み上げた。
昨夜のせんずりの掻き合いと目の前の若茎の固さから、扱く必要はすでに無いと考えた黒虎が、厚く熱く、そのざらついた舌を伸ばす。
ついにその舌が、先露を湛え、まだ開ききらない先端を包み込んだ。
「あっ、ああっ、よいっ、よいぞ……。し、舌でねぶられるのが、このように心地よいとは……」
首を仰け反らせ、あまりの刺激に逃げようとする腰を黒虎の逞しい両腕が押さえ込んでいる。
若者もまた、その伸びやかな肢体をくの字に折り曲げたくなるほどの悦楽を、なんとか堪えている。
それでも最初の絶頂は、すぐにやってきた。
「うおおおおっ、イくぞっ、黒爺っ! よいかっ! 出してもよいのかっ!」
さらに強く咥え込み、その舌先を縦横無尽に蠢かす黒虎。
そこにはそのまま我が口に雄汁を打ち出せとの、命令とも言えるほどの強い意志が見えた。
「ああっ、イくぞっ! 黒爺っ、黒爺のっ、爺の口にっ! イくぞっ、イくっ、イくっ、イくっ!!!!」
思わず黒虎の頭を押さえる武之進。
その動きは、ひたすら『奥』へと己の精を届けんとする、雄の持つ本能とも言えるものであったのだろう。もっともいまだ成長途中のそれは硬度はすさまじいものの、虎獣人の喉奥を突くまでには幾分か長さは足りぬようではあった。
それでも若さゆえの、大量の吐精である。
経験からの予知もあったのであろうか、なんなく呑み込む黒虎の喉仏が卑猥に上下する。
「黒爺っ、そんなっ! イッてすぐはっ、いかんっ、いかんっ!」
直後の先端を舌先でいじくられ、唇と手を使った扱き上げが吐精前よりもいっそう激しく繰り返される。
黒虎としてみれば、無限とも言える旺盛な若者の精力を、まずは一度すべて吐き出させてからの行為をと思ってのことであった。
「あっ、そんなっ、イッたばかりなのに、また、また、イくぞっ、イくっ、イくっ……!!」
玉を揉まれ、伸ばした指先で尻穴をいじられ、しゃぶり上げる黒虎の口中に三度の吐精をした武之進。
「ふふふふ。三度イかれても、まだまだ出したりぬようでござりますな」
「なぜじゃ、黒爺。一人でやるときには、三度も出せば少しは落ち着いていたのじゃが、萎えぬ。萎えぬぞ、黒爺……」
「武之進様の若さもありましょうが、このような場所と時はめったにないこと。そのこともまた、生え反る逸物に力を与えておるのでございましょう……」
黒虎の言う通り、一時たりとも萎えようとしないその逸物は湯気が立ち上るかのように熱を放ち、互いの汗と雄汁の匂いの中で、びくびくと頭を揺らす。
生命の危機を感じた雄の本能か、おそらくは犬族の若者の体内では、熱を持った白濁汁が蕩々と生成されていく。
「前のしゃぶり上げは存分に行いました。三度イかれても、まだまだ出したりぬでありましょう? いよいよ『後ろ』を責めさせていただきますかな」
「ああ、ふぐりの奥からどれだけでも汁が湧いてくるぞ。黒爺、次はどのようにすれば良いのじゃ?」
「床に伏せ、尻を高く掲げてくださいませ。武之進様の『穴』をば舌と指先で存分に潤し、そのすぼまりを私の逸物に相応しいまでに広げましょう」
頭を抱え、四つん這いになった武之進が、自ら尻肉を、その全容を晒すかのように両手で押し広げる。
目の前に現れた未通の窄まりは快感への期待にヒクヒクと蠢き、黒虎の舌を待っていた。
「うああああっ……!」
その部分に味わう初めての感触が、若者に悲鳴のようなよがり声を上げさせる。
これでは近くに追っ手がいれば見つかってしまうな。ちらりとよぎる思いを振り払うかのように、黒虎の舌が蠢き、周辺を舐め回し、舌先に乗せた唾液をその中心へと流し込んでいく。
「ああああっ、あっ、ああっ……」
少しずつ武之進の声の調子の変化を感じた黒虎が、つぷりとその舌先を尻穴へと突き出した。
「くあっ、つっ……。舌か? 黒虎? 我が尻に、舌を入れているのか?」
武之進の声に、頭を離した黒虎が答える。
「ええ、舌先をあなた様の尻穴に入れ、手前の部分を舐め回してまいります。ぬめぬめとした舌先が、心地よいのでございましょう?」
「あっ、あっ、そうだっ、黒爺っ! 気持ちが良いっ! 私はお主に尻穴をくじられ、気持ちが良いのだっ……」
この少年は、自らが感じている悦楽を言葉にすることで、より一層その快感が深まることを直感的に理解している。
それは己が三代にわたって仕えてきた戌亥家の者達に共通するものであった。
実直な性格ゆえか、快楽の追求に関しても実に真っ直ぐに突き進む男達の姿を、数十年にわたって見つめ続けてきている黒虎であった。
再びその頭を尻肉に埋めた黒虎。
舌による愛撫と解しが続き、トロトロと柔らかく緩んできた穴の感触を、黒虎もまた楽しんでいた。
もはや、警戒そのものが無意味。
この洞窟が見つかれば、戌亥家の復興もなにも、すべては露と消える。
なればこそ、この一時を、我が最愛の主君筋のこの若者と、楽しまねば。
それこそが、目の前の小さき若武者の心に応えることとなる。
そう思い切った黒虎であった。
「んっ、つあっ、う、ぐうっ……」
ついには指先を唾液で濡らし、そっと差し入れる。
武之進のよがり声の質が変わる。
「ほら、もう人差し指が根元まで入っております」
「2本にふやしておりますよ。痛みはござらぬか」
「3本目が入りました。後は広げにかかります」
常に唾液を垂らしながら、痛まぬよう、切れぬようにとの黒虎の愛撫が続く。
ついには両手の2本ずつ、4本の指を受け入れた武之進。
ここまで一切の痛みを感じさせずに導く黒虎の房中術もまた、忍びとしての鍛錬の賜物であった。
両手の指で、奥の空洞さえ見えるかのように広げられていく武之進への責めは、対に最終段階を迎えることになる。
ぬるりとした、唾液とはまた違う感触を尻に味わう武之進。
「あ? それは……?」
「男の穴を蕩けさせ、滑りをよくする練り膏でございます。未通のものに対して、あるいは潤いの少なくなったおなごに対してなど、様々な場面でよく使われるものでございますな。お父上との、また兄上様方との交わりにおいても、尻穴に練り込んでことに及んだものでございます」
今で言う麻酔薬と筋弛緩剤の混合されたようなものであるのだろう。
男と女、いずれをも相手にすることが必然の忍びの者に伝わる、ほのかに甘い匂いのする軟膏であった。
「あ、あ、父君も、これを……?」
「さようでございます。お父上もこの練り膏を使うのを、毎回楽しみにしておられましたぞ。これを塗るだけで、そのお身体を開き、まるで熟した瓜のように尻穴を蕩けさせるものでございます」
「ああ、早く、早くそれを私の尻に塗ってくれ。もう、疼いて、尻が疼いてたまらんのだ……」
指先に取った幾らか黄色みががった軟膏を、自らの逸物と武之進の穴深くにトロトロと塗り広げる黒虎。
それはまた黒虎の逸物にも更なる活力を与え、固く勃ち上がった肉棒からはその糸を断ち切れないほどの先走りが流れ出している。
「いよいよ、私のものを入れますぞ。もし痛みを感じそうなら、口を開けてなるべく逃がすようにしてくださいませ」
「ついに、ついに、お前のものが私の中に入ってくるのだな」
若者にとっては、痛みへの恐怖より、快感への期待が高まっているようだ。
いや、身に迫った死という理不尽なものに対しての恐怖を、二重の意味で置き換えているのやも知れぬ。
「指よりはどうしてもその太さが違います。ゆっくりと挿れていきますので、口を開け、息を吐き、身体の力を抜いてくだされ」
逸物の先端を、若い尻穴へとあてがう黒虎。
その慎重な動作には、主君たる若者を傷つけまいとする思いが凝縮していた。
「うあ、ああっ……。黒爺のがっ、黒爺のものがっ、当たっておるっ! あの大きいものがっ、私の尻に、当たって、入ってくる……」
みしり。
と、音がするようにその先端が滑り込んだ。
たっぷりと唾液で潤し、指でほぐし、軟膏でぬめりをよくした尻穴が、子どもの拳ほどの大きさにも見える黒虎の先端を呑み込んでいく。
「ああああっ、広がるっ、私の尻がっ、広がるっ……」
「まだですよ。まだ半分も入ってません。ほら、尻を緩めてください。決して締めないように、口を開け息を吐き、緩め、緩めて……」
「ああああああああああああっ……。ああっ、ああっ、ああああっ……」
ずるずると、だが実に慎重に『奥』を目指す肉棒。
ついにその根元が、武之進の尻穴と接することになった。
「入りましたぞ。私の逸物が、すべて武之進様の中に、入りましたぞ」
「誠かっ? あ、あんな大きな黒爺のものが、私の尻に、あの全部が、私の尻に入っているというのか?」
「嘘だと思うのなら、武之進様。御自身の手で触ってごらんなさい」
後ろ手に回した武之進の左手を、自らの逸物へと導き、手を添える黒虎。
そこには武之進の尻穴と密着した、黒虎の太い根元があった。
そのあまりの太さに、それが己の尻穴に入っていることがすぐには信じられない武之進であった。
「すごいっ、入ってる、本当に黒虎のが、入ってる!」
「穴と逸物が馴染むまで、しばらくは動かないでおきましょう」
そう言った黒虎だが、前後の動きは一切行わないものの、ときおりびくびくと自らの逸物をしゃくり上げている。
「あっ、あっ、それっ、いいっ! 黒虎のっ、それっ、いいっ!!」
「お父上も、これをやると、たいそう喜んでいただきましたぞ。さて、そろそろ馴染んできたようでございますな……。それでは少しずつ、動かすことといたしましょう」
父である源三郎との交わりの話をすると、武之進の内壁の締まりがよくなることに気付いている黒虎である。
父もまた、息子に己の痴態を覗かれていると伝えられたとき、そのよがり声はひときわ高いものとなった。
互いに煩悩を持ち合う親子に取り、その相手の色事はまた、己の快楽をより深くするものなのだろうか。
「ああ、ゆっくり、ゆっくりやってくれ、黒虎っ……。あっ、ああああっ、あがっ、あっ、あっ、ああああああーーーーーー!」
いつの間にか黒虎は、その大腰小腰の動きを激しくしていた。
その抽挿は一定の拍動を繰り返したかと思えば、急にその動きを早め、あるいは遅め、初物である武之進の尻穴を縦横無尽に掘り込んでいく。
初回とは思えぬその激しさは、念入りにほぐした尻穴の柔らかさ、自らの技巧、武之進の肉体そのものの柔軟性、それらすべてを吟味した上での黒虎の判断によるものであった。
およそ長年の情交の相手ともなかなか致さぬようなその動きは、戌亥家三代にわたる男達との経験の蓄積による部分が大きいのか。
肉体の構造とその脈々と続く精神性とを理解している黒虎の、面目躍如といったところだ。
もはや一辺の容赦も無く掘り上げられる武之進の穴は、その持ち主に喉が割れんばかりのよがり声を上げさせながら、確実に武之進をある一点へと追い込んでいく。
「なんだ、黒虎っ! 私の逸物がっ、勝手にっ、勝手に汁がっ、汁が出そうなんだっ!!」
「男の身体は、相性のいい逸物と出逢えれば、勝手にその精を漏らすように出来ているのです。最初は驚くことかもですが、快楽に身を委ねてくださいませ。自らの手や、私の口による吐精とはまた違った、天にも昇る快感が味わえましょうぞ」
黒虎の言う『相性』こそが、黒虎がまた『契約以上の思い』をこの一族に持ってしまった所以なのだろう。
それがたとえ忍びの道には外れると分かっていても、数十年にわたって染みついたその『相性』はもはや黒虎の一部となり、己の心と身体と分かち難いほどの『生き様』となってしまっていたのである。
「ああっ、駄目だっ、そんなのっ、扱きもせずにイくなんてっ……! ああっ、でもっ、気持ちが良いっ、良いのだっ! だ、駄目だっ、黒虎っ! 汁がっ、汁が出そうだっ!!」
その瞬間だった。
黒虎の背中がびくりと緊張し、その一切の動きが止まった。
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